公開日:2025.12.25 更新日:2025.12.17
NEW戸建投資の完全ガイド|初心者が知っておきたい基礎知識と成功へのステップ
「不動産投資に興味はあるけれど、アパート一棟を買うほどの資金はない」。そんな悩みを抱える人が、最初の一歩として選びやすいのが「戸建て投資」です。中古の一軒家なら数百万円台から選択肢がありますし、少ない自己資金でも始められます。
しかし、修繕リスクや入居需要の見極めなどのポイントを押さえておかないと、想定よりも収益が上がらずに失敗してしまう恐れがあります。
そこでこの記事では、戸建て投資の仕組み・メリット・デメリットから物件選び、出口戦略までを体系的に整理して紹介します。失敗を避けつつ着実な運用を目指すために、まずは基本から確認していきましょう。
目次
戸建て投資とは?基本の仕組みと需要の現状

戸建て投資は、購入した一軒家を賃貸に出して家賃収入を得る不動産投資手法です。マンションやアパートに比べて少額から始めやすく、土地付き資産として長期的な安定収益を狙える点が特徴で、リフォームの工夫次第で家賃を引き上げたり、古い物件でも付加価値を高めて運用できたりする点から人気を集めています。
特に地方や郊外では、低価格帯の物件を活用して高利回りを目指す戦略も広がっており、空き家の増加を背景に、古い住宅を再生して貸し出す「空き家活用型の戸建て投資」も注目を集めています。
戸建て投資が注目される理由
戸建物件が注目される背景には、ファミリー層を中心とした安定した需要の高さがあります。さまざまな場所で需要があるため、郊外や地方でも収益を上げることができ、最近はリモートワークや地方移住の広がりによるニーズの高まりにも後押しされています。
また、相続によって空き家を引き継ぐ人が増えていることも、戸建て投資が注目される背景のひとつです。
高齢化の進行とともに、使われなくなった実家や祖父母の住宅を相続するケースは増え続けており、その解決策の一つとして、実家を活用する動きが広がっています。長期間貸し出すことができれば、家賃で固定資産税や維持コストをまかないつつ、実家を保有し続けられるため、一石二鳥の解決策になるわけです。
戸建て投資に向いている人は?

戸建て投資は、大きな借入をしてリスクを取るよりも、少額から堅実に資産を積み上げたい人に向いている投資です。地方や郊外の物件は価格が手頃で、中古戸建や空き家を活用すれば、少ない自己資金でも家賃収入を得るチャンスがあります。
戸建て投資は給湯器や壁紙の交換など、細かなメンテナンスが発生するため、管理業務をコツコツと行える人が成果を出しやすい傾向にあります。完全放置で収益を得たい人には不向きですが、手間を惜しまない人ほど物件の価値を維持しやすく、安定収益を得やすいでしょう。
また、戸建て投資は借主との距離が近いため、人とのつながりを大切にできる人にも向いています。これは物件を探す際も同様で、不動産会社や工務店、自治体の空き家バンクなどから積極的に情報を集められる人ほど、良い物件に出会える確率が高まります。
戸建て投資のメリット
ここからは戸建て投資のメリットを見ていきましょう。戸建て投資は、オーナー自身の判断で運用方針を決められたり、物件の個性やエリア特性を活かした柔軟な経営ができたりと、自由度が高いのが特徴ですが、それだけでなく、運用の安定性においても以下のようなメリットがあります。
- 比較的少額から始められる
- 長期間入居してくれる場合が多い
- 売却や活用の幅が広い
では、これらのメリットからどのような効果が見込まれるのでしょうか。具体的な内容を見ていきましょう。
1. 比較的少額から始められる
意外かもしれませんが、戸建て投資は、まとまった資金がなくても始めやすい投資として知られています。土地付き戸建というと高額なイメージがありますが、都市部を少し離れた地域なら1,000万円以下や数百万円台の物件も見られます。特に築古の戸建は価格が抑えられやすく、上手くリフォームをすれば高利回りの物件へと生まれ変わらせる可能性が高まります。
また、戸建は駅からの近さよりも「駐車場の有無」が重視されるケースが多く、駅から離れたエリアでも、車移動を前提としていれば十分な需要を確保できます。安価な物件を狙って購入し、駐車スペースを確保するだけでも家賃設定の自由度が上がり、効率的な運用を実現しやすくなります。
2. 長期間入居してくれるケースが多い
戸建て物件は、ファミリー層を中心に長く入居してくれる傾向があります。特に、子どもの学校や地域コミュニティとの関係が生まれると、転居のハードルが上がるため、高校入学のような区切りのタイミングが来るまで住み続けるケースが多いです。
長期入居が続けば、空室による収益のブレが少なくなり、安定したキャッシュフローを維持できます。加えて、長く住んでくれる入居者は物件を丁寧に扱う傾向があるため、物件の消耗を抑え、修繕リスクの軽減にもつながります。
3. 売却や活用の幅が広い
戸建物件は、出口戦略の選択肢が多いことも大きな魅力です。賃貸として運用した後に個人へ売却することもできますし、リフォームしてセカンドハウスや民泊・店舗などへ転用することも可能です(※)。
また、土地付き資産としての価値が残るため、保有中も活用の幅が広く、ライフステージの変化に合わせて柔軟に運用方法を変えられます。こうした「売る・貸す・使う」の選択肢を持てる点が、戸建て投資の最大の強みと言えるでしょう。
※民泊や店舗への転用は、都市計画法や建築基準法、消防法、旅館業法や各自治体の条例などの法令制限を遵守する必要があります。具体的な可否や必要な手続きは、必ず自治体や専門家に確認しましょう。
戸建て投資のデメリット

