公開日:2025.10.30 更新日:2025.10.27
NEW古い家の売却ガイド|売却成功のポイントや耐震基準・再建築可否・空き家活用まで
築年数が古い住宅の売却には、耐震基準や再建築の可否など、通常の不動産売買とは異なる注意点が多く存在します。リフォームや解体、空き家バンクの活用など、古い家ならではの売り方を把握しておくことで、スムーズかつ有利な取引を実現できます。
ここでは、古い家の定義や売却の方法、事前チェックポイントなど、売る前に知っておくべき情報を網羅的に解説します。
目次
- 1 1. 古い家とは?築年数と耐震基準をチェック
- 2 2. 古い家を売る6つの基本的な方法
- 3 3. 古い家の売却前チェックリスト|法的確認と準備
- 4 4. 古い家を売るときの具体的な流れ
- 5 5. 古い家を放置するリスクと早期売却の必要性
- 6 6. 古い家の売却価格を左右する主なポイント
- 7 7. 売却時にかかる税金と費用の基礎知識
- 8 8. 古い家を売るときに活用できる税制優遇・控除
- 9 9. 古い家を高く売るための工夫とコツ
- 10 10. 古い家を解体して売る場合の注意点
- 11 11. リフォームやリノベーションをして売るときのポイント
- 12 12. 賃貸運用と売却、どちらがお得か比較する
- 13 13. 不動産会社選びのポイント
- 14 14. トラブルを防ぐためのポイント
- 15 15. まとめ・総括
1. 古い家とは?築年数と耐震基準をチェック

古い家を売る前に、まずは「古い家」の定義や現在の耐震基準との違いを把握しておきましょう。
築古住宅の売却には、耐震基準(建築基準法)や再建築可否など、一般的な不動産取引とは異なる留意点が多くあります。リフォームや解体、空き家バンクの活用法
を理解しておけば、スムーズで有利な売却につながります。
1-1. 築何年から「古い家」とされるのか
一般的には築20年以上を古い家とみなしますが、市場や地域によっては築15年でも古さを意識されることがあります。特に耐震性や劣化が目立つ物件は査定や売却活動に影響しやすいため注意が必要です。
また、中古住宅市場では「法定耐用年数(所得税法施行令)」を目安とすることも多く、木造住宅は耐用年数が短く設定されています。そのため築年数だけでなく、リフォーム履歴やメンテナンス状況を確認し、総合的に判断することが重要です。
1-2. 旧耐震基準と新耐震基準の違い
1981年の建築基準法改正により耐震基準が強化され、それ以前は「旧耐震基準」、以後は「新耐震基準」と区分されます。旧耐震物件は地震への不安が残る一方、耐震補強済みなら新基準に近い安全性を備えている場合もあります。
売却時には、耐震診断結果や補修工事記録を提示することで、買主に安心感を与えることが可能です。
1-3. 再建築不可物件の確認とリスク
都市計画法や建築基準法の接道義務を満たさない物件は「再建築不可」となり、売却価格は大きく下がります。特に路地状敷地など接道条件が不十分な土地は、建て替えが難しく利用価値が制限されます。
売主は、再建築可否を不動産会社や自治体で事前に確認し、必要に応じてリフォームや買取といった代替手法も検討することが望ましいでしょう。買主に正確な情報を提示しておけば、契約後のトラブル回避にもつながります。
2. 古い家を売る6つの基本的な方法

