公開日:2025.08.09 更新日:2025.08.12
【空き家投資】初心者向け基礎知識|メリット・デメリットから成功の秘訣まで徹底解説

空き家投資とは、比較的安価な空き家を購入し、リノベーションや修繕を行って賃貸または売却することで利益を得る不動産投資の一種です。初期費用を抑えやすく、初心者でも取り組みやすいことから近年注目されています。
本記事では、空き家投資を検討する初心者の方が押さえておくべきポイントを、メリット・デメリットから成功事例、具体的なステップまで網羅的に解説します。
目次
急増する空き家の現状と背景

近年、国内で急増しつつある空き家。空き家投資を検討するなら、まずは空き家増加の背景を把握しておきましょう。
空き家率の上昇と社会問題化
空き家の増加は複合的な要因によって引き起こされていますが、特に多いのが高齢者が住み替えや施設入居をする際、元の住まいが処分されずに残されるケースです。また、地方では人口減少による需要の低下も大きく影響し、空き家率の上昇に拍車をかけています。
空き家が増え、放置され続けると、治安や景観の悪化、倒壊・火災などの防災面でのリスク増大、さらには住宅や土地の資産価値の低下といった問題が発生。これらは地域全体にとっても深刻な問題であるため、各自治体は「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、補助金や税優遇、特定空家等に対する指導・勧告・命令、最終的には行政代執行といった対策を積極的に進めています。
空き家投資が注目される理由
このような空き家問題の解決の糸口として注目されているのが、空き家投資です。最大のメリットともいえるのが、物件価格が安価であること。初期費用が低いため、他の不動産投資に比べて資金リスクを抑えながら取り組むことができます。
また、リフォームやリノベーションによって古い物件に付加価値をつけることで、高い利回りを狙えるのはもちろん、建物の保全や近隣環境の改善にも寄与します。こうした点から、空き家投資は単なる収益獲得だけでなく、地域活性化や社会貢献といった側面も持ち合わせる投資手法として注目されているのです。
空き家投資のメリット

空き家投資には、他の不動産投資とは異なる魅力的なメリットがあります。ここでは主な3つのメリットを見ていきましょう。
少額から始められる
従来のマンション投資やアパート経営と比べ、空き家投資は初期費用を抑えやすい点が大きな魅力です。低コストで始められるため、投資資金が限られた初心者にとって大きな機会となり得ます。たとえば、地方の一部では数十万円程度で取引される物件もあり、ローンを組まずに現金で購入することも可能です。購入後にリフォーム費用が発生する可能性はあるものの、総合的な投下資本は他の物件形態よりも少なく抑えやすいといえるでしょう。
また、空き家投資は低リスクかつ実務を通じて不動産投資を学べるため、本格的なアパート経営やマンション投資に進む前のステップとしても有用です。
高利回りと節税効果
空き家投資では物件購入費用が安い分、賃貸収入や売却価格を工夫することで高い利回りを狙える点が特徴。ただし、不動産所得には所得税、住民税が課税されるため、収益計算時には考慮が必要です。特に、需要が見込めるエリアで物件を適切にメンテナンスできれば、比較的短期間で投資資金を回収できる可能性も高まります。
また、取得した古い物件における減価償却費の計上や、建物が一定の要件を満たす場合の取得費加算の特例(譲渡所得税)、そして一部自治体が実施している空き家再生への補助金・固定資産税等の税制優遇を活用することで、実質的な投資コストを大幅に下げられる場合があります。このように、税務上のメリットも含め、利回りと節税の両面で魅力がある点は、空き家投資ならではのメリットといえるでしょう。
リノベーションやDIYの楽しみ
空き家投資の醍醐味のひとつが、リノベーションやDIYを通じて物件に新しい価値を作り出すプロセスです。自分のアイデアを形にしながら、賃貸物件やゲストハウス、シェアハウスなど多彩な用途に挑戦できます。他の物件とのしっかり差別化を図れれば、入居者の満足度向上や売却時の評価アップにも直結しやすくなるでしょう。
また、作業を段階的に進めることで費用をコントロールしやすくなるだけでなく、完成後に物件への愛着が深まる点も魅力です。これにより、長期的な視点で物件を育て、地域に深く根ざした投資スタイルを築くことが可能になります。
空き家投資のデメリット・リスク

