公開日:2025.12.21 更新日:2025.12.17
NEW不動産運用の始め方|初心者が押さえておきたいメリット・リスク・成功ステップ
不動産運用は昔から続く代表的な資産運用方法です。多くの成功実績があるものの、失敗した話も多く聞くため、リスクが心配になる方も多いでしょう。
実際、不動産運用はデメリットやリスクの対策を怠ると、大きな失敗を招く恐れがあります。そこでこの記事では、不動産運用の基本から代表的な手法、リスクへの向き合い方、物件選びのポイントなどを解説します。
目次
不動産運用とは?基本の仕組みと資産運用としての位置づけ

不動産運用とは、安定性の高い「現物資産」である建物や土地を活用して収益を得る資産運用の手法です。株式や債券のような金融資産(ペーパーアセット)に比べて価格変動が緩やかで、長期的な資産形成に向いています。
短期的な値上がりを見込むことは難しいですが、価格が安定している分、長期的な運用に向いており、資金計画と収益シミュレーションを立てておけば、初心者でも比較的安定した利益を得やすい傾向にあります。
また、ローンを活用して「レバレッジ効果(※)」を得られるのも不動産運用の特徴です。手持ち資金を抑えつつ不労所得を構築できるため、自己資金の何倍もの規模で資産を増やすことが可能になります。
※ 少ない自己資金に他人資本(融資)を加えることで、より大きな投資効果を得る仕組み
なぜ不動産は資産運用に向いているのか
不動産が資産運用に向いていると言われる理由は「実物としての価値を持つ資産」であり、経済状況に左右されにくい安定性を持っているためです。株式や債券のように短期的な値動きに翻弄されることが少なく、長期保有による資産防衛に向いています。
また、インフレ局面において、物価上昇に合わせて家賃や物件価格を連動させやすく、資産の実質的な価値が下がりにくいのも大きな要因です。将来にわたって安定した収益基盤を築きたい人にとって、不動産は有力な選択肢の一つといえるでしょう。
家賃収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)とは

不動産運用の利益は、家賃収入(インカムゲイン) と 売却益(キャピタルゲイン)から構成されます。
家賃収入(インカムゲイン)は、入居者から毎月支払われる家賃によって得られる定期的な収益です。入居が続く限り収益が継続するため、短期的な景気変動に左右されにくく、生活費やローン返済、さらには再投資の原資などへの活用が見込めます。
一方の売却益(キャピタルゲイン)は、物件を購入時よりも高い価格で売却した際に得られる利益のことです。収益が得られるのは1度だけで、必ず発生するとも限りませんが、うまくタイミングをつかめば短期間で大きなリターンを得られる可能性があります。
不動産運用のメリット

現物資産を運用する不動産運用は「安定した収入を得ながら資産を守れる」点が大きな魅力です。より細かく見ていくと、以下のように具体化できます。
- 長期的安定収入を得やすい
- インフレへのリスクヘッジになる
- 税金対策や相続の優遇措置が期待できる
ここでは、これらのメリットから得られる効果を詳しく見ていきましょう。
長期的安定収入を得やすい
入居者からの家賃収入によって、毎月安定したキャッシュフローを得られるのは、不動産運用ならではの大きなメリットです。特に、賃貸需要の高いエリアを選べば、長期入居者の定着が見込め、空室リスクを抑えながら安定した収益を維持できるでしょう。
また、生活の基盤となる「住」を提供するサービスのため、需要が減りにくいのも魅力的です。景気が悪化しても人が住む場所の需要は大きく変わらないため、収入のブレが小さく、他の資産運用と比べて収益の安定性が高いと言えます。
さらに、長期入居が続けば家賃収入をそのままローン返済に充てられるため、実質的に手出しを抑えながら資産を形成できる点もメリットです。家賃が継続して入れば返済リスクも軽減でき、最終的にはローン完済後の家賃収入がそのまま利益として積み上がります。
インフレへのリスクヘッジになる
不動産は建物や土地という「実物資産」であるため、価値が目減りしにくい特徴を持っています。インフレが起こった場合、現金は実質的な価値が下がりますが、家賃や物件の価値は物価上昇に合わせて引き上げられるケースが多く、影響を受けにくいです。
ただし、地域の経済状況や賃貸需要によっては家賃改定が難しい場合もあるため、エリア選定や契約条件は慎重に見極める必要があります。堅実な管理と長期的な視点を持って初めて、不動産は「インフレに強い資産」として真価を発揮します。
税金対策や相続の優遇措置が期待できる
不動産運用は、税制面でもメリットが大きい投資手法です。建物の価値を年数に応じて経費化できる「減価償却費」を活用すれば不動産所得の所得税の負担を軽減できますし、相続時には不動産の評価額が実際の時価よりも低く算定される相続税の評価ルールがあるため、現金より相続税を抑えやすい特徴があります。
これは、相続税では市場価格ではなく、国税庁が定める「相続税評価額(=路線価や固定資産税評価額)」を基準に計算するためです。路線価は一般の取引価格(実勢価格)より低く設定されていることが多く、結果として不動産は現金よりも低い価値で評価されやすくなります。
さらに、賃貸物件の場合は、借地借家法に基づき保護される賃借人の権利が存在することで自由に利用・処分できない分、評価額が下がる特例があります。
不動産運用のデメリット・リスク

