公開日:2025.12.26 更新日:2025.12.17
NEW初心者でもわかる!不動産を活用した資産運用の基礎と始め方
近年、副収入の大切さが脚光を浴びるようになり、その選択肢の一つとして不動産を活用した資産運用が注目されています。確かに、不動産運用は家賃収入から長期的なキャッシュフローが期待できるため、長期的な資産づくりに向いている運用方法だといえます。
しかし、空室リスクや継続的な維持管理費など、見落としやすい負担があることも事実です。不動産資産運用には、事前のリスク対策が欠かせません。融資条件や金利変動の影響も受けやすいため、「始めてみたものの想定外の出費でうまくいかなかった」というケースも少なくありません。
そこでこの記事では、不動産運用の基本概念から収益の仕組み、メリット・デメリットなどの基本的なポイントを分かりやすくまとめました。初めての方でも判断しやすいよう整理していますので、資産づくりの選択肢として検討する際の手がかりにしてみてください。
不動産資産運用とは?仕組みと基本概念

不動産資産運用とは、保有している不動産を活用して収益を得て、資産の増加を目指すことです。主な方法としては、賃貸物件の貸し出しによるインカムゲインや、保有物件の売却によるキャピタルゲインが挙げられます。
投資手法としての特徴を見ると、株式や投資信託のようなペーパーアセットに比べて値動きの幅が穏やかな傾向があり、長期保有を前提にした「ミドルリスク・ミドルリターン型」の資産運用として位置づけられます。
不動産の強みは、生活に不可欠な「住まい」を扱うため需要が安定しやすく、毎月の家賃収入という継続的なキャッシュフローを確保しやすいことにあります。加えて、物価上昇に合わせて家賃や物件価値が調整されやすいため、インフレに強い資産として機能する点も魅力です。
ただし、空室や家賃滞納といった収益の途絶リスク、老朽化に伴う修繕費の発生、さらには売却に時間がかかり現金化しにくいなど、注意すべき点もあります。物件の管理状況やエリアの需要によって収益性が大きく変わるため、事前の調査と計画的かつ継続的な管理が欠かせません。
インカムゲインとキャピタルゲインとは
不動産投資で得られる収益は、大きく「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類に分けられます。
まずインカムゲインとは、家賃収入のように定期的に得られる利益のことを指します。入居者がいれば安定した収入を確保できるため、ローン返済や生活資金の柱として活用しやすい点が特徴です。
一方、キャピタルゲインは、購入した物件を値上がり後に売却して得る利益のことです。市場の上昇や再開発エリアなどの条件が整えば短期で大きなリターンを狙える反面、市況の悪化時には思うように売却できないリスクもあります。
不動産投資の資産ポートフォリオにおけるポジション
不動産投資は価値が急落しにくい特徴があることから、資産全体のバランスを取る「分散投資の軸」として活用されることが多いです。
株式市場が下落した場合でも、不動産から生活に必要な収入が得られていれば、生活への支障は小さく済みますし、金融資産のように一時的な暴落に左右されにくいため、精神的な安心感も得やすいです。
また、不動産は物価の上昇と連動しやすい傾向があるため、長期的な資産防衛の観点でも有効です。
このように不動産は、金融市場の変動に影響されにくい「安定」と「防衛」の二面性を備えた資産といえます。経済環境が移り変わっても、自らのペースで資産を積み上げられる安心感を持っているのは、不動産投資ならではの特徴といえるでしょう。
不動産を活用した資産運用のメリット

ここからは、不動産を資産運用に活用するメリットを具体的に見ていきましょう。ここでは代表的な以下の3点を紹介します。
- 安定した収益とインフレ耐性
- レバレッジ効果で効率的に資産を増やせる
- 節税や相続対策も可能
安定した収益とインフレ耐性
