公開日:2025.09.10 更新日:2026.05.22
相続税の基礎控除とは?計算方法から控除制度まで徹底解説
相続時に課税される相続税ですが、中には資産が少ないから相続税はかからないと思っている方もいると思います。しかし実際には、不動産や生命保険などを含めた財産の総額が基礎控除額を超えると、一般家庭でも相続税の申告が必要になる可能性があります。2015年に基礎控除額が引き下げられたことで、以前より多くの人が課税対象になり得る状況となっています。
そこでこの記事では、相続税の基礎控除の仕組みや計算方法、法定相続人のカウント方法、そして控除制度を活かした納税額の抑え方までを、事例を交えて分かりやすく解説します。
相続手続きで損をしないためにも、制度の基礎を正しく理解し、早めに準備を始めておきましょう。
目次
相続税の基礎控除の基本知識と計算式

相続税の基礎控除とは、一定額までの遺産総額に対して相続税が一切かからない「非課税枠」のことです。遺産の総額がこの枠内に収まる場合は、相続税の納税はもちろん、税務署への申告手続きも原則不要となります。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
上記の計算式の通り、法定相続人の数が1人増えるごとに、非課税枠(基礎控除額)が600万円ずつ広がっていく仕組みです。
相続税の申告が必要になる基準(課税価格の計算)
税務署への申告が必要になるのは、不動産や預貯金、生命保険などの「正の財産」の合計額から、借入金などの「債務」や「葬式費用」を差し引いた金額(課税価格)が、算出した基礎控除額を1円でも超えた場合です。
一方で、債務などを引いた最終的な課税価格が基礎控除額以下であれば、相続税の課税対象にはならず、何の手続きも必要ありません。
法定相続人と基礎控除の関係

代襲相続が発生した場合のカウント方法
被相続人の子どもが、相続開始(死亡)よりも前にすでに亡くなっている場合、その子の子(被相続人から見た孫)が権利を引き継ぐ「代襲相続」が発生します。
- 人数の変動ルール: もし亡くなった子どもに2人の孫(兄・妹)がいた場合、本来の子ども1人分ではなく「孫2人分」としてカウントするため、法定相続人の数が1人増え、基礎控除額が600万円加算されます。
養子縁組がある場合の人数制限(税法上のペナルティ防止)
民法上は養子を何人迎えても全員が相続人になりますが、相続税の基礎控除を増やす目的の「形式的な養子縁組」を防ぐため、税法上は以下の通りカウントできる人数に制限が設けられています。
- 被相続人に実子がいる場合: 基礎控除に含められる養子は「1人まで」
- 被相続人に実子がない場合: 基礎控除に含められる養子は「2人まで」
相続放棄をした人がいる場合の扱い
家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行い、最初から相続人ではなかったことになった人がいる場合でも、基礎控除の計算においては注意が必要です。
人数の変動ルール: 税法上の不公平をなくすため、「相続放棄がなかったもの」としてそのまま法定相続人の数に含めてカウントします。放棄した人がいるからといって、基礎控除額(非課税枠)が減ることはありません。
相続税計算の全体的な流れ

ここでは、相続税計算の全体像をイメージするために、家族構成や財産内容を仮定した事例をもとに順番に計算を進めていきます。
事例の条件
- 被相続人:夫
- 相続人:配偶者(妻)・子2人(長男・長女)=法定相続人3人
- 財産:
- 不動産:4,000万円
- 預貯金:1,500万円
- 債務:500万円(住宅ローン残債)
- 特記事項:遺言書なし、遺産分割は法定相続分どおり
この条件をもとに、相続税が発生するかどうか、どのように納税額が決まるのかを見ていきましょう。
遺産総額(課税価格)の算出
相続税の計算は、まず被相続人の財産と債務をすべて洗い出し、課税価格(遺産総額)を算出するところから始まります。
今回の事例における財産と債務は以下のように整理できます。
- 不動産(自宅):4,000万円
- 預貯金:1,500万円
- 債務:500万円(住宅ローン)
そのため、課税対象となる財産は、不動産4,000万円と預貯金1,500万円を合計した5,500万円です。さらに、ここから債務500万円を差し引き、課税価格は5,000万円となります。
課税遺産総額の確定
次に、5,000万円の課税価格から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を確定します。今回の基礎控除額は以下のとおりです。
3,000万円+600万円×法定相続人の数(3人)=4,800万円
ここで求めた基礎控除額4,800万円を課税価格の5,000万円から差し引くと、課税対象となる課税遺産総額は200万円となります。なお、控除額の算出には基礎控除以外にも配偶者控除や小規模宅地等の特例なども適用できるケースもあり、実際はさらに少なくなる可能性があります。
相続税の総額を算出し、各相続人で按分
課税遺産総額が算出できたら、次に相続人ごとの法定相続分に応じて、相続税の総額を算出していきます。
法定相続分は次のとおりです:
- 妻:2分の1(100万円)
- 子2人:各4分の1(50万円ずつ)
これを基に税率を適用します(税率表より:1,000万円以下は税率10%、控除額0円)
- 妻:100万円 × 10% = 10万円
- 長男:50万円 × 10% = 5万円
- 長女:50万円 × 10% = 5万円
→ 相続税の総額は20万円
この段階ではまだ控除前の「相続税総額」です。ここから次のステップで個別控除を適用していきます。
各相続人で控除を適用して納税額を確定
相続税総額が20万円と算出された後は、相続人ごとに適用できる控除を差し引いて、最終的な納税額を決めます。
まず、妻には「配偶者の税額軽減」が適用され、相続税が全額非課税となります(法定相続分以内または1億6,000万円以下の場合は全額控除されるため)。よって、妻の税額10万円はゼロになります。
子ども2人には、年齢や障害の有無によって「未成年者控除」「障害者控除」などが適用できる場合がありますが、今回は該当なしと仮定します。このため、長男・長女はそれぞれ5万円を納付することになります。
よって、今回の事例では最終的に、妻は納税の義務が発生しませんが、2人の子は5万円ずつの納税が必要という結果になります。
基礎控除以外で相続税を軽減できる主な制度