投資には必ずリスクが伴います。空き家投資特有のデメリットを理解し、事前に対策を立てておくようにしましょう。
大規模修繕へのコスト負担
空き家投資は低コストで始めやすい一方で、物件のコンディションが悪い場合は修繕費が高額になるリスクが存在します。
築年数が古い空き家では、屋根や外壁、配管などの修繕やリフォームに予想以上の資金がかかってしまう場合も多く、結果的に空き家投資の利回りが下がるケースも見られます。特に、アスベストの使用状況や土壌汚染の有無、建物の耐震性など、通常の目視では確認できない潜在的な欠陥には注意が必要です。これらの問題が発覚した場合、高額な除去・修繕費用が発生するだけでなく、予期せぬ法的責任を問われる可能性も考慮に入れておかなくてはなりません。
また、修繕規模が増すほど投資回収期間も長くなるため、細部まで調査し正確な見積もりを取っておくことも重要です。現地の建築業者や専門家の意見を取り入れつつ、予算オーバーを回避する計画を立てておくようにしましょう。
需要が見込めないエリアのリスク
空き家は地方や郊外など、そもそも賃貸需要が少ない地域に集中していることも多いです。このようなエリアでは入居が決まらず、結果的に家賃収入が得られないリスクが高まります。
また、売却する際にも買い手がつきにくく、不動産としての流動性に欠ける点もデメリット。こうした失敗を避けるためにも、あらかじめ投資先の地域性や賃貸需要などをしっかり把握した上で、投資先を選定することが大切です。
権利関係や売却時の難しさ
相続登記が未了のまま放置されていたり(2024年4月1日以降は相続登記が義務化)、複数の相続人が権利を共有していたりする空き家の場合、なかなか売買に至らないだけでなく、後々のトラブルの原因になることもあるので注意が必要です。
空き家の売却先がすぐに見つからないと、多額のリフォーム資金や維持費を負担し続けることになり、投資計画を大きく崩す要因にもなるため、契約前に権利関係の確認を徹底したり、出口戦略をあらかじめ考慮したりしておくことが欠かせません。
失敗事例から学ぶ注意点

空き家投資には思わぬ落とし穴もあります。ここでは典型的な失敗事例を3つ挙げ、注意すべきポイントを解説するので、ぜひトラブル回避に役立ててみてください。
リフォーム費用で予算オーバー
空き家投資を開始する際、リフォーム費用をある程度見積もっていても、工事の進行に伴い追加作業が次々と発生し、最終的に当初予算を大幅に超えるケースがあります。シロアリ被害や配管の腐食など、開けてみなければわからない問題が潜んでいる場合があるためです。
こうした想定外の事態に対応するには、最初から一定の予備費を設定しておくことがポイントです。また、信用できる業者の選定や、物件購入前のインスペクションの実施も、予算オーバーを防ぐうえで重要になります。
遠方物件の管理トラブル
自宅から遠く離れた地域の空き家を購入すると、管理や修繕対応がおろそかになりやすくなります。地域の不動産会社や管理会社に委託するにしても、緊密な連絡体制を築かないと不測の事態に対応しづらくなるでしょう。そのため、地域に根ざしたパートナーを確保するか、遠方物件を避けるという選択も検討してみることをおすすめします。
DIYが行き詰まり放置するケース
DIYを前提に空き家を購入した場合に起こりやすいのが、作業途中でモチベーションが低下してしまうこと。当初考えていたよりも作業量が膨大で、時間や技術力が追いつかず、結局リフォームが中途半端なまま放置されてしまうというケースも多々見られます。
作業が遅れると賃貸収入や売却時期も先延ばしになり、ランニングコストだけが増えるという悪循環が起こってしまうため、作業範囲をはっきり決め、必要に応じてプロの手を借りるなど、計画的に作業スケジュールを管理することが大切です。
空き家投資を成功させるためのチェックポイント

空き家投資でしっかり収益を上げるためには、事前の調査や計画が欠かせません。成功のポイントを3つご紹介するので、詳しく見ていきましょう。
入念な需要調査と市場分析
空き家投資を成功させるには、的確な立地選定と市場分析が欠かせません。周辺環境やインフラ、賃貸需要を丹念に調べることで、投資計画にあった物件を見つけやすくなり、空室リスクや売却難のリスクも軽減することができます。たとえば、学生が多い地域であればシェアハウス形式など、需要に応じた活用方法を検討することも可能です。
また、地方活性化に力を入れている自治体では、投資家向けのセミナーや補助制度を実施しているケースもあります。こうした情報をタイムリーにキャッチし、最大限に活用することで、投資リスクを抑えながら魅力的な物件を確保することができるでしょう。
リフォーム費用や利回りの正確なシミュレーション
リフォーム費用は物件の築年数、構造、状態によって大きく変動します。そのため、複数業者から工事内容と費用の見積もりを細かく比較検討するのがおすすめ。コストを抑えながら質の高いリノベーションを実現しやすくなります。
さらに、想定賃料や入居率を保守的に見積もり、予期せぬ出費のための予備費も含めそれらを利回りシュミレーションに反映させておくことで、安定的な投資につなげられるでしょう。
売買契約時の重要事項確認
契約前に、建築基準法や都市計画法など、法的な制限事項を不動産会社や専門家にしっかり確認しておくようにしましょう。古家には建築上の規制が未対応のままになっているケースもあるため、事前に問題点を洗い出すことが大切です。
特に登記の状況や隣接地との境界問題など、権利関係が曖昧な物件は後々のトラブルリスクが大きくなります。重要事項説明を受ける際に疑問点を遠慮なく質問し、契約前にすべて解消することを心がけましょう。
空き家投資の実例紹介

