公開日:2025.08.30 更新日:2026.08.27
公正証書とは?主な種類・効力と公正証書遺言の作成方法・費用を解説

公正証書とは、個人や法人からの依頼を受け、公証人が作成する公文書です。契約や遺言など、さまざまな場面で利用されています。
公正証書について調べている方のなかには「一般的な契約書と何が違うの?」「費用や効力はどうなの?」と疑問を持っている方もいるでしょう。なかでも、空き家や不動産の承継を考える際に関係が深いのが「公正証書遺言」です。
この記事では、公正証書の意味や私文書との違い、主な種類・効力を説明したうえで、公正証書遺言のメリット・デメリット、作成手順、必要書類、費用などを解説します。空き家や不動産を誰に引き継いでもらうか考えている方も、ぜひ参考にしてください。
目次
公正証書とは?公証人が作成する公文書

公正証書とは、個人や法人からの依頼を受け、公証人がその権限に基づいて作成する公文書です。
公証人は、当事者の本人確認や意思確認を行い、内容が法令や公序良俗に反していないかを確認したうえで文書を作成します。そのため、当事者だけで作成した文書と比べて高い証明力があり、契約や遺言の内容をめぐるトラブルの予防に役立ちます。
また、公正証書の原本は公証役場または日本公証人連合会のシステムで保存されるため、紛失や改ざんのリスクを抑えられることも特徴です。
公正証書と私文書の違い
公正証書と私文書の大きな違いは、作成者と証明力です。公正証書は公証人が作成する公文書であるのに対し、私文書は個人や会社などが作成する文書を指します。
契約書や合意書、借用書などを当事者間で作成した場合は、原則として私文書に該当します。公正証書と私文書の具体的な違いは、以下のとおりです。
| 項目 | 公正証書 | 私文書 |
|---|---|---|
| 作成者 | 公証人(公務員) | 個人や会社など |
| 文書の扱い | 公文書 | 私文書(公文書以外の文書) |
| 証明力 | 文書が真正に成立したものと強力に推定される | 争いになった場合、成立の真正を証明する必要がある |
| 原本の保存 | 公証役場・公証人連合会電子システムで保存 | 当事者自身が保存 |
| 強制執行 | 一定の要件を満たせば裁判なしで執行可能 | 原則として裁判などの手続きが必要 |
| 作成費用 | 公証人手数料等がかかる | 当事者作成なら公証人手数料は不要 |
私文書であっても、必要な条件を満たしていれば契約書などとして効力を持ちます。ただし、将来トラブルになる可能性がある契約や、金銭・不動産など重要な内容を文書に残したい場合は、公正証書を作成することで合意内容を証明しやすくなります。
なお、公正証書であれば、すべて裁判を経ずに強制執行できるわけではありません。一定額の金銭の支払いと、支払わない場合は直ちに強制執行に応じる旨が記載された公正証書など、所定の条件を満たす必要があります。
公正証書の主な種類

公正証書は、作成する目的に応じて、大きく以下の3種類に分けられます。
| 種類 | 内容 | 主な例 |
|---|---|---|
| 契約に関する公正証書 | 当事者間で合意した契約内容を証明する | 土地・建物の売買・賃貸借契約、金銭消費貸借契約 |
| 単独行為に関する公正証書 | 一人の意思表示の内容を証明する | 公正証書遺言、保証意思宣明 |
| 事実実験公正証書 | 公証人が実際に確認した事実や状況を記録する | 特許権の侵害状況、貸金庫の開扉確認、尊厳死の意思表示 |
公正証書は、金銭の貸し借りや不動産の賃貸借、離婚、相続など、将来のトラブルを防ぐために幅広く利用されています。ただし、種類によって作成する目的や得られる効力は異なるため、残したい内容に合った公正証書を選ぶことが大切です。
空き家や不動産の承継を考える方と特に関係が深いのが、公正証書遺言です。公正証書の効力を確認したうえで、後半では公正証書遺言の特徴や作成方法を詳しく見ていきます。
公正証書の効力|証明力と強制執行力
公証人が本人の意思や契約内容を確認したうえで作成する公正証書は、文書が真正に成立したものと強く推定され、裁判などで争いになった場合も有力な証拠となります。
また、一定の条件を満たす公正証書には、裁判手続きを経ずに強制執行できる効力があります。対象となるのは、金銭の支払いを目的とする債務について、主に以下の内容が記載されている場合です。
- 一定額の金銭を支払うことについての合意
- 支払わない場合は、直ちに強制執行に応じる旨の意思表示
このような公正証書は「執行証書」と呼ばれ、債務が履行されなかった場合は、裁判で判決を得ることなく強制執行の手続きを進められます。
本記事で扱う公正証書遺言では、公証人の関与によって本人の意思を明確に残し、方式の不備や紛失・改ざんのリスクを抑えられる点が重要になります。ここからは、公正証書遺言の特徴や自筆証書遺言との違いを見ていきましょう。
公正証書遺言とは?自筆証書遺言との違いは?

