公開日:2025.10.29 更新日:2025.10.27
NEW【相続税のすべて】計算・控除・申告の流れを解説|税理士・司法書士が監修
亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ時に発生する相続税。複雑な税金の仕組みや法律が絡むため、よくわからず不安を感じる方も多いはずです。
そこで本記事では、相続税の基本的な概要から計算方法、控除や特例、申告手続きの流れまで丁寧に解説。初めての相続でも理解しやすいようにまとめました。
目次
相続税とは?仕組みと課税対象となる財産

まずは相続税がどのような税金で、どのような財産に課されるのかを理解しておきましょう。
相続税の基本と課税対象
相続税とは、被相続人から受け継いだ財産に対して課される税金のこと。ただし、相続税は被相続人が所有していた「正味の遺産額」が基礎控除額を超えたときに発生するものであり、課税対象となる遺産総額から債務や葬式費用、非課税財産を差し引いたものが相続税法上の課税価格の計算のもとになります。
基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。しかし、相続放棄や限定承認といった手続きがなければ、被相続人の借金などの債務も相続人が引き継ぐことになるため、まずは遺産総額と負債の有無を洗い出すことが必要です。
相続税の対象となる財産の種類
相続税の対象となる財産としては、主に以下が挙げられます。
- 現金
- 預貯金
- 不動産
- 有価証券
- 生命保険金
- 死亡退職金 など
財産は現金だけでなく、不動産や有価証券など多岐に渡ります。ただし、墓や仏壇、国などへの寄付を目的とした財産は非課税扱いとなることも。財産の種別によって評価方法が異なるため、特に不動産の評価は複雑です。
税理士などの専門家に早めに相談し、適正な評価額を算定するようにしましょう。
基礎控除と相続税はいくらからかかる?

では、具体的に相続税はいくらからかかるのでしょうか?これを理解するためには、基礎控除を理解しておく必要があります。計算式とあわせて詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
基礎控除の計算式と具体例
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。例えば、配偶者と子ども2人の合計3人が法定相続人の場合「3,000万円+600万円×3人」という計算になり、4,800万円が基礎控除額となります。
控除額を超えた部分は課税対象になりますが、遺産総額がこの金額以内であれば相続税はかかりません。
実際に相続税が課される割合
相続税は累進課税方式のため、金額が多いほど高い税率が適用されます。一度、法定相続分に応じた相続税を計算し、その合計を実際の取得割合に従って各人が負担するという流れが一般的です。課税対象額の大きさや相続の配分によって、最終的な負担額が大きく変わってくるため、効率的な分割方法を検討するようにしましょう。
相続税の計算方法を押さえよう

続いて、相続税の計算方法について確認していきましょう。相続税は課税遺産総額の算出から相続人ごとの配分まで、段階を踏んで計算されます。
課税遺産総額の求め方
課税遺産総額を計算する際は、まず遺産総額から債務・葬式費用、非課税財産を差し引いて“正味の遺産額”を出しておきましょう。
そこに、被相続人が亡くなる前一定期間に受けた贈与加算などを考慮して課税遺産総額を確定させたら、この金額から基礎控除分を除外。この金額が課税遺産総額となります。
相続税の総額と各相続人の税額
課税遺産総額がわかったら、法定相続分で分割したと仮定し、相続税率表に当てはめて相続税の総額を計算します。
この総額を、各相続人の実際の遺産取得割合に応じて配分することで、個々の納税額が決定されるのが基本的な流れです。家族構成や遺産の種類によっては控除や特例が適用されるケースもあります。
相続税が非課税となるケースと申告手続き上の注意点

相続した遺産が基礎控除以下の場合など、相続税が発生しないケースも見られます。ただし、相続税がないからといって何の申告もしなくてはいいのかというとそうではありません。
ここでは、相続税が発生しない場合に気をつけたいポイントについてご紹介します。
申告義務の有無と要件
一般的に遺産総額が基礎控除額未満の場合には相続税はかかりません。しかし、基礎控除を下回っていても特例や控除の適用を受けるには申告が必要な場合もあります。
特に非課税の財産が含まれる場合は評価が難しいこともあり、わずかな違いで申告義務の有無が変わるため、トラブル回避のためにも早い段階で専門家や税務署に問い合わせておくようにしましょう。
「ゼロ申告」でも気をつけたいこと
相続税が実際には発生しない場合でも、特例や控除を適用するためには相続税申告書の提出が必要です。特例の適用を受けるには相続税の申告が前提となるケースが多いため、「どうせゼロだから大丈夫」と放置していると適用を受けられなくなる可能性があります。後日、財産評価の見直しなどで課税対象が増えるリスクを防ぐためにも、正確な情報を把握しておくことが欠かせません。
主な相続税の特例・控除

