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公開日:2025.11.18 更新日:2025.11.14

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瑕疵(かし)とは?初心者でもわかりやすく基礎から徹底解説

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中古住宅の購入後に雨漏りが見つかったり、リフォーム後に設備の不具合が生じたりといった瑕疵に関するトラブルは、決して他人事ではありません。では、そんなトラブルに直面したとき、責任の所在は誰にあるのでしょうか?

実はこの問題には、法律上の明確な考え方があります。建物に欠陥があった場合、売主や施工業者がどこまで責任を負うのか、そして買主がどのように救済を受けられるのかは「瑕疵(かし)」という概念によって整理されています。

普段あまり耳にしない言葉ですが、不動産取引やリフォーム契約においては、まさにこの「瑕疵」をどう扱うかで当事者の負担や結果が大きく変わります。トラブルを未然に防ぎ、適切に対応するためには、まずこの仕組みを正しく理解しておくことが欠かせません。

そこでこの記事では、そんな「瑕疵」の基本的な考え方から、実際に問題となるケース、そして備えておきたい瑕疵保険などの制度までを分かりやすく解説します。中古物件の購入前の確認やリフォーム契約時のチェックにも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

契約における「瑕疵」とは

契約における瑕疵とは、売買の対象となる目的物が、本来備えているべき性能や品質を欠いている状態、または何らかの問題がある状態を指します。不動産取引においては、新築住宅が設計どおりの性能を満たしていない場合や、中古住宅で雨漏り・シロアリ被害などが生じている状態がこれにあたります。

もともと、この「瑕疵」を巡るトラブルは「瑕疵担保責任」(民法旧570条など)という制度で処理されていましたが、2020年4月1日の民法改正により「契約不適合責任」へと改められました。これにより、単に欠陥の有無を問うのではなく「目的物が契約書に定めた種類、品質、数量に適合しているか」という観点で責任を判断する仕組みに変わっています。

なお、住宅の瑕疵は物理的な欠陥だけに限りません。たとえば、過去に事件や事故が起きた、いわゆる「心理的瑕疵」や、周辺環境によって生活に支障が生じる「環境的瑕疵」も含まれます。

経年劣化との違いとは

経年劣化とは、建物や設備を通常どおり使用するなかで、時間の経過によって自然に発生する老朽化や損耗のことを指します。たとえば、屋根の色あせや外壁の細かなひび、給湯器の金属部のサビなどは、一般的に経年劣化として扱われます。

一方で「瑕疵」とは、本来あるべき性能や品質が欠けている、または契約内容に適合していない状態をいいます。見た目は同じひび割れでも、それが施工不良や構造上の欠陥によるものであれば、経年劣化ではなく瑕疵として法的責任が問われる可能性があります。つまり、原因が「建物の経年や通常使用による老朽化」か「施工不良や設計上の不備といった人的・設計的な不備」かによって、法的な扱い(責任の有無)が大きく変わるのです。

「隠れた瑕疵」とは?

「隠れた瑕疵」とは、売買の当事者が通常の注意(一般的に必要な調査や確認)をもってしても発見できない欠陥のことです。隠れた瑕疵は床下のシロアリ被害、壁内部の腐食、天井裏の雨漏り跡など、目に見えない部分にある場合が多く、外観上は問題がなさそうに見えても潜在的な不具合を抱えているケースがあります。

瑕疵が問題になる主な場面

表面的には同じ「瑕疵」でも、どのような対象や状況に生じるかによって、責任の性質や範囲が大きく変わります。ここでは、瑕疵が問題となる主な5つのケースを整理しておきましょう。

  • 意思表示の瑕疵
  • 代理行為の瑕疵
  • 占有の瑕疵
  • 契約の目的物の瑕疵
  • 土地工作物の設置・保存の瑕疵

意思表示の瑕疵

意思表示の瑕疵とは、当事者の本当の意思に基づかない形で契約が成立してしまう状態を指します。意思表示の瑕疵の種類には以下の5種類があります(※)。

  • 詐欺:他人をだまして誤った判断をさせ、契約を結ばせる行為
  • 強迫:脅迫や圧力によって、本人の自由な意思を奪って契約をさせる行為
  • 錯誤:重要な事実を勘違いして認識したまま契約を結ぶ行為
  • 心理留保:本心では契約する意思がないのに、冗談や社交辞令などで意思表示をしてしまうこと
  • 通謀虚偽表示:当事者同士が示し合わせて、事実と異なる内容をわざと表示すること

