公開日:2026.02.16 更新日:2026.02.12
NEW事業所得と雑所得の違いは?副業300万円の壁や判断基準を徹底解説
副業やフリーランスの収入は、事業所得として扱えるか、雑所得として扱われるかで、手元に残るお金や申告の負担が大きく変わります。
ここで区分を誤ると、あとから税務署に指摘されて修正が必要になったり、経費が否認されて余計な税負担が発生したりするリスクもあります。
そこで本記事では、事業所得と雑所得の定義の違いから、継続性・営利性・記帳状況という「判断の軸」を整理します。また、収入300万円前後の扱い、開業届や青色申告がどこまで材料になるのか、メリット・デメリットも解説します。
目次
「事業所得」と「雑所得」の基本的な定義

まず「事業所得」と「雑所得」の定義を整理しましょう。
事業所得は、個人が実際に営んでいる事業から生じる収入を指し、反復的かつ継続的な取引を通じて利潤を追求していることが前提になります。
国税庁が示す事業所得の範囲には、独立して営まれる継続性のある取引、たとえば販売・製造・サービス提供などが含まれます。単発ではなく一定の継続性があり、利益を得るための活動として回っているかどうかがポイントです。
たとえば農業・漁業・商店経営のほか、フリーランスとして継続的に仕事を受注しているケースなどが代表例です。
雑所得は、事業所得や給与所得など他の所得区分に当てはまらない所得として整理されます(公的年金等を含む)。代表例として、公的年金のほか、執筆料・講演料・単発の副業収入などが挙げられます。
特に、副業が「趣味の延長で不定期に発生する」「継続的な事業として整っているとは言いにくい」といった性質の場合、雑所得として計上されやすい傾向があります。事業所得との境界が曖昧なケースもあるため、次の章で具体的な判断基準を見ていきましょう。
「事業所得」か「雑所得」かの判断ポイント
「事業所得」と「雑所得」は、年収や職業名だけで決まるものではなく、どう稼いでいるかという実態と、どう管理しているかという証拠をセットで見て判断します。
ここで税務署が重視するのは「継続して利益を出すために動いている事業なのか」「それとも単発・副次的な収入の集まりなのか」という点です。ここでは、特に判断の軸になりやすい3つのポイントを具体例つきで紹介します。
反復・継続性(取引が継続しているか)
反復・継続性は「たまたま儲かった」収入なのか「仕事として回っている」収入なのかを見分けるための軸です。単発の案件や一度きりの売買が中心だと、雑所得に該当する場合が多いです。
継続性があると判断されるのは以下のような場合です。
- 継続契約・定期案件がある(毎月の制作、運用代行、顧問、保守など)
- 販売が定常的(ネットショップやコンテンツ販売で、月ごとに複数の取引が発生している)
- リピート・紹介が回っている(同じ顧客から継続受注、顧客管理をしている)
- 集客を継続している(SNS・広告・ブログ・ポートフォリオ更新など、受注のための動きがある)
逆に、以下のような場合は「一時的な収入」と見られやすいです。
- 不定期で、年に数回しか売上が立たない
- 収入源が「たまたま入った単発案件」だけ
- 取引回数が少なく、翌年も続く見込みが薄い
ポイントは「毎月必ず売上があるか」よりも、反復して稼ぐ仕組み・動きがあるかです。売上に波があっても、活動が継続しているなら、事業所得と見られる可能性があります。
営利性・独立性(事業としての実態があるか)
営利性は「客観的に利益が出る構造か」、独立性は「他者の指揮命令を受けず、自己の計算とリスクで遂行しているか」という法的観点です。趣味の延長だと、売上があっても事業目的が弱いと見られて雑所得扱いになることがあります。
営利性・独立性を説明する要素には以下のようなものがあります。
- 価格設定がある(相場や工数を踏まえて料金表を作っている、値付けの根拠がある)
- 利益が出る構造を意識している(仕入れ・外注・広告費などのコストを管理し、粗利を見ている)
- 事業としての導線がある(HP、ポートフォリオ、問い合わせフォーム、販売ページ、予約システムなど)
