公開日:2024.08.16 更新日:2026.06.08
老人ホーム入居でも使える空き家特例の要件と必要書類
空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)は、相続した空き家が一定の要件を満たす場合、売却時の譲渡所得から最大3,000万円が控除される制度です。
原則として、相続開始の直前に被相続人がその家屋に1人で居住していたことが適用要件ですが、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば特例の適用を受けられます。
なお、2024年1月1日以降の譲渡については、以下の2点が改正されています。
・買主が売却の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行った場合も特例の対象となった(従来は売主側の実施が必要)
・相続人が3人以上いる場合、特別控除額は1人あたり最大2,000万円に変更(従来は3,000万円)
本記事では、空き家特例の概要・適用要件・老人ホーム入居時の特例適用条件・必要書類について解説します。
目次
空き家特例(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)の概要
空き家特例は「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」とも呼ばれ、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋(亡くなられた方が居住していた家屋)や、その敷地の売却時に利用できる税制上の優遇措置です。正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
一定の要件を満たして家屋や敷地を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。空き家の市場流通を促進し、空き家問題の解消を目的として設けられた制度で、現在の適用期間は2027年12月31日までです。
2024年1月1日以降の譲渡については、以下の2点が改正されています。
・耐震改修・取壊しを買主が行う場合も対象に:従来は売主が譲渡前に耐震改修または取壊しを行う必要がありましたが、2024年以降は買主が売買契約に基づき譲渡の翌年2月15日までに実施した場合も適用対象となりました。
・相続人が3人以上の場合の控除額変更:2024年以降の譲渡では、1人あたりの特別控除額が最大2,000万円に変更されています(2023年12月31日以前の譲渡は1人あたり3,000万円)。
空き家特例の適用要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 売却期限 | 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却 |
| 建築時期 | 1981年5月31日以前に建築された家屋 |
| 建物の種類 | 区分所有建物(マンション等)は対象外 |
| 居住状況 | 相続開始直前まで被相続人が1人で居住していたこと |
| 取得方法 | 相続または遺贈により取得した家屋・敷地であること |
| 売却前の状態 | 相続から売却まで誰も住んでいない空き家であること |
| 売却相手 | 親子・夫婦など特定の関係者への売却は対象外 |
| 売却価格 | 1億円以下(複数回売却の場合は合計金額) |
| 耐震基準 | 売却時または譲渡後に耐震基準を満たすこと |
| 他の特例 | 同じ家屋・敷地で他の特例を受けていないこと |
| 複数物件 | 同一被相続人からの別の空き家で既に特例を受けていないこと |
空き家特例の適用要件は以下の11点で、すべてを満たす必要があります。
①相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
②1981年5月31日以前に建築された家屋であること
③区分所有建物(マンションなど)でないこと
④相続開始直前まで被相続人が1人で居住していたこと
同居親族がいた場合や部屋を賃貸していた場合は対象外です。
⑤相続または遺贈により取得した家屋・敷地であること
⑥相続から売却までのあいだ、誰も住んでいない状態であったこと
相続後に事業・貸付・居住などに使用した場合は対象外です。
⑦売却相手が特定の関係者でないこと
親子・夫婦・生計をともにする親族・内縁関係者・特殊な関係にある法人などへの売却は対象外です。
⑧売却代金が1億円以下であること
複数回に分けて売却する場合は合計金額が1億円以下でなければなりません。
⑨売却時に家屋が一定の耐震基準を満たしていること
耐震基準を満たしていない場合でも、売買契約に基づき買主が翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行えば特例が適用されます(2024年1月1日以降の譲渡)。
⑩同じ家屋や敷地について他の特例の適用を受けていないこと
⑪同じ被相続人から取得した別の空き家で、すでに本特例の適用を受けていないこと
被相続人が老人ホームに入居していた場合に空き家特例が適用される要件
手続きの流れ(老人ホーム入居ケース)
空き家を売却する
相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却
必要書類を準備する
介護保険証・施設契約書・ライフライン使用中止証明など
市区町村へ確認書を申請する
空き家が所在する市区町村に「被相続人居住用家屋等確認書」を申請・取得
確定申告書に添付して税務署へ提出する
確認書・譲渡所得の内訳書・登記事項証明書・耐震基準適合証明書などを添付
| 施設の種類 | 対象となる入居理由 |
|---|---|
| グループホーム(認知症対応型老人共同生活援助事業) | 要介護・要支援認定 |
| 養護老人ホーム | 要介護・要支援認定 |
| 特別養護老人ホーム | 要介護・要支援認定 |
| 軽費老人ホーム | 要介護・要支援認定 |
| 有料老人ホーム | 要介護・要支援認定 |
