公開日:2026.07.17 更新日:2026.06.29
NEW【貸別荘経営の始め方】空き家・別荘で儲かる仕組みとは?開業手続きや費用を解説
全国的な空き家の増加を受けて、貸別荘経営が、使っていない別荘や空き家を収益化する手段として注目を集めています。うまく経営できれば、維持管理費の軽減や副収入を期待できるのは魅力的ですよね。
ただし、物件を持っているからといって、すぐに貸別荘として営業できるわけではありません。開業にあたっては、旅館業法や住宅宿泊事業法に基づく許認可手続きをはじめ、消防設備の設置や自治体の条例遵守が求められます。
また、貸別荘経営は一つの事業でもあるため、立地選びや価格設定、集客方法、清掃体制によって利益が大きく変わります。そこでこの記事では、貸別荘経営の基本的な仕組みから、収益の考え方、必要な手続きなどを解説します。
目次
貸別荘経営とは?ビジネスモデルと民泊との違い

貸別荘経営とは、別荘や一戸建てなどを一棟単位で貸し出し、宿泊料金を得るビジネスです。民泊と似ているように感じますが、貸別荘は「一棟貸しの宿泊施設」という提供スタイルを指し、民泊は住宅宿泊事業法にもとづく運営形態を指すのが一般的です。
つまり、貸別荘を民泊として運営するケースもあれば、旅館業の許可を取って宿泊施設として運営するケースもあります。貸別荘と民泊の特徴を比較すると以下のようになります。
| 項目 | 貸別荘経営 | 民泊 |
|---|---|---|
| 貸し出し方 | 一棟単位で宿泊施設として貸す | 住宅の全部または一部を宿泊用に貸す |
| 主な利用者 | 家族旅行、グループ旅行、ペット同伴客など | 観光客、出張者、短期滞在者など |
| 収益の単位 | 1泊ごとの宿泊料金 | 1泊ごとの宿泊料金 |
| 収入の特徴 | 繁忙期に単価を上げやすいが、季節変動がある | 低コストで始めやすい一方、営業日数の制限を受ける場合がある |
| 運営の手間 | 清掃、予約管理、問い合わせ対応が必要 | 清掃、ゲスト対応、届出・管理体制が必要 |
| 向いている物件 | 観光地、別荘地、自然環境のよい一戸建て | 住宅地や観光地の空き家・空き部屋 |
貸別荘経営の魅力は、物件の魅力を宿泊体験として打ち出せる点にあります。庭付きの一戸建てや眺望のよい別荘、サウナやバーベキュー設備のある物件などは、ホテルとは違う過ごし方を求める人に選ばれやすくなります。
しかし、裏を返せば、物件のブランディングが不十分だと数ある宿泊先の中に埋もれてしまう可能性があるということでもあります。そのため、貸別荘経営を始める際には「誰に、どんな時間を過ごしてもらう施設なのか」までを考慮した事業計画が必要になってきます。
貸別荘経営の3つのスタイル(旅館業型・民泊型・賃貸型)
貸別荘経営では、同じ建物を貸し出す場合でも、どの形で運営するかによって必要な手続きや収益の作り方が変わります。
ここでは主な経営スタイルである以下の3種類を説明します。
- 旅館業(簡易宿所)
- 住宅宿泊事業(民泊新法)
- 長期賃貸・マンスリー
旅館業(簡易宿所)
旅館業(簡易宿所)で運営する方法は、貸別荘を本格的な宿泊施設として営業したい場合に向いています。この経営スタイルであれば年間の営業日数に上限がないため、観光地や別荘地など宿泊需要が見込める場所では、売上を伸ばしやすいでしょう。
ただし、旅館業として営業するには、保健所の許可や消防設備の設置などが必要です。既存の別荘や空き家を転用する場合、建物の構造や設備が基準を満たしておらず、追加工事が発生することもあるので、動き出す前に保健所や消防署などと協議をしておきましょう。
住宅宿泊事業(民泊新法)
