公開日:2026.03.07 更新日:2026.02.12
NEW不動産の生前贈与を徹底解説|メリット・デメリット・手続きと節税のポイント
不動産をめぐる相続対策は、身近なことでありながら判断に迷いやすいテーマ。
近年は、相続前に不動産を贈与することで、税負担や手続きの見直しを図る動きも広がっています。不動産の生前贈与は、相続時の混乱を防ぎ、財産を希望する相手に確実に引き継ぐことができるのが魅力です。
一方で、贈与税の負担や特例の扱いなど、慎重に考えるべき点も多く存在します。この記事では、生前贈与のメリット・デメリットから手続き、節税の考え方までを整理し、納得のいく相続対策を考えるためのヒントをお伝えします。
目次
不動産の生前贈与とは

不動産の生前贈与とは、財産を持つ人が生きているうちに、自らの意思で不動産を家族などへ贈与する方法です。相続とは異なり、分配のタイミングや相手を明確に決められる点が大きな特徴。相続発生後の手続きや家族間の話し合いを減らせる可能性もあります。
ただし、贈与税の負担や注意点も無視できません。生前贈与と相続の違い、そして近年注目されている認知症対策としての側面について整理していきます。
生前贈与と相続の違い
生前贈与は、贈与者が存命中に自らの財産を無償で相手方に与える意思を表示し、受贈者がこれを受諾することによって成立する契約です。一方、相続は被相続人が亡くなったあとに始まり、相続人全員で遺産分割協議を行います。
税負担としては、一般的に贈与税よりも相続税の方が税率が低く、特定の特例も使いやすい面があります。しかし、不動産の生前贈与をうまく活用すれば、評価額が上がる前に資産を移転でき、結果的に総合的な税負担を抑えられるケースもあります。
認知症対策としての有効性
高齢化が進むなか、認知症や判断能力の低下に備えた資産整理は、多くの家庭にとって身近な課題です。
不動産の生前贈与を行えば、意思能力があるうちに、誰に何を引き継ぐのかを明確に決定できます。認知症発症後の場合、法的に有効な意思表示が難しくなり、不動産の処分や名義変更ができなくなるケースも。
そうした事態を避けるためにも、早めの生前贈与は家族への負担を減らし、将来への不安を和らげるための有効な選択肢となります。
不動産を生前贈与するメリット

不動産を生前に贈与することは、将来を見据えた資産整理の一手。評価額の変動や家族構成を踏まえ、早めに動くことで得られる利点もあるでしょう。
一方で「本当に今、贈与すべきか」と迷う方も多いはず。ここでは、生前贈与ならではの代表的なメリットと、どのような点が相続と異なるのかを具体的に見ていきます。
希望する相手に確実にわたせる
誰にどの不動産をわたすのかを自分で決められるため、想いどおりの資産承継がしやすくなるのは、生前贈与の大きな特長です。相続では法定相続人の権利が優先され、結果として希望とは異なる分配になる可能性があります。
生前贈与であれば、相続人以外の家族や第三者に不動産をわたすことも可能。こうしたコントロールのしやすさが、生前贈与のメリットとなっています。
相続税対策になる可能性
不動産の評価額は、景気や需要によって将来的に上がる可能性があります。価値が高まる前に生前贈与を行えば、相続時の課税対象となる財産を抑え、結果として相続税負担を軽減できることがあります。
また、暦年課税を活用し、毎年少しずつ贈与を重ねる方法も有効です。収益不動産を贈与すれば、家賃収入の受取先が変わり、長期的な税負担の分散につながる場合も。将来の負担を少しでも軽くしたい方にとって、前向きに考えたい選択肢と言えるでしょう。
家族間トラブルの予防
相続をきっかけに、家族関係がぎくしゃくしてしまった。そんな話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。特に不動産は分割が難しく、遺産分割協議で意見が対立しやすい財産です。
生前贈与によって不動産の所有者をあらかじめ決めておけば、相続開始後の話し合いを大幅に簡略化できます。争いではなく安心を残す。そのためにも、生前贈与は前向きに検討したい方法です。
不動産を生前贈与するデメリット

