公開日:2025.09.22 更新日:2025.08.13
空き家対策特別措置法とは?改正内容と対策をわかりやすく解説

所有している空き家をどうすればいいか悩んでいませんか?空き家は景観の悪化や防犯・防災上のリスクにつながるだけでなく、特定空き家に指定されれば行政からの指導や高額な税負担が発生することもあります。
こうした背景から、空き家の適切な管理と活用を促すために制定されたのが「空家等対策特別措置法」です。本法令は令和5年に改正が行われたことで以前より柔軟かつ実効性の高い運用が可能になり、ますます重要度が高まっています。
そこでこの記事では、空き家対策特別措置法の概要と、令和5年の改正で変わったポイントをわかりやすく解説します。すでに空き家を所有している方はもちろん、将来的に相続する可能性のある方にとっても、空き家対策のポイントを知ることができる内容となっています。
目次
空き家対策特別措置法とは?法律の概要と制定の背景

「空家等対策特別措置法」(法令名:空家等対策特別措置法)とは、空き家の適切な管理を促すために2014年に制定された法律です。主な目的は、増え続ける空き家への対応方法を明確にし、空き家が放置されることで起こる景観悪化や防災・防犯リスクなどを減らすことです。これに関連して空き家の活用や流通の促進も目的としています。
また本法令が施行されることで、全国の自治体が民間の財産である空き家に対して公に関われるようになりました。
特筆すべきは、管理が行き届いていない空き家に対して「助言・指導」「勧告」「命令」「代執行」という4つの措置を行えることです。これにより、自治体の対応力を高める一方で、所有者側にも明確な管理責任が求められるようになりました。
なお、特に危険な状態の空き家を放置すれば、過料(罰金)の対象になったり、代執行によって取り壊されたりといったことも起こり得ます。もし本法律による対応を受けたら、対応が軽い段階で速やかに対応するのが得策です。
施行の背景と目的
空き家等対策特別措置法が制定された背景となる主な要因は、人口減少や少子高齢化による急激な空き家の増加と、自治体の空き家に対する実行力不足です。
本法令が定められる前は、空き家問題の対応は地域住民や自治体による自主的な努力に委ねられていました。しかし、老朽化による破損や倒壊、雑草の繁茂、犯罪の温床化といった深刻な問題が全国で増加し続けた結果、行政による法的な対応が急務となったのです。
中には、個人の財産である空き家は個人で管理すべきだと考える人もいるかもしれません。しかし、空き家が周辺に及ぼす影響が大きくなると、地域の安全を脅かすことになりますし、行政に意見が寄せられることも増えます。
このような事態を受けて制定されたのが空家等対策特別措置法です。そして現在は公共の安全確保と財産の保護を両立させるために、柔軟な運用が可能な法令として運用されています。
空き家の定義と分類(特定空き家・管理不全空き家)
この法律における「空き家等」とは「建築物」と「建築物に附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」及び「立木その他の土地に定着する物を含むその敷地」と定義されています。
つまり、法律の効力は空き家そのものだけでなく、その敷地にある工作物や立木などにも及ぶということです。これにより、空き家問題によって引き起こされる問題に柔軟に対応できるようになっています。
また、空き家の中でも「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態」にあるものは、自治体が指定することで「特定空き家」と呼ばれるようになります。
また、将来的に特定空き家になる恐れがある空き家は、同じく自治体が指定することで「管理不全空き家」と呼ばれるようになります。
令和5年の法改正のポイント

令和5年12月13日の「空家等対策特別措置法」の一部改正が施行されました。今回の改正では「活用の拡大」「管理の確保」「特定空き家の除却等」という3つの柱を軸に、より柔軟で実効性のある空き家対策を可能にする対応が行われています。
改正内容をすべて理解するのは難しいので、ここでは特に抑えておきたい4つのポイントに絞って解説します。
空家等活用促進区域制度による空き家の活用拡大
「空家等活用促進区域制度」は、自治体があらかじめ指定した区域内において、建て替えや改築時に必要な接道要件や建築物の用途規制を緩和できる制度です。
これにより、建築物の建て替えや用途変更がしやすくなるため、空き家の利用価値が高まり、活用や流通の活発化が期待できます。空き家所有者だけでなく、空き家を利用したい人にとっても有益な制度だといえるでしょう。
空家等管理活用支援法人制度の新設
「空家等管理活用支援法人制度」は、市区町村がNPO法人や社団法人などを空家等管理活用支援法人に指定することで、それらの団体が所有者・活用希望者への普及啓発や情報提供、相談対応や空き家管理といった、さまざまな空き家関連業務を行えるようにする制度です。
これにより、今まで自治体の間で課題になっていた職員への負担や対応リソース不足といった問題を、民間の力で解決できる可能性が出てきました。また、法人が持っている専門知識やノウハウも活用できるため、空き家対策の方法を、今までより幅広く柔軟にする効果も期待できます。
管理不全空き家による空き家管理の確保
「管理不全空き家」は本改正で新たに設けられた空き家の区分で、現時点では特定空き家に該当しないものの、将来的に特定空き家になる可能性がある空き家のことです。「特定空き家予備軍」のようなものだと考えると分かりやすいでしょう。
管理不全空き家に指定すると、行政が特定空き家にも行うことができる「助言・指導」と「勧告」を行えるようになりますが、「命令」と「代執行」を行うことはできません。
なお、勧告を受けた場合は、行政が定めた期間内に対応しないと「固定資産税の住宅用地特例」という減税措置が解除され、固定資産税が最大で6倍に増える恐れがあります。
特定空き家の除却等の促進
特定空き家の除却を促進するために、市区町村長の権限が強化されました。これにより、緊急性が高い特定空き家を除去する際に、命令を省略して、いきなり代執行を行うことができるようになりました。
加えて、所有者が不明な空き家や相続放棄された物件については、市区町村長が裁判所に相続財産管理人の選任を請求できるようになったほか、特定空き家の状態を把握できるように、所有者への報告徴収権も付与されました。
特定空き家に指定されるとどうなる?措置(助言・指導・勧告・命令)の流れ

