公開日:2026.10.13
NEW空き家で旅館業法をクリアする方法|簡易宿所の許可要件と手続き

空き家で旅館業法をクリアするとは、建築基準法や消防法などの要件を満たし、保健所から簡易宿所などの営業許可を得ることを指します。
この記事では、空き家を活用する際に、365日の営業も可能で選ばれやすい「簡易宿所」を中心に、ほかの民泊制度との違いや改修でつまづきやすいポイント、許可取得までの手続きを解説。
「せっかくの空き家、通年営業でしっかり収益化したいけれど、許可の壁が高そう…」とお悩みの方に向けて、初期費用を抑えながら空き家を活用する方法を整理します。
目次
空き家を民泊・簡易宿所にする3つの方法を比較
インバウンド需要の回復などを背景に、空き家を民泊として活用する選択肢に注目が集まっています。なかでも、営業日数に上限のない旅館業法の許可を取得し、宿泊施設として運営する動きが近年活発になっています。
しかし「収益を考えて通年営業したいから簡易宿所」と、営業日数や収益性だけで決めるのは早計かもしれません。空き家を宿泊施設として活用する方法は主に3つあり、制度によって必要な届出・許可、営業日数、設備の要件、利用できる地域などが異なります。
| 比較項目 | 民泊新法(住宅宿泊事業法) | 簡易宿所(旅館業法) | 特区民泊(国家戦略特区法) |
|---|---|---|---|
| 制度の位置づけ | 住宅を活用した宿泊サービス | 旅館業の営業形態(ホテル・旅館等) | 国家戦略特区の特例制度 |
| 利用できるエリア | 全国(自治体条例による制限あり) | 用途地域などの条件を満たす地域 | 特区民泊を実施する自治体のみ |
| 営業日数の上限 | 年間180日以内 | 上限なし(365日通年営業可能) | 上限なし(365日通年営業可能) |
| メリット | 既存住宅をそのまま活かしやすい | 通年営業で高い収益を目指せる | 対象地域なら180日を超えて営業可能 |
| 主な注意点 | 自治体ごとの営業制限・管理委託義務 | 建築基準法・消防法・保健所の厳しい基準 | 最低滞在日数(2泊3日等)などの制約 |
| おすすめの対象 | 住宅を活かして手軽に始めたい方 | 本格的な宿泊事業として収益化したい方 | 特区エリア内で通年営業したい方 |
物件によっては、用途地域や建物の状態、必要な消防設備などがネックとなり、想定以上の改修費がかかるケースもあります。
まずは立地や建物の条件から利用できる制度を絞りましょう。そのうえで営業日数や費用、運営体制を比較するのが確実です。
民泊新法(住宅宿泊事業法)の特徴と向いているケース
民泊新法は、正式名称を「住宅宿泊事業法」といい、一般の住宅を活用して宿泊サービスを提供するための法律です。
自治体への届出で始められるため、旅館業法の複雑な営業許可と比べてハードルが低いのが特徴です。台所・浴室・洗面設備・トイレなど、必要な設備を備えた空き家であれば、活用できる可能性があります。
ただし、営業できる日数は年間180日以内に限られます。自治体の条例によって、営業できる曜日や地域などが制限される場合もあり、通年で宿泊料による収益を得たいオーナーにとってはデメリットとなるでしょう。また、家主が不在となる住宅では、原則として住宅宿泊管理業者への管理委託が必要です。
そのため民泊新法が向いているのは、既存の住宅を活かして、年間180日以内で民泊を運営したいケースといえます。
旅館業法(簡易宿所)の特徴と向いているケース
一方で「簡易宿所」は、旅館業法に基づく営業種別のひとつです(法改正により「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3種別に統合・区分)。民泊新法のような年間180日の営業日数上限がなく、1年を通じて365日フル営業できるのが最大の強みです。 客室の延床面積要件は「33㎡以上(宿泊者数を10人未満とする場合は、宿泊者1人あたり3.3㎡以上)」と定められており、一般的な戸建て住宅の広さがあれば十分にクリア可能です。
また、帳場(フロント受付カウンター)の設置についても、ICT機器(タブレット等での本人確認・鍵の受け渡し)や駆けつけ要件を満たすことで、自治体の条例により柔軟な無人運用が認められるケースが広がっています。
簡易宿所は、年間180日の制限なく通年営業したい方や、本格的な宿泊事業として高収益化を目指すオーナーに最適です。
特区民泊(国家戦略特区法)の特徴と向いているケース
国家戦略特区法は、地域を限定して規制や制度の特例を認め、地域の活性化や産業振興を図るための法律です。特区民泊はこの法律にもとづく仕組みで、国家戦略特区のうち、条例を定めている自治体で利用できます。
自治体から特定認定を受けて運営するのが特徴で、民泊新法のような年間180日の営業日数制限がなく、対象地域では通年営業を見込めるのがメリットです。
ただし、先ほど触れたとおり、どの地域でも利用できるわけではありません。最低宿泊日数のほか、近隣住民への説明や宿泊者への対応など、自治体の条例で定められた要件を満たす必要があります。
対象地域に空き家を所有していて、自治体の要件を満たせる場合に向いている制度といえるでしょう。
旅館業法の簡易宿所と民泊新法の違い
旅館業法の簡易宿所と民泊新法(住宅宿泊事業法)では、営業日数や必要な手続き、建物の用途などに違いがあります。
| 比較項目 | 簡易宿所(旅館業法) | 民泊新法(住宅宿泊事業法) |
|---|---|---|
| 必要手続き | 保健所への申請・営業許可 | 都道府県知事等への届出 |
| 営業日数 | 365日(無制限) | 年間180日以内 |
| 建築基準法上の用途 | ホテルまたは旅館 | 住宅 |
| 主な設備・構造基準 | 消防設備・採光換気・手洗設備・客室面積等 | 台所・浴室・便所・洗面設備 |
| 用途地域の制限 | あり(商業地域や近隣商業地域等) | なし(住居専用地域でも実施可能) |
| 主な活用目的 | 年間を通じた事業としての収益化 | 空き家・余剰部屋の一時的・副業的活用 |
どちらを選ぶか迷ったときは、「どのくらいの日数を営業したいか」「その空き家で利用できるか」「開業にどのような手続きが必要か」を比較すると、自分に合った運営方法を絞りやすくなります。
空き家を簡易宿所にリノベーションする際の注意点