公正証書遺言とは「誰に、どの財産を引き継いでもらいたいか」といった希望を公証人に伝え、公正証書としてまとめてもらう遺言です。
公証人は、公証役場で公正証書を作成する法律の専門家です。本人から希望を聞いて遺言の内容をまとめ、証人2名の立ち会いのもとで、内容に間違いがないかを確認します。
遺言書には、公正証書遺言のほかにも、自分で書いて作成する方法などがあります。まずは遺言書の種類を整理し、公正証書遺言と自筆証書遺言の違いを見ていきましょう。
遺言書には公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言がある
現行制度における普通方式の遺言には、主に次の3種類があります。
| 種類 | 作成方法 | 保管・検認 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 本文・日付・氏名を本人が手書きし、押印する | 自宅などで保管する場合は検認が必要。法務局の保管制度を利用すれば不要 | 自分で作成でき、費用を抑えやすい |
| 公正証書遺言 | 公証人が遺言者の意思を確認し、証人2名の立ち会いのもとで作成する | 原本が公的に保管され、検認は不要 | 形式不備や紛失のリスクを抑えやすい |
| 秘密証書遺言 | 本人が作成・封印した遺言書を、公証人と証人2名に提出する | 本人が保管し、相続開始後の検認が必要 | 内容を秘密にできる一方、公証人による内容の確認は受けられない |
自筆証書遺言の財産目録は、パソコンで作成したり、通帳や登記事項証明書のコピーを添付したりすることも可能です。その場合は、財産目録の各ページに署名と押印が必要です。
秘密証書遺言は、緊急時に作成する遺言ではありません。内容を明かさずに遺言書の存在を公証してもらう方法ですが、形式不備や保管上のリスクが残るため、現在はあまり利用されていません。
公正証書遺言と自筆証書遺言との違い
自筆証書遺言と公正証書遺言では、作成方法や費用、保管方法、検認の必要性などが異なります。
自筆証書遺言は、費用をかけず一人で作成できます。ただし、本文・日付・氏名の自書や押印など、民法で定められた方式を守らなければなりません。自宅などで保管した場合は、相続開始後に家庭裁判所の検認が必要ですが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要です。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認しながら作成します。証人2名の立ち会いや費用は必要になるものの、形式不備のリスクを抑えやすく、原本の紛失や改ざんも防げます。家庭裁判所の検認も必要ないため、相続開始後の手続きを進めやすいことも特徴です。
公正証書遺言が安全性の高い方法とされる理由は?
