公開日:2025.10.22 更新日:2025.09.26
NEW不動産管理が賃貸経営に重要な理由とは?基本知識とポイントを解説

将来に向けた資産形成の重要性が高まる中、不動産経営に注目が集まっています。適切に運営できれば、毎月安定した家賃収入を得られるのが大きな魅力です。ただ、不動産管理の方法や、管理会社の選び方、入居者対応や建物の維持管理など、始めるために様々な知識が必要になるため、ハードルが高く感じるのも確かです。
実際、修繕や清掃を怠れば入居者満足度が下がり、空室リスクが高まりますし、トラブル対応を誤れば信頼を損ねて退去につながることもありますし、管理会社に委託する場合は委託料がかかるため、収益性とのバランスを考える必要があります。
そこで、この記事では、賃貸管理の基本業務から自主管理・管理会社委託・サブリースの特徴、管理会社やサブリース会社の選び方までを体系的に解説します。自分に合った管理方法を見極め、安定した賃貸経営を実現するための参考にしてください。
目次
不動産管理賃貸はなぜ重要?2つの理由を解説

不動産管理は「収益の安定化」と「資産価値の維持」に強く影響する、賃貸経営の「基盤」のような存在です。
まず「収益の安定化」ですが、家賃収入を継続的に得るには、物件の価値を維持して入居者が安心して暮らせる環境を整えることが求められます。そして、環境を良好に維持できるかは、日々の不動産管理が大きな役割を果たします。
たとえば、共用部分の修繕や消耗品交換を放置すると「管理が行き届いていない物件」とみなされ、入居者からの評価が下がったり、入居希望者から敬遠されたりする恐れがあります。さらに、入居者間でのトラブルを適切に解決しなかった場合、管理者への不信感から退去してしまう人が出ることもあるでしょう。
次に「資産価値の維持」ですが、賃貸管理は将来的な売却を計画するうえでも重要です。早めの修繕や定期的なリフォームを心がければ、築年数が経っても良い状態を維持できます。これにより、将来的な売却時に**「物件の資産価値」**を高く評価されることにつながります。
どの要素も欠けると経営リスクが高まるため、計画的かつ継続的に取り組むことが重要です。
賃貸管理の基本業務(入居者対応)
賃貸管理の業務は、主に「入居者対応」と「建物管理」の2つに大別できます。まずは、オーナーの負担になりやすい入居者対応から詳しく見ていきましょう。
入居者対応とは、入居者から家賃を集めたり、入居者からの要望やクレームに対応したりする業務です。主な業務は次のとおりです。
- 入居者の募集
- 家賃の集金
- 契約の管理
- 要望やクレームの対応
- 近隣トラブルの対応
入居者対応は細かな作業が多く、部屋数の数が管理者の負担に直結しやすい特徴があります。ただ、定期的な業務が多いため、自分が直接対応しなくても回るような仕組みを作っておけば、負担を大きく減らすことができます。
また、クレーム対応のようなイレギュラーな業務は、1回対応するだけで大きな労力がかかる可能性があります。イレギュラーな業務が重なると疲れますし、対応に失敗すると満足度を下げる可能性があるため、不動産管理会社のようなプロに頼れる仕組みを作っておくと安心です。
賃貸管理の基本業務(建物管理)
建物管理とは、物件の共用部分や建物本体、設備などの維持管理を行う業務です。主な作業には以下のようなものがあります。
- 共有部分の維持管理
- 設備点検
- 修繕
- リフォーム
- 消防設備の点検・管理
- ゴミの管理
建物管理はクレーム対応のように緊急性が高い業務が少ないですが、入居者の満足度や物件の状態を良好に保つためにも、なるべく早く対応するべきです。たとえば、共有部分の掃除は毎日行うのが理想的ですし、破損部分の修繕は、軽微なものなら数日以内に対応したいところです。すぐに修繕するのが難しい場合は、今後の対応方針やスケジュールを告知しておきましょう。
ただ、直接管理している場合は即時対応が難しいケースもあると思います。そのような場合は、無理をせず不動産管理会社への依頼を検討しましょう。
賃貸管理の3つの形態

