公開日:2022.03.25 更新日:2026.06.04
空き家をデイサービスに活用する方法!メリットや注意点を解説
全国的な高齢化率の増加に伴って、老人ホームをはじめとする介護施設も増えてきました。中でも通所介護、いわゆるデイサービスは都市部だけでなく郊外地にも需要があることから、空き家の活用先として注目されています。
しかし、空き家をデイサービスに活用しようとしても、すぐできるわけではなく、立地可能な場所や指定基準をクリアする必要があります。
そこでこの記事では、空き家をデイサービスに活用する手続きとメリットについて解説します。
目次
デイサービスとは?
デイサービスとは、要介護1以上の高齢者を対象とした通所介護施設です。入浴・排せつ・食事などの介護を日帰りで提供します。利用者本人の生活支援はもちろん、介護する家族の負担軽減にもつながる点が特徴です。
施設によっては筋力トレーニングや体操などの健康増進プログラム、俳句・書道などのレクリエーションが用意されており、高齢者の孤立防止にも役立っています。送迎は施設の車が対応するのが一般的で、朝に自宅へ迎えに来て昼過ぎ〜夕方に帰宅する流れが基本です。
デイサービスの法律上の扱い
デイサービスは法律上「通所介護」と呼ばれ、介護保険法により「老人デイサービスセンターへ通わせ、入浴・排せつ・食事等の介護および機能訓練を行うこと」と定められています。老人デイサービスセンター自体も老人福祉法で定義されており、同法に基づいた施設・サービスの提供が必要です。
これらの基準を満たす必要があるため、事業者は法人に限定され、従業員の知識・技能や設備基準も満たさなければなりません。空き家をデイサービスに活用する場合は、運営ノウハウを持つ法人に委託する必要があります。
空き家をデイサービスに活用するための手続き
空き家をデイサービスに活用するには、①デイサービスを行える用途地域であること、②事業実施に必要な基準を満たすこと、の両方をクリアする必要があります。どちらが欠けても開設できないため、最初に確認しておきましょう。
個人での確認は難しいため、不動産会社・デイサービス事業者・市町村の相談窓口への問い合わせをおすすめします。
デイサービスが立地可能な場所
デイサービスが立地できるのは、基本的に「市街化区域」と呼ばれる、建築物の立地を推進している地域内に限られます。
市街化区域というのは、都市計画法により「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定められており、多くの建築物の立地が認められています。
市街化区域の中にも「用途地域」と呼ばれる立地可能な用途を細かく定める区域があり、デイサービスは下記の用途地域で立地可能です。
| 立地可能な用途地域の区分 | 具体的な用途地域名 | 特徴・デイサービス運営における視点 |
|---|---|---|
| 住居専用地域 | 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域 | 閑静な住宅街にあり、利用者の自宅に近く需要が高いエリアです。送迎車両の通行や駐車スペースの確保において、周囲への事前の配慮が大切になります。 |
| 住居地域 | 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域 | 住宅と小規模な店舗・オフィスが混在するエリアです。比較的道路が広くアクセスが良いため、送迎車両の巡回や駐車場の確保がしやすい特徴があります。 |
| 商業地域 | 近隣商業地域、商業地域 | 駅周辺や商業施設が集まる中心地です。利便性が極めて高い反面、人通りや交通量が多いため、送迎時の安全管理や車両の停車スペースの確保に工夫を要します。 |
| 工業地域 | 準工業地域、工業地域 | 法律上は立地可能です。ただし、周囲の工場騒音や大型トラックの往来など、高齢者が快適に通所し、静かに過ごせる環境であるか事前の現地確認が必要です。 |
一方、「市街化調整区域」と呼ばれる、建築物の立地を抑制すべき区域では基本的に立地が認められていません。ただ、市街化調整区域内でも例外的に立地が認められている場所もあるため、一度は市町村に確認しておきましょう。
デイサービスの指定に関する基準
デイサービスの指定(開業許可)を受けるためには、介護保険法に基づき、主に「人員基準」「設備基準」「運営基準」という3つの厳格なルールをクリアする必要があります。
