公開日:2026.02.12 更新日:2026.02.12
NEWアパート一棟買いの失敗しない進め方|融資・利回り計算・物件選びを解説
アパート一棟買いの成否を分けるのは、単なる「物件の良し悪し」だけではありません。
金融機関の融資条件、長期的な修繕計画、そして出口(売却)を見据えた管理体制まで含めた、総合的な事業設計が不可欠です。表面利回りや満室想定の家賃だけを見ていると、購入後に空室や修繕が重なったタイミングで資金繰りが崩れやすく、想定より手残りが出ないケースも起こり得ます。
そこで本記事では、一棟買いの基礎から、エリア選びの考え方、物件探しで失敗しないチェックポイントや融資の引き出し方、利回り・キャッシュフローの見方などを、実務で迷いやすい順に整理していきます。
目次
アパート一棟買いとは?基礎知識をおさえよう

アパート一棟買いとは、アパートを1室単位ではなく建物ごと購入し、複数戸の家賃収入をまとめて得る不動産投資です。一棟保有は「複数戸」を運用するため、空室が発生しても収入がゼロになることはなく、空室リスクの分散が図れる点が大きなメリットです。
ただし、一棟で持つ以上、リスクや責任も大きくなります。購入金額が高額になりやすいことに加え、共用部や設備などの維持管理も「1室分」ではなく「建物分」で考える必要があるため、収益だけでなく支出も含めた視点が欠かせません。
アパート一棟買いで収益が安定する「エリア選び」の条件
アパート一棟買いでおすすめのエリアは「長期的に需要が見込まれる要素が揃っている場所」です。現在人気かどうかよりも、複数の理由から需要が続くことを説明できるかが大切です。
具体的には、以下のような条件を満たすエリアが候補になります。
- 需要が特定の要因に依存していない(大学だけ/工場だけなど)
- 賃料帯のボリュームゾーンが厚い(家賃が高級すぎないか)
- 借り手が想像しやすい(単身・カップル・ファミリーなど)
- 同一需給圏内において、供給過剰(競合過多)な状態にない
- 災害・生活インフラの不安が少ない(ハザードマップ、主要道路・公共交通、買い物動線)
逆にいうと、これらの条件に該当しない場所は注意すべき場所といえます。そのような場所の物件は売却価格を安くして利回りを高く見せているケースもあるので注意しましょう。
物件探しで失敗しないためのチェックポイント

一棟アパートの物件探しで失敗しないポイントは「数字の見た目」だけで判断せず、収益を支える条件と崩れる条件を確認することです。ここでは、購入前に押さえておきたい代表的な6つのポイントを紹介します。
価格・利回り・築年数
一棟アパート投資では、利回りが高く見える物件でも、築年数が古く修繕や設備更新が前提になっていて、実際の利益が想像より少なくなることがあります。そのため、購入価格や想定利回り、築年数をセットで見て、投資効率の中身を確認する必要があります。
ちなみに築浅で価格が高い物件は、当面の修繕負担は軽くても、利回りが低くなりやすい点が悩みどころです。どれか1つだけで判断せず、バランスとして納得できるかを見極めましょう。
満室稼働中か空室があるか
満室稼働中の物件は、購入直後から家賃収入が入りやすく、収支の見通しを立てやすいのがメリットです。ただし「満室=安心」と決めつけると危険で、満室であっても、相場乖離した高額家賃(いわゆる「サクラ入居」を含む)の設定や、特定時期の大量退去リスクが潜んでいる場合、購入後のキャッシュフローは一転して悪化します。
空室がある物件は価格が抑えられる場合がある一方で、空室が埋まらない理由が立地や間取りの弱さにあるケースが目立ちます。需要の根本になる部分が弱いと、将来的な改善が難しいので、価格の安さだけで決めるのは危険です。
周辺環境と交通アクセス
周辺環境と交通アクセスは、借り手の付きやすさに直結するポイントです。特に駅や主要路線へのアクセスが良い物件は、通勤・通学の需要を拾いやすく、募集時に強みになりやすいです。
加えて、買い物・医療・学校など生活の動線が整っている地域は、入居希望者の幅が広がりやすいです。
ちなみにこれらのポイントは「便利そう」という印象で終わらせず、実際に住む人の生活が成り立つかを基準に見ると判断しやすいです。