賃貸管理の方法は大きく「自主管理」「管理会社への委託」「サブリース」の3種類に分けられます。それぞれ、特徴とメリット・デメリットについて見ていきましょう。
自主管理
自主管理は、オーナーが入居者募集から家賃回収、契約更新、トラブル対応までを直接担う方法です。委託料がかからないため収益性を高めやすいのが大きな利点で、入居者と直接やり取りすることで、信頼関係を築きやすい特徴もあります。
デメリットは、深夜の設備故障や家賃滞納といった突発的な問題も自分で解決する必要があることです。賃貸管理の経験が少ない場合や、割ける時間が少ない場合、管理者の負担が大きくなることが予想されます。
4部屋のアパートを1棟程度であれば問題無いかもしれませんが、一人暮らし向けの部屋数が多い物件を扱う場合や、複数棟を運営する場合などは、対応が追い付かなくなるリスクがあるだけでなく、居住者満足度の低下から空室リスクを高めることも考えられます。
管理会社に委託
不動産管理の専門家である管理会社に委託する方法です。管理会社は効率的な運営ノウハウを豊富に持っているため、入居者募集から退去時の立ち会い、修繕やクレーム対応まで、一連の業務を安心して任せられます。
大きなメリットは、オーナーが直接対応する必要がない点です。特に、24時間対応のサポート体制を備えた会社なら、休日や夜間でも入居者対応が可能になり、入居者満足度の向上にもつながります。部屋数が多い物件を扱う場合や、複数棟を扱いたい場合、離れたエリアの物件を扱いたい場合などは特に重要です。
デメリットは管理委託料がかかることです。委託料の相場は5%程度ですが、シビアに収益を追い求める場合は自分で管理することも選択肢に上がってくるかもしれません。なお、管理会社を選ぶ場合は、会社ごとに得意分野やサービスの範囲に差があるため、費用だけでなく対応力や実績も含めて複数社を比較検討しましょう。
サブリース
サブリースとは、サブリース会社(不動産管理会社)がオーナーから物件を一括で借り上げ、オーナーに毎月一定の賃料(保証賃料)を支払う仕組みです。空室があっても固定収入が得られるため、安定性を重視するオーナーに向いています。特に、空室リスクの高いエリアや遠隔地の物件を所有している場合に有効です。
ただし、サブリース契約には「賃料減額請求権」がサブリース会社に認められており、契約内容によっては保証賃料が将来的に減額されたり、オーナーからの中途解約が難しかったりするケースもあるため注意が必要です。
例えば「10年間の契約だが、3年ごとに保証額を見直す」といった条項が盛り込まれている場合、当初の想定よりも実際の収益が減る可能性があります。「賃料が保証されている」と良い部分だけ抜き出して考えずに、保証条件や解約条項を必ず確認し、できるだけ具体的な収益シミュレーションを行いましょう。
賃貸管理の形態を選ぶ際のポイント

賃貸管理の形態は、それぞれにメリット・デメリットがあるため、最終的にはご自身のライフスタイルや賃貸管理の目的に合わせて選択することになります。中でも、以下の3点は重要なので、必ず押さえておきましょう。
- 賃貸物件を運営する目的を明確にする
- 兼業か専業かを決める
- 戸数から管理にかかる労力を想定する
最初に考えるべきことは「何のために賃貸経営を行うのか」という、賃貸管理の目的です。たとえば、副収入として少数戸を運営するなら自主管理でも十分ですが、資産運用として規模拡大を目指す場合は管理会社に委託する方が効率的です。目的が曖昧なまま管理方法を選ぶと、収益性や手間の面でミスマッチが起きやすくなります。
次に、ライフスタイルや目的から、本業を持ちながらの兼業か、不動産経営を専業とするかを決める必要があります。兼業であれば、時間的な制約があるため管理会社委託やサブリースを検討するのが現実的です。
また、自主管理の場合は、扱う戸数を慎重に検討しましょう。10戸以上になると入居者対応や修繕依頼が頻発し、個人での対応は困難になるケースが多いです。
最後に、管理に割ける時間と物件の立地も検討しましょう。たとえば、都内在住のオーナーが地方に所有する物件を自主管理しようとすると、設備故障や退去立ち会いのたびに出向く必要があり、現実的ではありません。距離的に負担が大きい場合は、管理会社に委託するかサブリースを利用するのが安心です。
不動産管理を依頼する会社の選び方
不動産管理会社を選ぶ際は、費用だけにとらわれず、総合的な視点で判断することが大切です。宅地建物取引業法に基づき、重要事項説明や契約書の記載内容を必ず確認しましょう。特に以下のような点はチェックしておきましょう。
- 得意とする領域と実績
- トラブルの対応力
- 料金体系・サービスの範囲
- 会社の姿勢やビジョン
最初にチェックしたいのは、その会社が得意とする領域と実績です。業者選びを料金から始める人もいますが、まずは自分が所有する物件を得意とする会社を探して、その中で料金やサービスを比較するという流れの方がよいでしょう。築年数が長い物件や立地が特殊な物件など、アプローチ方法を工夫する必要がある場合には、特に重要になってきます。
次に重要なのがトラブル対応力です。入居者からのクレームや設備故障に対して対応が遅れると、満足度の低下から、退去や空室増加につながる恐れがあります。可能であれば、24時間対応の窓口を備えている会社の方がよいでしょう。
これらの内容を精査したうえで、料金体系や提供サービスの比較へと進みます。ここでは少なくとも3社以上から見積もりを取って、担当者の対応姿勢も含めてチェックしましょう。
最後に、長期的に物件を増やす計画がある場合は、会社の姿勢やビジョンをチェックして、長期間にわたって一緒に歩んでいけるパートナーかどうかも見極めましょう。定期点検やリフォームの計画、新規物件の提案、売却時期の検討なども対応してくれる、経営の伴走者として信頼できる会社が見つかるのがベストです。
サブリース会社の選び方

