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公開日:2025.11.19 更新日:2025.11.14

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瑕疵担保責任とは?不動産取引で押さえておきたいポイントや契約不適合責任との違い

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不動産の売買では、引き渡し後に「雨漏りがあった」「配管が壊れていた」など、想定外の不具合が見つかることがあります。このような場合に論点となるのが、売主が欠陥や不備に対して責任を負うべきか否かという点です。

この点を整理するための制度が、2020年4月の民法改正まで運用されていた旧制度の「瑕疵担保責任」です。瑕疵担保の考え方は現行制度である「契約不適合責任」に引き継がれています。

この記事では、これから住宅を購入・売却する方、不動産取引に関わる方に向けて、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いを踏まえながら、制度のポイントをわかりやすく解説します。

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)の概要

瑕疵担保責任とは、売却された不動産に、買主が知らず、かつ知ることができなかった欠陥や不備である「隠れた瑕疵」があった場合に、売主が負う責任のことです。たとえば、引き渡し後に発覚する雨漏りや基礎のひび割れ、配管の不具合などが挙げられます。

ただし、この制度は2020年の民法改正によって廃止され、現在は「契約不適合責任」という新たな制度に移行しています。これによって判断基準が「欠陥の有無」から「契約で合意した内容に適合しているか」へと改められました。

瑕疵担保責任の責任範囲

瑕疵担保責任の責任範囲は無制限ではありません。買主にも一定の注意義務があり、引渡し時に既に知っていた、または通常の注意で容易に認識し得た不具合については、請求が制限されることがあります。

たとえば、契約時に通常は予測できない「隠れた不具合」は責任範囲に含まれても、内覧時に説明を受けている場合は対象外になる可能性が高いです。また、外壁の汚れや経年劣化など、時間の経過によって自然に生じる損耗は原則として対象外とされます。

瑕疵担保責任の有効期間

旧民法における瑕疵担保責任では、買主は瑕疵を発見してから1年以内に売主へ解除や損害賠償の権利を行使する旨を通知する必要がありました。通知がないままこの期間を過ぎた場合、修補や損害賠償の請求権は消滅します。ただし、売主が瑕疵を知りながら黙秘した場合は通知期間の制限は適用されません。

また、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は、原則として引き渡しから10年で時効により消滅するとされていました。

不動産取引における「瑕疵」の種類

建物における瑕疵は、大きく以下の5種類に分類されます。

  • 物理的瑕疵
  • 法律的瑕疵
  • 心理的瑕疵
  • 環境的瑕疵
  • 権利的瑕疵

どの瑕疵に該当するかによって、売主が負う責任や買主がとれる対応が変わってきます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、建物や土地そのものに欠陥がある状態を指します。たとえば、雨漏りやシロアリ被害、基礎のひび割れ、配管の劣化などがこれに該当します。

物理的瑕疵は、一つの瑕疵で生活の安全や快適性を大きく損ねる可能性があり、さらに多額の修繕費用が必要になるケースもあります。特に中古住宅を購入する場合は、専門家によるホームインスペクション(建物状況調査)を実施し、状態を把握しておきましょう。

法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、法令や規制によって不動産の利用や建築が制限されている状態をいいます。たとえば、建築基準法の接道義務を満たしていない土地や都市計画法の用途地域による建築制限で希望通りの用途が立てられない土地、増改築ができない違法状態な建築物などが該当します。

これらの瑕疵は致命的な問題になることもありますので、購入を検討する際には、必ず自治体の窓口で関係法令を問い合わせ、将来の建て替えや活用に支障が出ないかを確認しましょう。

心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、物件の過去や周辺状況に心理的な抵抗を感じさせる要因がある場合を指します。たとえば、過去に自殺や殺人、火災などの事故が発生した物件や、近隣住民との深刻なトラブルがある場合などが該当します。

