公開日:2025.11.02 更新日:2025.10.27
NEW【相続税のすべて】計算・控除・申告の流れを解説
相続税は亡くなった方(被相続人)が残した財産を相続人が受け継ぐときに課せられるもの。あらかじめ正しく知識を身につけておき、突然の相続発生時にも落ち着いて対応できるようにしておくことが大切です。
この記事では、相続税の基礎知識から、計算方法、節税対策や特例の活用方法を幅広く解説します。具体的なシミュレーションや申告の手続きの流れについてもまとめたので、初めて相続税を考える方もぜひ参考にしてみてください。
目次
相続税の基礎知識:課税対象・非課税財産・基礎控除

まず、相続税の基礎知識として、どのような財産が対象となり、誰に課税がかかるのかを確認しておきましょう。
相続税がかかる人・かからない人
相続税は全員に必ず課されるわけではなく、相続財産の正味の金額(債務や葬儀費用を控除した額)が基礎控除額を上回った場合にだけ納税義務が生じます。たとえば、法定相続人が3名なら基礎控除は3,000万円+(600万円×3)=4,800万円となり、正味の遺産総額がこれを超える場合に相続税の課税対象となる可能性があります。
相続税の対象となる財産
相続税の対象となる主な財産として挙げられるのは、不動産や現金預貯金、株式、投資信託、生命保険金などです。また、故人が生前に行った贈与財産が相続開始前3年以内(2024年以降は段階的に最長7年以内)に行われた場合などは「相続開始前贈与加算」として課税対象となるケースもあり、これらはすべて合算されます。一見少額に思える財産でも合計すると基礎控除額を超えることがあるため注意が必要です。
一方、非課税財産としては墓地、仏壇、祭具など一定の要件を満たすもののほか、生命保険金や死亡退職金などにも非課税限度額が設けられています。
近年は地価の高騰や株式の上昇などにより、相続財産の額が思わぬ水準になることがあるため、まずは自宅や資産の基本的な評価額を把握しておくことが重要です。
申告が必要なケースと期限
相続税の申告は、正味の遺産額の合計が基礎控除額を超える場合に必要です。相続開始日(被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に申告・納税を行わなければならないため、この期間を過ぎると無申告加算税や延滞税が発生する可能性があります。特に、この期限までに遺産分割協議が成立しない場合は、特例の適用を受けるための中間的な手続き(申告書の提出)が必要となります。申告の判断に迷う場合は、財産総額の試算を早めに行い、必要に応じて専門家に相談するようにしましょう。
相続税の計算方法と税率【民法と税法の適用順序】

次に、相続税がどのように計算されるのか、その仕組みや税率について押さえておきましょう。
課税遺産総額の算出方法
課税遺産総額を算出するためには、まず被相続人が残した財産と負債をリストアップするところから始めます。当該相続財産のすべてを評価し、債務や葬儀費用などを差し引いた正味の遺産額を算出。さらにそこから基礎控除を引き、残った金額が課税遺産総額となります。
この際、不動産や金融資産はもちろん、生前贈与分も加算の対象となる場合があるためこちらも確認しておきましょう。
法定相続分に応じた税額の計算
課税遺産総額が求まったら、民法で定められている法定相続分で仮に分割し、それぞれの仮取得額に応じて相続税率を適用します。相続税率は累進課税で、高額になるほど税率が高まるため、相続財産の規模が大きい場合は注意が必要です。
各種控除を反映した最終税額の導き方
相続税の総額が算出できた後、配偶者控除や未成年者控除、障がい者控除などが適用される場合には、個々の相続人ごとに税額を軽減します。特に配偶者控除は大きな減額が見込まれるケースが多く、場合によっては配偶者が相続する分の税金がほとんどかからないことも。
これらの控除をすべて反映し、遺言書や遺産分割協議書で定められた実際の分割割合で各相続人に割り当てられた額が、その額が最終的な相続税額となります。
節税対策と特例の活用

相続税では積極的な節税対策が可能であり、その一つが基礎控除や配偶者控除などの制度活用です。事前に適切な対策を行うだけで、将来の税負担を大きく軽減できる事例は少なくありません。最適な方法を検討するためには、家族構成や財産の種類・規模を踏まえてシミュレーションを行うことがポイントです。
ここからは、利用できる主な節税対策や特例の内容をご紹介します。
基礎控除や配偶者の税額軽減
基礎控除は大前提として誰でも受けられる減額制度ですが、配偶者の税額軽減は、「法定相続分」または「1億6,000万円」のいずれか多い金額まで非課税となる制度です。具体的には、配偶者が本来取得することができる財産の額か、1億6,000万円のどちらか多い方までが非課税となります。夫婦間での財産分割が大きい場合には、相続税自体が大幅に軽減されることがあるため事前に要件を確認しておきましょう。
小規模宅地等の特例
被相続人が自宅として利用していた土地などを相続する際に活用できるのが、小規模宅地等の特例です。一定の要件を満たすことで、土地の評価額を最大80%まで減額できる場合があり、相続税を大幅に節約できるメリットがあります。ただし、居住用・事業用などの区分や継続利用の要件など、細かな条件をクリアする必要があるため前もって詳細を確認しておきましょう。
生前贈与・二次相続を見据えた対策【税法上のルール】
生前贈与を活用すると、相続時の財産額を減らすことで相続税を抑えられる場合があります。特に広く使われているのが、毎年110万円まで非課税となる暦年課税制度を利用して、長期的に贈与を行う手法です。ただし、2024年度税制改正により、贈与と相続の一体課税の導入が段階的に進んでいます。
また、配偶者が亡くなった後の二次相続においても、財産規模が大きいと税負担が増える可能性がある点にも注意しておかなくてはなりません。
これらは長期的な視点で検討する必要があるため、税理士などの専門家と相談しながら行うとより効果的な対策を講じやすくなります。
相続税の具体的なシミュレーションと節税効果の比較

