公開日:2026.10.18
NEW空き家の処分に親族が反対したら?話し合いの進め方と対処法

空き家の処分を考えていても、親族から反対されて話が進まないことがあります。誰も住む予定がない実家であっても、長年暮らした思い出や「できれば残しておきたい」という気持ちがあり、処分に抵抗を感じる人は少なくありません。
しかし、空き家を所有し続ければ、固定資産税や管理の負担も続きます。実家を残したいという気持ちと、持ち続ける現実的な負担をどう折り合わせるのか。ここが実家の処分で特に難しいところでしょう。
そこでこの記事では、空き家になった実家の処分に親族が反対している場合に、まず確認したい名義や相続の状況から、親族との話し合いの進め方、処分方法、話がまとまらない場合の相談先まで解説します。
目次
親族が反対しても空き家を処分できる?まず名義・相続状況を確認

空き家を処分できるかどうかは、親族の賛否だけでなく、誰が所有権や持分を持っているかによって決まります。
まずは登記事項証明書などで現在の名義を確認し、単独所有なのか、親族との共有になっているのかを整理しましょう。
空き家が自分一人の単独名義であれば、原則として所有者自身の判断で売却できます。一方で、共有名義になっている不動産全体を売却する場合は、原則として共有者全員の同意が必要です。共有者の一人でも反対している場合、その人を除いて空き家全体を売却することはできません。
また、遺産分割協議が未完了の実家は、法律上「相続人全員の遺産共有状態」となります。誰が相続するか決まるまでは、法定相続人全員の同意がなければ売却できません。 空き家を売却するか、誰かが取得するかを一人で決めることはできないため、まずは相続人を確認し、今後の扱いについて話し合いましょう。登記上の名義が亡くなった方のままであれば、相続関係を整理して相続登記を行い、売却に向けた手続きを進めます。
これらを整理すると、以下の表のようになります。
| 空き家の状態 | 売却を進める際の考え方 |
|---|---|
| 自分一人の単独名義 | 原則として所有者自身で売却を判断できる |
| 親族との共有名義 | 空き家全体の売却には原則として共有者全員の同意が必要 |
| 相続後、遺産分割が済んでいない | 相続人を確認し、遺産分割や売却方法について相続人間で話し合う |
| 被相続人名義のまま | 相続関係を確認し、相続登記など必要な手続きを進める |
不動産の相続登記は2024年4月から義務化されました。自分が相続したと知った日から3年以内に名義変更(相続登記)を行わない場合、10万円以下の過料(ペナルティ)が科される恐れがあります。施行前(2024年3月以前)に相続した物件も対象で、猶予期間は2027年3月31日までです。放置していると売却自体が進まなくなるため、早めの対応が欠かせません。
空き家の処分に親族が反対するよくある理由

