公開日:2025.10.11 更新日:2025.09.26
NEW賃貸住宅管理業法とは?賃貸経営オーナーが知るべきポイントや罰則を解説

賃貸住宅管理業法(正式名称:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)は、賃貸住宅の管理業務を行う事業者に対して登録制度や業務上のルールを定める重要な法律です。本記事では、この賃貸住宅管理業法が制定された背景や目的、具体的な規制内容、業者が行うべき対応策などを詳しく解説します。
目次
賃貸住宅管理業法の背景と目的

まずは本法律が成立した背景と、国が目指す目的について確認していきましょう。
法制定の経緯と業界の課題
賃貸住宅管理業法が制定された背景には、長期にわたる不動産業界の課題が存在します。特に、家主に対する不透明な契約条件や、家賃・敷金などの預かり金の不適切な管理が問題視されていました。また、業者間の競争激化に伴う誇大広告や不当勧誘が蔓延し、サブリース契約における家賃減額リスクなどのトラブルも多発していました。
こうした状況を改善するために、国土交通省は管理業者の登録制度や業務管理者の配置を義務付け、公平な法制度のもとで利用者保護を強化しようとする動きに踏み切ったのです。
施行日と影響範囲
本法は2020年6月12日に成立し、サブリース事業者への規制は2020年12月15日から、賃貸管理業者への登録義務は2021年6月15日から施行。対象は、賃貸住宅の管理を業として行う事業者全般ですが、登録が義務となるのは管理戸数が「200戸以上」の事業者に限られます。200戸未満は任意登録(登録すれば法第2章の規制に服する)になりますが、賃貸住宅を取り扱う多くのプレイヤーが法律の適用を受けることになり、登録義務を果たさなければならないため、この施行は業界全体の実務に大きな影響を及ぼしています。
【要点解説】賃貸住宅管理業法の主要な規制内容

次に、本法律で新たに定められた主な規制内容について確認していきましょう。今回明確化された中で注目すべきは、「サブリース契約」「不当な勧誘・誇大広告」「契約前の説明責任」に関するルール化です。それぞれ詳しく解説していきます。
サブリース(マスターリース)契約に関する規制
サブリース(マスターリース)契約とは、管理会社が物件を一括して借り上げ、転貸するビジネスモデルです。この仕組み自体は家主にとって安定した家賃収入が見込めるメリットがある一方で、契約時には長期的なリスクや運営コストなどの詳細を共有しておかなくてはなりません。
賃貸住宅管理業法では、誇大広告や不当勧誘を禁止するとともに、契約前の重要事項説明を行うことで、リスクを含めた正確な情報提供を義務付けています。
不当な勧誘・誇大広告の禁止
従来は、サブリース契約の勧誘において極端に高い利回りや安心できる保証を謳い、実態と乖離した表現が多用されるケースが問題視されていました。本法では、誇大広告はもとより、借主の利益を不当に損ねるような勧誘全般を禁止しており、リスクやデメリットまで正確な提示を義務化。これらの規制は、契約トラブルの未然防止に大きく貢献しています。
契約時の重要事項説明と書面交付
賃貸住宅管理業法では、家主との賃貸管理受託契約を締結する前に、重要事項説明の実施と書面交付が必須であり、さらに契約締結時には契約内容の書面交付も義務付けられています。これは、不動産管理をめぐるトラブルを回避するうえで重要なステップ。契約内容や物件の状況、資金の受け渡しに関するルールなどを詳細に説明し、書面によって記録することで、後々の齟齬をなくす狙いがあります。
賃貸住宅管理業者への登録制度と義務

賃貸住宅管理業法では、一定の基準を満たす事業者は国土交通大臣への登録が義務付けられています。ここでは管理業者として登録するために必要な要件や、登録後に課される義務について解説していきます。
業務管理者の配置と登録要件
賃貸住宅管理業法では、主たる事務所または従たる事務所ごとに、業務管理者の配置が義務付けられています。業務管理者は賃貸管理業務の経験や専門知識を活かし、契約内容や家主・入居者対応を監督し、コンプライアンスリスクを低減することが主な目的です。
業務管理者は、賃貸不動産経営管理士の資格や講習修了の実績を有することなど、法律で定められた基準を満たす必要があります。
家賃や敷金などの分別管理
家賃や敷金は家主から委託された金銭として扱われるため、賃貸住宅管理業者は運営資金と分ける必要があり、法的には「分別管理」が義務付けられています。従来は不透明な会計処理が行われ、借主やオーナーとの間で金銭トラブルに発展するケースも見受けられました。本法のもとでは、預かり金を分別管理し、必要に応じて明確な記録を提示できる仕組みを整えることを目指しています。
定期報告の義務と違反時の罰則
登録事業者は国交省への「業務等状況報告(いわゆる9条報告)」の義務(受託戸数・分別管理状況等を報告)や、オーナー(委託者)への「年1回以上の定期報告」義務(家賃等収受状況・維持保全・苦情対応等)もあります。これにより、業界全体の実態把握や法令違反を早期に発見し、是正を促す仕組みの確立を目指しています。
万が一虚偽の報告や重大な違反があった場合は、登録取消や業務停止などの厳しい罰則が科される恐れがあるため注意が必要です。
国交省のパトロール(立入検査)と実施状況