具体的な成功事例に触れることで、空き家投資の実践イメージをつかむことができます。
戸建て再生で高収益を実現した事例
ある投資家は築古の木造戸建てを購入し、フルリノベーションで設備や内装を一新しました。立地が良いことと、物件価値を大きく高める改装を行ったことで家賃を相場よりやや高めに設定しても入居者が集まり、高い利回りを実現できたといいます。
成功要因としては、しっかりと需要を見込めるエリアを選んだことと、工夫を凝らした空間デザインが挙げられます。入居者満足度が高まることで空室期間を短縮できるため、結果的に投資効率が上がった好例といえるでしょう。
地方の空き家を活用したサラリーマン投資家の成功談
地方へのUターンが増えている地域を狙い、比較的安価な空き家を複数所有して賃貸経営を行っているサラリーマン投資家もいます。本業の収入を補填する形で、安定した副収入を得ることができる点が魅力です。
適度にリフォームを施し、地元の管理会社と連携しながら運営を継続することで、遠隔地からでも管理トラブルを最小限に抑えています。結果的に、賃貸収入だけでなく、物件の資産価値向上による利益も狙える正のサイクルを築き上げた事例です。
空き家投資に向いている人・向いていない人

投資スタイルには向き不向きがあるため、自身のライフスタイルやリスク許容度と照らし合わせて判断することがポイントです。
空き家投資に向いているのは、ある程度のリスクを許容しながら、物件の再生や管理に手間をかけられる方です。特にDIYやリノベーションに興味がある場合は、楽しみながら収益化を目指せるでしょう。また、地域活性化や社会貢献にも意義を感じられる人には大きなやりがいがあります。
一方、物件管理や修繕に費やす時間がなく、スピーディーな収益化を求める人には向いていないかもしれません。物件が遠方にある場合は管理を他社に委託する選択肢もありますが、コスト面での負担や連絡の煩わしさが生じやすいため、自分の投資スタイルに合うかどうか慎重に検討するようにしましょう。
準備から運用までのステップ

空き家投資をスムーズに進めるために、基本的な流れを確認しておきましょう。
物件選定と融資計画
まずは自分が投資できる予算やリスク許容度を明確にした上で、候補となる地域や物件をピックアップします。空き家バンクや不動産ポータルサイトを活用して、相場価格やリノベーションの可能性も調べておきましょう。
融資利用を検討する場合は、金融機関のローン審査条件や金利、返済期間などを比較検討し、無理のない返済計画を立てることがポイント。物件調達と資金計画がしっかりできていれば、投資後の運用も安定しやすくなります。
リノベーションと運用管理
購入した空き家のリノベーションを行う際は、内外装や設備の更新など優先度の高いポイントから順番に進めると効率的。DIYで済む部分と専門業者が必要な部分を明確に分けることで、トータルのコストと工期を管理しやすくなります。
運用面では、地元の不動産会社への管理委託や、オンラインでの募集活動を活用するなど、物件の特性に合った手法を選ぶことが重要です。定期的に物件の状態を確認し、入居者からの問い合わせやメンテナンスにもスピーディーに対応することで、長期的な安定収益が見込めるでしょう。
まとめ
本記事では、空き家投資のメリット・デメリットや成功事例、実践ステップを解説しました。
空き家投資は手頃な投資額で始められる一方、物件の状態やエリアの需要に左右されるリスクがあるため、慎重な検討と計画が求められます。実例や失敗事例から学び、専門家のアドバイスを取り入れながら進めることで、リスクを低減し、着実に収益を上げることが可能です。
空き家投資は個性のある物件を生かしながら、地域貢献にもつながる魅力的な不動産投資スタイル。今後増加が見込まれる空き家問題の有効な解決手段となるはずです。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。