実家の処分に反対する理由は人によって異なります。「売りたくない」という一言でも、家への思い入れがある場合もあれば、売却価格や片付けの負担を心配している場合もあります。
そこで、まずは話し合いを進めるためにも、何に不安や抵抗を感じることが多いのか整理してみましょう。
感情面:思い入れがある/将来使いたい
長く家族が暮らしてきた実家には、建物そのもの以上の思い入れがあるものです。「親が残した家を手放したくない」「家族が集まれる場所を残しておきたい」といった気持ちから、処分に抵抗を感じる人もいるでしょう。
その他にも「いつか自分や子どもが住むかもしれない」と考えているケースもあります。この場合は、誰がいつ頃利用する予定なのか、それまでの管理や修繕を誰が担うのかまで具体的にしてみると、実家を残すことが現実的なのかを家族で考えやすくなります。
金銭面:価格が安い/分配が不安
売却そのものに反対しているのではなく「その価格で手放してよいのか」「売却後のお金をどう分けるのか」といった金銭面への不安から話がまとまらないこともあります。
売却価格に納得できていない場合は、まず不動産会社の査定を受け、周辺の成約事例や土地・建物の状態などから現在の相場を確認してみましょう。複数社に査定を依頼すれば、査定額だけでなく、その金額になった根拠も比較できます。
また、親族間で売却代金を分ける場合は、最終的にいくら手元に残るのかを確認しましょう。仲介手数料や登記費用、残置物の撤去費、税金などを差し引き、手取り額と分配の見込みを整理しておくと、認識のズレを防ぎやすくなります。
手間面:片付けや手続きが面倒
実家を処分するとなれば、家の中に残された荷物の整理や形見分け、各種手続きなども必要になります。遠方に住んでいたり、仕事や家庭が忙しかったりすると、処分には賛成できても、そのための作業までは担えないという人もいるでしょう。
こうした場合は、誰が何を担当するのかを整理するとともに、必要に応じて遺品整理や残置物撤去などを外部へ依頼する方法もあります。親族全員が同じ作業を負担することを前提にせず、できること・難しいことを確認しておくと話を進めやすくなります。
リスク面:空き家を残す負担を知らない
親族が空き家を残すリスクを知らず、処分に消極的なケースもあります。空き家は持っているだけでも税金や維持費がかかり、火災や空き巣などの危険もつきまといます。
こうしたリスクを知ってもらうには「管理が大変だから」と漠然と伝えるのではなく、年間でどの程度の費用がかかっているのか、放置するとどのような問題が起こり得るのかを具体的に共有することが大切です。空き家を残す場合の負担が見えてくれば、処分する場合との比較もしやすくなり、話し合いを進める材料になるでしょう。
次の見出しで、より詳しく空き家の維持費やリスクを見ていきましょう。
親族と共有したい維持費とリスク

空き家を所有し続けることによる主な維持費とリスクは、大きく以下の3つに分けられます。
- 費用面:維持費・固定資産税・修繕費・管理負担
- 安全面:空き家の劣化・防犯・近隣トラブル
- 法律面:特定空家・管理不全空家になるリスク
どれか一つとっても空き家所有者に大きな負担となるポイントです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
維持費・固定資産税・修繕費・管理負担
空き家は誰も住んでいなくても、維持管理費や税金、火災保険や最低限の水道光熱費など、以下の表のようにさまざまな費用がかかります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 固定資産税 | 空き家でも土地・建物を所有している限り、原則として毎年かかる。課税標準額に標準税率1.4%を掛けて計算する |
| 都市計画税 | 市街化区域内の土地・建物などに課税される場合がある。税率は自治体が定め、上限は0.3% |
| 火災保険料 | 火災や風災などに備えるための保険料。空き家の状態によって契約条件が異なる |
| 水道・電気代 | 清掃や換気、設備の維持などのため契約を残している場合に基本料金などがかかる |
| 草刈り・庭木の剪定 | 雑草や庭木の繁茂を防ぐため、定期的な手入れが必要になる |
| 点検・管理費 | 遠方に住んでいる場合などは、空き家管理サービスを利用する費用がかかることがある |
| 修繕費 | 雨漏り、外壁、屋根、給排水設備などに不具合が発生すれば修繕費が必要になる |
| 交通費 | 遠方の実家を見回り・清掃するために交通費や宿泊費がかかる場合がある |
親族と話し合う際は、一般的な金額を示すよりも、納税通知書や保険料、これまでにかかった管理費などから実家の年間負担を実際に計算してみると分かりやすいでしょう。あわせて、今後も所有を続ける場合に誰が費用や管理を担うのかまで整理しておくと、処分する場合との比較もしやすくなります。
空き家の劣化・防犯・近隣トラブル
空き家を長期間使用しないままにしていると、建物の不具合に気づくのが遅れ、雨漏りやカビ、腐朽などが進んでしまうことがあります。状態が悪化すれば修繕費が増えるだけでなく、将来売却するときの条件にも影響しかねません。
また、庭木や雑草の繁茂、不法侵入や不法投棄などによって、近隣住民とのトラブルにつながる可能性もあります。空き家を残すのであれば、こうした問題を防ぐために誰がどのように管理していくのかまで決めておく必要があります。
特定空家・管理不全空き家になるリスク
適切に管理されていない空き家は、状態によって自治体から「管理不全空家」や「特定空き家」として指導などの対象になることがあります。
2023年施行の改正空家等対策特別措置法により、放置され荒れた物件は「管理不全空家」に指定される仕組みになりました。自治体からの指導に従わず「勧告」を受けると、住宅用地特例(固定資産税を最大6分の1に減額する特例)が解除され、土地の固定資産税が実質約4倍〜最大6倍まで跳ね上がります。
倒壊の危険がある「特定空家」に指定され、改善勧告・命令を無視し続けると、自治体による「行政代執行(強制解体)」が行われます。かかった解体費用(数百万円規模になることもあります)は全額所有者に請求され、支払えない場合は財産が差し押さえられます。
親族との話し合いを進める5ステップ