家賃収入から安定したキャッシュフローを得られるのは、不動産投資の大きな魅力です。価格の上げ下げに左右されにくく、入居が続く限り一定の収入が見込めるため、日々の生活費やローン返済の計画が立てやすくなります。株式のように短期の値動きに反応する必要がなく、心理的なストレスが少ないのも特徴です。
また、不動産は物価上昇と連動して価値が上昇しやすいという、インフレ耐性も兼ね備えています。現金のように購買力が目減りしにくいため、物価の上昇局面でも資産価値を維持しやすく、家賃収入によって生活コストの上昇分を吸収できる点も大きなメリットです。
レバレッジ効果で効率的に資産を増やせる
不動産投資は、融資を活用して大きな投資を行う「レバレッジ効果(※)」を利用することで、より効率的に資産を増やすことができます。これにより、少ない自己資金でも着実な資産拡大を狙うことが可能です。
たとえば、自己資金500万円に対して2,000万円の融資を受け、合計2,500万円の物件を購入できれば、手持ち資金だけでは得られない規模の家賃収入を生み出せます。ローン返済は家賃収入でまかなうことができるので、時間を味方につけて資産を築く「積み上げ型の運用」が実現します。
ただし、多くの融資を受けた場合、金利上昇時に返済負担が増大する点には注意が必要です。
※レバレッジ効果:少ない自己資金に他人資本(融資)を加えて運用規模を拡大し、投資効率を高める仕組み
節税や相続税対策も可能:税制メリットの活用
不動産投資には、税制上の優遇を活かした節税効果や、次世代への相続対策といったメリットもあります。
たとえば、建物の減価償却費やローン金利、修繕費、管理費などを不動産所得の経費として扱えるほか、要件を満たして青色申告制度を利用すれば、最大65万円の控除を受けられる場合があります。家族を青色事業専従者として登録し、管理業務や経理補助などの手伝いに対して給与を支払う場合、その給与も一定の範囲で経費として計上できます。
また、不動産は現金よりも相続税評価額が低く算定されることが多いため、相続税対策としても活用できます。さらに、賃貸用の不動産を所有している場合は「貸家建付地」や「貸家」として評価額が減額されるケースもあります。
不動産投資におけるデメリット・リスク

不動産投資はメリットの大きさに目が行きがちですが、デメリットやリスクを十分ケアしないと大きな損失を招く恐れがあります。収益を安定させるためにも、事前に対策を講じておくことが欠かせません。
特に注意したいデメリットやリスクは以下のとおりです。
- 空室や家賃滞納による収益低下
- 建物の老朽化・修繕コストの増大
- 金利上昇や不動産価格下落の影響
空室リスク・家賃滞納リスクへの対策
最も身近で避けにくいのが空室リスクです。入居者が見つからなければ家賃収入が止まり、ローン返済を自己資金で補う必要が出てきます。特に単身者向け物件では、近隣に新築が建つだけで入居率が下がるケースも少なくありません。
これを防ぐには、まず需要のあるエリアを選ぶことが基本です。駅近・大学周辺・再開発地域など、安定した入居層が見込める場所を選ぶと空室リスクを抑えやすくなります。また、内装や設備を定期的にリフォームして物件の魅力を維持することも有効です。
さらに、家賃保証(サブリース)や家賃保証会社を利用すれば、万一の滞納にも備えられます。ただし、保証料や契約条件を事前に確認して、保証に頼りすぎない仕組みを整えることを心がけましょう。
維持管理・修繕費用と老朽化リスク
不動産を長く保有するほど避けられないのが、老朽化による修繕リスクです。外壁や屋根、給排水設備などは10〜20年単位での補修が必要になり、1回の修繕で数百万円から1,000万円以上が必要になる場合もあります。
この点の対策としては、計画的な修繕費の積み立てを行うとともに、定期的な点検や早めの修理などが欠かせません。修繕すべき箇所を放置し続けると劣化が進み、修繕費がかさむ恐れがあるので、できるだけ早めに対応しましょう。
不動産は老朽化が進むほど入居者からの印象も下がり、空室リスクも上昇してしまいます。維持管理や修繕費用は単なる必要経費ではなく、将来に向けた価値を上げる投資ともいえるのです。
