公開日:2026.04.11 更新日:2026.04.10
NEW不動産投資の経費で節税!計上できる費用と税務調査で否認されないコツ
不動産投資の経費でつまずきやすいことの一つに、経費になる支出を集めたつもりでも、あとから何のための支出かを説明できずに、経費として扱えないことがあります。経費は勘定科目の名前ではなく、不動産所得との関係性で決まるので、ここを整理しておかないと思わぬ失敗を招きます。
そこでこの記事では、不動産投資で経費にできる費用・できない費用の考え方を整理したうえで、初期費用と運用費用の線引き、家事按分のポイント、税務調査で説明しやすくするための領収書・契約書類の残し方まで、実務で迷いやすいところを順番に解説します。
目次
不動産投資における経費とは?

不動産投資における経費とは「不動産所得」を得るために必要な、物件の維持費や運営費などの支出(必要経費)のことです。代表的な経費としては、管理委託料や修繕費、火災保険料、広告費などが挙げられます。
あくまで不動産所得を生み出すために必要な支出が該当し、不動産所得との関連性がないものは経費として扱えません。ただし、一見不動産所得に関係がなさそうな費用でも、その関連性を証明できれば経費に認められる場合があります。
経費に認められるか否かは、費目ごとに可否が決まっているわけではなく、具体的な関連性を踏まえて判断されます。ある物件では認められなくても、自分の物件であれば認められるというケースもあります。
不動産投資で経費を計上するメリット
不動産投資で経費を計上するメリットは、所得税や住民税を算出する基礎となる「課税所得」を圧縮できることです。課税所得とは、収入から必要経費などを差し引いて算出される「税金計算の元になる利益」を指します。
賃貸経営でいえば、家賃収入(収入)から管理費・修繕費・保険料・広告費・ローン利息など(必要経費)を引いた金額が不動産所得となり、そこから各種控除などを踏まえて税額が決まっていきます。つまり、経費計上を漏れなく行うほど税負担を抑えやすくなるわけです。
また、経費を漏れなく拾うことで、賃貸経営の「数字の見える化」にも効果を発揮します。経費をきちんと積み上げておけば、「どこにお金が消えているのか」「改善余地はどこか」が帳簿から読めるようになり、家賃設定や管理方法の見直しといった次の判断につなげやすくなります。
不動産投資で経費にできる費用一覧|初期費用・ランニングコストの分類

不動産投資で多くの場合経費にできる費用には、主に次のようなものがあります。
- 物件購入時の初期費用
- 減価償却費
- 運用中のランニングコスト
- 修繕費と管理費
- ローン利息
- 税理士や司法書士への報酬
- 旅費・交通費
ここではそれぞれの具体例や認められやすいケース、注意点などを見ていきましょう。
物件購入時の初期費用
物件購入時の初期費用は、物件を買って賃貸経営をスタートするまでに必要となる費用一式です。売買代金に加えて、仲介手数料や登記関連費用、不動産取得税、火災保険料、ローン事務手数料などが含まれます。なお、仲介手数料は、土地と建物の対価比率に応じて按分し、建物分は減価償却資産として、土地分は非償却資産として計上します。
初期費用の特徴として押さえておきたいのは「支払った年に全部を経費にできるとは限らない」という点です。購入に直接かかった費用は、建物の取得価額に含めて資産計上し、減価償却で年数を分けて費用化する扱いになることが多くなります。
ただし、火災保険料のように契約期間に応じて按分して経費にするものや、取得後の運営に近い支出として経費計上しやすいものも混ざるため、経費か資産かの仕分けが重要になります。
減価償却費
減価償却費は、建物や設備などの取得費用を耐用年数に応じて配分した「毎年の必要経費」です。購入時にまとまった支出が発生しても、その年に全額を経費にするのではなく、使える年数に合わせて少しずつ費用化していきます。
減価償却で押さえておきたいポイントは、土地は償却できず、償却の対象になるのは建物や設備に限られる点です。したがって、総購入額が同じであっても「土地と建物の按分比率」をどう設定するかによって、毎年のキャッシュフローが大きく左右されます。
また、工事費用についても、内容によっては修繕費ではなく資本的支出として扱われ、減価償却の対象になることがあります。
運用中のランニングコスト
運用中のランニングコストは、物件を維持しながら家賃収入を得続けるための「日常的な必要経費」です。たとえば、管理委託料や共用部の清掃費、定期点検費、保険料、入居者募集に関する費用などが含まれます。
ランニングコストは毎月かかるので節税効果が大きいですが、一方で、支出が小口で分散しやすく、計上漏れが起きやすい落とし穴があります。このミスを防ぐためにも、クレカ明細・口座引落・管理会社の送金明細を月次で突き合わせ、科目ごとにまとめておくとよいでしょう。
修繕費と管理費
修繕費は、建物や設備を「元の状態に戻して維持する」ための必要経費です。たとえば水栓の交換、給湯器の修理、雨漏り補修、原状回復の範囲の内装工事などが含まれます。
ただし、性能向上や価値を向上させる工事は資本的支出として扱われ、減価償却になることがある点に注意が必要です。
管理費は、管理会社への委託料や共用部管理など、賃貸経営を維持するための費用です。たとえば、入居者対応や家賃の集金代行、退去時の手続き、募集条件の調整、共用部の清掃・巡回、設備不具合の一次対応といった業務が含まれます。
ローン利息
ローン利息は必要経費になりますが、元本返済は必要経費になりません。返済額は大きく見えても、税務上の費用は利息部分だけなので、ここを混同すると利益と手残りの見え方がズレてしまいます。
また、借入に関連する手数料や保証料は、名目によって扱いが分かれることがあります。契約書や明細など「支払いの中身が分かる資料」を残し、会計ソフトでも同じ科目で継続処理できる形に整えておくと安全です。
税理士や司法書士への報酬
税理士や司法書士への報酬は、支出の目的が明確であれば必要経費として整理しやすい費用です。 まず税理士報酬は、確定申告・記帳代行・税務相談など申告実務に直結するため、外注費として処理されるのが一般的になります。
一方で、司法書士報酬のうち、所有権移転登記費用(登録免許税含む)は「取得付随費用」として建物の取得価額に算入し、減価償却の対象とするのが原則です。一方、融資実行時の抵当権設定登記費用は、財務費用として支払った年の必要経費に算入可能です。
旅費・交通費
旅費・交通費は、物件運営に必要な移動に限って必要経費として計上できます。たとえば、現地確認、内見対応、管理会社との打ち合わせ、修繕の立会い、金融機関への融資相談などが該当します。
旅費・交通費は私用と混ざりやすい費用なので「いつ・どこへ・誰と・何の目的で」という5W1H形式の記録に加え、現地の写真や打ち合わせ資料を併せて保管しておくと、税務調査時の強力なエビデンスになります。
経費計上が認められない費用

