公開日:2025.10.09 更新日:2026.06.09
不動産所得の確定申告が必要な条件と計算方法【図解】
賃貸物件の運用を始めるにあたって、多くの方が不安を感じるのが毎年の確定申告です。申告を誤ると余計な税金が発生したり、控除や還付のチャンスを逃したりするリスクがあります。
この記事では、不動産所得の定義から申告が必要になる条件・計算方法・手続きの流れまでをわかりやすく解説します。会社員が副業で不動産を所有する場合の注意点も整理しているので、読み終えたときには「自分はどのケースに当てはまるか」「何を準備すればよいか」がはっきりわかるはずです。
目次
不動産所得の確定申告が必要になる条件は?

不動産所得の確定申告が必要になる条件を整理します。
基本的には、不動産収入から必要経費を差し引いた「所得」がある場合に確定申告が必要です。ただし給与所得者は、年間20万円以下の不動産所得であれば所得税の申告は不要です。なお住民税の申告は20万円以下でも原則必要です。
以下のいずれかに当てはまる場合は、不動産所得が20万円以下でも申告が必要になることがあります。
・給与収入が2,000万円を超える
・公的年金等が400万円を超える
・2か所以上から給与を受け取っており、主たる給与以外の給与とその他の所得の合計が20万円を超える
また、青色申告で不動産経営を行う場合は所得額にかかわらず帳簿の作成と申告書の提出が必要です。青色申告には最大65万円の特別控除という大きなメリットがある一方、記帳と決算書の作成が必須となります。
所得になる不動産収入の種類
次に、所得を計上する際に対象になる収入の種類を説明します。主な収入は以下のとおりです。
| 収入の種類 | 備考 |
|---|---|
| 家賃 | |
| 駐車場代 | |
| 共益費 | オーナーが受け取って管理する場合 |
| 礼金 | |
| 更新料 | |
| 名義書換料 | |
| 違約金 | |
| 敷金・保証金(返還しない部分) | 返還義務のある部分は預り金扱い |
| 原状回復の実費清算 | 内容によっては預り金扱いになる場合あり |
ここで注意したいのは、敷金や保証金など一時金の扱いです。返還義務のある部分は「預り金」ですが、敷引・償却といった返還しない部分は「収入」として計上します。また、明け渡し協力金については、契約書など明確な根拠があれば収入に含める必要があります。
事業的規模の認定と青色申告とは
不動産経営の規模が大きいと「事業的規模」と判断され、最大で65万円の青色申告特別控除が受けられるようになります。
事業的規模と判断される一般的な目安は、いわゆる「5棟10室基準」です。ただし判定は総合的に行われ、棟数や室数のみで一律に決まるわけではなく、継続性や収益管理体制、反復して貸し付けを行っているかなどの実態も加味されます。
不動産所得の計算方法