不動産運用には、安定収入という大きな魅力がある一方で、以下のような避けて通れないリスクも存在します。
- 空室と家賃滞納リスク
- 老朽化や修繕費の負担
- 流動性が低く売却に時間がかかる
ただし、これらのデメリットは事前の対策が可能です。ここでは、具体的にどのような点に気を付けて、どんな対策をすべきなのか見ていきましょう。
空室と家賃滞納リスク
不動産運用で最も注意すべきなのが、入居者が決まらない「空室リスク」と、家賃が支払われない「滞納リスク」です。
家賃設定が相場と合っていない場合や、物件設備が古い場合は、特にこのリスクが高くなりやすい傾向にあります。さらに滞納が長期化すると、毎月のキャッシュフローが途絶え、ローン返済や固定資産税の支払いに支障をきたすおそれがあるうえに、滞納が続いた場合の入居者との契約解除や明渡しには、法的な手続きが必要になります。
こうしたトラブルを防ぐには、適正な家賃設定と入居者審査の厳格化が欠かせません。さらに、家賃保証サービスや管理会社による自動引き落とし制度を活用して、リスクを抑えることも忘れないようにしましょう。
老朽化や修繕費の負担
建物は年月の経過とともに必ず劣化し、修繕費やメンテナンスコストが発生します。特に、築年数が古い物件では、設備更新やリノベーションの負担が想定以上に大きくなるケースも少なくありません。
中でも費用が膨らみやすいのが屋根や外壁、防水設備などの対象面積が広い箇所です。これらの場所は、1回で数百万程度、特に大規模な場合は1,000万円以上かかることもあります。
修繕・メンテナンス費用を節約するには、定期点検と修繕積立の実施が有効です。小さな不具合を早期に発見・対応して将来的な修繕コストを抑えると共に、管理会社からの報告をもとに長期修繕計画を立て、計画的な資金繰りを心がけましょう。
流動性が低く売却に時間がかかる
不動産は株式や投資信託と違い、現金化に月単位の時間がかかることが多いです。特に市場が冷え込んでいる時期には、希望価格での売却が成立しにくいことも多く、売却に苦戦するでしょう。
このリスクを軽減するには、資金繰りに余裕を持っておくことが大切です。生活費や緊急時の支出には別途現金を確保し、不動産は中長期的な運用資産として位置づけましょう。また、定期的に物件の査定を行い、市場価格を把握しておけば、売却のタイミングを判断しやすくなるでしょう。
初心者が理解しておくべき不動産運用の種類

一口に不動産運用といっても、物件の種類や運用方法が違えば、強みやメリット・デメリットは大きく異なります。初心者の方は、まず種類ごとの仕組みを理解し、自分の資金力やリスク許容度、運用スタイルに合った方法を検討しましょう。
ここでは不動産運用の代表的なものとして、以下の4種類を紹介します。
- 区分マンション
- 一棟マンション・アパート
- 戸建て住宅
- 不動産投資信託(REIT)
区分マンション
区分マンション投資は、マンションの1室(ワンルームやファミリータイプ)を購入し、家賃収入を得る方法です。
初期費用を比較的抑えやすく、都市部や駅近の物件であれば安定した入居需要が見込めます。また、建物全体の管理は区分所有法に基づき設立された管理組合が行うため、オーナーが直接関わる手間が少ないのも特徴です。そのため、初期費用を抑えて始めたい初心者や副収入を得たい会社員の方などに向いています。
ただし、1戸単位の投資では収益が限定的で、空室が出ると収入が途絶える点に注意が必要です。複数戸を保有してリスクを分散するか、長期的に資産を積み上げていく戦略が必要になります。
一棟マンション・アパート
マンションやアパートを一棟丸ごと所有する投資方法です。複数の部屋から同時に家賃収入を得られるため、1戸が空室になっても全体の収益への影響を抑えられる強みがあり、リフォームや家賃設定を自分で決められるため、運用の自由度が高いのも魅力です。
その一方で、購入価格や維持費が高額になりやすく、修繕・管理に関する判断もすべてオーナーの責任となる点には注意が必要です。一棟投資に取り組むのであれば、資金計画を慎重に立て、信頼できる管理会社と連携して運用することが欠かせません。ある程度の自己資金を持ち、安定収益を長期的に育てたい中〜上級者向けといえるでしょう。
戸建て住宅
戸建て住宅を賃貸に出す「戸建て投資」は、ファミリー層を中心に根強い需要がある投資手法です。子育て世帯からの人気が安定しているため、長期入居が期待しやすく、隣室との騒音トラブルが少なく、管理負担が比較的少ないというメリットもあります。
一方で、建物全体の修繕費や固定資産税をすべてオーナーが負担するため、維持コストはマンションより高くなる傾向にあります。さらに、立地や築年数によっては入居まで時間がかかることもあるため、購入前にリフォーム費用を含めた総コストを把握しておくことが大切です。
また、最近では空き家を活用した戸建て投資も広まっています。割安で物件を手に入れやすく、社会課題になっている空き家問題にも貢献できます。
不動産投資信託(REIT)
REIT(リート)は、投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設などの不動産を運用し、その利益を分配する投資手法です。1万円程度の少額から投資でき、複数の不動産に分散投資できるため、リスクを抑えながら安定したリターンを狙えます。また、株式のように証券取引所で売買できるため、流動性が高い点も魅力です。
ただし、REITの価格は市場の金利動向や景気の影響を受けやすいため、短期的に価格が変動する可能性がある点には注意が必要です。長期保有で安定配当を狙うか、相場の動きを見ながらタイミング投資を行うか、自分のスタイルに合わせた運用判断が求められます。
不動産運用を成功させるためのポイント