経費として認められないのは、支出の目的が「不動産所得を得るため」と説明しにくいものです。 とくに私用との境界があいまいな支出は、税務調査で真っ先に見られやすく、領収書があっても必要経費として通らないケースがあります。
日用品や装飾品
日用品や家具、装飾品は「生活のため」「趣味のため」と見られやすく、経費として扱えないのが一般的です。たとえば自宅用の家電・インテリア、普段使いの衣類、嗜好品などは、不動産投資との関連性を説明しづらいため基本的に対象外になります。
ただし、賃貸物件に備え付ける設備や修繕部材のように「貸すために必要」と言えるものは扱いが変わることがあります。不動産投資の一部として日常品や装飾品を購入した場合は、見積書や領収書、購入の必要性を証明する書類などの説明資料を残しておきましょう。
所得税や住民税などの税金
所得税・住民税は、個人の所得に対してかかる税金であり、不動産投資の必要経費にはできません。「税金を払うのも事業の一部」と感じやすいところですが、税務上は利益が出た結果として発生する個人負担という位置づけになります。
一方で、不動産に紐づく税金である固定資産税や都市計画税は経費として認められる場合があります。そのため、税金は「個人にかかる税」なのか「物件にかかる税」なのかで分けて管理しましょう。
罰金や反則金、資格取得費用
罰金や反則金は、法律違反に対する制裁であり、事業の必要経費とは認められません。たとえば駐車違反やスピード違反の反則金、行政処分に伴うペナルティは、業務中に発生したとしても経費化できないのが基本です。
また資格取得費用についても、業務に必要であったとしても、個人の能力開発・自己投資と判断されやすい領域になります。
費用の家事按分とは?