計算は以下の3ステップで進めます。
①1年間の総収入金額を集計する
②必要経費を集計する
③総収入から経費を差し引いて不動産所得を求める
計算例
家賃収入180万円・更新料10万円・返還しない敷金5万円=総収入195万円
固定資産税12万円・管理委託料18万円・修繕費15万円・保険料2万円・減価償却費30万円・借入利息10万円=経費合計87万円
195万円 − 87万円 = 不動産所得108万円
20万円を超えているため、確定申告が必要です。
控除額の求め方
不動産所得から各種控除を差し引くことで、課税対象となる所得額をさらに下げられます。主な控除は以下のとおりです。
・青色申告特別控除(55万円または65万円)
・青色事業専従者給与・白色の専従者控除
・基礎控除・医療費控除など個人全体で使える所得控除
青色申告特別控除の効果は大きく、上記の例では108万円 − 65万円 = 43万円まで課税所得を圧縮できます。
減価償却費の取り扱い
減価償却とは、建物や設備の取得費用を耐用年数に応じて毎年少しずつ経費に計上する仕組みです。建物本体・給湯器・エアコンなどが対象で、土地は対象外です。
計算式:取得価額(建物部分)× 定額法償却率
例)建物取得価額1,500万円・耐用年数22年の場合
1,500万円 ÷ 22年 ≒ 68.1万円/年
中古物件の場合は耐用年数の計算方法が異なります。
・法定耐用年数を超えている場合:法定耐用年数 × 20%
・法定耐用年数内の場合:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
複数物件を所有している場合
物件ごとに収入・経費を整理し合算します。赤字の物件はマイナスで計上します。
例)物件A:60万円、物件B:−15万円、物件C:30万円
60 − 15 + 30 = 不動産所得75万円
複数物件に共通する経費(広告費・旅費交通費など)は、戸数・面積・収入割合などの基準で按分します。一度決めた基準は毎年一貫して使用することが必要です。
不動産所得の確定申告を行う手順
基礎が理解できたところで、実際の申告手順を確認しましょう。やるべきことは分かっていても、どこから手をつければよいか迷いやすいのが確定申告です。ここでは全体の流れを順を追って解説します。
一般的な手続きの流れ
不動産所得の申告は、基本的に以下の流れで進めていきます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 収入と経費を集計して帳簿を作成する |
| 2 | 利用できる控除があるか確認する |
| 3 | 収入・経費・控除額から所得額を確定する |
| 4 | 青色申告決算書または収支内訳書を作成する |
| 5 | 申告書を完成させる |
| 6 | 税務署に提出する |
手順が多く複雑に感じるかもしれませんが、実際には1の収入と経費の集計と2の利用できる控除の確認がしっかりできていれば、あとは所定の書式に従って書類を作成して、それを提出するだけです。
なお、青色申告の場合は経費の正確さが所得額を減らすことに直結するため、普段から領収書や契約書を整理し、こまめに帳簿を更新しておきましょう。
申告作業を「年に一度の大仕事」と捉えるのではなく、「毎月の整理の積み重ね」として取り組むことで、負担を軽減できます。e-Taxを活用すれば自動計算や下書き保存もできるので、初めての方でも安心して進められるでしょう。
必要書類
不動産所得の確定申告で必要になる主な書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 対象 |
|---|---|
| 確定申告書B | 全員 |
| 青色申告決算書(不動産所得用) | 青色申告の場合のみ |
| 収支内訳書 | 白色申告の場合のみ |
| 帳簿(収入・経費を整理したもの) | 全員 |
| 借入金の返済予定表 | 借入がある場合 |
| 源泉徴収票 | 給与所得がある場合 |
| 領収書・契約書の控え | 全員(e-Tax利用時は保管のみ可) |
| 医療費の明細書・領収書 | 医療費控除を使う場合 |
| 金融機関の残高証明書 | 住宅ローン控除を使う場合 |
| 扶養控除・配偶者控除の証明書類 | 該当する場合 |
なお、 e-Taxで電子申告を行う場合は、一部の書類(領収書や契約書の控えなど)の提出は不要で、申告者が法定の保管期間(原則7年間)手元に保存しておく必要があります。ただし税務署から問い合わせがあったときに提示できるよう、必ず整理して保存しておいてください。
e-Taxを利用したオンライン申請の流れ
e-Taxを使えば、パソコンやスマートフォンから申告書を作成・提出できます。税務署へ行く手間が省けるうえに、提出後の手続きも短縮されるため、積極的に活用しましょう。
e-Taxで確定申告する5つのステップ
なお、オンライン申請では入力に沿って自動計算が行われるため、計算ミスを減らせるのが大きな利点です。また、下書き保存機能があるので、納得できるまで何度でも見直せます。税務署に出向く必要がないため、忙しい方や遠方に住む方にも便利な方法です。
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兼業・副業で不動産経営をする場合の注意点

副収入や老後資金を目的に不動産経営を行う会社員は少なくありません。
安定収入を得ながら資産形成できる魅力がある一方、税金・社会保険・就業規則といった見落としやすいリスクも潜んでいます。ここでは特に注意すべき3つのポイントを整理します。
年末調整時の取り扱い
会社員の給与所得は年末調整で精算されますが、不動産所得は対象外です。不動産所得が20万円を超える場合は、別途確定申告が必要になります。給与所得と不動産所得は合算して申告するため、合算後の所得額によっては所得税・住民税が上昇します。逆に不動産所得が赤字の場合は税負担が下がることもあります。
申告を怠ると追徴課税の対象になるだけでなく、税務署から勤務先に通知される可能性もあります。必ず期限内に申告しましょう。
社会保険や会社規則への影響
会社員の健康保険料・厚生年金保険料は給与ベースで計算されるため、不動産所得が増えても原則として保険料は増えません。ただし国民健康保険に加入している方は所得ベースで保険料が決まるため、不動産所得の増加が直接保険料に影響します。
また、就業規則で副業が禁止されている場合は規定違反とみなされるリスクがあります。事前に会社の規程を確認し、必要であれば人事担当に相談しておきましょう。
住宅ローン控除の喪失リスク
自宅を賃貸に出す場合、住宅ローン控除(住宅ローン減税)は「自らが居住していること」が要件のため、賃貸に出した時点で適用外となります。
年間数十万円単位の控除が受けられなくなるケースもあるため、得られる家賃収入と失われる控除額を事前にシミュレーションしたうえで判断することが重要です。固定資産税の軽減措置など他の優遇制度が外れる場合もあるため、慎重に検討しましょう。
よくある質問
まとめ|不動産所得の確定申告を正しく理解し、税金や資産運用に活かそう
不動産所得の確定申告は、義務を果たすだけではなく、節税や資産運用の基盤を整える大切なステップです。確定申告を「面倒な手続き」ととらえるのではなく、「資産の状況を整理し、今後の運用を見直す機会」と考え、正しい知識をもとに準備を進めることが重要です。
まずは本記事で整理したポイントを振り返り、自分で対応できそうか判断してみましょう。難しいと感じた場合は、税理士や専門家に早めに相談するのも有効な方法です。
確定申告は、しっかりと準備すれば決して難しいものではありません。正しい知識を身につけて早めに取りかかれば、安心して手続きを終えられます。今回学んだ内容をきっかけに、次の申告に向けて一歩先んじた準備を始めてみてください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。