サブリース会社を選ぶ際は、家賃保証という安定性に目を奪われがちですが、契約条件や運営体制をよくチェックしておかないと、想定外の減収や契約トラブルに発展する可能性があります。特に以下の点は念入りに確認しましょう。
- 保証賃料の設定方法と見直し条件
- 会社の実績と入居者対応の質
- 解約条件
まず重視すべきは、保証賃料の設定方法と見直し条件です。サブリース契約では、数年ごとに現状の見直しを行って、保証額を再設定するケースがあります。そのとき、入居率が思ったよりも低いと、保証額が減額されるケースがあります。見直しの年数や保証額の下限は必ず確認しましょう。
また、会社の実績や入居者対応の質も見逃せません。家賃保証があるからといって管理品質が低ければ、入居者満足度が下がったり、物件の資産価値が損なわれたりする恐れがあります。実際に契約しているオーナーの評判や口コミを事前に確認しておきましょう。
そして、解約条件も重要なチェックポイントです。借地借家法第28条(正当事由)との関係で、オーナーからの解約は制約されることもあります。たとえば「10年間の契約で、オーナーからの解約は不可」と定められている場合、経営判断の自由度が大きく制約されます。
自分で賃貸管理をする際のポイント
自分で賃貸管理をする場合は、業務負担やトラブル対応をすべて担う必要があるため「本当に無理なく続けられるか」を、現実的なラインで考えておく必要があります。そのためには、特に以下の3点が重要になってきます。
- 自宅から近い物件を選ぶ
- 各種業者とのネットワークを作っておく
- 部分的な委託を検討する
まず、自主管理をする場合は物件から近いことが前提になります。水漏れや停電といった緊急対応は迅速に対応する必要がありますし、遠方だと現地へ行くための移動負担も大きくなってしまいます。目安としては、自宅から30分圏内が現実的なところでしょう。
そのうえで、修繕業者や清掃業者、司法書士や税理士、宅地建物取引士など、専門家とのつながりを事前に築いておくことも欠かせません。信頼できる業者がいれば、突発的なトラブルにも素早く対応でき、入居者からの評価も高まります。
そして、自主管理といっても、すべてを自分で抱え込むのではなく、必要に応じて一部を外注する柔軟な運営も検討しましょう。例えば、家賃回収は管理会社に任せつつ、入居者対応は自分で行うといった形なら、負担を軽減しつつ収益性を維持できます。
棟数を増やす場合の注意点

賃貸物件の運用が安定し始めたら、次に考えるのが棟数を増やすことによる増益ではないでしょうか。ただ、棟数を増やすと経営リスクも大きくなるため、以下のようなポイントを踏まえて、しっかりリスクを管理する必要があります。
- 需要に詳しいエリアで物件を選ぶ
- リスクの分散を心がける
- 築年数を分散させる
棟数を拡大するための第一歩は「入居者が途切れないエリア」を選ぶことです。無理に穴場を狙おうとせずに、収益が大きくなくても安定収入が見込める場所を選んだ方が安心です。たとえば、大学や専門学校の近くではワンルーム需要が安定する見込みがありますし、駅から徒歩10分圏内なら通勤需要が見込めるでしょう。
また、棟数が多くなってきてからは、ターゲットやエリアを意図的に分けることによるリスク分散も意識しましょう。ターゲットが同じ物件は、何らかのネガティブな要因が発生した場合に、その影響を同時に受ける可能性があります。たとえば、学生向け物件だけ運用している場合、コロナ禍のように学生の通学に影響するような要因が発生した場合に空室が一気に増える恐れがあります。
そして、長期的に運営していく場合は、修繕やリフォームを見越して築年数を分散しておきましょう。大規模修繕や外壁塗装、屋上防水などは数百万円単位の出費が発生するのが一般的で、数棟の大規模修繕が重なると、1千万円以上の出費になる恐れがあります。
一時的とはいえ、多額の現金を一度に用意するのは容易ではありません。そのため、築浅(築5~10年)と築古(築25~30年)の物件をバランスよく組み合わせ、長期のキャッシュフロー表を作成して、大規模修繕が発生する時期を可視化しておくことが重要です。
まとめ|賃貸物件の不動産管理は戦略的に進めることが重要
賃貸管理は、賃貸による収入を安定させ、物件の資産価値を維持するための基盤となる重要な業務であるため、基礎知識をしっかり固めることが欠かせません。特に、自主管理・管理会社委託・サブリースの違いは、選択肢によって負担や収益性が大きく変わってくるため、特徴をよく理解しておきましょう。
不動産管理賃貸で最も重要なのは、ご自身のライフスタイルや経営目的に合った管理方法を選択することです。不動産経営は、資産形成という側面だけでなく、管理という手間も伴うことを理解して計画的に進めましょう。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。