たとえば、売主が「地盤調査で問題はありません」と虚偽の説明をして買主を安心させ、契約を結ばせた場合は詐欺に該当しますし、脅迫などによって契約を強制された場合は強迫にあたります。さらに、買主が「建ぺい率50%」と誤信して契約したものの、実際は「建ぺい率40%」で希望の建物が建てられなかったといった場合は、錯誤に該当しうるケースです。

※ 民法上は「瑕疵」という言葉は用いられません

代理行為の瑕疵

代理行為の瑕疵とは、契約を本人の代わりに行う「代理人」の行為に不正や誤解が含まれていた場合を指します。代理人が詐欺や錯誤などによって契約を結んだとき、その行為の主体が本人(委任者)ではなく、代理人にあるのが特徴です(民法第101条第1項の原則)。

たとえば、マンションの売却を任された代理人が「近隣で再開発の予定があります」と虚偽の説明をして買主を契約に導いたり、土地の売買交渉で「建築確認はすでに取れる見込みです」と誤った説明をしてしまったといったケースが考えられます。

占有の瑕疵

占有の瑕疵とは、不動産を正当に占有する条件である「所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と占有している状態」を満たしていない状態を指します。

たとえば、立ち退き命令を受けた入居者がそのまま居座っている場合や、他人の土地を許可なく駐車場として利用している場合などが該当します。こうした占有は、表面的には「使っている」ように見えても、法的には不当占拠にあたり、保護の対象とはなりません。

契約の目的物の瑕疵

契約の目的物の瑕疵とは、売買や賃貸借の対象となる建物や土地そのものに欠陥がある状態を指します。たとえば、住宅の雨漏り、基礎部分のひび割れ、シロアリによる構造材の損傷、配管の不具合などが典型的な例として挙げられます。

こうした瑕疵が契約締結時に告知されていなかった場合、売主や貸主は契約不適合責任を問われる可能性があります。たとえば「中古住宅を購入して半年後に屋根裏の雨漏りが見つかった」場合、修繕費用の負担や契約解除をめぐって紛争に発展する可能性もあります。

土地工作物の設置・保存の瑕疵

土地工作物の設置・保存の瑕疵とは、建物や構造物の管理不備によって第三者に損害を与えた場合を指します。ここでいう「土地工作物」とは、建物・塀・擁壁・看板など、土地に固定された構造物全般のことです。

たとえば、老朽化した擁壁が崩れて隣地の車を損壊させた場合や、ビルの看板が落下して通行人がけがをした場合などが挙げられ、こうしたケースでは、土地や建物の所有者・管理者が損害賠償責任を負う可能性があります。

5つの瑕疵の種類|権利・物理・法律・心理・環境

不動産取引における瑕疵には、建物や土地そのものの欠陥だけでなく、権利関係・法律上の制限・周辺環境・過去の出来事といったさまざまな要素が関係します。


そこで、実務で特に問題となりやすい以下の「5つの瑕疵の種類」を整理しておきましょう。

  • 物理的瑕疵
  • 法律的瑕疵
  • 心理的瑕疵
  • 環境的瑕疵
  • 権利的瑕疵

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、建物や設備そのものに欠陥や損傷がある状態を指します。外観上は問題がなくても、内部や見えない箇所に不具合が潜んでいるケースも多く、発見が遅れるほど修繕費用がかさむ傾向があります。

代表的な例としては、屋根や外壁の雨漏り、基礎部分のひび割れ、シロアリ被害、給排水設備の破損などがあります。これらは一見すると軽微に見えても、構造部分の腐食や湿気の侵入など、建物全体の耐久性に影響する重大な欠陥につながることがあります。

法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、法令や条例などの制限によって、物件を自由に利用・建築できない状態を指します。見た目や構造に問題がなくても、法的な条件を満たしていなければ思いどおりの活用ができず、取引後に大きな支障が生じることがあります。

代表的な例として、建ぺい率・容積率の超過や、接道義務を満たしておらず再建築ができないケース、用途地域の制限によって希望する建物を建てられないケースなどが挙げられます。

たとえば、「二世帯住宅を建てる予定で土地を購入したが、実際には容積率の制限により希望の建物が建てられなかった」というケースは典型的な法律的瑕疵に該当する可能性があります。

心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、建物や土地そのものに欠陥はないものの、過去の出来事によって心理的に敬遠される状態を指します。物理的には安全であっても、購入者や入居者が不快感や不安を覚える要因が存在する場合に問題となります。

代表的な例としては、過去に死亡事故が発生した「事故物件」が挙げられます。事故物件は市場での人気が低いため、本来見込める価値よりも大幅に低い価格で売買されることが多いです。また、近隣でのトラブルや反社会的勢力の出入りといった、直接的でなくても不安を与える要素も心理的瑕疵とみなされることがあります。