ここからは、相続税を軽減するための制度や特例についてご紹介します。上手く活用すれば大きな節税につながるので、しっかり確認しておきましょう。
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減では、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額まで、相続税を大幅に軽減することが可能。一定の要件を満たした上で申告書の提出が必要となるため、相続税額がゼロになる場合でも必ず手続きをしておくことが重要です。配偶者の税額軽減は二次相続にまで影響を及ぼすため、どの程度の財産を配偶者に相続させるかを検討する際にも重要なポイントとなるでしょう。
小規模宅地等の特例
被相続人の居住用や事業用として使用していた宅地を相続する場合、一定の要件を満たすと土地評価額を大幅に減額できるのが「小規模宅地等の特例」です。居住用の場合は最大80%もの減額となり、相続税の大幅な負担減につながります。ただし、相続後も居住を継続するなど、適用を受けるためにさまざまな条件があるため、利用前に詳細を確認しておくようにしましょう。
未成年者控除・障害者控除など
未成年者控除や障害者控除は、遺産を相続する人の生活保障の観点から相続税の負担を軽くする制度です。未成年者控除なら成人するまでの年数に応じた控除額が設けられ、障害者控除では障害の程度などによって控除額が異なります。いずれの場合も、申告書類の添付や事前の準備が必要になるため、早めの情報収集がポイントです。
二次相続に関する対策

相続が連続して起こる場合には、二次相続への準備が重要です。二次相続とは何なのか、どのような準備が必要なのかなど、詳しく解説します。
二次相続とは?注意点とリスク
二次相続とは、主に最初の相続に続いて配偶者が亡くなったときに発生する相続のことを指します。一次相続で配偶者が多くの財産を取得すると、二次相続時の課税額が大きくなる可能性があるため、一時相続で財産をどのように分けるかが重要なポイントになります。
さらに、二次相続では配偶者控除が使えないケースが多いなど、一次相続よりも負担が増加しやすいリスクも。相続の際は、二次相続も見据えて遺産分割の計画を立てることで、思わぬ税負担を回避しやすくなるでしょう。
二次相続での節税ポイント
二次相続で節税を検討する際によく取られる方法が、一次相続の際に配偶者にすべてを相続させるのではなく、子どもなど他の法定相続人に適度に分割しておくことです。こうすることで、結果的に二次相続の税負担軽減につながる場合があります。
さらに、財産の評価を適切に行い、小規模宅地等の特例や各種控除を最大限活用するのもポイント。家族の状況や遺産の構成を踏まえ、専門家のアドバイスも参考にしながら最適なシミュレーションを重ねると、より効果的な二次相続対策が行えるでしょう。
相続税の申告と納付の流れ

相続税の具体的な手続きの流れについてまとめました。あらかじめ大まかな流れを把握して、漏れなくスムーズに申告・納付を行いましょう。
申告期限と必要書類【遺産分割協議との関連】
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。この期間中に財産の評価や書類の準備、必要に応じて専門家との相談を行い、申告を完了させなければなりません。ただし、相続税の申告には、戸籍謄本や遺産目録、債務明細、遺言書の写しなど多くの書類が必要です。期限を過ぎると加算税や延滞税が課せられるリスクがあります。
特に相続財産の中に不動産がある場合は評価手続きにも時間がかかりやすいので、可能な限り早めに準備を始めることが大切です。
納付方法と資金計画の立て方
納付は現金での一括払いが基本です。ただし、資金が用意できない場合は、税務署長の許可を得て分割払いの延納や、不動産をそのまま納める物納が認められる場合があります。延納・物納ともに許可を受けるための厳格な要件(担保提供など)がある他、延納では利子税が、物納では収納費用等が発生するため、利用の際はよく確認して計画的に進めるようにしましょう。
まとめ
一見複雑な相続税も、主要ポイントさえ押さえておけば、相続時の手続きをスムーズに進められます。相続税は基礎控除を超えた遺産に対して課税されるため、まずは正確な遺産総額の把握が大前提。その上で、基礎控除や配偶者の税額軽減、小規模宅地特例などの制度を活用すれば、納付額を大幅に縮小できる可能性があります。あわせて、一次相続と二次相続の両方を念頭に置き、適切な分割方法や申告準備を行うことも大切です。
ただし、専門的な用語も多く手続きも煩雑なため、なかなかスムーズにいかないことも多いはず。そんな時は速やかに専門家へ相談を。
「アキサポ」では、相続の手続きはもちろん、そのあとの活用や売買まで一括でご相談を承っています。電話やWEBにて全国各地からのご依頼に対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。