実家をどうするかは、費用やリスクだけで割り切れる問題ではありません。長く暮らした思い出や家族それぞれの事情があるからこそ、話し合ってもすぐに答えが出ないこともあるでしょう。
そんなときは、いきなり「売る・残す」を決めようとせず、それぞれの考えを確認しながら一つずつ条件を整理していくことが大切です。話し合いは、次の5ステップを意識して進めてみましょう。
- 反対している理由を確認する
思い入れや金銭面、片付けの負担など、何に抵抗を感じているのかを確認する - ゴールと優先順位をそろえる
「できるだけ高く売りたい」「思い出を残したい」「管理の負担を減らしたい」など、それぞれが重視していることを共有する - 売却・賃貸・管理・解体などの選択肢を比較する
売却だけを前提にせず、実家の状態や立地も踏まえて現実的に選べる方法を並べてみる - 査定額や費用、必要な期間を整理する
不動産会社の査定や解体費、残置物の撤去費、税金などを確認し、それぞれの方法に必要なお金と時間を具体化する - 次にやること・担当者・期限を決める
最終的な結論が出なくても「査定を依頼する」「相続関係を確認する」など、次に行うことを決めておくと話が止まりにくくなる
大切なのは、誰かの意見を押し通すのではなく、それぞれの希望と実際にかかる費用・手間を同じ材料で比較できる状態を作ることです。一度で結論を出そうとせず、必要な情報をそろえながら少しずつ合意点を探していきましょう。
親族と比較したい空き家の処分方法3選

空き家を処分する方法にはそれぞれ特徴があるため、価格だけでなく、売却までにかかる時間や手間も含めて比較してみましょう。
ここでは、主な空き家の処分方法として以下の3つを紹介します。
- 不動産仲介
- 不動産買取
- 相続土地国庫帰属制度・自治体への寄付
不動産仲介で売却する
不動産仲介は、不動産会社に買主を探してもらい、市場で売却する一般的な方法です。条件の合う買主が見つかれば相場に近い価格で売却しやすい一方、買主が見つかるまで時間がかかることもあり、その間は空き家の管理を続ける必要があります。
「多少時間がかかっても、できるだけ納得できる価格で売りたい」という意見が多い場合は、まず仲介による売却を検討するとよいでしょう。
不動産会社に買い取ってもらう
不動産買取とは、不動産会社が買主となって物件を直接買い取る方法です。一般の買主を探す必要がないため、売却までの期間や内覧対応などの負担を抑えやすいメリットがあります。
ただし、不動産会社が再販売する都合から買取価格は仲介よりも低くなる傾向があり、一般的には仲介で売却した場合の7割程度になると言われています。「価格よりも早く処分したい」「片付けや売却活動の負担を減らしたい」と考えている場合は、仲介とあわせて査定を取り、条件を比較してみましょう。
売却が難しい場合は国庫帰属制度や寄付を検討する
仲介や買取でも売却が難しい場合は、相続土地国庫帰属制度を利用したり、自治体へ寄付できないか相談したりする方法もあります。
「相続土地国庫帰属制度」は、不要な土地を国に引き取ってもらう制度です。ただし、「建物が建っていない更地であること」「境界が確定していること」「土壌汚染がないこと」などの厳しい審査基準があります。更地にする解体費用が自腹でかかるほか、国に納める審査手数料(1筆1万4,000円)や、原則20万円〜の管理負担金(10年分)が必要です。
共有地の場合は、共有者全員で共同して申請する必要があります。そのため、親族との共有地で反対する人がいる場合は、申請について合意を得なければなりません。
自治体によっては、土地や建物の寄付を受け付けている場合もあります。ただし、希望すれば必ず引き取ってもらえるわけではありません。行政上の活用価値や売却できる見込み、将来の維持管理費などをもとに、受入れの可否が個別に判断されます。
どちらも利用できる条件があるため、相続土地国庫帰属制度については法務局、寄付については不動産がある自治体へ相談してみましょう。
話がまとまらない場合の専門家の選び方