助言・指導・勧告・命令とは、「空き家等対策特別措置法」に基づき、自治体が特定空き家に対して行う措置の種類です。
最初のステップとして行われるのが「助言・指導」による注意喚起です。まずは空き家の所有者に対して適正な管理を行うように通知を送り、その対応を待ちます。ここで対応してもらえれば先の措置には進みません。
「助言・指導」に対応してもらえない、もしくは状況が改善しない場合には、ある程度の猶予期間を設けたのちに「勧告」が発せられます。内容は助言・指導と同じく注意喚起ですが、こちらは「固定資産税の住宅用地特例が外される」というペナルティが用意されており、税負担が最大で6倍になるリスクがあります。
勧告を行っても放置が続く場合は「命令」が下されます。この命令に従わなかった場合は罰金が科されるほか、最終的には自治体が直接空き家の一部または全部を解体する「行政代執行」が実施される可能性もあります。
固定資産税6倍と行政代執行はなぜ起こる?
ここで、空き家が勧告と命令を受けた場合のリスクの大きさを整理しましょう。
まず「勧告」を受けると固定資産税が最大6倍になるのは、 住宅が建っている土地の固定資産税を最大6分の1まで軽減する「住宅用地特例」という制度が外されるためです。制度が外されるのは勧告を受けた翌年の4月1日を賦課期日とする年度からで、例えば今年の固定資産税が年2万円であれば、翌々年からは最大12万円まで増える恐れがあるというわけです。
なお、住宅用地特例は小規模住宅用地(200㎡以下の部分)が課税標準額の6分の1、一般住宅用地(200㎡を超える部分)が課税標準額の3分の1に軽減されます。勧告を受けるとこれらの特例措置が適用されなくなるため、例えば300㎡の敷地の場合は、200㎡分が6倍に、残りの100㎡分が3倍になります。
次に「行政代執行」ですが、これは極めて緊急性が高い場合の「最終手段」として用いられています。例えば、建物が傾いている場合や、屋根瓦や壁材などの落下が始まっている場合など、今にも危険を及ぼしそうな空き家に対して実施されます。
なお、空き家の解体にかかった費用はすべて所有者に請求されます。
特定空き家・管理不全空き家に指定されないための対策と予防法

特定空き家や管理不全空き家に指定されないためには、日ごろの管理と早めの修繕が何より大切です。空き家は放置期間が長くなるほど劣化が早くなっていくため、日ごろから手を加える習慣を付けましょう。
まず大前提として、定期的な巡回と清掃は欠かせません。1カ月に1回程度は足を運び、建物の外観・内部・敷地内をチェックするのが望ましいです。
管理内容としては、まず換気を行ってカビや腐食の発生を防止するほか、雨漏りの有無や外壁及び基礎部分などの痛みをチェックしましょう。特に気温と湿度が高い季節は、数週間でも傷みが進行する可能性があるので念入りに行ってください。また、台風や大雪のあとは、できるだけ早く訪問し、屋根や外壁に破損がないかを重点的にチェックしてください。
また、庭がある場合は草木の状態もチェックし、必要に応じて手入れをしましょう。春から秋にかけては成長が早く、害虫が発生する恐れもあるので要注意です。
その他にも、郵便物が届いていないかポストもチェックしておきましょう。ポストがあふれていると放置されていると判断されやすいです。
日常管理が難しい場合は解体や売却、リフォームも選択肢に