金利上昇や不動産価格下落の影響
ローンを利用している場合、金利の上昇は最も注意すべきリスクの一つです。金利が1%上がるだけでも返済額は大きく増え、キャッシュフローが圧迫される可能性があります。
また、不動産価格の下落リスクも軽視できません。景気後退や人口減少によって地価が下がると、売却時の利益が出にくくなってしまい、思ったような利益を得られずに終わってしまう恐れがあります。担保割れの状態では、金融機関の同意なしに売却できない場合があり、最悪の場合「売りたくても売れない」という事態に陥ることもあります。
これらを防ぐには、固定金利ローンの活用や立地分散・物件タイプ分散などのリスクヘッジが有効です。経済動向にアンテナを張り、長期的な金利・地価のトレンドを把握しておくことで、不測の事態にも柔軟に対応できます。
不動産投資の種類と選び方

不動産投資の種類を選ぶ際には、種類ごとの特徴やメリット・デメリットを把握したうえで、自分の目的に合ったものを選ぶことが大切です。ここがブレてしまうと、期待した成果を得られないこともあります。
そこでここからは、以下の代表的な不動産投資の種類について、特徴とメリット・デメリット、向いている人の特徴を見ていきましょう。
- マンション・アパート一棟経営
- 区分マンション投資
- 戸建て投資
- 駐車場・土地活用
マンション・アパート一棟経営
マンションやアパートの一棟経営は、スケールの大きな収益を狙える投資手法です。複数の入居者から家賃が得られるため、空室が出ても全体の収益が大きく崩れにくいのが特徴で、長期的に大きな資産形成を目指す投資スタイルといえます。
ただし、初期投資額は数千万円〜数億円規模が必要で、額の大きさから融資の審査も厳しくなります。さらに、建物全体の維持管理や修繕コストも高額になるため、管理会社と連携しながら長期的な資金計画を立てる必要も出てきます。
そのため、安定した収益とスケールメリットという大きな強みはありますが、運用の難易度は高めです。経営意識を持って計画的に取り組める人や、複数の物件をまとめて管理できる体制を整えられる人に適しています。
区分マンション投資
区分マンション投資は、マンションを1部屋単位で購入して家賃収入を得るスタイルです。比較的少額から始められることや、建物全体の管理は管理組合が行うことなどから、会社員や個人事業主など、本業を続けながら副収入を得たい人に人気があります。
ただし、修繕積立金や管理費の上昇リスク、リフォームの自由度が低いといった制約があります。さらに、入居者が1人いないだけで収入がゼロになるため、空室時のリスクが高い弱みもあります。
戸建て投資
戸建て投資は、ファミリー層を中心とした長期賃貸が主流の投資スタイルです。入居者が定着しやすく、更新率も高いため、安定した家賃収入を得やすいのが特徴です。また、土地付き物件としての資産価値を維持しやすく、将来的に自宅や相続用として活用できる点も魅力です。
ただし、入居者の入れ替えが少ない分、退去後の空室期間が長くなる傾向がある点には注意が必要です。また、築年数が経つほど修繕費がかさみやすく、維持管理の手間も増える点も気を付けましょう。
土地活用
土地活用とは、所有している土地を活用して利益を生み出すことです。代表的な方法には、駐車場経営や貸地、トランクルーム、太陽光発電などがあります。初期費用を抑えながら安定した収益を得られる点が魅力で、管理の手間を減らしたい人や遊休地を有効利用したい人に向いています。
土地をそのまま使ったり、貸し出したりするのが主な方法のため、建物を管理する場合に必要な維持管理コストがほとんどかからず、比較的少ない初期費用で始められます。また、更地の状態であれば別の用途への転用もしやすく、地域の開発状況やニーズの変化に応じて柔軟に戦略を変えられます。
不動産投資の始め方

