公開日:2026.06.24 更新日:2026.06.12
NEW不動産収入の経費ナビ|損をしない必要経費一覧と確定申告の落とし穴
不動産を賃貸して家賃収入を得ている場合、所得税などの課税対象となるのは総収入金額そのものではなく、必要経費を差し引いたあとの「不動産所得」の金額です。そのため、法律上認められる必要経費を漏れなく正しく計上することが、合法的な節税への第一歩となります。
ただし、ローンの元本返済や所得税・住民税、私的な支出など、経費にできないものもあります。特に修繕費と資本的支出、減価償却費、家事按分が必要な費用は判断に迷いやすい部分です。
これらの点を整理するために、この記事では、不動産収入に含まれるもの、経費にできる主な費用、経費にできない支出、確定申告前に確認したいポイントをまとめて解説します。
目次
不動産所得とは?不動産収入との違い

不動産収入とは、賃貸物件から得られる入金額の合計です。毎月の家賃だけでなく、共益費や管理費、駐車場代、礼金、更新料なども、不動産収入に含まれます。
一方の不動産所得は、不動産収入から必要経費を差し引いた金額です。たとえば、管理費や修繕費、固定資産税、ローン利息などがかかっていれば、その分を差し引いた金額が所得となります。
所得税や住民税の計算で見られるのは、基本的にこの不動産所得です。つまり、入金額がそのまま課税対象になるわけではなく、収入と経費を整理したうえで、実際にいくら所得が出ているかを確認する必要があるわけです。
不動産収入に含まれるもの(家賃・礼金・更新料など)
不動産収入には、毎月受け取る家賃だけでなく、賃貸借契約に関連して受け取るさまざまな金銭が含まれます。収入に含まれる主な項目は、以下のとおりです。
- 家賃:入居者から毎月受け取る賃料
- 共益費、管理費:共用部分の維持管理などの名目で受け取る費用
- 駐車場代:賃貸物件に付随して駐車場を貸している場合の使用料
- 礼金:賃貸借契約締結時に受け取る、返還義務のない金銭
- 更新料:賃貸借契約の更新時に受け取る金銭
- 名義書換料、承諾料など:契約上の手続きに関連して受け取る金銭
一方、敷金や保証金は、将来返還する前提で預かっている部分であれば収入には含めません。ただし、退去時の精算で返還しないことになった金額や、契約上返還不要とされている部分は収入になる場合があります。
不動産収入で経費になるもの一覧
不動産収入で経費として扱えるのは、賃貸経営を行うために必要な支出に限られます。そのため、賃貸物件との関係を説明できること、領収書や明細などの根拠資料が残っていることが基本です。まずは、主な経費を一覧で確認しておきましょう。
| 経費の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 管理費・共益費・管理委託料 | 管理会社への手数料、共用部の清掃費、入居者対応費など |
| 修繕費・原状回復費 | 壁紙の補修、設備交換、雨漏り補修、退去後の原状回復など |
| 損害保険料 | 火災保険、地震保険、施設賠償責任保険など |
| 減価償却費 | 建物や設備の取得費を耐用年数に応じて経費化する費用 |
| ローンの利息 | 不動産投資ローンなどの利息部分 |
| 租税公課 | 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、印紙税など |
| 交通費・通信費・消耗品費 | 物件確認の交通費、電話代、郵送費、書類作成用品など |
| 税理士費用・会計ソフト代 | 税理士報酬、記帳代行費、確定申告ソフトの利用料など |
全体を把握したところで、それぞれの詳しい内容を見ていきましょう。
管理費・共益費・賃貸管理代行手数料
管理会社に支払う管理委託料や、入居者対応、家賃集金、共用部の清掃・点検にかかる費用は、代表的な必要経費の一つです。
マンションやアパートの共用部にかかる電気代、清掃費、点検費などをオーナーが負担している場合も、賃貸物件に関する支出であれば経費に含められます。
修繕費・原状回復費・修繕積立金
修繕費は、建物や設備を元の状態に戻すための支出です。たとえば、壁紙の張り替え、給湯器の修理、水栓の交換、雨漏り補修、退去後の原状回復工事などが該当します。
ここで注意したいのは、間取り変更や設備のグレードアップなど、物件の価値や性能を高める工事は、修繕費ではなく、資本的支出として扱われる場合があることです。この場合、一括で経費として計上するのではなく、資産として減価償却を行うことになります。
また、区分所有マンション等の修繕積立金については、原則として実際に修繕が行われた年の経費となりますが、①返還義務がないこと、②規約等で積立基準が定められていること、③将来の修繕にのみ使用されること、の要件を満たす場合に限り、支払った年の必要経費として特例的に計上可能です(所得税基本通達関連)。
損害保険料(火災保険・地震保険など)
賃貸用物件にかける火災保険や地震保険、施設賠償責任保険などの保険料も、建物の損害や入居者・第三者への賠償リスクに備えるための費用なので、賃貸経営に必要な支出と考えられます。