公正証書遺言の安心感が高いとされるのは、法律の専門家である公証人が、遺言者の意思や判断能力、内容の適法性を確認しながら作成するためです。証人2名も立ち会うため、作成時の状況を確認できる人がいるという安心感もあります。
そのため、書き方の不備によって無効になるリスクを抑えやすく、作成経緯についても信用性の高い遺言書を残せます。
なお、法律で定められた方式を満たしていれば、遺言書の法的効力に種類による上下はありません。公正証書遺言だけが、自筆証書遺言より強い効力を持つわけではない点に注意しましょう。
公正証書遺言を作成するメリット・デメリット

公正証書遺言は、自分の意思を残したいと考える方にとって、メリットの大きい方法です。公証人が作成に関わるため、自分だけで遺言書を作る場合に比べて、書き方や保管に関する不安を減らせます。
その一方で、作成には費用がかかり、証人2名も必要です。公正証書遺言を選んでから後悔しないよう、どのようなメリットとデメリットがあるのかを確認していきましょう。
メリット① 形式不備による無効リスクを抑えやすい
公正証書遺言の代表的なメリットの一つが、書き方の不備によって遺言書が無効になるリスクを抑えやすいことです。
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が必要な要件を確認しながら遺言の内容をまとめるため、日付や署名、押印などの不備を防げるうえに、自筆証書遺言で起こり得る、書き方や訂正方法の誤りを心配する必要も少なくなります。
さらに作成時には、遺言者本人の意思や判断能力の確認も行います。証人2名も立ち会うため、相続開始後に遺言書の作成経緯について争われた場合にも、有力な証拠となり得ます。
メリット② 紛失や改ざんのリスクを抑えられる
公正証書遺言の原本は公的に保管されるため、自宅の火災や災害で失われたり、第三者に隠されたり、書き換えられたりするリスクがありません。
2025年10月以降、公正証書の原本は原則として電子データで作成され、日本公証人連合会が運営するシステムに保存されています。それ以前に紙で作成された原本は、公証役場で保管されています。
なお、手元の正本や謄本を紛失しても、必要な手続きをすれば再交付を受けられます。相続開始後には、相続人などの利害関係人が遺言検索システムを利用し、公正証書遺言の有無や保管先を調べることも可能です。
デメリット① 公証人手数料や証人費用がかかる
デメリットの一つが、公正証書遺言の作成に公証人手数料がかかることが挙げられます。手数料は、財産を受け取る相続人や受遺者ごとに、その人が受け取る財産の価額をもとに計算されます。
そのほか、正本や謄本の交付費用、公証役場から証人を紹介してもらう場合の費用などがかかることもあります。弁護士や司法書士などへ相談や作成支援を依頼すれば、専門家への報酬も必要です。
デメリット② 証人2名が必要で内容を知られる
公正証書遺言を作成するには、証人2名の立ち会いが必要です。証人は遺言の内容を確認するため、人によっては、財産の内訳や誰に何を残すのかを知られることが精神的な負担になる可能性があります。
証人になれるのは、未成年者や遺言の内容と直接的な利害関係がある人などを除いた成人です。証人には法律上の欠格事由があり、推定相続人や受遺者、その配偶者・直系血族などは証人になれません。
知人に遺言の内容を知られたくない場合や、頼める人が見つからない場合は、公証役場に証人の紹介を依頼できます。ただし、別途費用がかかるため、紹介料も含めて事前に確認しておきましょう。
公正証書遺言を検討したいケースは?