古い家の売却には複数の選択肢があり、費用やスケジュールに応じて最適な方法を選ぶ必要があります。
築古住宅は、新築より売却方法が多様です。解体、更地売却、現況売却、リフォーム後売却など戦略の見極めが重要となります。各方法に利点とリスクがあるため、相場と費用対効果の確認は不可欠。売却を急ぐなら不動産買取や「空き家バンク制度」の活用も有効です。
相続物件は「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」(租税特別措置法41条の5の2)など優遇策もあるため、早めに専門家へ相談すると安心です。
2-1. そのまま売りに出す
建物を現況で売れば追加費用が不要。ただし古さや耐震性の懸念から値下げ交渉を受ける場合もあります。
一方、古民家やレトロ物件は個性を好む買主が見つかることも。売却前の清掃・撤去で印象が大きく変わります。
2-2. 解体して更地にして売る
解体して更地にすれば、建物の負の印象を避け売却は進みやすくなります。
ただし解体費用に加え「住宅用地特例」の固定資産税軽減が外れ、増税の恐れがあるため、費用と価格差を不動産会社に確認し、相場を踏まえて判断が必要です。
2-3. リフォーム・リノベーションして売る
耐震補強や水回り更新などリフォームを行えば物件価値が上がり、買主の安心感も得やすくなります。
一方で費用が価格に反映されず、投資を回収できないリスクもあるため、相場と売却時期を踏まえ慎重に判断しましょう。
2-4. 瑕疵担保保険を付保して売る
古い家は不具合リスクが懸念されます。その際「既存住宅売買瑕疵保険」(住宅瑕疵担保履行法に基づく任意制度)を付ければ、修理費を保険でカバーでき、買主は安心して契約しやすくなります。
2-5. 不動産買取を利用する
不動産会社による買取は現金化が早く、相続物件など早めに処分したい場合に有効です。ただし市場相場より低くなるため、スピードと価格の優先度を明確にして選択しましょう。
2-6. 空き家バンクで売却する
自治体の「空き家バンク制度」(国土交通省指針)を利用すると、地方移住希望者とマッチングできます。仲介手数料が不要な場合もありコストを抑えられます。
ただし地域によって利用者が少なく成約に時間がかかることもあるため、他の売却ルートと併用すると効果的です。
3. 古い家の売却前チェックリスト|法的確認と準備

売却前に物件状態×法的要件を整理しておくと、トラブルと買主の不安を抑制できます。
家財整理や設備チェックは早めに着手。加えて、境界・接道(建築基準法)・再建築可否を資料で確認し、専門家と進めるのが安全となります。
3-1. 家財は撤去しておく
不要物を処分し、空間と躯体の見え方をクリアに。
撤去が難しければ、仲介会社経由で遺品整理・不用品回収・ハウスクリーニングを手配する選択もあります。内覧の印象が整い、交渉も前向きに進みやすくなります。
3-2. 境界・接道の法的確認(建築基準法)
境界があいまいだと、後に隣地とのトラブルに発展する恐れがあります。売却前に測量図や境界確定書を確認し、未確定なら土地家屋調査士へ依頼しておくのが安全です。必要に応じて、筆界特定制度(不動産登記法に基づく)を利用する方法もあります。
接道状況は、再建築や増改築の可否を左右する極めて重要な要素。建築基準法第43条第1項では、敷地は法第42条に定める道路に2m以上接していなければならないとされています。いわゆる接道義務です。
例外として2項道路のセットバックや43条2項の許可制度が適用されるケースもあります。これらをあらかじめ役所や専門家に確認しておくことで、買主への安心材料となり、売却交渉をスムーズに進められます。
3-3. 建物の劣化状況・耐震性能を確認する
古い住宅では、屋根・外壁・基礎などに見えにくい劣化が潜んでいるおそれがあるため、早期の現地調査により、売却時の想定外の修繕コストを抑えやすくなります。
加えて、耐震性能の確認も重要です。特に1981年5月以前に建築確認を受けた「旧耐震基準」の住宅では、「耐震診断」の実施と、必要に応じた補強工事を検討しておくと、買主の安心材料になります。診断結果を開示することで、売却がスムーズに進む可能性も高まります。
3-4. 管理・修繕履歴や設備の状態を調べておく
修繕や点検の履歴が残っていれば、それだけで物件の信頼度が伝わります。過去の手入れ状況が明らかなら、買主も修繕費の目安を立てやすくなるでしょう。
設備面では、給排水や電気配線などインフラ系の不具合をチェック。不備があれば事前に対応しておくことで、売却後のトラブルを防げます。
3-5. 再建築不可なら売り方を慎重に検討する
都市計画法や建築基準法の接道義務を満たさない「再建築不可物件」は、買い手が限られ、価格も下がりやすい傾向にあります。
通常の売却が難しい場合は、買取業者への売却や、リフォーム再販の選択肢も視野に。立地条件が良ければ、用途次第で検討する層も見込めます。買主像を明確にし、不動産会社と連携しながら戦略的に進めることが肝心です。
4. 古い家を売るときの具体的な流れ