これらは施設の規模や、空き家のリフォーム設計に直結する非常に重要なポイントです。オーナーとして知っておきたい具体的な中身を整理しました。
1. 人員基準(だれが何人必要か)
デイサービスを運営するには、有資格者を含む以下の専門スタッフを配置しなければなりません。
- 管理者:施設全体の責任者(原則として常勤)。
- 生活相談員:利用者や家族、ケアマネジャーとの窓口・調整役(社会福祉士など)。
- 看護職員:利用者の健康管理やバイタルチェックを行う看護師・准看護師。
- 介護職員:入浴、排せつ、食事などの直接的な介助を行うスタッフ。
- 機能訓練指導員:リハビリや体操の指導を行う専門職(理学療法士、作業療法士、柔道整復師など)。
2. 設備基準(どんな部屋や広さが必要か)
空き家をリフォームする際、間取りや設計に最も大きく関わってくる基準です。
- 食堂および機能訓練室:食事ができ、体を動かせるメインスペース。利用定員1人あたり3平方メートル以上の広さを確保することが義務付けられています。
- 静養室:体調が悪くなった利用者がベッドで横になって休める独立したスペース。
- 相談室:プライバシーに配慮し、パーテーションなどで仕切られた相談専用の空間。
- 事務室:スタッフが作業をし、鍵付きの書庫などで個人情報を適切に管理できる部屋。
- その他:車椅子でも転回できる広さのバリアフリー空間や、手すり付きのトイレ、安全に入浴できる浴室などの設置が必要です。
3. 運営基準(どのように営業するか)
適切な介護サービスを安全に提供するための運用ルールです。
- 法律で定められた利用定員の遵守(通常のデイサービスは10人以上、小規模な地域密着型は18人以下など)。
- 提供するサービス内容や、営業日・営業時間の明確な設定。
- 緊急時や事故発生時の対応マニュアルの整備。
💡 オーナーへのアドバイス
空き家オーナーがこれらの複雑な要件をすべて網羅して図面を引くのは現実的ではありません。しかし、「どの部屋にどのくらいの広さが必要か」「バリアフリー化がどこまで求められるか」という大枠を把握しておくことで、デイサービス事業者へ物件を賃貸する際や、建築会社とリフォームの打ち合わせをする際の意思疎通が格段にスムーズになります。
空き家をデイサービスに活用するメリット
空き家をデイサービスに活用する3つのメリット
※高い社会需要を背景に、安定した長期運営と税制優遇が期待できます
郊外地でも高い需要
車での送迎が基本となるため、駅から離れた住宅地や郊外エリアでも安定した需要が見込めます。むしろ広い駐車スペースを確保しやすいメリットもあります。
一棟貸しで収入が安定
運営事業者への「一棟貸し」が基本となるため、毎月の賃料収入が安定します。国が推進する介護保険事業であるため、短期撤退のリスクが低いのも特徴です。
固定資産税の非課税措置
地方税法の規定により、老人福祉施設事業として利用される土地や建物は固定資産税が非課税(免除)の対象となり、所有コストを大幅に削減できます。
デイサービスは高齢化の進む日本において高い需要があり、それだけでも十分なメリットになり得ます。しかし、デイサービスにはそれ以外にも複数のメリットがあり、さらには税制面の優遇を受けられる制度も備わっています。
ここでは空き家をデイサービスに活用する3つのメリットを紹介します。
郊外地でも需要が見込める
デイサービスは、高齢者向けの通所サービスという特性上、広く需要のあるサービスです。住宅の多い都市部はもちろん、郊外地でも需要が見込めますし、高齢化の進むニュータウンでも高い需要を得られると考えられます。
また、デイサービスは車での送迎が基本のため、利用者の家まで少し離れていてもさほど問題にはなりません。むしろ郊外地の方が車の駐車スペースを確保しやすいため、立地のハードルが低くなる可能性があります。
収入が安定している
入居者数によって収入が増減するアパートやマンションと違い、デイサービスは運営事業者への一棟貸しが基本のため、月々の収入が安定しています。また、介護保険事業という性質上、補助金も活用でき、事業が短期で撤退する可能性が低い点もポイントです。
さらに、近隣に空き地を持っていたり空き家の敷地が広い場合などは、送迎に使う車の駐車スペースとして合わせて借りてもらえる可能性もあります。
固定資産税が非課税になる
デイサービスは老人福祉施設事業を営む施設として、固定資産税が非課税になるメリットがあります。
これは「地方税法」という法律に定められており、ほかにも児童福祉施設や障害者支援施設などの福祉を目的とする施設も対象となっています。