公正証書遺言は、家族関係や財産の内容が複雑で、「誰に何を引き継いでもらうか」を明確に残したい場合に向いています。
具体的にどのようなケースで検討したいのかを見ていきましょう。
相続人が多い・関係が複雑なとき
相続人が多い場合や、相続人同士の関係が複雑な場合は、遺産分割協議で全員の意見をまとめることが難しくなる可能性があります。
そんなとき、公正証書遺言で財産の承継先を明確にしておけば、遺言で指定した財産については、その内容に沿って相続手続きを進めやすくなります。また、過去に財産をめぐるトラブルがあった場合や、相続人のなかに行方がわからない人がいる場合なども、同様に検討したいケースとして挙げられます。
法定相続分と異なる配分を希望するとき
「事業を継ぐ子どもに多く財産を残したい」「介護を担ってくれた家族に多めに引き継いでもらいたい」など、法定相続分とは異なる配分を希望する場合にも遺言書が役立ちます。
公正証書遺言で希望する配分を明確にしておけば、本人の意思を相続手続きに反映しやすくなります。
ただし、配偶者や子どもなど一定の相続人には、最低限の取り分である「遺留分」があります。遺留分を侵害する内容の遺言も直ちに無効になるわけではありませんが、遺留分侵害額請求を受ける可能性があるため、配分は慎重に検討しましょう。
空き家・不動産の承継先を明確にしたいとき
自宅や収益物件などの不動産は、相続財産のなかでも特に遺産分割が難しい資産です。誰が相続するか、売却して分配するかといった意見で対立しやすく、トラブルに発展するケースも少なくありません。
そこで有効なのが、公正証書遺言の作成です。公正証書遺言で不動産を正確に特定し、誰に引き継いでもらうかを明記しておけば、相続登記やその後の管理を進めやすくなります。承継先が決まらないまま空き家が放置されるリスクを抑えることにもつながるでしょう。
なお、不動産を売却して代金を分ける方法などを希望する場合は、実現できる内容になっているか、公証人や弁護士などへ相談しながら遺言を作成することが大切です。
遺言執行者を指定したいとき
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。不動産の名義変更や預貯金に関する手続きなどを任せることで、相続開始後の手続きを進めやすくなります。
遺言執行者は、公正証書遺言に限らず、遺言書のなかで指定できます。相続人の一人を指定することもできますが、財産や家族関係が複雑な場合は、弁護士などの専門家を指定する方法もあります。
公正証書遺言の費用|2025年10月改定後の計算方法

公正証書遺言を作成するときは、公証人手数料のほか、証人の紹介料や正本・謄本の交付費用などがかかります。弁護士や税理士などへ相談する場合は、専門家への報酬も必要です。
中心となる公証人手数料は、財産を受け取る人ごとに計算する仕組みになっており、それぞれが受け取る財産の価額から手数料を出し、最後にすべての金額を合計します。まずは、2025年10月に改定された現在の料金表を確認しましょう。
目的価額別の公証人手数料
公証人手数料は「目的価額」をもとに計算します。公正証書遺言における目的価額とは、相続人や受遺者がそれぞれ受け取る財産の価額です。
| 目的価額 | 公証人基本手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 1万3,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 2万円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 2万6,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 3万3,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 4万9,000円 |
また、目的価額が1億円を超える場合は、次のように計算します。
- 1億円を超え3億円以下:4万9,000円に、1億円を超える部分5,000万円までごとに1万5,000円を加算
- 3億円を超え10億円以下:10万9,000円に、3億円を超える部分5,000万円までごとに1万3,000円を加算
- 10億円を超える場合:29万1,000円に、10億円を超える部分5,000万円までごとに9,000円を加算
受取人が複数いる場合・遺言加算・出張時の追加費用
財産を受け取る人が複数いる場合は、それぞれが受け取る財産の価額に応じて手数料を計算し、その金額を合計します。
たとえば、1億円の財産を妻一人に相続させる場合、基本手数料は4万9,000円です。一方、妻に6,000万円、長男に4,000万円を相続させる場合は、妻の4万9,000円と長男の3万3,000円を合計し、8万2,000円となります。