用途地域や建物の構造・耐震性
用途地域とは、都市計画法に基づき市街地の土地利用を「住居系・商業系・工業系」などに区分し、建てられる建物の用途や規模をコントロールする制度です。用途地域ごとに立地できる用途や建ぺい率・容積率、高さ制限、斜線制限など、建物計画に影響する規制が異なります。
また、接道義務(建築基準法)を満たさない「再建築不可物件」ではないか、必ず確認しましょう。また、法令改正により現行法に適合しなくなった「既存不適格物件」の場合、将来の建て替え時に現在と同規模の建物が建てられない(容積率減少等)ため、出口戦略が著しく制限されます。
さらに建物の構造や耐震性も重要なポイントです。木造や鉄骨、RCなどの構造によって、劣化しやすい部分や修繕コスト、防火性能などが変わりますし、耐震基準の区分は、原則として「完成日」ではなく建築確認日で判断します。建築確認日が1981年6月1日以降なら新耐震、それ以前は旧耐震となる可能性が高いので、確認済証等で確認しましょう。旧耐震建築物の場合、住宅ローン控除をはじめとする税制上の優遇を受けられない恐れがある点にも注意が必要です。
ファミリー向けや単身者向けなどのターゲット
物件は「誰に貸すか」で戦略が変わります。単身向けは入退去が起こりやすく、募集の回数が増えるぶん、空室期間の管理が重要になりますし、ファミリー向けは入居が決まれば長く住む傾向がありますが、設備や部屋の広さなど求められる水準が上がり、修繕費が重くなることもあります。
ターゲットの整合性を検討する際には、地域の入居ニーズと物件の設計が噛み合っているかを確認し、ターゲットが自然に決まる物件を選ぶと運用が安定しやすいです。
建物規模と将来的なリフォームの有無
建物の規模や将来的なリフォームの有無は管理コストや長期的な収益性に直結します。
基本的に、一棟の規模が大きいほど空室が出ても収益が一気に崩れにくいですが、管理や修繕の金額も大きくなりがちです。一方で小規模物件は手の届く範囲で始めやすい反面、数室空くだけで収支が急に厳しくなることがあります。
ちなみに、一棟物は外壁・屋根・配管などの修繕でまとまった支出が出やすいため、将来的なリフォーム前提で資金計画を考える必要があります。規模の大小だけでなく、「この建物にどんな支出がいつ発生するか」まで想像できると、購入判断がブレにくくなります。
金融機関からの融資を引き出すためのポイント

金融機関で融資の審査を受ける際には、なぜ買いたいのかを伝えるだけではなく、物件を購入しても返済が回り続ける根拠を数字で説明することが大切です。
金融機関の審査で見られるのは、物件の収益性、自己資金の厚み、購入者の返済能力の3点です。あらかじめ投資シミュレーションをしておき、空室や運営費も織り込んだうえで、毎月いくら残るのか、どの程度下振れしたら苦しくなるのかなどを提示できるようにしておきましょう。
また、融資条件は金融機関ごとに差が出やすい領域です。金利や融資期間が少し違うだけでも、月々の返済額や総返済額は大きく変わります。複数に打診して条件を比較することで、初期の資金負担や長期の返済リスクを抑えやすくなるでしょう。
自己資金と融資割合の考え方
自己資金を厚めに入れると、借入額が減るぶん返済負担が軽くなり、キャッシュフローは安定しやすくなります。ただし、購入後の修繕や設備更新などの高額な支出で手元資金が薄くなると、資金繰りが苦しくなる恐れがあります。
そのため、物件を購入したあとに残すべき現金を先に確保し、その残りで融資割合を決めるのが現実的です。投資の目的が安定運用なのか、拡大前提なのかでも最適解は変わるので、自分のリスク許容度に合う形で無理のない水準を設定しましょう。
金利タイプの選択とリスク
借入の金利タイプは「返済額がブレやすいが低めを狙える変動」か、「返済額が読みやすいが高めになりやすい固定」かの選択になります。変動金利は初期の返済負担を軽くしやすい一方で、金利上昇局面では返済額が増え、キャッシュフローを圧迫する可能性があります。
固定金利は返済計画が立てやすい反面、スタート時点の金利が高く、利益が少なくなりやすいデメリットがあります。