不動産の生前贈与は魅力的な側面がある反面、慎重に進めなければ思わぬ負担につながることもあります。特に税金や諸費用は、事前に把握していないと「こんなはずではなかった」と感じやすいポイントです。
ここでは、生前贈与を検討する前に知っておきたい代表的なデメリットを整理。注意すべきポイントを具体的に解説していきます。
贈与税が高くなる場合
贈与税は累進課税のため、財産額が大きくなるほど税率も高くなります。そのため、不動産を一度に生前贈与すると、かえって税負担が重くなる可能性があります。
生前贈与が本当に有利かどうかは、相続税や不動産の評価額の動向を含め、総合的に判断しましょう。
小規模宅地等の特例が受けられない
相続では、小規模宅地等の特例を活用することで、不動産の評価額を大幅に減額できる場合があります。しかし、生前贈与によって所有権を先に移してしまうと、こうした有利な特例を受けられなくなるリスクがあります。
どの特例が適用されるかは家族構成や利用状況によって異なります。生前贈与と相続、どちらが有利かを比較しながら、最適なタイミングや方法を検討しましょう。
費用負担が大きい
不動産の生前贈与では、贈与税だけでなく、さまざまな費用が発生します。贈与契約書の作成費用や登記手続きにかかる報酬、登録免許税や不動産取得税など、想像以上に出費がかさむことも。
特に評価額が高い不動産や、複数の物件をまとめて贈与する場合は費用が膨らむため、事前の見積もりと計画が不可欠です。
不動産の生前贈与にかかる税金・手数料

実際に贈与する際に発生する税金や諸費用は多岐にわたります。贈与税はもちろんのこと、不動産取得税や登録免許税といった固定資産税評価額に基づいて算出される税金も発生し、計算式は決して単純ではありません。
ここでは、生前贈与に伴う主な税金の仕組みと、手続きにかかる費用の全体像を解説していきます。
贈与税の計算方法と申告手順
贈与税は、暦年課税と相続時精算課税制度のいずれかを選択して計算します。暦年課税では年間110万円の基礎控除があり、控除額を超えた部分に税率がかかる仕組みです。
申告期限は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで。期限を過ぎると延滞税などのリスクも生じます。申告書には不動産の評価額や受贈者の情報を正確に記載し、特例を利用する場合は必要書類の添付も忘れずに行いましょう。
不動産取得税と登録免許税
不動産を贈与で取得した場合でも、不動産取得税は原則として課税されます。税額は固定資産税評価額をもとに計算され、売買と同様に地方税として納付が必要です。
さらに、所有権移転登記を行う際には登録免許税が発生します。こちらも評価額に税率をかけて算出され、不動産の種類や時期によって税率が異なる点に注意が必要です。
登録免許税は、贈与による所有権移転登記が原則2.0%(20/1000)、相続による移転登記が原則0.4%(4/1000)です。土地の売買による移転登記には期限付きの軽減措置がありますが、贈与には適用されません。
司法書士等への依頼費用
不動産の生前贈与では、登記手続きが必須です。書類作成や法務局への申請には専門知識が求められるため、司法書士へ依頼するケースが一般的。その際、報酬として一定の費用が発生します。
複数の不動産をまとめて贈与する場合は、物件ごとに登記が必要となり、費用が想定以上に膨らむことも。信頼できる専門家に相談し、事前に見積もりを確認しておくことが、安心かつスムーズな手続きに繋がります。
不動産の生前贈与で利用できる特例

不動産の生前贈与では、特例制度を上手に活用することで、贈与税の軽減や納税タイミングの調整も可能です。ただし、それぞれに適用条件や上限額があり、選び方を誤ると逆に不利になることもあります。
生前贈与で知っておきたい代表的な特例制度について、特徴と注意点を解説します。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度では、2,500万円の特別控除に加え、2024年から年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円分は相続財産に加算(持ち戻し)する必要がありません。
ただし、一度この制度を選択すると、その贈与者からの贈与について「暦年課税」へ戻すことはできません。また、受贈者が住宅展示場等で安易に選択してしまい、後の節税対策を縛ってしまうリスク(撤回不可)にも注意が必要です。
配偶者控除(おしどり贈与)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、配偶者控除、いわゆる「おしどり贈与」を利用できます。一定の要件を満たせば、2,000万円までが非課税となります。 なお、本特例は「相続開始前7年以内の贈与加算」の対象外であるため、相続直前であっても有効な節税策となる点が大きな法的な強みです。
長年連れ添った夫婦間で自宅の名義を整理するケースに有効で、老後の住まいを確保する選択肢としても注目されています。
暦年課税と基礎控除
暦年課税は、1年間に110万円までの贈与であれば、原則として贈与税がかからない仕組みです。ただし、2024年以降の暦年贈与は、相続開始前の一定期間の贈与が相続税の課税価格に加算されます。期間は移行措置があり、相続開始時期により「3年」または「7年」と扱いが変わるため、適用関係を確認する必要があります。
また、不動産の「持分」を数年に分けて贈与する方法もありますが、その都度登記費用が発生するため、トータルコストの検討が不可欠です。
不動産の生前贈与の手続きフロー