古い家を売却する際のステップを、時系列に沿って整理しておきましょう。
まず相場調査と不動産会社の選定からスタートし、査定を比較して媒介契約を結びます。その後、売却活動を進めながら内覧に対応し、買主と合意に至れば売買契約。最後に引き渡しと確定申告を行う流れとなります。
築年数が古い物件は調査項目が多く、売主と不動産会社の連携が不可欠。各段階で書類や補修点をクリアにし、トラブルを未然に防ぎましょう。
4-1. 相場調査と売却スケジュールの立案
まずは周辺相場を調べ、売却期間のおおよその見通しを立てます。国税庁の「路線価」や、近隣の成約事例などを確認して市況を把握しましょう。
売却時期によっては需要が高まるタイミングもあります。繁忙期を狙うなど、逆算してスケジュールを立てると効果的です。相続物件などは、固定資産税や管理コストがかさむ前に、早めの動き出しがおすすめです。
4-2. 不動産会社への査定依頼
複数の不動産会社に査定を依頼すると、価格や販売戦略の違いが見えてきます。古い家ではリフォーム提案や買取対応の可否など、会社によって視点が異なることも。
それぞれの見積もりの根拠や説明が明確かを確認し、信頼できる対応かどうか見極めましょう。曖昧な対応の会社とは媒介契約を結ばない判断も重要です。
4-3. 媒介契約と売却活動の開始
査定に納得できたら、不動産会社と媒介契約を締結します。専属専任・専任・一般媒介の3種類があり、広告や報告義務の違いを理解して選びましょう。
契約後はポータルサイトへの掲載や広告を通じて、買主探しを本格化。築古物件では、耐震性やリフォームの可能性、インフラの状態など、正確な情報を掲載することが信頼につながります。
4-4. 内覧対応と交渉・売買契約の締結
内覧時には清掃や簡易な修繕を済ませておくと好印象に。古さを生かした部分がある場合は、その魅力を具体的に説明すると効果的です。
買主から条件提示や価格交渉が入った際は、不動産会社と相談しながら調整。双方の合意が取れたら売買契約を締結し、手付金の受領や契約書類の作成を進めます。
4-5. 物件の引き渡しと確定申告
契約後は決済日に残代金を受け取り、同時に物件を引き渡します。鍵の受け渡しと名義変更が完了すれば、所有権は買主に正式に移転します。
なお、不動産売却で譲渡益が出た場合は、翌年の確定申告が必要です。3,000万円特別控除などの税制優遇が適用されることもあるため、税務署や税理士への相談を忘れずに。
5. 古い家を放置するリスクと早期売却の必要性

古い家の放置は、固定資産税や安全面など多くのリスクを伴います。特に空き家のまま放置された物件は、管理コストの増加や周囲への悪影響が避けられません。
建物の劣化は年々進行し、修繕費用がかさむ一方で、倒壊リスクも増していきます。買主が現れるうち、あるいは相場が高いタイミングで売却を検討するほうが、長期的に見て得策です。
5-1. 老朽化による倒壊リスク
築年数が進んだ家屋では、基礎や柱などの構造体の耐久性が低下し、地震や台風による倒壊リスクが高まります。万が一事故が発生した場合、人的被害に加え、近隣から損害賠償を請求される可能性も否定できません。
さらに、破損が進行すれば売却は難航し、解体費用だけが発生する事態も。そうなる前に、売却や補修などの選択肢を早めに検討しておくことが重要です。
5-2. 固定資産税や維持費の負担
空き家であっても、所有している限り固定資産税・都市計画税などの税負担は毎年発生します。使わず価値が下がり続ける物件に費用をかけ続けるのは、資産効率の面でも不利といえます。
また、雑草の管理や廃棄物処理など日常的な維持管理も必要です。特に高齢者や遠方に住む相続人にとっては、大きな負担となるケースが少なくありません。
5-3. 近隣トラブルや治安の悪化
空き家は不法侵入や不法投棄の温床になりやすく、周囲の生活環境に悪影響を及ぼすケースがあります。火災や犯罪のリスクが高まることで、地域全体の評判や安全性が損なわれることもしばしばです。
もし近隣から苦情が出た場合、所有者の責任が問われる可能性も。放置することで周囲との関係がこじれる前に、早めに売却や管理方法の見直しを行うほうが得策です。
6. 古い家の売却価格を左右する主なポイント