このとき、保険料を数年分まとめて支払っている場合は、支払った年に全額を経費にするのではなく、保険期間に応じて各年に分けて計上するのが基本です。自宅兼賃貸物件や、賃貸部分と私用部分が混在している建物では、保険料の按分が必要になる場合があります。
減価償却費(建物・設備)
減価償却費とは、建物や設備の取得費を一度に経費にせず、耐用年数に応じて少しずつ経費にしていく仕組みのことです。実際に現金の支出がない年でも費用計上できるため、節税のために重要な役割を持ちます。
対象になる項目は、建物や給排水設備、空調設備などの「資産」に該当するものです。ただし、土地は時間が経っても価値が減る資産とは扱われないため、減価償却の対象にはなりません。
ローンの利息(借入金利子)
賃貸物件の購入や修繕のために借入をしている場合、ローンの元本返済部分は経費にできませんが、ローン返済額のうち利息部分は経費として扱えます。これは、不動産収入を得るための資金調達にかかる費用として考えられるためです。
ローンの借り換えを行う際には、金融機関に支払う融資事務手数料や繰上返済手数料、法務局への抵当権設定・抹消登記にかかる登録免許税、司法書士報酬などが発生します。これらも賃貸経営に直接関連する支出であれば、原則として発生した年の必要経費として一括処理できます。
保証料のように借入期間全体に対応する費用は、期間に応じて按分が必要になる場合があります。
租税公課(固定資産税・都市計画税など)
税金のうち、賃貸用不動産にかかる固定資産税や都市計画税は、物件を所有して賃貸収入を得るために発生する税金なので、租税公課として経費に計上できます。
また、不動産取得税、契約書に貼る印紙税、登記にかかる登録免許税なども、賃貸用不動産に関係する支出であれば経費処理の対象になります。ただし、物件の取得に直接結びつく費用は、購入した年に全額を経費にするのではなく、建物の取得価額に含めて減価償却する場合があります。
物件購入時に支払った「仲介手数料」や「登録免許税」などは、土地・建物の購入代金とともにそれぞれの「取得価額」に算入し、建物分は耐用年数に応じて減価償却しなければなりません。なお、不動産取得税や契約書の印紙税は、取得価額に算入せず、発生した年の必要経費(租税公課)として一括処理することも認められています。
交通費・通信費・消耗品費
賃貸物件の確認、管理会社との打ち合わせ、入居者対応などのために移動した場合の交通費は経費にできます。電車代やバス代、駐車場代や高速道路料金などが対象です。
また、電話代やインターネット代、郵送費、プリンター用紙、ファイル、文房具なども、不動産賃貸業務に使った分は通信費や消耗品費として経費にできます。
交通費や通信費は、後から税務上の支出目的(業務関連性)を証明しにくくなりやすい費目です。日ごろから日付、訪問先、物件名、用件などを簡単にメモして整理しておきましょう。
税理士費用・確定申告ソフト代
不動産所得の申告に関する税理士報酬や記帳代行費用、確定申告ソフトやクラウド会計ソフトの利用料は、申告や帳簿作成に必要な支出として経費にできます。
なお、複数の事業を営んでいる場合は、不動産所得に関係する部分だけを経費として整理します。たとえば、個人事業の売上と不動産所得の申告をまとめて税理士に依頼している場合は、請求内容を確認し、不動産所得に対応する金額を区分しておくとよいでしょう。
不動産収入の経費にできないもの(ローン元本・所得税など)

不動産収入に関係する支出でも、すべてを経費にできるわけではありません。経費にできない主な支出は、以下のとおりです。
- ローンの元本返済:元本返済は借りたお金を返しているだけであり、必要経費には含められない
- 所得税、住民税:不動産所得などの所得に対して課される税金であるため、経費として扱えない
- 延滞税、加算税などのペナルティ:ペナルティ性のあるものは租税公課として扱えない
- 私的な支出:賃貸運営との関係を説明しにくいため経費にするのは難しい
経費にするか迷う場合は「どの物件のための支出か」「賃貸収入を得るために必要だったか」「領収書や明細で説明できるか」を基準に判断しましょう。説明できない支出を無理に計上すると、申告後に確認を求められたとき対応しにくくなります。
不動産所得の計算式と所得税・住民税・消費税の求め方
不動産所得の額は、家賃や礼金などの総収入金額から、管理費や修繕費などの必要経費を差し引いて算出します。基本の計算式は以下のとおりです。
- 総収入金額 − 必要経費 = 不動産所得
たとえば、年間の家賃収入が120万円、礼金や更新料などの一時金が20万円、必要経費が50万円だった場合、不動産所得は以下のように計算します。
- 120万円+20万円−50万円=90万円
この場合、90万円が不動産所得となります。
次にこの額をもとに所得税、住民税、消費税の求め方を見ていきましょう。
まず所得税は、不動産所得を給与所得や事業所得などのほかの所得と合算し、所得控除を差し引いた課税所得に税率をかけて計算します。