さらに、遺言書に記載する財産の目的価額の合計が1億円以下の場合は「遺言加算」として1万3,000円が追加されます。そのため、上記の例では次の金額になります。
- 妻一人に1億円を相続:4万9,000円+1万3,000円=6万2,000円
- 妻に6,000万円、長男に4,000万円を相続:8万2,000円+1万3,000円=9万5,000円
なお、病気や高齢などの事情で公証役場へ行けず、公証人に病院や自宅へ来てもらう場合は、追加費用がかかります。病床での作成では、目的価額に応じた手数料が通常の1.5倍になる場合があるほか、日当として2万円、4時間以内なら1万円、交通費の実費が必要です。
証人紹介料・専門家報酬・交付費用
証人の紹介を公証役場に依頼する場合は別途紹介料がかかります。全国一律の料金ではないため、依頼する公証役場へ事前に確認しましょう。
弁護士や司法書士へ遺言内容の相談や書類収集を依頼する場合や、税理士へ相続税について相談する場合も、それぞれ報酬が発生します。料金は依頼先やサポートの範囲によって異なるため、見積もりを取って確認することが大切です。
また、公正証書に関する書面の交付には1枚300円、電子データでの交付には1件2,500円がかかります。公正証書遺言の原本を保管してもらうための手数料はかかりません。
費用を抑えるためのポイント

公正証書遺言の作成費用を抑えるポイントは、次のとおりです。
- 必要書類を自分で集める
- 遺言の内容をあらかじめ整理しておく
- 公証人へ直接相談する
- 証人を自分で用意する
- 専門家へ依頼する場合は料金を比較する
公証人手数料は法令で定められているため、公証役場によって安くなるものではありません。費用を抑えたい場合は、書類収集や証人の紹介、専門家への依頼にかかる費用を見直しましょう。
また、弁護士や司法書士などのサポートが必要な場合は、無料相談を利用したり、複数の事務所から見積もりを取ったりして、料金と依頼できる範囲を比較しましょう。ただし、財産や家族関係が複雑な場合は、費用だけで判断せず、必要に応じて専門家へ相談することも大切です。
公正証書遺言の作成手順・必要書類
公正証書遺言は、遺言の内容を整理したうえで公証役場へ相談し、公証人との打ち合わせを重ねながら作成します。おおまかな流れは、次のとおりです。
誰にどの財産(不動産・預貯金など)を残すか、希望する分け方を書き出します。
戸籍謄本や登記事項証明書などを準備し、公証役場(または専門家)へ連絡して相談します。
公証人が作成した遺言文案を確認し、内容の修正や手数料の試算を行います。
利害関係のない証人2名を確保(公証役場へ紹介依頼も可)し、作成日時を予約します。
公証役場(または自宅等)にて、公証人が内容を読み上げ、遺言者と証人が署名・押印して完成します。
公証人との打ち合わせでは、財産の内訳や相続させたい相手、遺言執行者を指定するかどうかなどを確認します。やり取りの方法や回数は公証役場によって異なりますが、電話やメールなどで文案を調整し、内容が固まってから作成日を決めるのが一般的です。
作成当日は、遺言者が証人2名の前で遺言の内容を公証人に伝え、公証人が内容を読み上げるなどして確認します。
当日の所要時間は、遺言の内容や確認事項によって異なります。30分程度を目安として案内している公証役場もありますが、余裕を持って予定を空け、予約時に確認しておくと安心です。相談から完成までの日数も、必要書類をそろえる期間や文案の調整、予約状況によって変わるため、早めに準備を始めましょう。
公正証書遺言の必要書類
公正証書遺言の作成では、主に次の書類や資料を用意します。
| 書類・資料 | 必要となるケース・用途 |
| 本人確認資料 | 印鑑登録証明書と実印、または運転免許証・マイナンバーカードなど |
| 戸籍謄本 | 遺言者と相続人の続柄を確認するため |
| 受遺者の住所がわかる資料 | 相続人以外の人に財産を渡す場合 |
| 不動産の登記事項証明書 | 土地や建物を遺言の対象とする場合 |
| 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書 | 不動産の評価額を確認するため |
| 預貯金通帳のコピーなど | 預貯金の金融機関名や口座を確認するため |
| 証人2名の氏名・住所・生年月日がわかる資料 | 証人を自分で手配する場合 |
| 遺言執行者の住所・氏名・生年月日がわかる資料 | 相続人や受遺者以外の人を遺言執行者に指定する場合 |
必要書類は、遺言の内容や財産の種類によって変わります。自分で判断してすべてそろえるのではなく、最初に公証役場へ相談し、必要なものを確認してから準備するとスムーズです。
作成後の保管・検索・変更・撤回方法
公正証書遺言を作成したあとは、原本は公的に管理され、必要になったときに探せるほか、作成後に家族や財産の状況が変わった場合は、内容の変更や撤回も可能です。
ここでは、作成後の基本的な対応について解説します。
遺言検索システムの利用方法は?