住宅宿泊事業、いわゆる民泊新法で運営する方法は、まずは小さく貸別荘経営を始めたい場合に検討しやすい方法です。旅館業の許可ではなく届出によって始められるため、条件が合えば比較的取り組みやすい運営形態といえます。
住宅宿泊事業法では年間営業日数の上限は180日とされていますが、自治体の条例によりさらに短く制限されている地域もあります。民泊の決まりは全国一律ではないので、あらかじめ確認しておきましょう。
長期賃貸・マンスリー
長期賃貸やマンスリーで運営する方法は、短期宿泊のような高単価は狙いにくいものの、稼働を安定させやすいのが特徴です。1か月以上など一定期間まとめて貸し出すため、清掃や宿泊者対応の回数を抑えられ、運営の負担も軽くなります。
また、閑散期の対策として利用する方法もあります。たとえば、リモートワークや長期滞在、二拠点生活の需要に合う物件であれば、観光目的とは違う形で収益を作れるかもしれません。一定期間ゆっくり滞在したい人に向けて打ち出すことで、空室期間を埋めやすくなります。
ただし、長期賃貸やマンスリーは宿泊とは契約の考え方が異なり、一定期間「住まい」として貸す場合は、賃貸借契約として扱う必要があります。
特に注意したいのが、契約期間の決め方です。マンスリーや長期滞在として数ヶ月単位で貸し出す場合「一時使用目的の建物の賃貸借契約」に該当するかどうかが重要です。一時使用と認められれば借地借家法の強い保護(法定更新など)は適用されませんが、通常の生活の拠点とみなされる場合は「定期建物賃貸借契約」を結んでおかないと、期間満了時にスムーズに退去してもらえないリスクがあります。
また、家具・家電付きで貸し出す場合は、故障や破損が起きたときの負担、光熱費や清掃費の扱い、退去時の原状回復、途中解約や延長の可否なども契約書で明確にしておきましょう。ここを曖昧にしたまま貸し出すと、退去時に「どこまで借主負担なのか」で揉めやすくなります。
貸別荘経営は儲かる?売上・稼働率・客単価を踏まえた収益計画を立てるには

貸別荘経営で儲かるかどうかは「いくらで貸せるか」だけでなく「どのくらい稼働するか」「費用を差し引いていくら残るか」を考慮した収支を考えることが大切です。ここでは、収益計画を立てるうえで押さえておきたい以下の3点を見ていきましょう。
- 売上の考え方
- 収支計画の作り方
- 利回りの見方と注意点
売上の考え方|客単価・稼働率・販売日数で収益が決まる
貸別荘経営の売上は、基本的に「客単価×稼働率×販売日数」で決まります。1泊あたりの宿泊料金が高くても、予約が入る日数が少なければ売上は伸びませんし、反対に、稼働率が高くても安く貸しすぎると、清掃費や手数料を差し引いた利益が残りにくくなります。
また、貸別荘では単に宿泊日数を増やすだけでなく、1回の予約あたりの単価をどう高めるかも重要になります。サウナやバーベキュー設備、ペット同伴可、眺望のよさなど、物件ならではの価値を打ち出せれば、価格だけで比較されにくくなるでしょう。
収支計画の作り方|想定単価・稼働率・固定費を整理する
収支計画を作るときは、想定単価と稼働率を現実的な値で設定することが欠かせません。周辺の宿泊施設や貸別荘の料金を確認し、繁忙期・通常期・閑散期ごとに「どのくらいの単価で、月に何日ほど予約が入るか」を見積もりましょう。
次に、運営経費を固定費と変動費に分けて整理しましょう。ここで、突発的に発生する費用もある程度見込んでおくと安心です。
| 費用区分 | 項目の例 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| 固定費 | 固定資産税、損害保険料、通信費、管理委託費、ローン利息など | 売上に関わらず毎月一定額が発生する費用(※ローン元本は経費外) |