費用の家事按分とは、私用と事業用が混ざっている支出を「不動産投資に使った分だけ」に分けて経費計上することです。
たとえば自宅の通信費や電気代、車のガソリン代などは、投資に関係する用事でも使う一方で、生活でも使うため、全額を経費にすると説明が通りにくくなります。そこで、使用実態に合わせて合理的な割合を決め、事業分だけを必要経費として計上します。
家事按分で大事なのは、割合そのものより「なぜその割合なのか」を説明できる根拠です。
面積(仕事部屋の割合)、時間(作業時間)、回数(物件対応の回数)など、どの基準で切ったかをメモに残しておけば、説明を求められても根拠を示せるでしょう。
青色申告特別控除とは?
青色申告特別控除とは、一定の要件を満たして青色申告を行うことで、不動産所得などから控除を受けられる制度です。白色申告よりも手続きは難しくなりますが、要件を満たせば最大65万円の控除を受けられるため、大きな節税効果が得られます。
青色申告特別控除を受けるには、事前に青色申告承認申請書を提出したうえで、帳簿を作成し、期限内に確定申告を行う必要があります。あわせて、帳簿や証拠書類は後から内容を説明できるように保存しておくことが前提で、青色申告者の帳簿保存期間は「7年」です。領収書や請求書等の証憑書類も、原則として7年間の保存が義務付けられています。「5年」とするのは白色申告者の一部書類や消費税法上の例外等であり、不動産投資家としては「一律7年」と覚えるのが実務上安全です。
損益通算とは?
損益通算とは、不動産所得が赤字になった場合に、給与所得など他の所得と相殺して税負担を軽くできる仕組みです。たとえば取得初期に修繕や広告費が重なり赤字になった年でも、その赤字を他の所得と相殺することで、所得税・住民税が下がる可能性があります。
損益通算が可能な所得は、不動産所得・事業所得・給与所得・譲渡所得(総合課税のもの)など、同じ年の「総合課税の所得」が中心になります。会社員であれば給与所得と相殺できるケースが多く、家計側のキャッシュフローが助かる場面もあります。
税務調査にはどうやって備えるべき?

税務調査への備えの基本は「経費の正当性を説明できる状態」を普段から作っておくことです。不動産投資は経費項目が多く、私用との境界も混ざりやすいので、「領収書はあるけど、何のための支出か説明できない」状態だと突っ込まれやすくなります。結局のところ、帳簿と証拠書類がつながっていれば強いので、日頃から“見れば分かる形”に整理しておくのが一番の対策です。
ここでは経費の正当性を説明するための基本となる3項目を見ていきましょう。
手続き書類や証拠書類の保管方法
手続き書類は「なぜその支出が発生したか」を示す根拠になります。たとえば、売買契約書・重要事項説明書・賃貸借契約書・管理委託契約書・ローン契約書(返済予定表)・保険証券などは、物件ごとにファイルを分けて保管しておくと、支出と契約関係をひも付けて説明しやすくなります。
特に、購入時の初期費用や減価償却の計算は年をまたいで参照するので、取得時の書類一式は「後から見返しても根拠が追える状態」を前提に、永年保存のつもりで固めておくと安心です。
領収書・レシートの保管・記録方法
領収書・レシートは「支払った事実」だけでは弱く、何のための支出かが説明できないと否認されやすくなります。そのため、受け取った時点で用途メモをセットで残しておくと安心です。
たとえば裏面やメモ欄に「◯月◯日/物件Aの現地確認」「修繕部材(排水トラップ)購入」など一言添えるだけでも、後から見返したときの説明力が変わります。
さらに、クレカ明細や振込履歴と突き合わせて月ごとに整理しておけば、計上漏れが減り、確定申告の時点で「証拠と帳簿がつながっている状態」を作れます。細かい支出ほど抜けやすいので、領収書はため込まず、計上漏れが減り、申告時に確認すべき点も明確になります。
電子帳簿保存法に対応するための注意点
電子帳簿保存法で意識したいのは、電子で受け取った証憑は原則として電子のまま保存するという点です。メール添付の請求書やPDF領収書を印刷して紙で保管するだけだと、保存要件を満たさない扱いになる可能性があるため、最初に保管方法を統一しておくほうが安全です。
具体的には、電子取引データは「取引年月日・取引金額・取引先」の3項目を検索条件として設定可能な状態で保存し、かつ事務処理規定の備付け等の真実性を担保する措置が必要です。
後から差し替えや削除が疑われないように、フォルダ名や保存場所などのルールを固定して運用します。「どこに何があるか」を自分で説明できる状態にしておくと、税務調査でも整理がスムーズになります。
まとめ:正しい経費計上で不動産投資の利益を最大化しよう
不動産投資の経費管理で失敗しないためには、節税テクニックを知るよりも「経費と事業を説明できる形で残す」ことの徹底の方が大切です。
支出が発生した時点で、領収書を集めるだけで終わらせず、物件名・訪問目的・工事内容などをひと言で紐づけておくと、申告の段階で判断に迷いにくくなります。この際に、その年の運用に必要な支出として処理するものと、資産として管理し、年ごとに費用化していくものに分けておくと、よりスムーズに処理できるでしょう。
そして、家事按分が絡む支出は「割合の根拠」をセットで用意しておくのがコツです。作業スペースの面積、使用頻度、業務日数など、第三者に説明しやすい基準を一つ決めて、毎年同じルールで運用しましょう。まずは、直近3か月の支出を棚卸しして、用途メモと分類を入れるところから始めると、申告前に慌てない状態が作れます。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。