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、物件そのものに問題はなくても、周辺環境によって生活や利用に支障が生じる状態を指します。つまり、建物の品質や構造ではなく、立地条件や外的要因が原因となる瑕疵です。

代表的な例としては、工場や幹線道路による騒音・振動・排気ガス、飲食店や畜産施設からの悪臭、電波障害、夜間の治安不安などがあります。また、ハザードマップ上で浸水想定区域や土砂災害警戒区域に指定されている土地も、災害リスクの観点から環境的瑕疵に該当する場合があります。

権利的瑕疵

権利的瑕疵とは、所有権や抵当権などの権利関係に不備がある状態を指します。登記簿上の情報と実際の権利関係が一致していない場合や、第三者の権利が残っている場合などが典型例として挙げられます。

たとえば、登記簿上の所有者と実際の売主が異なる、抵当権が抹消されていないまま売買が進められる、あるいは相続登記が未了で複数の相続人が権利を主張しているなどのケースがあります。また、地役権や賃借権など、第三者の利用権が設定されたままの土地もトラブルになりやすい物件です。

瑕疵保険とは?加入の必要性と保険の種類

瑕疵保険とは、建物に欠陥(瑕疵)が見つかった際に、その修繕費用をカバーするための保険制度です。売主・施工業者・買主のいずれかが加入しておき、契約後に瑕疵が見つかりトラブルが発生した場合に、一定の補償を受けられる仕組みになっています。

ここでは、住宅の購入・リフォームに関係する以下の3種類を見ていきましょう。

  • 住宅瑕疵担保責任保険
  • 既存住宅売買瑕疵保険
  • リフォーム・大規模修繕工事の瑕疵保険

住宅瑕疵担保責任保険(新築住宅向け)

住宅瑕疵担保責任保険は、新築住宅に欠陥(瑕疵)が見つかった際に、その修繕費用を補償するための制度です。売主や仲介事業者が加入し、万一の際には保険会社が修繕費を負担する仕組みになっています。

この保険の対象となるのは、基礎・柱・屋根などの主要構造部分や、雨水の浸入を防ぐ外壁や屋根の防水部分です。

たとえば、引き渡しから1年後に屋根の防水不良が原因で雨漏りが発生した場合や、基礎コンクリートのひび割れや柱の欠損など、建物の安全性に関わる欠陥が見つかった場合に保証の対象となることがあります。

なお、本制度は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」により、構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任と、その費用を担保するための資力確保措置(保険加入または供託)が新築住宅の供給者(建設業者・宅建業者)に義務付けられています。

既存住宅売買瑕疵保険(中古住宅向け)

既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅の売買において、引き渡し後に欠陥が見つかった場合に修繕費用を補償する制度です。

たとえば、購入から半年後に天井裏の腐食や配管の破損が見つかった場合、売主が瑕疵を把握していなかったとしても、保険を通じて修繕が行われることがあります。保険加入の有無で、実際に負担する修繕費が数十万円単位で変わるケースもあるため、取引前に必ず確認しておきましょう。

リフォーム・大規模修繕工事の瑕疵保険

リフォームや大規模修繕工事にも瑕疵保険は欠かせません。既存住宅の工事は、老朽化した部分や見えない箇所の施工が多く、工事後に不具合が発生するリスクが高い傾向にあり、それにより発生するトラブルに備えるために設けられているのが、リフォーム瑕疵保険です。

この制度は、施工業者があらかじめ保険に加入しておくことで、工事の不備や施工ミスによって発生した欠陥を保険金で修繕できる仕組みになっています。

補償の対象となるのは、構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防ぐ防水施工など、住宅の安全性や耐久性に関わる工事が中心です。一方で、壁紙の貼り替えや設備の交換など、デザインや意匠に関わる軽微な工事は対象外となる場合があります。

まとめ・総括

瑕疵は、不動産や契約に関わるトラブルを防ぐうえで欠かせない考え方です。とくに中古住宅やリフォームの取引では「瑕疵か否か」がよく問題になります。経年劣化と瑕疵の線引きが曖昧になりやすく、後から費用負担をめぐって揉めるケースも少なくありません。

だからこそ、契約前にどこまでが自己責任で、どこからが売主や施工業者の責任になるのかを理解しておくことが重要です。

また、瑕疵保険などの制度を上手に活用すれば、万が一の修繕費用をカバーし、トラブル時の負担を減らすこともできます。日頃から契約内容や保証範囲を確認し、リスクを見据えた備えを整えておくことが、安心できる取引への第一歩になるでしょう。

この記事の監修者

山下 航平 アキサポ 空き家プランナー

宅建士/二級建築士

ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。

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