ここで大切なのは、借入金の返済に対して、どれだけ返済原資(キャッシュフロー)があるかを見る指標であるデット・サービス・カバレッジ・レシオ(DSCR)が、金利上昇局面においても健全な水準を維持できるかです。変動を選ぶなら上振れ時の想定を織り込み、固定を選ぶなら現時点での利益が十分かを確認しましょう。
【シミュレーション例あり】アパート一棟買いの収益・利回りの計算方法

収益の考え方はシンプルで、家賃収入をはじめとした「収入」から、運営に必要な「支出」を差し引いて考えます。一棟の場合、支出には管理費や修繕費だけでなく、固定資産税、保険料、共用部の光熱費、募集費用なども含まれます。
この収益性を比較するために使われるのが「利回り」で、利回りは以下の2種類があります。
- 表面利回り:(想定利回り):年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
- 実質利回り:(年間家賃収入 − 年間支出)÷(物件価格+購入時諸費用)× 100
表面利回りは計算が簡単な反面、支出や空室の影響を反映していないため、数字だけで判断すると「思ったより残らない」状態になりやすい点に注意が必要です。
想定利回りと実質利回りの違い
想定利回り(表面利回り)は、満室前提の家賃収入で計算されることが多く、物件情報にもこの数字が掲載されがちです。比較の入り口としては便利ですが、運営コストや空室・滞納などの現実を含めていないという弱点があります。
一方、実質利回りは、管理費・修繕費・税金・保険・共用部コストなどを差し引いたうえで計算するため、より具体的な数字が把握できます。ただし実務的には「実質利回り」だけでなく、融資返済まで含めたキャッシュフローを見ておかないと、投資としての安全性は判断しにくいです。利回りが高く見えても、返済と支出を入れた瞬間にほぼ残らないケースもあります。
収益・利回りのシミュレーション例
実際にアパート一棟買いの収益と利回りをシミュレーションしてみましょう。今回は以下の条件で計算してみます。
- 物件価格:8,000万円
- 年間家賃収入(満室想定):600万円
この場合の表面利回りは、600万円 ÷ 8,000万円 × 100 = 7.5% です。実質利回りを算出するには、ここから以下のような支出を差し引きます。ここでは年間の必要額で仮定しています。
- 管理費・清掃など:60万円
- 固定資産税・都市計画税:80万円
- 保険料:20万円
- 修繕費の積立(見込み):60万円
- 募集費用や原状回復の平均:30万円
- 年間支出の合計:250万円
- 年間の利益(返済前):600万円 − 250万円 = 350万円
さらに融資返済が年間300万円かかるとすると、最終的に手元に残る金額は50万円になります。
このように、表面利回りが7.5%でも、実際に自由に使えるお金はほとんど残らないこともあり得ます。利回りはあくまで入り口で、最終的には「支出と返済を入れても回るか」を確認すべきです。
空室対策と賃貸管理のポイント

空室対策と賃貸管理で押さえるべきなのは「入居が決まる仕組み」と「入居後に崩れない仕組み」を同時に整えることです。家賃を下げれば一時的に埋まることはありますが、それを繰り返すと物件の価値が下がり、長期的に収益が痩せていきます。
「暮らしたくなる」強みで募集力を高める
空室期間を短くするには「入居者が選びたくなる理由」を増やすことが効果的です。たとえば単身者なら、ネット環境や防犯性、洗濯動線の良さなどがプラスポイントになりやすく、ファミリーなら収納量や生活動線、部屋の使い分けが想像できる間取りが効いてきます。
ちなみに、物件のターゲット層が曖昧だと、設備投資が空回りしやすいので、まずは具体的なターゲットの選定から始めましょう。
賃貸管理会社はサービスの質や手数料を比較する
管理会社は、ただ手間を代行する存在ではなく、空室とトラブルの発生率を左右するパートナーです。
比較する際は手数料だけでなく、募集の強さや退去後の原状回復の判断、クレーム対応のスピードなどをチェックし、長く付き合える会社かを判断しましょう。