古い家の売却では、土地条件・建物の状態・法規制が価格に大きく関わります。築古物件では、建物よりも「土地の評価」が重視されやすく、特に再建築可否(建築基準法第43条関係)や駅距離、周辺施設の有無がポイントです。
建物は、メンテナンス状況やリフォーム歴が査定に直結します。加えて建ぺい率・容積率などの制限があると需要が限られ、価格が下がりやすくなります。
6-1. 土地の立地条件と市場ニーズ
駅や幹線道路へのアクセスが良ければ、築年数にかかわらず高値がつく傾向があります。利便性の高さは、将来の資産価値としても評価されるためです。
一方、郊外や人口減少地域では需要が薄く、売却に時間がかかることも。都市部と地方では市場構造が異なるため、地域に合った価格戦略が求められます。
6-2. 建物コンディションと修繕の要否
老朽化していても、屋根・外壁・水回りが手入れされていれば印象は良くなります。逆に大規模修繕が必要な物件は、価格交渉の材料にされがちです。
耐震補強や水回りの更新済み物件は、安心感があり、価格面でも有利になる場合があります。修繕の実施は費用対効果を見極めて判断しましょう。
6-3. 再建築不可や用途制限の有無
再建築不可(建築基準法43条)の土地は利用に制約があり、買い手が限られます。価格も下がりやすいため注意が必要です。
一方、建築制限が緩い地域ではリフォームや増築が可能で、需要が高まりやすくなります。また**用途地域(都市計画法)によっては建物の種類に制限があるため、売却前に自治体で確認し、買主へ正確に伝えることが重要です。
7. 売却時にかかる税金と費用の基礎知識

不動産売却では、価格だけでなく譲渡所得税や仲介手数料などの諸経費も見落とせません。築年数にかかわらず、売却時には各種税金が発生します。
とくに譲渡所得税・印紙税は金額に応じて変動するため、事前に大まかな概算を把握しておくことが重要です。
また、仲介手数料・解体費・リフォーム費などを考慮しないと、実際の手取り額に大きなズレが生じる可能性も。全体のコストを見積もったうえで売却戦略を立てれば、不意の出費にも冷静に対応できます。
7-1. 譲渡所得税と住民税
不動産売却で生じる利益は譲渡所得とされ、所得税(国税)・住民税(地方税)が課税されます。所有期間が5年超であれば「長期譲渡所得」となり、税率は所得税15%+住民税5%と優遇されます。
これに対し5年以下の短期譲渡では、合計税率が約39%となり、負担が重くなります。売却時期によって税負担は大きく変わるため、税理士や不動産会社と相談して最適なタイミングを見極めましょう。
7-2. 印紙税、登録免許税、仲介手数料
売買契約書には印紙税がかかり、契約金額に応じて税額が増加します。
また、登記費用として登録免許税(不動産登記法)も発生。名義変更の手続き時に必要です。不動産会社に仲介を依頼した場合は、宅地建物取引業法に基づく仲介手数料がかかります。上限は「売買価格の3%+6万円+消費税」が一般的な目安です。
7-3. 解体費やリフォーム費など関連費用
古い家を解体して更地にする場合、規模によっては数十万〜数百万円の費用がかかります。
一方、売却前にリフォームを施す場合は、その費用を価格に反映できるかが重要です。市場がリフォーム費上乗せを許容しない場合、かえって負担が増えるリスクも。投資と回収のバランスを見極めたうえで判断しましょう。
8. 古い家を売るときに活用できる税制優遇・控除