親族だけでは話がまとまらない場合や、相続・税金など専門的な判断が必要になった場合は、状況に応じて専門家へ相談しましょう。主な専門家と相談できる内容は以下のとおりです。
- 不動産会社:空き家の査定や売却方法、仲介・買取の比較などを相談できます。売却価格に納得できず話が進まない場合や、どの処分方法が現実的なのか判断したい場合に適しています。
- 司法書士:相続登記や名義変更など、不動産の権利関係に関する手続きを相談できます。名義が被相続人のままになっている場合や、相続人・共有関係を整理したい場合の相談先です。
- 税理士:空き家を売却した場合の税金や、利用できる特例について相談できます。売却後にどの程度税金がかかるのか、手取りがいくら残るのか確認したい場合に役立ちます。
- 弁護士:遺産分割や共有不動産をめぐって親族間の対立が深く、当事者同士では合意が難しい場合に相談できます。必要に応じて、法的な解決方法や手続きについても助言を受けられます。
ちなみに、司法書士・税理士・弁護士は初回限定の無料相談を受け付けていることがあります。無料相談を利用する際には、限られた時間を活用するためにも、登記事項証明書や相続関係が分かる資料、これまで親族間で話し合った内容などを整理しておきましょう。
A1. 全体の売却には原則として全員の同意が必要です。ご自身の持分だけを売却する方法もありますが、親族間の関係にも影響するため、まずは弁護士などの専門家を交えて話し合うことをおすすめします。
A2. 認知症と診断されたことだけで、売却できないと決まるわけではありません。契約に必要な意思能力がない場合は、成年後見制度の利用などを検討します。成年後見人が本人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です。施設入所前に住んでいた実家も対象に含まれるため、専門家に確認しましょう。
A3. 物件の規模や立地、状態、管理方法によって異なります。固定資産税や保険料、光熱費、草刈り・修繕費、現地への交通費などを合計してみましょう。納税通知書や過去の支出をもとに計算すると、親族との話し合いに使える具体的な金額が分かります。
まとめ|親族の反対理由を整理し、判断材料をそろえて話し合おう
空き家になった実家の処分について親族の意見が分かれたときは、まず名義や相続状況を確認し、誰の同意が必要なのかを整理しましょう。そのうえで、実家を残したい理由や売却への不安を一つずつ確認していくことが大切です。
話し合いでは、維持費や管理の負担、空き家を残すリスク、売却・買取などの選択肢を具体的な判断材料として共有してみましょう。家族だけでは話がまとまらない場合は、不動産会社や司法書士、税理士、弁護士などの専門家も頼りながら、実家を今後どうしていくのか納得できる形を探していきましょう。
親族間で意見がまとまらず、何から手をつければよいか分からない場合は、アキサポの空き家の相談窓口もご活用ください。売却・活用のどちらが良いか決まっていない段階でも、物件の状況を伺いながら、選択肢を整理するお手伝いができます。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