空き家の日常的な管理が難しい場合や管理費用が捻出できない場合は、無理に維持し続けるのではなく、解体や売却、活用を見据えたリフォームなども検討してみましょう。これらの対応がきっかけとなって、負の資産だった空き家がお金を生み出してくれる存在に生まれ変わる可能性もあります。
そこでここでは「解体」「売却」「リフォーム」のメリットや、向いている場合などを紹介します。
解体:老朽化が進んでいる場合の最終手段
建物がすでに危険な状態にある場合は、解体して更地にするという選択が現実的です。解体費用はかかりますが、周囲に危険を及ぼすリスクを解消できますし、土地の使い勝手が向上することで売却や活用がしやすくなります。特に都市部のような土地の価値が高いエリアで有効な方法です。
解体費用は木造住宅でおよそ80〜150万円が相場です。かなり高額になりますが、自治体の空き家解体補助金を利用できれば、30万~100万円程度を補助金でまかなえる可能性があります。補助金の額は自治体ごとにちがうので、事前にチェックしておいてください。
ただし、解体すると固定資産税の住宅用地特例が外れる点は注意しましょう。税額が増えるのは一般的に翌年からなので、事前に自治体の空き家担当や固定資産税担当に相談しながら解体やその後のスケジュールを組むと良いでしょう。
売却:今後使う予定がないなら手放す選択も
誰も住む予定がなく、管理も難しい場合は売却を検討するのも手です。売却価格が低くても、管理コスト・修繕費・税負担の積み重ねを考えれば、早期に手放すことでトータルの損失を抑えられる可能性があります。
売却が向いているのは、劣化具合が軽度で、すぐに住むことができる空き家です。購入者はリフォームをしてから住む場合が多いですが、リフォーム費用が少ないに越したことはありません。
その他にも、古民家のように特別な価値がある場合も売却できる可能性があります。その場合は、なるべく高額で購入してもらえるように、特定ジャンルの需要に強い不動産会社を探しましょう。
リフォームをして活用:資産価値を再生する活用策
構造がしっかりしていて立地も良い場合は、リフォームをしてから活用する選択肢も有効です。借り手が見つかれば、維持管理から開放されるうえに、継続的な収入も得られます。
活用の例としては、内装や水回りをリフォームして住宅として貸し出す方法や、大規模なリフォームをしてカフェやゲストハウスにする方法、古民家を活かした飲食店や宿泊施設などが考えられます。こうした空き家活用は「アキサポ」のような空き家活用サービスを活用することで、自己負担なく始めることも可能です。
ただし、リフォームは必ず収益の見通しを立ててから実施しましょう。空き家・古民家活用の専門家に相談しながら、自分の空き家にベストな方法を探してください。
ちなみに、なるべく費用をかけずに活用を始めたい場合は「アキサポ」の活用がおすすめです。「アキサポ」は自己負担0円(※)で空き家活用を始められる空き家活用サービスで、ワンストップで空き家の周辺調査から活用方法の提案、工事までを対応可能です。自分の空き家にどのような使い道が見込めるか知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
※建物の状況等によっては、一部費用のご負担をお願いする場合がございます。
自治体の補助金や支援制度の活用方法
空き家対策を始める際には、必ず自治体の補助金や支援制度をチェックしましょう。ほとんどの自治体が、これらの制度を用意しており、中には50万~100万円程度の補助金を受けられる場合もあります。
代表的な補助金と支援制度には、以下のような種類があります。
補助金制度
- 解体補助金:老朽化した空き家を撤去する際の費用を補助する。補助額は30万~100万円程度
- リフォーム補助金:居住用・賃貸用・交流施設など特定の目的で改修する場合に工事費を補助する。補助額は20万~100万円程度
- 活用補助金:空き家の用途変更や活用を補助する。自治体独自の場合が多く、補助額にもばらつきがある
支援制度
- 空き家バンク:無料で使える空き家マッチングサービス。契約時には不動産会社が入るため、各種仲介手数料は必要
- 空き家アドバイザー:空き家に関する全面的な相談ができる
- 空き家活用の補助:専門家の紹介や空き家の利用希望者とのマッチング支援など
空き家は全国的に深刻な問題であるため、自治体が独自の制度を打ち出している場合もあります。特に、都市部の住宅が多いエリアでは空き家対策が活発な傾向があり、そこだけの独特な制度が用意されている場合もあります。
ただし、自治体ごとに制度の差が大きいのは注意しましょう。制度の有無だけでなく、補助金の額が数十万円レベルで異なることもあります。
まとめ
空き家対策特別措置法は、全国の空き家問題を解決するための基礎となる法律であり、同時に、空き家対策を進めていくための指針と呼べる存在でもあります。勧告と代執行というペナルティに目が行きがちですが、本来の目的は維持管理と流通の健全化であり、そのための手法を統合的に定めているのです。
また、法令に基づいて空き家問題の対応をしている自治体は、空き家を監視する存在というよりも、住民と一緒に空き家問題を考える存在に近いです。自治体はさまざまな支援策を打ち出しているので、少しでも悩んだら早めに相談しておくのが得策です。また、アキサポのように、空き家を専門で扱っている業者を頼るのもよいでしょう。
空き家の悩みは1人で抱え込まないのが鉄則です。ご家族や地域社会のためにも、空き家を有効活用する方法を一緒に探していきましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。