戸建て投資は一見すると手堅い投資方法のように見えますが、一方で、想定外の出費や空室期間の長期化など、運用面での負担が生じやすい弱点もあります。
そこでここでは、戸建て投資を始めるうえで必ず把握しておきたい以下の3つのデメリットを紹介します。
- 修繕やリフォームにコストがかかりやすい
- 入居需要の見極めが難しい
- 資産拡大のスピードが遅い
修繕やリフォームにコストがかかりやすい
戸建て投資でもっとも注意したいのが、修繕・リフォーム費用の負担です。これらの費用は基本的にオーナー負担で、外壁・屋根・配管などの範囲が広い場所を対応する場合、想定以上に高額になることもあります。
代表的な箇所の修繕・リフォーム費用相場は以下のとおりです。
- 屋根や外壁の塗り替え:50万〜200万円前後
- 給湯器や水回り設備の交換:10万〜30万円程度
- 内装の張り替えや修繕:~数十万円程度
いくら物件価格が安くても、修繕とリフォームで費用が膨らんでしまっては本末転倒です。購入時には「物件価格+修繕予算」をセットで考え、さらに定期的に修繕積立を行っておきましょう。
入居需要の見極めが難しい
戸建賃貸はファミリー層を中心とした需要がある一方で、周辺環境や交通の便によっては入居が決まりにくいこともあります。たとえば、学校やスーパーが遠い・バス本数が少ないといった立地では、家賃を下げても入居者が見つかりにくい傾向がありますし、同じエリアに新築の分譲住宅や築浅賃貸が増えると、競合物件に埋もれてしまうリスクもあります。
このように、需要を読み違えると空室期間が長引き、利回りが低下する原因になってしまいます。そのため、戸建て投資を始める前に以下の点を確認しておきましょう。
- 近隣の人口動態や家族世帯の割合
- 学区・商業施設・医療機関など生活利便性の有無
- 将来的な再開発計画やインフラ整備の予定
資産拡大のスピードが遅い
戸建て投資は1棟単位で取得・管理を行うため、アパートのように複数戸をまとめて所有するスケール感がありません。その分、収益を積み上げるスピードがゆるやかになりやすく、短期間で資産を増やしたい人には向いていません。
スピード感やスケールメリットを重視するなら、アパート経営や一棟マンション投資の方が適しています。
戸建て投資はむしろ、着実に資産を育てていく「堅実型」の投資スタイルです。時間を味方につけ、長期的な安定収益を積み重ねていく姿勢が求められます。これが、中古戸建て投資の最大の魅力ともいえます。
戸建て投資は新築と中古、どちらを選ぶべき?

戸建て投資で新築と中古のどちらを選ぶか迷ったときは、以下の基準を意識して考えると判断しやすくなります。
- 資金力や融資条件:融資が通りやすく手堅いのは新築。少額で始めたいなら中古
- 運用スタイル:長期で安定収入を重視するなら新築。短期で利回り重視なら中古
- リスク許容度:手間を抑えたいなら新築。手間をかけて収益を伸ばしたいなら中古
ここで大切なのは、両者を単純に優劣で比べるのではなく「自分の目的にどちらが合うか」を軸に考えることです。これらの点を踏まえたうえで、改めて新築と中古のメリット・デメリットを見比べてみましょう。
新築物件の特徴とメリット・デメリット
新築物件の最大の魅力は、初期トラブルが少なく、入居者が見つかりやすいことです。最新の設備や耐震基準を備えているため、購入直後から安心して運用を始められますし、入居者にとっても新築というだけで印象が良く、広告効果が高いという強みもあります。
新築物件の主なメリット
- 入居付けがしやすく、空室リスクを抑えられる
- 修繕費がほとんどかからず、管理コストが低い
- 資産価値が下がりにくく、売却しやすい
一方で、物件価格が高く利回りが下がりやすい点には注意が必要です。投資回収には時間がかかるため、長期保有を前提とした安定運用に向いています。
中古物件の特徴とメリット・デメリット
中古戸建の魅力は、購入価格の安さとリノベーションによる付加価値にあります。築古物件であっても、リノベーションの方針やブランディング次第で家賃を上げたり、購入費を抑えて高い利回りを狙うことができます。
中古物件の主なメリット
- 初期費用を抑えやすく、少額から始められる
- リフォーム次第で物件価値を上げられる
- 空き家再生などの社会的意義もある
一方でデメリットとなるのが、修繕コストや融資の受けにくさなどです。戸建て住宅は築年数が古いほど金融機関の評価が下がりやすく、担保としての価値が低く見られる傾向にあります。中古物件を扱うなら自己資金が多めに必要になると考えておきましょう。
戸建て投資を成功させるためのポイント