| 介護老人保健施設 | 要介護・要支援認定 |
| 介護医療院 | 要介護・要支援認定 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 要介護・要支援認定 |
| 障害者支援施設 | 障害支援区分の認定 |
| 共同生活援助を行う住居 | 障害支援区分の認定 |
空き家特例は、相続開始直前に、被相続人がその家屋に1人で居住していたことが要件のひとつとなっているのは前述したとおりです。
しかし、相続の開始の直前において被相続人が1人で居住していなくても、被相続人が要介護認定などを受けて老人ホームなどに入居していた場合は、下記の要件を満たしていれば空き家特例の適用対象となります。
特定事由に該当すること
被相続人が要介護・要支援認定(介護保険法)または障害支援区分の認定(障害者総合支援法)を受けており、以下の施設に入居していたことが要件です(「特定事由」といいます)。
【要介護・要支援認定を受けていた場合】
・グループホーム(認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居)
・養護老人ホーム
・特別養護老人ホーム
・軽費老人ホーム
・有料老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護医療院
・サービス付き高齢者向け住宅
【障害支援区分の認定を受けていた場合】
・障害者支援施設
・共同生活援助を行う住居
なお、介護を受けるために親族の家に移り住み同居していた場合などは、特定事由に該当しないため特例は適用されません。
家屋に関する要件を満たしていること
特定事由に該当する場合、被相続人が住んでいた家屋についても以下の3点をすべて満たす必要があります。
・家屋に誰も住まなくなった時点から相続開始直前まで、引き続き被相続人の物品の保管場所などにのみ使用されていたこと
・その期間中、家屋が事業に使われたり他の人が居住したりしていないこと
・施設への入居・入所時から相続開始直前まで、被相続人の主たる居所がその施設であったこと
空き家特例の適用要件を満たしていること
前述した11の適用要件もすべて満たす必要があります。
ただし「相続開始直前まで被相続人が1人で居住していたこと」という要件は、老人ホーム等に入居していた場合、「施設への入居・入所の直前に被相続人がその家屋に1人で居住していたこと」と読み替えられます。
被相続人が老人ホームに入居していた場合の空き家特例の手続きに必要な書類
空き家特例の適用を受けるには、まず空き家が所在する市区町村に、「被相続人居住用家屋等確認書」の申請をし、確認書を交付してもらいます。その確認書は、確定申告書に添付して税務署に提出します。
ここでは、被相続人が老人ホームに入居していた場合の空き家特例の手続きに必要な書類について解説します。
被相続人居住用家屋等確認書の交付に必要な書類
被相続人居住用家屋等確認書の交付申請時には、空き家が所在する市区町村に書類を提出します。家屋と敷地を売却した場合に必要な書類は、下記のとおりです。
| 書類の種類 | 備考 |
|---|---|
| 被相続人居住用家屋確認申請書 | 国土交通省サイトから入手可能 |
| 被相続人の除票住民票の写し | |
| 相続人の住民票の写し | |
| 家屋・敷地の売買契約書の写し | |
| 相続人の数を明らかにする書類 | 登記事項証明書など |
| 不動産会社の売り出し広告または電気・ガス・水道の使用中止がわかる書類 | 閉栓証明書・使用廃止届書など |
| 要介護・要支援認定または障害支援区分の認定を受けていたことを明らかにする書類 | 介護保険証の写しなど(老人ホーム入居の場合のみ) |
| 入居施設の名称・所在地・種類が明らかになる書類 | 施設入居時の契約書の写しなど(老人ホーム入居の場合のみ) |
| 電気・水道・ガスの契約名義と使用中止日が確認できる書類または老人ホームの外出・外泊記録 | 老人ホーム入居の場合のみ |
さらに、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合は、下記に挙げる特定事由に該当することを証明する書類を、すべて提出する必要があります。
<特定事由に該当しているか証明する書類>
・被相続人が要介護認定、要支援認定または障害支援区分の認定を受けていたことを明らかにする書類(介護保険証の写しなど)
・被相続人が相続開始の直前において入居していた施設の名称、所在地、施設の種類が明らかになる書類(施設入居時における契約書の写しなど)
・電気・水道・ガスの契約名義、使用中止日が確認できる書類、もしくは老人ホームなどが保有する外出、外泊といった記録
確定申告に必要な書類
被相続人居住用家屋等確認書が交付されたら、必要書類を確定申告時に空き家が所在する場所を管轄する税務署に提出します。家屋と敷地を売却した場合に提出する書類は下記のとおりです。
| 書類の種類 | 備考 |
|---|---|
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 市区町村から交付されたもの |
| 譲渡所得の内訳書 | |
| 敷地・家屋の売買契約書の写し | |
| 家屋・敷地の登記事項証明書 | |
| 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し |
よくある質問
空き家を売却・有効活用するには「アキサポ」が便利
空き家を売却する際は、空き家特例が利用できる可能性があります。
被相続人が老人ホームなどに入居していた場合でも要件を満たせば3,000万円の控除を受けられるため、適用条件をしっかり確認しておきましょう。不明な点は税理士や弁護士などの専門家への相談をおすすめします。
相続した空き家の売却・活用についてお悩みの方は、「アキサポ」にお気軽にご相談ください。株式会社ジェクトワンが運営するアキサポは、売却・活用などさまざまな選択肢の中から、状況に合った最適なプランをご提案します。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。