公正証書遺言の原本は、紙で作成された原本は公証役場、電子データで作成された原本は日本公証人連合会が運営するシステムで保管されます。
遺言者には、いわゆる正本・謄本にあたる書面または電子データが交付されます。手元の書面を紛失しても原本が失われるわけではなく、公証役場に改めて交付を請求できます。現在の交付手数料は、書面の場合は1枚300円、電子データの場合は1件2,500円です。
相続が始まったあとに公正証書遺言が見つからない場合は、全国の公証役場で「遺言検索システム」を利用できます。平成元年以降に作成された公正証書遺言が対象で、検索自体に費用はかかりません。
検索を申し出る際は、遺言者が亡くなったことを示す除籍謄本、相続人であることを示す戸籍謄本、本人確認書類などが必要です。検索によって遺言の有無と保管先がわかり、その後、保管している公証役場へ謄本を請求できます。
遺言の内容を変更・撤回するには
公正証書遺言を変更・撤回したい場合は、新しい遺言書を作成し直す必要があります。新しい遺言と以前の遺言で内容が重なる場合は、日付の新しい遺言が優先され、矛盾する部分については以前の遺言が撤回されたものとみなされます。
矛盾しない部分はそのまま残るため、変更する際は全体を作り直し、以前の遺言を撤回する旨も明記したほうが確実です。なお、公正証書遺言として作り直す場合は、改めて公証人手数料や証人にかかる費用が必要になります。
公正証書遺言に有効期限はある?
公正証書遺言そのものに有効期限はありません。適式に作成された遺言は、撤回などがされない限り存続し、遺言者が死亡した時に効力が生じます。
ただし、相続人の死亡や出生、不動産の売却など、家庭状況や財産内容の変化によって、遺言内容の見直しが必要になることは考えられます。また、相続や遺産分割に関わる法律が改正されると、遺言書の法的効力や内容が想定とずれる可能性もあります。
こうしたリスクを避けるためにも、結婚や離婚、家族の死亡、不動産の売買など、大きな変化があったタイミングで内容を確認し、必要に応じて見直しましょう。
ただし、公証人に自宅や病院などへ出張してもらう場合は、その公証人が所属する法務局・地方法務局の管轄区域内に限られます。出張を希望する場合は、遺言者がいる地域の公証役場へ相談しましょう。
また、離島に住んでいる場合や感染症対策などの事情があり、公証人が本人確認や意思確認に問題がないと判断した場合には、ウェブ会議を利用して作成できることもあります。誰でも利用できるわけではないため、まずは公証役場へ状況を伝えて相談しましょう。
作成時に遺言の内容を理解して判断する能力がなかったと認められた場合などは、相続開始後に有効性を争われる可能性があります。認知症の診断を受けている場合でも、診断名だけで一律に判断されるわけではなく、作成時点の状態が重要です。判断能力に不安がある場合は、早めに公証人へ相談し、必要に応じて医師の診断書など、作成時の状態がわかる資料を用意しておくとよいでしょう。
公正証書遺言で空き家を引き継ぐなら|将来の活用はアキサポへ相談
公正証書遺言で空き家を誰に残すか決めても、それだけで空き家の問題が解決するとは限りません。受け継いだ家に住む人がいなければ、相続した方に管理の手間や費用がかかり続けます。
そこで、遺言書については公証人や弁護士などに相談しながら、その家を今後どうするかについては、アキサポに相談してみましょう。
アキサポの「空き家なんでも相談窓口」では、活用・売却・管理・解体など、さまざまな選択肢から空き家の将来を一緒に考えてもらえます。相談料や提案料はかからず、相続登記が必要な場合は、提携する司法書士法人の紹介も可能です。
まだ売るか残すか決めていない段階でも構いません。大切な家を次の世代へどうつなぐのか、公正証書遺言を作成する前に整理してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