相続税には、基礎控除のほかにも納税額を軽減できる制度がいくつかあります。ここでは代表的なものを簡単に紹介します。
- 配偶者控除
配偶者が相続する財産について、最大1億6,000万円または配偶者の法定相続分までの金額が非課税になる - 小規模宅地等の特例
被相続人が住んでいた自宅や、事業に使っていた土地について、一定の条件を満たした場合に評価額を最大80%まで減額できる - 未成年者控除・障害者控除
未成年者や障害者が相続人の場合、その年齢や障害の程度に応じて相続税額から一定額を控除できる - 相次相続控除
10年以内に連続して相続が発生した場合、前回の相続で納めた税額の一部を今回の相続税額から差し引くことができる
これらの控除制度は適用条件が細かく、誤った理解で申告すると否認される恐れもあります。制度を活用したい場合は、あらかじめ税理士のような専門家に相談しておきましょう
基礎控除で見落としやすいポイント

基礎控除の計算方法はシンプルに見えますが、思い込みや見落としによって誤算が生じやすいポイントでもあります。そこでここでは、特に気を付けるべき4つのパターンを紹介します。
不動産の評価で「基礎控除内」と思い込む
相続財産のうち、最も見誤られやすいのが不動産の評価額です。特に都市部に土地を持っているケースでは建物が古くても土地の評価が想定以上に高くなることがあります。預貯金が少ないから、家が古いからといって、相続税は関係ないと決めつけるのは危険です。
相続放棄した人を人数に入れ忘れる
法定相続人の数を間違える典型例が、相続放棄をした人を除外してしまうケースです。放棄した人は実際に財産を受け取りませんが、基礎控除の計算上は1人としてカウントする必要があります。
特に相続放棄の手続きが非公開で進むこともあり、周囲が正確な情報を把握していないまま進めると、控除額の過小計上につながります。
相続人の確定ミス(認知・前婚歴・代襲相続)
意外な事例として、戸籍を確認したところ、子どもの人数が想定よりも多くなるという可能性があります。これは、配偶者に認知した子がいたり、前婚の子どもが存在したりといった場合に発生します。
かなり珍しいケースではありますが、絶対にありえないことではないので、相続が発生する際には必ず戸籍で子の人数を確認するようにしましょう。
特例で税額が「0円」になっても申告が必要なケース
基礎控除の見落としで最も恐ろしいのが、「各種の控除や特例を使ったら税金が0円になったから、税務署への申告も不要だろう」という思い込みです。
相続税の手続きでは、以下の代表的な軽減制度を適用する場合、「期限内に相続税の申告書を税務署へ提出すること」が適用の必須条件となっています。
- 配偶者の税額軽減(配偶者控除): 1億6,000万円まで非課税になる制度
- 小規模宅地等の特例: 実家の土地の評価額を最大80%減額できる制度
申告を怠った場合の致命的なペナルティ
「税金がかからないから」と放置して申告期限(死亡を知った翌日から10ヶ月以内)を過ぎてしまうと、これらの特例の適用資格を失います。その結果、特例を使う前の「本来のバカ高い評価額」に対して相続税が計算され、後から巨額の税金や延滞税(ペナルティ)を請求されるという最悪の事態に陥るため、税額がゼロになる場合でも必ず期限内の申告を行ってください。
まとめ
相続税の基礎控除は「3,000万円+相続人の人数×600万円」で求められ、相続人が1人違うだけで控除額が600万円も変わるため、恩恵を受けられる額は家庭ごとに大きく異なります。このことから、相続人が少ない家庭の場合は、基礎控除を超える可能性が高くなります。
また、代襲相続や養子縁組、相続放棄などが関係すると相続人のカウントが難しくなり、気づかないうちに申告漏れにつながることもあります。申告が漏れるとペナルティを受ける恐れもあるので「うちは大丈夫」と思い込まず、相続が発生したときは必ずその全容をチェックしましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。