日本の所得税は「超過累進税率(5%〜45%の7段階、※2026年現在、別途所得税額の2.1%の復興特別所得税が課されます)」を採用しているため、不動産所得は給与所得等の他の所得と合算された「総所得金額」をベースに税率が決定されます。そのため、単体で「90万円の10%」と計算するのではなく、全体の課税所得金額がどの税率区分に該当するかによって、実際の税負担や翌年の住民税(一律10%)への影響が変動します。
住民税は前年の所得をもとに計算され、所得割の税率は一律10%です。仮に総合課税の課税所得ベースで不動産所得が90万円増加した場合、それに対する住民税の負担額は9万円(※他の所得控除等を除いた単純計算)となります。
消費税は、貸している不動産の用途によって扱いが変わります。居住用の家賃は原則として非課税ですが、事務所や店舗、駐車場などの賃料は課税対象になる場合があります。
確定申告前に確認したい経費計上の注意点

不動産収入の経費を正しく計上するには、支出の内容だけでなく、あとから説明できる状態にしておくことが大切です。経費になる支出でも、領収書や明細が不足していたり、私用との区分が曖昧だったりすると、申告時に判断しにくくなります。
ここでは、確定申告前に確認しておきたいポイントを整理します。
領収書や明細を物件や用途別に整理する
一番の基本として、領収書や請求書、振込明細などは、物件別に分けて整理しておきましょう。特に複数の賃貸物件を所有している場合、どの物件にかかった費用なのか分からなくなると、経費の集計や説明がしにくくなります。
なかでも、修繕費や管理委託料、固定資産税、保険料などは、物件単位で金額を確認する場面が多い費目です。領収書だけでなく、工事の見積書、契約書、管理会社からの明細、金融機関の入出金記録などもあわせて保管しておくと、支出の内容を確認しやすくなります。
また、現金で支払った費用は記録が残りにくいため、日付・支払先・金額・用途をメモしておくと安心です。あとから見返したときに、何のために支払ったか分かる状態にしておきましょう。
家事按分の根拠を残す
自宅の一部を不動産管理の作業場所として使っている場合や、スマートフォン・インターネット・車などを私用と兼用している場合は、事業用と私用が混ざっている費用を、使用割合に応じて分ける「家事按分」が必要になります。
たとえば、私用のスマートフォンを入居者や管理会社との連絡に使っている場合は、業務で使っている割合をもとに、経費にできる部分だけを計上します。
明確な区分が難しい場合は、業務での使用時間や日数、走行距離、あるいは管理スペースの面積割合など、客観的かつ合理的に説明できる基準を設けて按分します。この基準があいまいだと、税務調査を受けた際に説明が難しくなるので、最初に基準を定めておきましょう。
青色申告やインボイスの影響を確認する
不動産所得がある場合は、青色申告を選べるかどうかも確認しておきましょう。青色申告を利用すると、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除を受けられる場合があります。控除額は帳簿の付け方や申告方法によって変わり、要件を満たせば10万円、55万円、65万円のいずれかの控除を受けられます。
なお、青色申告のメリットは控除だけではありません。帳簿を整えることで、家賃収入、修繕費、管理費、減価償却費などを物件ごとに把握しやすくなります。また、不動産所得が赤字になった場合、一定の要件を満たせば損失を翌年以降に繰り越せる場合もあります。事業的規模で不動産賃貸を行っている場合は、家族に支払う給与を青色事業専従者給与として経費にできる可能性もあるため、物件数や運営状況によっては節税面の効果も大きくなります。
ただし、青色申告を利用するには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要がありますし、控除額を大きくするには、複式簿記による帳簿作成や貸借対照表・損益計算書の作成、e-Taxでの申告などが必要になる場合があります。白色申告のまま進めるのか、青色申告に切り替えるのかは、物件数や収入規模、帳簿管理にかけられる手間を踏まえて判断しましょう。
また、インボイス制度の影響も、貸している物件の用途によって変わります。居住用の家賃は原則として消費税が非課税ですが、事務所や店舗、駐車場などの賃料は課税対象になる場合があります。事業用物件を貸している場合や、課税売上がある場合は、インボイス登録の要否や消費税申告への影響を確認しておくと安心です。
まとめ|不動産収入の経費は「支出内容」と「根拠資料」をセットで整理しよう
不動産収入の税金は、家賃や礼金などの収入全額ではなく、必要経費を差し引いた不動産所得に対してかかります。管理費や修繕費、固定資産税、ローン利息など、賃貸経営に関係する支出は漏れなく整理しておきましょう。
一方で、ローンの元本返済や所得税・住民税、私的な支出は経費にできません。確定申告では、領収書や明細、契約書などを物件別に保管し、支出の内容を説明できる状態にしておくことが大切です。判断に迷う費用がある場合は、早めに税理士などへ確認しておきましょう。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。