本法の執行を担う国土交通省は、登録事業者に対して定期的または不定期に立入検査を実施します。これは、契約書や顧客管理の方法、財務状況などをチェックし、法令違反の有無を確認するためです。
検査では、重要事項説明の内容や広告表示が適正に行われているか、家賃や敷金が適切に分別管理されているかなどを重点的に調査。これにより、管理業務の透明性を高め、不当行為を早期に発見して是正しやすくなります。
もし違反が指摘された場合、是正命令や業務停止命令などの行政処分が科されることもあるので要注意。悪質なケースでは登録取消につながるため、日頃から社内体制を整備し、法令に即した管理運営を徹底することが重要です。
関連ガイドライン・FAQ・賃貸不動産経営管理士の役割

国土交通省は、賃貸住宅管理業法を円滑に実施するために、ガイドラインやFAQを整備。これらの文書を参照することで、業者は法令の要件を正確に理解し、適正な業務手順を確立しやすくなります。特に広告や書類の作成方法など、実務レベルで迷いやすい点についても具体的な例が示されていることが多いです。
また、賃貸不動産経営管理士の資格も業界の専門知識を証明するものとして注目されています。法律や管理実務における幅広い知識を有するため、登録業者での業務管理や契約時の重要事項説明などのシーンで活躍が期待できます。
ガイドラインの活用ポイント
ガイドラインを活用する際には、単に規定項目を読むだけでなく、自社の運営体制と照らし合わせて具体的な対策を立案することがポイントです。たとえば広告では、物件の魅力を過度に強調する文言が違反に当たる恐れがあるため、記事や写真の表現方法を慎重に見直すなど、日頃からチェック体制を整えておくようにしましょう。
賃貸不動産経営管理士と業法の関係
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業法で業務管理者の要件として認められている人材。法律面の知識はもちろん、入居者の募集から退去時の清算に至るまで賃貸管理全般に精通しているため、業者からの信頼も得やすく、今後もこの資格の重要性は高まると考えられています。
賃貸住宅管理業者が取るべき対応策と効率化のポイント

賃貸住宅管理業法の適用を受ける事業者は、まず社内の契約書や重要事項説明書の整備状況を見直し、必要に応じて最新の法令に即した書式に改定する必要があります。あわせて、担当者に対する教育や研修を実施し、潜在的な違反リスクを減らす仕組み作りが重要です。
また、定期報告の義務化に伴い、申請用書類の作成や顧客情報の管理体制を整備することも欠かせません。ここからは、実際に業法を遵守するために必要な具体策を整理し、効率的な管理体制を構築するポイントをご紹介します。
契約・書面の整備と社内体制の構築
法改正に対応した書類を整備するだけでなく、社内でのダブルチェック体制を整えることがポイント。具体的には、契約書や重要事項説明のチェックリストを作成し、不備や誤表記がないかを複数の担当者が点検するなど、ミスを未然に防ぐプロセスを導入するのが望ましいでしょう。こうした取り組みは、貸主や借主の安心感を高め、クレーム発生率を下げる効果も期待できます。
システム導入による業務効率化
管理業務の効率化を図るため、クラウド型の不動産管理システムを導入する事業者が増えています。家賃の入金管理や書類作成の自動化を実現すれば、法令順守の管理体制がスムーズに回りやすくなるうえ、人的ミス削減にも繋がります。システム導入と合わせて運用体制を見直すことで、業務全体の生産性向上とコンプライアンス強化を同時に達成することができるでしょう。
まとめ
賃貸住宅管理業法は、業界の健全化と利用者保護を目的に策定され、サブリース契約のリスクや不当な勧誘・広告を防止する点が大きな特徴です。また、登録制度や業務管理者の配置、定期報告の義務によって管理業者の責任が明確化されるため、違反時には厳しい罰則が科されることがあります。
さらに、家賃や敷金の分別管理や書類の整備といった実務面での要求も高まっており、システム導入や人材育成など総合的な体制づくりが欠かせません。今後も関連法の改正や新たなガイドラインの発行が続く可能性があるため、常に最新情報をキャッチアップして適切な対応を行うことが不可欠です。賃貸住宅管理業法を踏まえた運営体制を速やかに整備し、長期的な信頼獲得と安定した事業運営を実現していきましょう。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。