| 変動費 | 清掃・リネン費、消耗品費、水道光熱費、OTA手数料、決済手数料 | 稼働率や宿泊客数に応じて増減する費用 |
| 突発費用 | 設備故障、家電交換、建物修繕、備品の破損対応など | 予期せぬトラブルに備えてあらかじめ見込んでおくべき費用 |
※ ローンの元本返済部分は経費にはならない。代わりに、購入した建物や設備などの固定資産の価値の目減り分を、減価償却費として耐用年数に応じて経費計上する
利回りの見方と注意点|売上ではなく手残りで判断する
貸別荘経営の利回りは、売上ではなく手残りで判断しましょう。宿泊単価が高く、表面上の売上が大きく見えても、運営経費を差し引いた後の利益が小さければ、事業としては安定しません。
とくに注意したいのは、稼働率を上げるために安売りしすぎるケースです。予約は増えても、1泊あたりの利益が小さくなれば、清掃や対応の手間ばかり増えてしまいます。
また、初期投資の回収期間も忘れてはいけません。物件取得費や改修費、家具家電、消防設備などに大きな費用をかけた場合、毎月黒字でも投資回収までに長い時間がかかることがあります。
開業に必要な手続き・許認可

貸別荘経営の開業手続きは、どの経営スタイルを選ぶかによって変わります。ここでは、以下の3つの経営スタイルごとに、開業時に確認しておきたい手続きや許認可を見ていきましょう。
- 旅館業(簡易宿所)
- 住宅宿泊事業(民泊新法)
- 長期賃貸・マンスリー
旅館業(簡易宿所)で開業する場合の手続き
旅館業(簡易宿所)として貸別荘を開業する場合は、施設所在地を管轄する保健所へ旅館業法の許可を申請し、法令に基づく基準に適合し ているか、構造設備等について検査を受ける必要があります。一般的には、事前相談を行ったうえで、申請書類や図面を準備してから本申請をする流れになります。
申請時に求められる主な書類は、以下のとおりです。
- 旅館業営業許可申請書
- 施設の構造の概要
- 営業施設の平面図・立面図
- 土地・建物の所有権が分かる書類(土地登記簿謄本、建物登記簿謄本など)
- 建築基準法に基づく検査済証の写し
- 消防法令適合通知書
- 賃貸借契約書や転貸承諾書(転貸の場合)
- 共同住宅の場合は管理規約
など
消防法令適合通知書は管轄消防署への事前相談と現地確認を経て取得します。スプリンクラーや誘導灯の設置が必要になるケースもあるため、届出前に消防署に相談しましょう。
住宅宿泊事業(民泊新法)で開業する場合の手続き
住宅宿泊事業、いわゆる民泊新法で貸別荘を開業する場合は、住宅の所在地を管轄する都道府県知事などへ届出を行います。
まずは、以下の3点を確認します。
- 転借の場合は賃貸人及び転貸人が民泊事業を目的とした転貸を承諾しているか
- マンションの場合はマンション管理規約違反でないか
- 消防法令適合通知書を入手すること(届出住宅を管轄する消防に相談)
そのうえで、下記のような事項を記入して提出します。
- 商号、名称又は氏名、住所
- 住宅の所在地
- 営業所又は事務所を設ける場合は、その名称と所在地
- 委託をする場合は、住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容
- 生年月日、性別
- 住宅宿泊管理業者の場合は、登録年月日、登録番号
- 連絡先
- 住宅の不動産番号
- 一戸建ての住宅、長屋、共同住宅、寄宿舎の別
- 住宅の規模
など
長期賃貸・マンスリーで貸し出す場合の契約手続き
長期賃貸やマンスリーで貸し出す場合は、住宅を貸すときと同じように、賃貸借契約として手続きを進めます。
具体的な手続きの流れは、以下のとおりです。
長期賃貸・マンスリーの契約手続きフロー
普通借家契約・定期建物賃貸借契約などの契約形態を決める