見た目や使いやすさだけを優先して空き家のリノベーションを進めてしまうと、許可申請の段階で追加の工事が必要になり、予定より費用がふくらんでしまうことがあります。特につまずきやすいのは、次の3つです。
- 建物の状態を把握せずに改修を始める
築古の空き家は、過去の増改築により図面と現況が異なるケースが多々あります。 検査済証などの書類が残っているかも含め、まずは建物の現状を整理しておきましょう。 - 宿泊者の定員を先に決めてしまう
簡易宿所では、客室の床面積などによって受け入れられる人数が変わります。「5人泊まれる物件にしたい」と考えていても、必要な要件を満たせず、想定より定員が少なくなる可能性があります。 - 内装や間取りを先に決めてしまう
間取りや建物の条件によって、必要な消防設備や避難経路なども変わります。内装を仕上げてから対応すると、追加工事が必要になり、初期費用が膨らむことも。デザインを決める前に、旅館業法・建築基準法・消防法の条件を踏まえて改修内容を組み立てるのがポイントです。
簡易宿所に必要な消防設備と消防法の手続き
空き家を簡易宿所として営業する場合は、消防法に基づいた設備の設置や手続きが必要です。まずは建物の図面や現況写真を用意し、改修前に管轄の消防署へ相談しましょう。
必要な消防設備は建物の規模や構造、間取りなどによって異なりますが、主に次のようなものがあります。
- 消火器
- 自動火災報知設備
- 誘導灯
- 非常用照明
- スプリンクラー設備 など
必要な設備を整えたあとは、消防署による検査などを経て「消防法令適合通知書」の交付を受けます。旅館業の営業許可にも関わるため、保健所への相談と並行して進めるとスムーズです。
簡易宿所の建築基準法・用途地域・用途変更の確認ポイント