戸建て投資で成功するかどうかは、最初の物件選びにかかっています。どれだけ資金計画やリフォームを工夫しても、需要の少ない立地や法的リスクのある物件を選んでしまうと、収益化は難しくなります。
そこでここでは、初心者でも失敗しにくい物件を見極めるための3つのポイントを紹介します。
現在と将来の需要を見極める
まず重視すべきは、入居需要が継続するエリアかどうかです。人口が増えている地域や再開発が進むエリアでは、長期的な賃貸需要が見込めますが、一方で、人口減少や高齢化が進む地域では、空室リスクが高くなる傾向があります。
比較的安定した需要が期待できるエリアの特徴として、次のような条件をチェックしておきましょう。
- 駅やバス停から徒歩15分圏内
- スーパーや病院、学校などの生活施設が近い
- 子育て世帯が多く、地域コミュニティが活発
特にファミリー層向け物件の場合は「学区の評判」や「治安の良さ」も重要です。家賃相場だけでなく、住環境全体を踏まえてエリアを選びましょう。
建物の安全性と法令適合性をチェックする
中古戸建てを購入する際は、安全性の観点から必ず耐震性と法令適合性を確認しましょう。特に、1981年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震建築物か、それより後に建築確認を受けた新耐震基準かという点です。
旧耐震の建物は建築基準法の旧耐震基準に基づいて設計されており、現行の新耐震基準である震度6強〜7程度で倒壊・崩壊しないことを想定していません。また、耐震性が確認できない建物は、金融機関のローンの適合基準を満たさず、融資が受けられない可能性もあります。
また、建築確認済証や検査済証の有無も必ず確認しましょう。これらの書類がない場合、違法建築や未検査の可能性があり、金融機関の融資が受けにくくなることがあります。特に増改築の履歴がある物件では、図面や不動産登記簿と実際の建物が一致しているかどうかをチェックすることが重要です。
付帯設備と生活利便性を確認する
戸建て賃貸では、暮らしやすさを支える設備が入居の決め手になることが多いです。たとえばファミリー世帯を想定する場合、以下のような条件がそろっていることが望ましいです。
- 駐車場がある、または確保できる
- 間取りが3LDK以上で収納が多い
- 日当たりや通風が良く、隣家との距離が適度にある
これらの他にも、近隣のスーパーや医療機関、公共交通のアクセスも重視されやすいポイントです。投資の候補物件を見学する際には、これらのポイントを頭に入れて、自分が住むつもりで生活動線をシミュレーションすると、潜在的な弱点を見つけやすくなるでしょう。
収支を正確にシミュレーションする
収支計画を立てる際には、家賃収入だけで魅力を判断せず、以下のような支出も必ず加味してシミュレーションを行いましょう。
- ローン返済額・金利・返済期間
- 固定資産税や保険料などの維持費
- 修繕費やリフォーム費用
- 管理会社への委託料(家賃の5%が目安)
戸建は修繕の範囲が広く、突発的な支出が発生しやすい投資です。毎月少しずつでも修繕積立を行い、10年後・20年後の大規模修繕に備えておくことで、安定した経営を維持できます。
再販やリフォームを見据えた「出口戦略」を立てる
戸建て投資は、買って貸すだけが目的ではありません。売却や再活用を視野に入れた出口戦略を早い段階で描くことが、収益最大化のカギになります。
代表的な出口戦略には、以下のような選択肢があります。
- リフォーム後に高値で転売する(短期売却型)
- 長期保有し、安定収益を得ながら売却タイミングを見計らう(長期保有型)
- 将来的に自己利用やセカンドハウスとして転用する(活用型)
物件の築年数や周辺相場、金利動向をふまえて、どのタイミングで売却・再活用するかを想定しておくと、損益のコントロールがしやすくなります。
まとめ
戸建て投資で大切なのは、物件価格の安さだけで判断せず、修繕費・需要・法令面・将来の出口までを含めて総合的に見極める姿勢を持つことです。物件の状態や立地だけでなく、長く運用するうえで必要になる費用や手間も織り込んでおくと、想定外のトラブルを防ぎやすくなります。
また、戸建ては「買う・貸す・売る・使う」といった活用の幅が広いため、焦らず自分の目的に合う運用スタイルを整えていきましょう。小さな一歩からでも積み重ねていけば、将来の資産づくりにつながるはずです。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。