- 必要な投資をしている(業務用機材、ソフト、撮影環境、研修費など)
- 取引の主体が自分(契約条件、納期、提供範囲を自分で決め、成果物や品質の責任を負っている)
記帳・保存状況(説明可能な記録があるか)
ここは実務を見るうえで特に重要なポイントです。税務上、主張が通るかどうかは、結局「説明できるか」次第です。事業所得として扱ってほしい場合は、少なくとも売上と経費が追える状態にしておくのが安全です。
最低限そろえておきたい記録は次の通りです。
- 売上の根拠:請求書、売上明細、振込記録、決済サービスの入金履歴
- 経費の根拠:領収書、レシート、クレカ明細、通販履歴、契約書
- 取引の実態:メール・DMのやりとり、納品データ、作業記録、案件管理表
- 家事按分の根拠(ある場合):自宅兼用の通信費・電気代など、按分割合の考え方をメモで残す
逆に、次の状態だと雑所得として見られやすくなります。
- 売上が入った口座・決済履歴が整理されていない
- 経費がレシートなし、用途不明、私用と混在している
- 記帳が年末にまとめてで、取引が追えない
副業における「事業所得」と「雑所得」の判断で気を付ける点

副業ならではのポイントとして特に気を付けたいのは、以下の2点です。
- 収入が300万円を超えるかそれ以下か
- 開業届の提出や青色申告を行っているか
ただしこれらは「これを満たせば事業所得、満たさなければ雑所得」といった単純な判定条件ではありません。あくまで、前章で整理した継続性・事業性・記帳体制を基本として、追加の判断材料として扱われます。
では、それぞれ具体的に見ていきましょう。
収入が300万円を超えるかそれ以下か
最初に見ておきたいのは、収入が300万円を超えるか、それ以下かという点です。国税庁の考え方(所得税基本通達の取扱い)では、
主たる所得があり、かつ、その年の「業務に係る雑所得」の収入金額が300万円以下のケースについて、帳簿書類の保存がある場合は原則「事業所得」、保存がない場合は原則「雑所得」とする整理が示されています。
つまり、300万円を超えたから自動的に事業所得になるわけではなく、あくまで継続性や営利性、記帳状況といった実態をセットで見て判断されます。逆に300万円以下の場合でも、事業性が確認できれば事業所得になる場合もあります。
開業届の提出や青色申告を行っているか
開業届や青色申告の手続きは、事業性を補強する材料にはなりますが、それが決定打になるわけではありません。これらを行っていたとしていても、あくまで実態と記帳が伴っていることが前提になります。
ちなみに、青色申告を活用する場合、帳簿の整備や届出期限などの要件を守る必要があり、青色申告特別控除や経費の計上といったメリットを受けられる代わりに管理コストも発生します。
事業所得で扱われる場合のメリット・デメリット

事業所得として扱われると、税制面の選択肢が広がり、利益が出たときほど節税効果を得やすくなります。その一方で、青色申告の活用や経費計上の前提として、帳簿の整備や証拠書類の保存といった「事業としての管理」が求められ、運用の手間も増えます。ここでは、事業所得として整理できた場合に得られる主なメリットと、見落としやすいデメリットを整理しておきましょう。
メリット:税制メリットが大きい・経費を算入しやすい
事業所得最大のメリットは、「青色申告による最大65万円控除」と「他の所得との損益通算」という強力な節税武器を手にできる点にあります。青色申告を活用できれば、青色申告特別控除を適用できる可能性がありますし、一定要件を満たす場合は専従者給与を経費に算入する選択肢も取れます。
さらに、事業で赤字が出た年に損益通算が使えると、本業の所得と相殺して税負担を抑えられる場面もあり、売上や利益の波がある人ほど恩恵を感じやすくなります。
もう一つのメリットは、事業に必要な支出を必要経費として整理しやすいことです。通信費・広告費・業務用機材・外注費・研修費など、事業との関連性を説明できる支出を経費として計上すれば課税所得を抑えられます。特に利益が出ているタイミングほど「経費を適切に引ける」効果が効いてくるため、副業を事業として育てていきたい場合は、手元に残るお金の差として実感しやすいでしょう。