比較するときのポイントは、募集時の動きや滞納対応の流れ、修繕の提案の出し方など、具体的な運用の中身を見ることです。「困ったら連絡ください」ではなく、状況を先回りして提案してくれる会社のほうが、一棟運営では効いてきます。
具体的な収支計画を立てておく
空室対策は、あらかじめ収益計画を作って数字ベースの根拠を用意しておきましょう。ここが固まっていれば、家賃を下げるべきか、設備投資をするべきか、募集条件を変えるべきかなどの判断がブレにくくなります。
特に退去が重なるタイミングや大規模な修繕が起こったりすると、キャッシュフローが急に薄くなる恐れがあります。だからこそ、満室前提の計画ではなく、空室が出た場合でも耐えられるラインを把握しておくことが重要です。収支が読めているオーナーほど、必要な投資を必要なタイミングで打てるので、結果として空室期間も短くなります。
運営中のリスクと対策
アパート一棟買いは、購入してからが本番で、想定外の出来事が起きても資金繰りと運営品質を崩さない仕組みがあるかどうかで差がつきます。ここでは、運営中に起こりやすい代表的なリスクと、その対策を紹介します。
家賃滞納リスク|保証会社を活用する
家賃滞納リスクに対処するには、保証会社を活用しましょう。保証会社を入れておくと、滞納が起きた際に契約内容の範囲で家賃の立替を受けられるため、収入が途切れるリスクを抑えられます。
ただし、保証内容や免責、支払いまでの流れは会社ごとに差があるため、契約条件は事前に確認する必要があります。
建物老朽化|修繕費用を見込んでおく
一棟物のリスクで地味に効いてくるのが老朽化です。築年数が進むほど、外壁や屋根、給排水設備など、建物全体に関わる修繕が必要になり、支出が一気に膨らむ場面が出てきます。
老朽化対策には、長期的な修繕の波を想定して修繕計画と積立金を用意するのが基本です。大きな修繕は避けられませんが、あらかじめ想定しておけば「痛い出費」は「必要経費」に変わります。手入れが行き届いていれば、入居者満足度も維持しやすく、収益安定にもつながります。
出口戦略が見つからないリスク|始める前に複数の選択肢を用意する
出口戦略が曖昧なまま運用を始めると、いざ状況が変わったときに判断が遅れやすくなります。一棟アパートの出口は「売却」だけではなく、長期保有を続ける、相続を前提に持つ、組み替えて次の物件に移るなど複数の選択肢があるので、複数の選択肢を用意しておきましょう。
売却を視野に入れるなら、価格に影響しやすいのは賃貸状況と収益性です。満室に近い状態を維持できているか、家賃が相場から大きくズレていないか、運営コストが極端に膨らんでいないか、といった点が評価されやすくなります。市況や金利など外部環境でも価格は動くため、売却タイミングを見極めるには普段から情報収集を続けておくことも欠かせません。
相続を意識する場合は、運用を引き継ぐ家族がいるか、引き継いだ後に回る形になっているかまで考えておく必要があります。一棟不動産は資産規模が大きいため、所得分散による節税(法人化)や、相続時の小規模宅地等の特例適用の可否など、税理士による事前シミュレーションが不可欠です。
まとめ・総括|アパート一棟買いで安定収益を目指すために
こうして見ると、アパート一棟買いで一番やってはいけないのは「表面利回りが高いから」と数字の見た目だけで決めてしまうことだと分かります。満室想定の利回りは入口として便利ですが、管理費・税金・修繕・募集費用に加えて融資返済まで入れた瞬間に、手元にほとんど残らないケースも普通に起こり得るからです。
物件選びで大切なポイントは、需要が1本足ではないエリアか、ターゲットと物件が噛み合っているか、建物の構造や耐震性、将来の修繕の波を織り込めるかなどの条件に加えて「経営が崩れる条件」も確認しておくことです。
一棟買いは、購入後の管理と意思決定の積み重ねで成績が決まる投資です。だからこそ、実質利回りとキャッシュフローを基準に判断し、修繕や空室の局面でも慌てず手を打てる状態を作っておくと、安定収益に近づきやすくなります。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。