心理的瑕疵は、建物自体に欠陥がなくても購入判断や資産価値に大きな影響を及ぼす点が特徴です。なお、売主や仲介業者には「告知義務」があり、過去の事故やトラブルを意図的に隠して売却した場合には、損害賠償責任を問われる可能性があります。

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、物件周辺の環境要因によって生活や利用に支障が生じる状態をいいます。たとえば、騒音・悪臭・振動・地盤沈下・日照の不足・洪水や液状化リスクなどがこれに該当します。

環境的瑕疵の特徴は、建物自体に欠陥がなくても周辺環境が原因で生活の快適さや資産価値が損なわれることです。たとえば、近隣の工場による騒音や悪臭、夜間営業施設の明るさ・人の出入り、交通量の多い道路からの振動など、周囲の状況によっては居住環境に大きな影響を及ぼすことがあります。

権利的瑕疵

権利的瑕疵とは、不動産の所有権や利用権に関する法的問題がある状態を指します。たとえば、抵当権や地上権など第三者の権利が設定されており、買主が自由に所有権を行使できないケースがこれに該当します。

また、相続登記が未了で所有者が確定していない場合や、土地の境界確定がされていない場合などもあります。権利は目に見えないものなので、契約前に登記事項証明書や測量図を確認し、所有関係や権利関係を明確にしておくことが重要です。

契約不適合責任への改正に伴う主な変更点

2020年の民法改正により、買主の権利や売主の責任のあり方は大きく変わりました。従来の「瑕疵担保責任」と比べて、契約不適合責任は範囲が広く、救済方法も多様化しています。

ここでは、改正に伴う主な変更点として、以下の4点を見ていきましょう。

  • 基本的な性質の変化
  • 責任範囲と期間
  • 買主の責任追及手段
  • 損害賠償の範囲

基本的な性質の変化

契約不適合責任の最大の特徴は、従来の瑕疵担保責任が「欠陥の有無」に焦点を当てていたのに対し、契約不適合責任では「契約に適合した内容を実現できているか」が責任判断の基準となった点です。

この変化により、問題が「物件に欠陥があるかどうか」から、「契約で定めた品質・性能・状態に達しているか」へとシフトしました。つまり、契約書に記された内容こそが判断の軸となり、合意した条件に不一致があれば、売主の責任が問われる可能性があるということです。

責任範囲と期間

瑕疵担保責任では責任範囲が「瑕疵」に該当した場合に限定され、買主が瑕疵を知ったときから1年以内に責任追及の権利を行使する必要がありましたが、改正後は「契約内容に適合しない部分」が対象となり、買主は不適合を知ったときから1年以内に売主へ通知すれば、責任追及の権利が5年または10年付与されることとなりました。

この通知を行っていれば、その後1年を経過しても、時効が完成するまでは修補請求や代金減額請求などの権利を行使できます。つまり、発見が遅れても迅速に通知をすれば、買主の救済が認められやすくなったのです。

買主の責任追及手段

従来の瑕疵担保責任では、損害賠償の対象が主に「信頼利益(契約締結のためにかかった費用)」に限定されていましたが、改正後は「履行利益(契約が履行されていれば得られたはずの利益)」まで補償範囲が拡大しました。

それぞれの概要は以下のとおりです

  • 追完請求:売主に対し、不適合部分の修補を求める制度
  • 代金減額請求:売主が追完に応じない、または修補が不可能な場合に、代金を相当額減額できる制度
  • 損害賠償:売主に帰責事由(故意または過失)がある場合に、契約不適合によって発生した損害を請求できる
  • 契約解除:追完請求や代金減額請求では目的を達成できない場合に、契約を解除できる制度

このように、契約不適合責任では、買主が状況に応じて段階的に手段を選べる仕組みが整いました。特に追完請求と代金減額請求の導入により、契約関係を維持しながら問題を解決できる柔軟な制度へと進化しています。