事前にシミュレーションを行うことで、実際にどの程度の相続税が発生するかをおおまかに把握することが可能です。相続税の負担額は、財産の種類・金額・相続人の数や構成によって大きく変わるため、シミュレーションを行う際には、課税遺産総額の算定から法定相続分を用いた仮計算、各種控除の反映の順序を再現することがポイントです。
配偶者と子どもが相続人の場合
配偶者と子どもが相続人になるケースでは、配偶者控除を適用することで相続税がかなり抑えられる場合があります。例えば課税遺産総額が1億円の場合でも、配偶者が取得する割合が大きければ結果的に納税額が大幅に低減できることも珍しくありません。事前に遺産分割案を検討し、節税効果を比較しておくことでトラブルを回避しやすくなるでしょう。
子どものみが相続人の場合
配偶者がいない状況で子どものみが相続人となる場合は、配偶者控除の恩恵がなくなるため、その分相続税の負担が増える可能性があります。子どもが複数いる場合には、基礎控除額も増えますが、不動産などをどう分割するかで納税額が大きく変わることも。生前贈与や小規模宅地等の特例を含め、事前の対策がより重要になります。
シミュレーションツールを用いるメリット
相続税の概算を短時間で把握するうえで非常に便利なのが、早見表や無料のシミュレーションツールです。主要な金融機関や専門サイトが提供しているものもあり、課税遺産総額や相続人の数、各種特例の適用の有無を入力すると大まかな納税額が算出されます。
あくまで簡易計算ですが、具体的な数値を確認できることで、不安を解消しながら節税対策の優先度を見極められるのが大きなメリットです。
相続税申告までの流れと必要手続き【必要書類・期限】

相続が発生した際に、どのような準備や書類が必要となるか、申告の流れを押さえておきましょう。
財産目録の作成と評価
まずは、被相続人の財産や債務を確認するところから始めましょう。財産目録とは、被相続人の残した資産・負債を整理し、それぞれの価値を特定するための一覧表です。相続税の申告書類を作成するためには財産目録を正確に作成し、評価額を算出しなくてはなりません。
また、不動産であれば相続税評価額の算定も必要です。固定資産税評価額や路線価はあくまで評価額の基準の一つであり、株式などは時価を調査する必要があります。こうした評価額は変化する場合もあるため、財産の種類に応じて最新の情報を用いることがポイントです。
必要書類の整備と提出先
その後、基礎控除を考慮したうえで相続税が発生するかを判定し、必要であれば申告書を提出します。
相続税を申告する際は、主に以下の書類が必要です。
- 相続税申告書
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 固定資産税評価証明書 など
上記を揃えたら、管轄の税務署に提出します。申告期限は相続開始日から10か月以内と定められているため、期限内に提出・納税を完了させるようにしましょう。万が一書類が不足していると受理が遅れたり、追加で提出を求められたりするため、期限内に手続きを終えるためにも、早めに準備しておくことが望まれます。
税理士・専門家への相談のポイント
相続財産が多岐にわたる場合や、不動産の評価が複雑な場合には、税理士、弁護士、司法書士、行政書士といった専門家へ相談するのがおすすめ。最新の税制に精通しているのはもちろん、複数の特例を組み合わせた節税プランや申告手続きのサポートを提供してくれます。相談費用はかかりますが、結果的に大幅な税額軽減やスムーズな手続きにつながるため、早めに検討すると良いでしょう。
まとめ
相続税は遺産の額や相続人の数によって大きく変動します。そのため、まずは自分の家族構成と財産額を把握し、課税が発生するのかどうかを把握することが大切です。実際に相続税がかかるのは全体の1割程度といわれていますが、土地や金融資産の価値が思いのほか高い場合、相続税の対象となることもあります。小規模宅地等の特例や配偶者控除などの特例制度を活用することで、大幅に税額を低減できるケースもありますが、制度を知らなければ本来受けられるはずの控除を逃してしまうので、常に最新の情報を意識しましょう。
ただし、相続税は申告期限もあるため、間違いや遅延があると追徴課税や延滞税のリスクが生じます。財産目録の作成や評価、各種書類の収集には時間がかかるため、専門家の力を借りる選択肢も合わせて検討することも大切です。
「アキサポ」でも、各専門家と連携して相続税手続きのサポートも行っております。空き家を相続した場合は、その後の活用のサポートまでいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。