空き家を簡易宿所として活用するには、旅館業法だけでなく、建築基準法や用途地域の条件も満たす必要があります。営業許可を進める前に、次の順番でチェックしましょう。
①用途地域
簡易宿所を営業できるエリアか
用途地域によっては、簡易宿所を営業できません。まずは自治体の都市計画情報などで調べ、判断が難しい場合は建築指導課などの担当窓口へ相談します。
②用途変更
住宅から宿泊施設への変更手続きが必要か
床面積が200㎡(2019年法改正基準)を超える部分を住宅から簡易宿所(建築基準法上の「ホテル・旅館」)へ転用する場合、指定確認検査機関や特定行政庁への「用途変更の建築確認申請」が法的に必須となります。
ここで多くのオーナーが勘違いしがちなのが「200㎡以下の住宅なら建築基準法は何もしなくていい」という誤解です。確認申請の手続き自体が不要になるだけで、建物自体は「ホテル・旅館」の技術基準(排煙設備、非常用照明、防火区画、内装制限など)に実質適合していなければ違法建築となります。無届けや基準未達のまま開業すると営業停止や是正命令の対象となるため、必ず建築士への相談が必要です。
③建物の適法性
現在の状態に問題がないか
古い空き家では、過去の無届増改築により現況と公認図面が異なるケースがあります。また、昭和・平成初期の古い空き家では、完了検査を受けておらず「検査済証」が見当たらない物件が少なくありません。検査済証がない物件は、確認済証や「建築確認台帳記載事項証明書」を取得したうえで、国土交通省の策定したガイドラインに基づく一級建築士による「法適合状況調査(既存不適格・違反箇所の洗い出し)」を実施すれば、適法性を証明して用途変更や営業許可へ進める道が開けます。
簡易宿所の営業許可を取得するまでの手続き・流れ
簡易宿所の許可取得は、事前相談から改修工事、申請、立入検査の順に進めるのが基本です。
申請から許可取得までにかかる期間は、自治体や物件の状況によって異なります。開業予定日から逆算し、余裕のあるスケジュールを組みましょう。
簡易宿所の近隣トラブルを防ぐ運営ルールと対策

簡易宿所の営業許可を取得しても、騒音やゴミ出しなどの苦情が続けば、安定した運営は難しくなります。開業前から近隣住民への配慮と宿泊者向けのルールを整えておきましょう。
特にトラブルにつながりやすいのは、次のようなケースです。
- 夜間の話し声や大きな物音
- 路上駐車や指定場所以外への駐車
- ゴミ出しや分別ルールの違反
- 指定場所以外での喫煙
- 深夜・早朝の出入り
こうしたトラブルを防ぐには、まずは開業前に近隣住民へ施設の運営方法や管理者、緊急時の連絡先などを伝えておくとよいでしょう。
宿泊者に対しても、静かに過ごす時間帯やゴミの分別方法、駐車場所、喫煙ルールなどを事前に案内します。外国人宿泊者の利用を想定する場合は、多言語で案内を用意するなど、ルールが伝わりやすい工夫も必要です。
空き家の簡易宿所への改修に使える補助金・助成金の探し方

空き家を簡易宿所へ改修する際は、自治体などの補助金・助成金を利用できる場合があります。まずは物件がある自治体のWebサイトで、次のようなキーワードを組み合わせて検索してみましょう。
- 「自治体名 空き家 改修 補助金」
- 「自治体名 宿泊施設 補助金」
- 「自治体名 観光 補助金」
- 「自治体名 耐震/省エネ 補助金」
該当する制度が見つからない場合は、自治体の空き家対策、観光、商工、移住・定住などの担当窓口へ問い合わせる方法もあります。宿泊事業向けの制度がなくても、空き家改修や耐震、省エネ設備などが補助対象になる可能性があります。
補助金・助成金は、必ず「工事契約や着工の前」に申請して交付決定を受けなければなりません(着工後に遡って申請することは原則不可)。 また、2023年12月施行の改正空き家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)により、放置されて倒壊等の恐れがある「特定空家」に加え、放置すれば特定空家になるおそれがある「管理不全空家」として市区町村から【勧告】を受けると、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1減額)が解除され、税負担が大幅に跳ね上がるリスクがあります。
空き家を簡易宿所へリノベーションして活用することは、補助金の活用だけでなく、将来的な増税リスクを回避する有効な節税対策にもつながるので注意しましょう。
まとめ|空き家で旅館業法をクリアする方法を押さえて簡易宿所を始めよう
「この空き家で営業許可を取得できるのか」「どこまで改修が必要なのか」を把握しないまま工事を進めてしまうと、想定外の追加費用がかかってしまうこともあります。
簡易宿所として開業する場合は、改修する前に自治体や消防署、保健所へ相談し、建築基準法・消防法・旅館業法の要件を押さえておきましょう。
また、開業してからのことを見据えて、騒音やゴミ出しなどのルール、近隣住民への対応方法も整えておきたいところです。補助金・助成金を利用する場合は、着工する前に対象条件や申請時期を確かめておくことが大切です。
まずは物件の立地や建物の条件を調べ、必要な改修や費用も踏まえながら、その空き家に合った活用方法を見極めていきましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