古い家の売却でも、一定の条件を満たせば税制上の控除や減税を受けられる可能性があります。
なかでも代表的なのが、居住用財産の3,000万円特別控除。そのほか、相続空き家や低未利用地を対象とした特例もあり、譲渡所得税が大きく軽減されるケースもあります。
ただし、これらの制度は適用条件が細かく、必要書類も多いため、必ず事前に確認を。
8-1. 居住用財産の3,000万円特別控除
自宅を売却する際一定条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。所有期間や居住実績などが主な要件で、課税対象が大きく減るため節税効果は高め。
ただし、同一控除は1回限りなどの制限があり、再度の適用には注意が必要です。
8-2. 相続した空き家の3,000万円控除
1981年以前の旧耐震基準で建てられた空き家を相続し、売却する場合にも特例が適用されます。
解体後の更地売却や耐震リフォーム後の売却などが主な条件で、要件を満たせば3,000万円の控除が可能です。手続きを誤ると対象外になるため、事前確認と早めの準備が肝心です。
8-3. 低未利用地等を売却したときの100万円特別控除
使い道のない土地(低未利用地)を売却した場合、条件により最大100万円の特別控除を受けられる制度もあります。空き家・遊休地の活用促進を目的とした施策で、地域活性化にも資する制度です。
ただし、自治体の認定や提出書類が必要な場合が多く、手続きは慎重に。控除適用には細かな要件をすべて満たす必要があるため、確認と準備は必須です。
9. 古い家を高く売るための工夫とコツ

古い家でも工夫次第で印象や付加価値を高めることができ、査定額や買主の反応を引き上げられます。
一見デメリットの多い古家でも、リフォームやホームインスペクションの実施により買主の不安を軽減し、安心感につなげられます。
さらに、地域に強い不動産会社の活用や、市場の動きを見た価格設定・売り出し時期の調整も重要です。こうした工夫の積み重ねが、結果的に高値売却や早期成約につながります。
9-1. ホームインスペクションの実施
ホームインスペクション(建物診断)を行えば、劣化状況や修繕の必要性が明確になり、客観的な安心材料として買主に提示できます。
費用は数万円程度が相場ですが、築年数が古いほど不安の軽減効果が大きく、費用対効果は高めです。診断結果を活用すれば、取引の信頼性が上がり、売却までの時間短縮にもつながります。
9-2. 軽微なリフォーム・クリーニングで印象アップ
小規模なリフォームやクリーニングでも、買主の印象を大きく改善可能です。
特に水回り(キッチン・浴室・トイレ)は清潔感が重視されやすく、重点対応が効果的。中古住宅では第一印象が成約を左右します。清掃や軽い修繕を施すだけでも「手入れされた物件」と評価され、価格交渉の余地を減らせることもあります。
9-3. 市場動向に合った売り出し時期と価格設定
不動産市場は経済状況や季節要因で変動します。たとえば春先は新生活需要が高まり、購入希望者も増える傾向に。
売却時は、周辺の相場や競合物件数を確認し、売り出しタイミングを戦略的に選ぶことが重要です。価格は高すぎると敬遠され、安すぎると損をするため、相場とのバランスが鍵となります。
9-4. 地元に強い不動産会社の選定
地域密着型の不動産会社は、地元の市場や買主ニーズを熟知しており、販売戦略の精度も高め。なかには地元投資家とのネットワークを活用できる業者もあります。
また、古家の魅力をどうアピールするかは担当者の提案力に左右される部分も大きいため、成約事例や査定根拠を丁寧に説明できる会社を選ぶと安心して進められます。
10. 古い家を解体して売る場合の注意点

古い家を更地にして売却する場合、解体費や税制面での影響を理解した上で進める必要があります。たしかに、見た目の良さやリフォーム不要といったメリットから、売れやすくなるケースはあります。
しかし一方で、先行コストや固定資産税の増加など、慎重な検討が必要な要素も多くあります。
10-1. 解体費用と更地での評価額
解体費は建物の構造・大きさ・地域相場によって異なります。木造住宅でも数十万円、鉄骨造やRC造になるとさらに高額になることも。
そのため、複数業者からの相見積もりを取り、地盤調査や廃材処分費まで含めて確認しましょう。更地になることで建物の減価要因がなくなり、土地本来の評価が上がることもありますが、
必ずしも解体費用を回収できるとは限りません。不動産会社と相談の上、総合的に判断を。
10-2. 固定資産税が上がる可能性に注意
建物がある住宅用地には、固定資産税の軽減措置が適用されています。
しかし、解体して更地にするとこの特例が外れ、税額が3〜6倍になることもあります。さらに売却が長引けば、増税後の税負担も長期化します。
そのため、解体のタイミングを誤ると、トータルの負担が増える可能性があるのです。
10-3. 解体のタイミングと買主のニーズ
すべての買主が更地を望むわけではありません。
自分でリノベーションを希望する買主もおり、その場合は解体しない方が高く売れるケースも。市場や周辺物件の状況を見ながら、不動産会社と相談し、「解体する・しない」どちらが有利かを事前に見極めることが大切です。
11. リフォームやリノベーションをして売るときのポイント