ただ、固定資産の使い方・契約方法によっては、固定資産税が非課税にならないケースもあるため、市町村の固定資産税担当に確認するのを忘れないようにしましょう。
空き家をデイサービスに活用する際の注意点
デイサービスに関して特に気を付けるべきポイントは「立地に関するトラブル」です。
デイサービス自体は周辺地域に影響を及ぼすものではありませんが、送迎に車両を使うことから車に関するトラブルが起こる可能性はあります。
また、活用前の空き家自体に問題が無いかもチェックすべきポイント。ここでは、空き家をデイサービスに活用する際に注意すべきポイントを2つ紹介します。
市町村と事前協議をしっかり行う
最初に行うべきは市町村との事前協議です。デイサービスは福祉施設のため、主に福祉部局との協議が必要になります。施設の場所・規模によっては都市計画・道路・上下水道などの部局も関係し、関連工事を求められるケースもあります。送迎車両が多い場合は近隣道路の状況も協議に挙がることがあります。「リフォームすればできる」ではなく、敷地や周辺インフラにも手を加える可能性があると考えておきましょう。
建物の適法性を確認する
空き家をデイサービスに活用する場合、建築基準法上の「用途変更」手続きが必要になるケースがあります。用途変更とは、建築行為を伴わなくても、建築基準法に規定される「特殊建築物」へ用途を変更する際に必要な手続きです。デイサービスも特殊建築物に該当しますが、手続きが必要になるのはデイサービスに利用する床面積の合計が200㎡を超える場合に限ります。
手続きの際に審査されるのが建物の適法性です。建物が「既存不適格」または「違反建築物」に該当する場合は、用途変更の前に追加の手続きが必要になる場合があります。
よくあるご質問
空き家のデイサービス活用に関するよくある質問
デイサービス施設を建てることができる(立地可能な)場所は?
原則として、都市計画法で建築物の立地が推進されている「市街化区域」内に限られます。市街化区域内に細かく定められている用途地域のうち、第一種・第二種低層住居専用地域をはじめ、住居地域、商業地域、準工業地域や工業地域など、幅広いエリアで立地が認められています(※ただし工業専用地域は立地不可です)。建物の立地を抑制する「市街化調整区域」では、原則として立地できません。
空き家をデイサービス施設に活用する具体的なメリットは?
大きなメリットとして、高齢化に伴う高い社会需要があるため、駅遠の住宅街や郊外地でも安定した長期運営が見込める点があります。また、一般的な賃貸住宅とは異なり、運営事業者への「一棟貸し」が基本となるため、毎月の空室リスクに怯えることなく安定した家賃収入を確保できます。さらに、地方税法の要件を満たせば、土地や建物の固定資産税が非課税(免除)になる税制上の大きな優遇措置も受けられます。
空き家をデイサービス施設に活用する際の注意点は?
送迎車両の往来や駐車スペースに関する近隣トラブルを防ぐため、事前に市町村の福祉部局や都市計画部局と丁寧な事前協議を行うことが非常に重要です。道路環境や上下水道のインフラ工事を求められるケースもあります。また、デイサービスに利用する床面積の合計が200平方メートルを超える場合は、建築基準法上の「用途変更(特殊建築物への切り替え手続き)」が必要となり、建物の適法性(既存不適格や違反建築物でないか)が厳しく審査される点にも注意が必要です。
まとめ|空き家のデイサービス活用は地域貢献にもなる選択肢
全国的な高齢化に伴い、空き家をデイサービス(通所介護)施設として活用する手法は、長期にわたって安定した需要が見込める有望な選択肢です。大切な資産を活かしながら、地域社会や介護に悩むご家族を支えるダイレクトな地域貢献にもつながります。
デイサービスは送迎が基本となるため、駅遠や郊外の物件でも十分に成立する高いポテンシャルを秘めています。もし、所有している空き家の活用方法にお悩みの際は、ぜひ「アキサポ」へご相談ください。
アキサポでは、綿密な周辺調査に基づいた最適なプランをご提案。さらに、建物の改修に必要なリノベーション費用などは、マッチングした運営事業者との契約成約後、毎月の賃料から段階的に相殺(回収)する独自のスキームを採用しています。初期段階での多額の現金持ち出しを心配することなく、安全に資産運用をスタートすることが可能です。
まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。