不動産の生前贈与は、いくつかの重要な手続きを順を追って進める必要があります。流れをきちんと理解しないまま進めてしまうと、やり直しがきかなかったり、余計な手間や費用がかかってしまったりすることも。
ここからは、生前贈与を進める際の基本的な流れを整理していきましょう。
贈与契約書の作成
贈与契約は口頭でも成立し得ますが、不動産は税務・登記・後日の紛争予防の観点から、贈与契約書を作成して証拠を残すことが重要です。
契約書には、贈与する不動産の内容、贈与日、贈与者・受贈者の署名捺印などを明確に記載します。贈与契約書を公正証書にする方法をとれば、要件の確認や内容の公的証拠としての効力がより高まり、第三者にも説明しやすくなります。
登記申請の方法と必要書類
生前贈与が成立したあとは、受贈者名義へ所有権移転登記を行います。登記申請には、登記済権利証(または登記識別情報)、贈与者の印鑑証明書(3ヶ月以内)、受贈者の住民票、最新年度の固定資産税評価証明書のほか、「贈与契約書」が必要です。
手続き自体は法務局で行いますが、専門的な書類作成や確認が求められるため、司法書士へ依頼するケースが一般的です。この時、書類不備による差し戻しを防ぐためにも、申請前に必要書類を入念にチェックしましょう。
贈与税の申告と納税
不動産を生前贈与した場合、贈与を受けた人は翌年に贈与税の申告を行う必要があります。申告の期間は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで。この期限を過ぎてしまうと、追加で税金がかかることもあるため注意が必要です。
また、必要書類の出し忘れがあると、特例が使えなくなるケースもあります。事前に準備物を確認し、余裕をもって手続きを進めることが大切です。
不動産の生前贈与が向いているケース

不動産の生前贈与は、すべての人にとって最適な選択とは限りません。物件の特性や将来計画によって、向き・不向きが大きく分かれます。自分の不動産がどのケースに当てはまるのかを冷静に見極めることが大切です。
将来的な値上がりが見込まれる物件
再開発が進むエリアや、今後需要の高まりが予想される地域の不動産は、将来的に評価額が大きく上昇する可能性があります。こうした物件は、評価額が上がる前に生前贈与を行うことで、比較的低い課税額で受贈者へ引き継ぐことができます。
将来の相場を正確に読むのは簡単ではありませんが、長い目で見て価値が高まりそうな不動産であれば、税金の負担を抑えられるだけでなく、家族の資産づくりという面でもプラスに働くでしょう。
収益不動産を所有している場合
アパートやマンションなどの収益不動産を所有している場合、生前贈与によって家賃収入を受贈者へ移すことができます。これにより、資産管理を早い段階で次世代へ引き継ぐことができます。収入だけでなく、不動産管理の負担軽減や、相続発生後の遺産分割協議をシンプルにできる可能性もあります。
ただし、不動産の評価額や家賃収入の額によっては、贈与税の支払いに備えた資金準備が必要です。負担が大きくなりすぎないよう、贈与するタイミングや進め方は慎重に検討しましょう。
生前贈与と相続、どちらを選ぶ?

不動産の承継方法として、多くの方が迷うのが「生前贈与」と「相続」の選択です。どちらにもメリット・デメリットがあり、一概に正解があるわけではありません。大切なのは、ご自身の資産の状況や家族構成、そして将来どう引き継ぎたいかという考え方に合っているかどうかです。
ここでは、生前贈与と相続を比べるうえで知っておきたいポイントを整理し、判断のヒントをご紹介します。
税額や負担を比較するポイント
不動産の生前贈与を検討する際は、贈与税の累進税率と、相続税における基礎控除や各種特例を比較しましょう。贈与のタイミングによっては、相続時に節税効果を充分に発揮できない点に注意が必要です。
その反面、相続の場合は、控除や特例を活用しやすく、相続人が複数いれば税金の負担を分けられることもあります。
また、評価額が変動しやすい不動産の場合、将来の地価動向も判断材料となります。納税資金をどのように確保するか、現金化の可能性はあるか。こうした現実的な視点も重要です。自分だけで判断が難しいと感じたら、税理士や不動産の専門家に相談すると、より正確なシミュレーションが可能になるでしょう。
まとめ|不動産の生前贈与を活用して安心の相続対策を
不動産の生前贈与は、仕組みをきちんと理解し、適切なタイミングと方法を見極めることで、将来の相続をぐっとスムーズにできる選択肢です。希望する相手に確実に財産を引き継げる点や、相続税対策として活用できる点は大きな魅力といえるでしょう。
一方で、贈与税の負担や特例が使えなくなるリスクなど、注意すべきポイントも存在します。贈与と相続、どちらが適しているかは、不動産の評価額や将来の活用方針、ご家族の状況によって異なるもの。だからこそ、自分のケースに置き換えて考え、必要に応じて専門家の意見を取り入れることが重要です。納得して選んだ対策こそが、将来の安心につながるでしょう。
将来を見据えた不動産の生前贈与は専門家と一緒に
不動産の生前贈与は判断を誤ると大きな負担につながることもあります。アキサポでは、不動産の生前贈与に関するお悩みを丁寧に整理し、状況に合った選択肢をご提案します。将来に不安を残さないためにも、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。