デメリット:管理コストが増える・私用混在や根拠不足だと否認されやすい
事業所得として認められるデメリットは、事業として管理するための手間やコストがかかることです。帳簿の作成、証拠書類の保存、必要な届出などを継続して行う必要があり、青色申告を選ぶ場合は複式簿記や提出書類、期限管理まで含めて手間が増えます。
副業は本業の合間で回すことになるため、節税効果だけを見て始めると、記帳が追いつかず制度を活かしきれない状態になりやすい点には注意が必要です。
また、経費を算入しやすい反面、私用と混ざりやすい支出はチェックされやすい点にも注意が必要です。家事按分の根拠が弱い、領収書がない、業務との関連性が説明できないといった状態だと、経費が否認されて追徴課税を受ける可能性があります。
さらに赤字が続く場合は、利益を出す意思や収益化の工夫が見えにくいと「事業性」を疑われることもあります。
雑所得として計上する場合のメリット・デメリット
雑所得は、事業所得ほど「事業として整えること」を前提にしないため、副業がまだ試行段階だったり、収入が単発・不定期だったりする場合は、雑所得として整理したほうが現実的なケースもあります。
一方で、税制上の調整余地は小さく、利益が大きくなるほど「事業所得との差」が効いてくる点は理解しておきましょう。
メリット:事業所得より準備負担が小さい・申告の手続きがシンプル
雑所得のメリットは、青色申告のような制度活用を前提にしないので、準備をする際の負担を抑えやすいことです。副業を始めたばかりで継続性や収益性がまだ読めない段階では、まず雑所得として整理し、実態が固まってから事業化を検討してもよいでしょう。
また確定申告の手続きがシンプルな点もメリットとして挙げられます。事業所得のように、青色申告で求められる損益計算書や貸借対照表などの作成を前提にせず、基本的に収入や必要経費を整理して申告書に反映すれば足ります。単発の報酬が混ざっていても全体をまとめやすく、まずは申告漏れを防ぎながら処理を回すという意味でも、始めやすい区分といえます。
デメリット:青色控除や損益通算などが使いにくい・経費の説明がシビアになりがち
雑所得として扱う際のデメリットは、事業所得のように青色申告特別控除や損益通算などの節税効果を受けにくい点です。利益が出ても、税務上の調整余地が小さいため、同じ売上・同じ利益でも「どれだけ課税対象を圧縮できるか」に差が出やすくなります。特に副業が軌道に乗って利益が積み上がってくると、事業所得で整理できるケースと比べて税負担が重く感じやすく、結果として手元に残る額にも差が出てきます。
なお、雑所得でも必要経費は計上できますが、支出の妥当性が問われやすく、収入を得るために明らかに必要だと分かる範囲に限定されやすい傾向があります。私用と混ざりやすい支出や用途が曖昧な支出は説明が難しくなるので、入金履歴や領収書、取引記録といった根拠を管理できるようにしておきましょう。
まとめ:正しい区分と適切な申告でリスクを回避しよう
事業所得か雑所得かは「職業名」や「金額」だけで決まるのではなく、継続性や営利性、帳簿や証拠の整い方を踏まえて判断されます。特に、売上の根拠である請求書や入金履歴と、経費の根拠である領収書や明細、そしてやり取りや作業記録まで揃っているかどうかで、説明の通りやすさは変わってきます。
また、前々年分の「業務に係る雑所得」の収入が300万円を超える場合は、請求書や領収書などの保存が求められるため、どちらの区分を主張するにせよ、記録の整備がより重要になります。
区分で迷ったときは、まず「継続して利益を出すための動きがあるか」を言語化し、次に「売上・経費・按分の根拠をいつでも出せる状態」に整えるのが安全です。区分は節税だけでなく、今後の働き方にも直結するので、実態と管理体制に合わせて選びましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。