損害賠償の範囲

契約不適合責任における損害賠償は、旧制度よりも広い範囲の損害を対象としています。従来の瑕疵担保責任では、賠償の対象は「信頼利益(契約締結のためにかかった費用)」に限られていましたが、改正後は、対象範囲が「履行利益(契約が履行されていれば得られたはずの利益)」まで拡大しました。


たとえば、転売目的で購入した不動産に重大な不適合が見つかり、予定していた転売ができなくなった場合、買主はその得られたはずの利益(転売益)を損害として請求することが可能となります。

購入した物件に契約の内容に適合しない部分があったら

購入後に物件の不具合や欠陥が見つかり、それが契約内容と異なる場合には、まず記録と証拠を残し、以下の手順に沿って対応を進めていきましょう。感情的にすぐ電話をしてしまうと、相手との言い合いになってしまう可能性があるので、状況をしっかり記録してから冷静に進めていくのがポイントです。

  • 不具合の内容を確認・記録する
  • 契約書・重要事項説明書の内容を確認する
  • 売主・仲介業者に通知する(書面推奨)
  • 追完請求・代金減額・損害賠償などの手段を選択する
  • 必要に応じて専門家へ相談する

ここで特に注意したいのが、通知のタイミングと証拠の確保です。契約不適合責任は、契約不適合を知ったときから1年以内に通知しなければ、法律上の請求権が消滅してしまいます。


また、契約内容を再確認して「どの範囲までが売主の説明責任だったのか」を明確にしておくことも大切です。

そのうえで写真や修繕見積書などの客観的資料を残しておき、交渉の際に自分の主張できる体制を整えておきましょう。


なお、売主に過失がある場合とそうでない場合では、請求できる内容が大きく異なるため、 迷ったら早めに宅建士や弁護士などの専門家へ相談すると安心です。

売却した物件に契約不適合責任を追及されたら

売却した後に買主から「契約内容と異なる不具合がある」と指摘を受けた場合は、すぐに非を認めたり感情的に反論したりせず、まずは以下の手順に沿って冷静に対応しましょう。契約不適合責任は、買主の通知方法や証拠の有無、契約書の記載内容など、細かな条件によって成立の可否が左右されるため、事実確認が何より大切です。

  • 買主からの通知内容を確認する
  • 契約書・付帯設備表・重要事項説明書を確認する
  • 不具合の現状を現地で確認する(必要に応じて専門家に依頼)
  • 修補や代金減額などの対応方針を検討する
  • 書面での回答・交渉記録を残す

まず行うべきは、通知の根拠と不具合の内容を正確に把握することです。買主の主張が実際に契約不適合にあたるのかを判断するため、契約書の「引き渡し条件」や「免責特約」の有無、付帯設備表の記載を確認しましょう。

また、現地確認を行う際は、買主立ち会いのもとで写真や専門家の診断結果を残しておくと、後の責任範囲の判断や損害額の算定がスムーズになります。

また、修補や減額に合意した場合は、合意書やメールの記録を残し、最終的な条件を明確にしておきましょう。こうすることで後から「言った言わない」のトラブルを防げます。

まとめ・総括

瑕疵担保責任は、不動産取引において長く「売主の責任のあり方」を定めてきた重要な制度です。物件に隠れた欠陥があった場合でも、買主が救済を受けられる仕組みを整え、取引の公正を支えてきました。

2020年の民法改正により「契約不適合責任」へと姿を変えましたが、その根底にあるのは「売主が引き渡す物件の品質や状態に責任を持つ」という瑕疵担保の考え方です。

不動産の売買は一度の判断が大きな金額に直結します。売買を行う際には契約書の内容や説明事項を丁寧に確認し、それでも瑕疵が見つかった場合は、慌てずに通知の期限や証拠の記録を確認してから専門家へ相談しましょう。問題が見つかったときこそ、 正しい手順を踏むことが、無用なトラブルを防ぐポイントになります。

この記事の監修者

山下 航平 アキサポ 空き家プランナー

宅建士/二級建築士

ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。

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