古い家でも、リフォームやリノベーションにより魅力を高めることができますが、重要なのはその費用と回収のバランス。
過剰な投資をしても相場以上の価格で売れるとは限らないため、見積もりと市場調査は欠かせません。特に買主にとって安心につながる耐震・断熱の改修はプラス材料となりやすく、場合によっては住宅ローン減税や瑕疵保険といった制度の活用も検討しましょう。
11-1. 費用対効果を吟味する
リフォーム費用がかさみすぎると、売却後の収支が赤字になる可能性も。
特に大規模リノベーションは高額になるため、費用と売価のバランスを事前に確認することが重要です。一方、水回りや内装などの部分的リフォームであれば、清潔感・安全性を重視する買主層にアピールしつつ、コストも抑えられます。
また、買主が自分でリフォームできる余地を残す方が好まれることもあります。
11-2. 耐震・断熱リフォームは買主の安心材料
日本は地震が多く、耐震補強は強力なセールスポイント。築古物件の不安要素を取り除くことで、購入判断を後押しできます。
さらに、断熱性能の改善は省エネや住み心地向上にもつながり、特に寒冷地や湿度の高い地域では付加価値として高く評価されやすい改修です。
11-3. リフォームと既存住宅瑕疵保険の活用
リフォームの際に既存住宅瑕疵保険を付保すれば、構造部や設備の不具合に対応でき、買主に安心感を提供できます。
加入には検査・書類提出が必要で、工事と同時に実施するケースが一般的。条件を満たせば、買主が住宅ローン減税を受けられる可能性もあるため、事前に不動産会社や保険会社と相談しておくのがスムーズです。
12. 賃貸運用と売却、どちらがお得か比較する

古い家を売却せずに賃貸として活用するか、売却して現金化するか、状況に応じて選択肢を比較しましょう。
物件を所有し続けて家賃収入を得るか、一括で現金化してほかの資産運用に回すかは、それぞれに利点があります。古い家の場合、修繕コストや空室リスクを考慮すると、賃貸経営が必ずしも安定収益を生むとは限りません。
一方で早期に売却すれば、固定資産税や管理コストから解放され、新たな投資や生活資金に充てることができます。家族構成の変化やライフステージに合わせて最適な判断をすることが大切です。
12-1. 古い家を貸すメリット・デメリット
賃貸に出す最大のメリットは、継続的な家賃収入を得られる点です。立地が良ければ、安定した需要も期待できます。
ただし、築年数が古いと修繕費が増加しやすく、空室やトラブル対応の手間もかかります。実際の収益性は、管理や維持コストとのバランスを見極めて判断しましょう。
12-2. 維持・修繕コストと収益性
古家は年数が経つにつれ、水回り・屋根・外壁などの修繕が必要になる頻度が上がります。時期が重なれば、家賃収入でカバーしきれないリスクも。
さらに、他物件と比較して老朽化が目立つと、家賃を下げざるを得ないこともあります。長期的な収支シミュレーションを行い、実現可能な利回りを事前に把握することが重要です。
12-3. 売却すべきタイミングと判断基準
相続、家族の独立、老後の資金確保など、売却を検討すべきタイミングは必ずやってきます。その際、修繕費や固定資産税などの負担を改めて評価し、早めに現金化する方が合理的な場合もあります。
また、地価が上昇中のエリアでは、売り時を逃さない動きが必要です。判断には、不動産市場の動向とライフプランの両面から冷静に検討する視点が欠かせません。
13. 不動産会社選びのポイント