どんなに立地が良い物件でも、リサーチや管理を怠れば収益性は下がってしまいます。慎重な情報収集と的確な意思決定を積み重ねて、リスクを最小限にしながら安定した家賃収入を保ちましょう。
そこでここでは、長期的な成功に不可欠な「情報・判断・管理」の3軸から、不動産運用で成果を出すための実践ポイントを解説します。
【情報軸】物件選びのチェックポイント
物件選びは、収益性の根本にかかわるポイントです。物件の良し悪しによって、長期的な収益は大きく変わってきます。
物件選びで特に大切なのが「立地」です。駅や商業施設、学校、病院といった生活インフラへのアクセスが良好かを確認し、さらに長期的な需要に影響する、周辺エリアの将来的な開発計画や人口動向も確認しておきましょう。
また「ターゲット層に合った物件か」を見極めることも大切です。単身者向けなら駅近・セキュリティ重視、ファミリー向けなら学校区や駐車場の有無など、需要の軸を明確にすることで空室リスクを抑えられます。
【判断軸】信頼できる不動産会社・管理会社の選定
不動産運用を安定させるうえで欠かせないのが、信頼できるパートナー選びです。どんなに良い物件でも管理会社や仲介業者の対応が悪ければ、入居率や収益性はすぐに低下してしまいます。
不動産会社を選ぶ際に大切なのが、過去の取引実績が豊富か、得意分野が自分の物件と合致しているか、そして、担当者の対応姿勢は素早く誠実かという3点です。これらが満たされていれば、ある程度信頼できると考えられます。
反対に「すぐ契約したほうがいい」と急かしたり、都合の悪い情報を曖昧にする会社は避けるべきです。誠実な対応と透明性のある説明をしてくれるかどうかが、良いパートナーを見分ける基準になります。
【管理軸】リスク分散と長期的視点を持つ
不動産運用は中長期の視点で取り組むべき資産形成です。そのため、短期的な利回りに一喜一憂せず、リスクを分散しながら継続的に収益を積み上げる姿勢が求められます。複数の物件を保有する、異なる地域に投資する、REITなどを組み合わせるといった手法で、リスク分散を心がけましょう。
また、社会情勢や金利動向に応じて、運用方針を柔軟に見直すことも重要です。定期的に物件の収支状況を確認し、必要に応じてリフォームや売却を検討するなど、能動的に管理を行うことで、安定収益と資産価値の維持を両立できます。
不動産運用の出口戦略
最後に、不動産運用の出口戦略についても学んでおきましょう。
不動産投資は「買って終わり」ではなく、いつ・どのように手放すかも見据える必要があります。そのため、購入時点で売却の目安を設定しておき、どの水準で利益を確定するのか、またはどの条件で保有を継続するのかを明確にしておくことが重要です。
たとえば、物件価格が上昇している時期に売却してキャピタルゲイン(売却益)を確保する方法もありますし、反対に、老朽化が進む前に売却して新しい物件へ買い替えるのも効果的です。
また、こうして得た売却益を次の投資に回せば、保有資産を入れ替えながらポートフォリオの拡大が見込めます。地域や物件タイプを分散させることでリスクを抑え、より安定した収益構造を築くことが可能になります。
なお、出口戦略を考える際には、市場動向・金利環境・税制改正の3点を定期的に確認しておきましょう。特に譲渡所得税や住民税の負担は、売却のタイミングによって大きく変わります。短期的な利益にとらわれず、資金計画やライフプランと照らし合わせながら「保有」と「売却」のバランスを見直すことが、長期的な成功につながります。
まとめ・総括|不動産運用で着実な資産形成を目指そう
この記事で、不動産運用では空室や修繕費、金利動向といったリスクをふまえ、長期的な視点で判断していく姿勢が大切だと分かったと思います。リスクを抑えながら安定した収益基盤を築くためにも、物件選びや管理体制、資金計画をていねいに進めていきましょう。
また、不動産投資には法律や税制、融資条件など専門的な判断が必要になる場面も多いため、不動産会社や税理士といった専門家と二人三脚で進めていくことも大切です。アキサポでは空き家を専門に扱った不動産運用をお手伝いしていますので、お悩みの際にはぜひお声がけいただければと思います。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。