不動産投資を始める際には、まず目的を明確にし、その目的を達成するための計画を立てましょう。計画を立てずに始めてしまうと思わぬリスクや資金不足に直面し、収益が不安定になりかねません。
ここでは、不動産投資を始めるまでの流れを、次の4つのステップに分けて解説します。
- 投資の目的と資金計画を立てる
- 情報収集と市場調査を行う
- 物件を選び、融資を検討する
- 購入後の運用と管理体制を整える
1. 目標設定と投資シミュレーションを立てる
最初に取り組むべきは、不動産投資の目的を明確にすることです。老後資金をつくりたいのか、安定収入を得たいのか、短期で売却益を狙うのか、目的によって選ぶ物件や資金計画はまったく異なります。
目標が定まったら、目標達成に向けたキャッシュフローのシミュレーションを組み立てましょう。ここでは物件価格やローン返済額、管理費、修繕費、税金などを数値化し、年間の収支を確認します。このとき、空室率や修繕費の増加など「悪いシナリオ」も組み込んでおくのがポイントです。
2. セミナー・書籍・ネットなどで情報収集をする
不動産投資は、知識量がそのままリスクの管理力に直結する世界です。初心者の場合は、まず不動産投資セミナーや書籍で基礎知識を身につけるところから始めましょう。実務経験を持つ講師の話を聞けるセミナーは、最新の市場動向を学ぶのに最適です。
最近はインターネット上でもさまざまな情報を入手できますが、誤った内容や広告目的の記事も少なくありません。インターネットを利用する場合は、国土交通省や国税庁など、公的機関が発信する情報を優先的にチェックし、複数のソースを照らし合わせて判断するのがおすすめです。
3. 金融機関・不動産会社を選定する
次のステップは、融資と物件探しのパートナー探しです。まずは複数の金融機関に相談し、金利・返済期間・自己資金の条件を比較しましょう。収益物件に強い銀行や信用金庫などを探すと、現実的な条件を引き出せる可能性が高まります。
不動産会社の選定では、実績が豊富か、物件の種類と得意分野が一致しているか、担当者の説明は分かりやすいかなどをチェックし、パートナーとして信頼できるかを見極めましょう。サービス面では、計画の立案や購入後の管理・サポートまで対応してくれる会社を選ぶと安心です。
4. 物件の調査・購入・管理体制の構築
購入候補が見つかったら、現地調査と周辺環境の確認を徹底しましょう。特に通勤アクセスや買い物施設、治安などの入居率に直結するポイントは丁寧にチェックすべきです。
また、建物の外観や築年数、耐震性といった、物件の需要や安全性に関わる点もチェックしましょう。特に築古物件の場合は、安全性を確認するために専門家による建物診断(ホームインスペクション)も検討すべきです。特に1981年5月31日までに建築確認を受けた旧耐震基準の物件は、現行の建築基準法を満たさないリスクが高いです。
そして、物件を契約する際には、重要事項説明書や契約書を丁寧に読み込み、条件が適正かを確認してください。不動産会社側の説明が足りないと感じた場合は、納得できるまで質問をしても問題ありません。これから長い間付き合っていく物件になるので、不安な点はこの時点でしっかり解消しておいてください。
まとめ・総括
不動産を活用した資産運用は、正しい知識と無理のない計画を積み重ねれば、長く続けられる方法です。まずは本記事で解説したデメリットやリスクへの対策を検討し、キャッシュフローを安定させるところからスタートしましょう。これが成功したころには、不動産運用に大切なことがしっかり学べているはずです。
また、自分の資金状況やライフプランに合った投資スタイルを築き上げることも大切です。これが、不動産資産運用の成功に直結します。
運用をスタートしてから初めてわかることも多いので、気軽に相談できる専門家を見つけておくと安心です。もし空き家の活用を検討している場合は、実績豊富な「アキサポ」が心強い味方になれるはずです。ほとんどの場合、持ち出し0円で始められますので、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。