古い家を売却する際は、地域事情に精通し、売却実績がある会社を選ぶことが成功への近道です。古家には法的制限や耐震性など独自の課題があるため、不動産会社の知識と経験が結果を左右します。
また、媒介契約の内容や査定の根拠、担当者との相性なども確認が必要です。複数社に相談し、比較検討することで、より納得のいく取引が可能になります。
13-1. 複数の会社から査定を取る重要性
1社だけの査定では相場を見誤るリスクがあります。複数社に依頼すれば、異なる視点や価格差から物件の妥当な価値を把握しやすくなります。
なお、高額査定を出す会社が必ずしも優れているとは限りません。根拠のない金額提示は売れ残りの原因にもなるため、説明内容や実現性を要チェックです。
13-2. 地域密着型か大手か、特徴の見極め方
不動産会社にはそれぞれ特徴があります。地域密着型は、地元客とのネットワークや柔軟な対応力が強み。
一方、大手はブランド力と広域集客力に優れており、物件によっては広範囲へのPRが可能です。古い家は地域事情やリフォーム需要など個別性が高いため、地元に強い会社が有利に働く場面も少なくありません。
13-3. 媒介契約の種類とメリット・デメリット
媒介契約には主に3種類あり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
・専属専任媒介:1社のみと契約。手厚いサポートと報告義務があるが、他社への依頼不可。
・専任媒介:1社のみの契約だが、売主自身が買主を見つけるのはOK。
・一般媒介:複数社と契約可能で広範囲の宣伝が期待できるが、進捗管理や情報共有が煩雑になりがち。
契約スタイルは、売却スピード・情報管理のしやすさ・広告戦略などに応じて選びましょう。
14. トラブルを防ぐためのポイント

古い家の売却では、売却後のクレームや近隣トラブルを防ぐために、事前の準備と正確な情報開示が欠かせません。
特に古家は不具合が出やすく、後からトラブルになるリスクが高いため、契約書による責任範囲の明確化も重要です。
境界や物件状況、過去の修繕履歴など、事実を正確に伝えることがスムーズな取引の前提です。不安や疑問は放置せず、不動産会社と連携しながら事前に解消しておくことが安心につながります。
14-1. 物件状況や告知事項は正直に伝える
シロアリ被害や雨漏りといった既存の不具合を隠すと、後で発覚した際に大きなトラブルとなる可能性があります。売主としての告知義務を果たすのは円滑な取引の基本。
たとえ小さな不具合だと思っていても、瑕疵担保責任が問題になるケースは多々あります。誠実に情報を提供することで買主の信用を得やすく、スムーズに契約へ結びつきやすいでしょう。
14-2. 引き渡し時の修繕範囲を明確にする
修繕の有無や範囲、費用の負担者を売買契約書に明記しておかないと、「ここは直ってないの?」「誰が直すの?」といったクレームの原因になりがちです。
古家では想定外の修繕が必要になることも多いため、契約前に合意を取り付けることが必須です。
14-3. 仲介会社と密に連絡を取り合う
売却活動の途中で出てくる疑問点や予定変更は、その都度仲介会社に共有しましょう。
情報共有が不足すると、認識違いによるトラブルや交渉ミスにつながります。仲介会社も状況を把握していれば、内覧時の対応や交渉サポートを的確に行えます。
こまめなやりとりが、安心できる売却の決め手になります。
15. まとめ・総括
古い家の売却を成功させるには、事前準備と信頼できる不動産会社のサポートが欠かせません。物件の状態や立地、買主ニーズを踏まえたうえで、最適な売却戦略を立てることが重要です。築古物件には、リフォーム・解体・空き家バンクの活用など、多様な選択肢があります。
また、耐震性や再建築可否といった要素が査定額や売却スケジュールに大きく影響するため、早めに調査を行い、売却方針を明確にしておくことが賢明です。
さらに、税制優遇や補助金の活用次第で手取り額が大きく変わる場合もあるため、専門家に相談しながら、全体の収支を見通したうえで判断しましょう。
最後に、正直な情報開示・適正価格の設定・不動産会社の選定が、古い家の売却を成功に導く3つの重要ポイントです。ひとつひとつ丁寧に対応すれば、安心かつ納得のいく取引が実現できます。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。