賃料、契約期間、敷金・保証金、光熱費、清掃費などの条件を決める
家具・家電付きで貸す場合は、設備リストや使用ルールを整理する
入居者募集を行い、必要に応じて入居審査をする
契約書を作成し、契約内容を説明したうえで締結する
鍵の引き渡し前に、室内状況や備品の状態を確認しておく
宿泊より運営の手間は抑えやすいものの、契約内容が曖昧だと退去時にトラブルになりやすいため、不動産会社や専門家に確認しながら進めましょう。
貸別荘経営を安定させる運営のポイント

貸別荘経営を安定させるには、実際に運営を続けられる体制づくりが欠かせません。物件の魅力があっても、清掃が回らなかったり、料金設定が合っていなかったりすると、稼働率や口コミに影響します。
ここでは、運営を始める前に押さえておきたいポイントを3つに絞って見ていきましょう。
立地とコンセプトを明確にする
立地とコンセプトは物件の魅力を伝えるうえで大切です。単に「景色がよい」「建物がきれい」というだけでなく、誰に泊まってもらう施設なのかを明確にすると伝わりやすいでしょう。
たとえば、家族向け、ペット同伴、サウナ付き、ワーケーション向けといった言葉を使うと、具体的な過ごし方が伝わりやすくなります。このような工夫をして、価格だけで比較されない形を作りましょう。
清掃・管理体制を整える
清掃・管理の体制は口コミやリピートに直結します。宿泊者にとっては、建物のおしゃれさよりも、室内の清潔感や備品の状態、トラブル時の対応のほうが印象に残ることも少なくありません。
特に遠方の物件を運営する場合は、清掃スタッフや管理会社を確保できるかが重要です。チェックアウト後の清掃、リネン交換、消耗品の補充、設備トラブルへの対応まで含めて、オーナー自身が対応するのか、外部に任せるのかを事前に決めておきましょう。
価格設定と集客方法を工夫する
貸別荘の収益は、料金設定と集客方法によって大きく変わります。週末や連休、長期休暇は高めに設定し、平日や閑散期は連泊割引や長期滞在プランを用意するなど、需要に合わせて料金を調整することが大切です。
集客では、OTAと呼ばれる宿泊予約サイトを活用するのが一般的です。ただし、予約サイトだけに頼ると手数料がかかるため、SNSや自社サイト、リピーター向けの案内なども少しずつ整えていくとよいでしょう。
最初からすべてを完璧に用意する必要はありませんが、予約が入ったあとに運営が回らない状態は避けたいところです。立地、清掃、料金、集客を一つずつ整えていくことが、貸別荘経営を長く続けるための土台になります。
よくある質問
まとめ|貸別荘経営は収益計画と運営体制を整えて始めよう
貸別荘経営は、使っていない別荘や空き家を収益化できる一方で、物件を掲載すればすぐに収益が出るものではありません。旅館業、住宅宿泊事業、長期賃貸・マンスリーのどれで運営するかによって、必要な手続きや契約内容、営業できる日数が変わります。
また、収益を考える際は、客単価や稼働率だけでなく、清掃費や光熱費、予約サイトの手数料、修繕費などを差し引いた手残りを見ることが大切です。開業後も、清掃・管理体制、価格設定、集客方法を整えなければ、安定した運営は難しくなります。
貸別荘経営を検討している方は、まず「その物件で営業できるか」「どの形で貸し出すか」「運営を回せる体制を作れるか」を整理してみましょう。収益の期待だけで進めず、手続きと運営の現実まで確認しておくことが、長く続けるための第一歩になります。
アキサポでは、使われていない空き家や別荘を初期費用0円(※条件あり)でリノベーションし、貸別荘として収益化するサポートを行っています。物件の活用にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。