公開日:2025.06.09 更新日:2025.06.04
NEW借り上げとは?空き家活用・収益化を成功させるポイントを徹底解説

借り上げは、不動産オーナーが物件を一括で借り出し、第三者へ賃貸する仕組みのこと。安定収益の獲得手段や空き家の有効活用法として、個人単位で利用するのはもちろん、企業が従業員向けに一般の賃貸物件を借り上げるなどさまざまな形態に発展してきました。本記事では、一括借上げのメリット・デメリットやマイホーム借上げ制度、具体的な契約の流れなどを詳しく解説します。
目次
借り上げとは?空き家活用にも使える基本知識

借り上げの仕組みや関係する当事者について理解することで、安心して賃貸運営をスタートできます。
まずは、借り上げの基本的な知識をチェックしていきましょう。
借り上げの定義と仕組み
借り上げとは、不動産オーナーから物件を借り上げた会社が一括して管理を担い、入居者に転貸する形態のこと。このスキームでは、オーナーにとって空室リスクが軽減される上、借り上げた管理会社は入居者募集や管理業務を担うことで収益を得ることができます。契約期間中は原則として管理会社が家賃を保証する仕組みが多いため、オーナーは安定した収益を期待できる点がメリットです。
一括借上げと管理委託の違い
一括借上げは、管理会社が丸ごと物件を貸し切り、オーナーに対して毎月の賃料を支払う契約です。一方の管理委託は、オーナーが自ら空室リスクを負いながら、管理業務のみを管理会社に依頼する形態となります。一括借上げ契約は、原則として定期借家契約やサブリース契約として締結されますが、賃料保証には減額や免責期間といった例外がある点に留意が必要です。そのため、一括借上げでは安定収益を得やすい反面、賃料が相場より低めに設定されることが多く、管理委託と比較してリターンが少なくなる可能性もある点は注意が必要です。
管理会社・オーナー・入居者の関係性
一括借上げでは、実際の入居者との契約は管理会社が主体となって行います。そのため、入居者の募集活動やクレーム対応、退去時の精算なども管理会社に依頼するケースが一般的です。管理委託の場合は、オーナーが入居者と直接契約を結ぶことも多いため、手間と責任の範囲が異なることを理解しておきましょう。
一括借上げを利用するメリット

一括借り上げを利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?主に以下の3つのメリットが挙げられます。
空室リスクの軽減と安定収益
一括借上げ最大のメリットともいえるのが、物件が空室であってもオーナーが毎月の賃料を受け取れるところ。この仕組みにより、不動産経営の課題のひとつである空室リスクを大幅に抑えることができます。
管理業務の負担軽減
一括借上げ契約では、入居者の募集、家賃回収、クレーム対応などの業務を管理会社が全面的に引き受けるケースがほとんど。オーナーは契約締結後、基本的に毎月の収入を受け取るだけで済むため、手間やストレスがぐっと減ります。特に遠方在住のオーナーや、本業の傍ら賃貸経営を行う方にとっては、大きな魅力といえるでしょう。
長期的な賃料保証の仕組み
一定期間内にわたって賃料を保証するプランが設定されるケースが多いところも、一括借上げ契約のメリット。その間は相場変動や経済情勢に左右されることなく、収益を確保しやすくなります。ただし、契約時の賃料設定が低めに見積もられる傾向があるため、相場が上昇した場合は相応のリターンを得られないことも。長期的な視点で契約内容を検討し、更新時などに条件を定期的に見直すことが重要です。
一括借上げにおける注意点とデメリット

メリットが多い一括借上げでも、契約内容やリスクを十分理解しておかないと思わぬトラブルに発展する場合があります。
以下、主に考えられる一括借り上げの注意点やデメリットをまとめました。
賃料減額リスクと免責期間
一括借上げ契約では、契約期間中でも一定の条件下で賃料が減額される可能性があります。これは借り上げ会社が経営状況や入居率を踏まえて、支払いの継続を図るためです。さらに、契約開始直後の免責期間中はオーナーに賃料が支払われないこともあり、事前に条件を十分に確認しておくことが欠かせません。
契約期間と更新時の条件見直し
一括借上げ契約は数年単位で結ばれることが多く、契約更新時に賃料やその他条件が見直されるケースがあります。相場が下落している場合や管理会社の経営状況によっては、賃料が大幅に下げられるリスクがあるため、契約内容の変更の有無や費用などを事前に把握した上で、他の複数の借り上げ会社に見積もりを依頼し、比較検討もしておくと安心です。
中途解約の制限
中途解約に制限や違約金が設定されているケースが多い点も、注意しておくべきポイント。例えば、他により高い賃料を保証してくれる業者が現れたとしても、簡単に乗り換えができない場合も。契約前に解約条件や違約金の有無をチェックし、将来的な計画変更のリスクも考慮した上で判断しましょう。
マイホーム借上げ制度とは

続いて、自宅や空き家を有効活用するための仕組みとして注目されているマイホーム借上げ制度について紹介します。
マイホーム借上げ制度のしくみ
マイホーム借上げ制度は、高齢者や遠方へ転勤する人が持ち家を誰かに貸し出して家賃収入を得る一方、借主側は良質な住宅を適正な賃料で利用できる仕組みです。多くの場合、公的機関や非営利組織が仲介や保証を行い、契約トラブルを防ぐ体制を整えています。特に、高齢者にとっては年金とは別の副収入が得られるため、生活資金の一助にもなるでしょう。なお、この制度は一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が仲介・管理する制度で、要件や利用申請が必要となります。
住宅活用の可能性とメリット
マイホームを空き家として放置するよりも、借り上げ制度を活用して他者に貸すことで、家賃収入を得ながら物件を維持できます。ローン返済中であれば家賃収入を返済に充てることで負担を軽減することが可能。さらに、人が住むことで建物の老朽化を防ぐ効果も期待できます。
空き家対策としての活用事例
地方自治体でも、空き家問題を解決する手段のひとつとして、マイホーム借り上げ制度を積極的に活用。主な事例として、使われていない空き家を改修して移住希望者へ貸し出すなどがあり、空き家問題が深刻な地域ほど、独自の補助金や税制優遇を用意して所有者を支援しているケースもあります。こうした取り組みは、地域活性化や人口減少対策にも効果をもたらし、社会全体の課題解決に寄与するものとして注目されています。
実際の借り上げ契約までの流れ

借り上げ契約を結ぶにあたっては、会社選びや見積り、契約内容のチェックなど、いくつかの重要なステップがあります。
あらかじめ具体的な流れや注意点をチェックして、スムーズに契約を行いましょう。
借り上げ会社の選び方
借り上げ会社を選ぶ際は、まず実績や信用力、これまでの管理戸数などをしっかりと調べましょう。口コミや評判だけでなく、契約内容やサポート体制、保証の有無など、複数の視点で比較検討することがポイント。大手企業だからといって一概に安心とは限らないため、自分の物件の特性に合った会社を選ぶことが大切です。
見積り・査定から契約までのステップ
最初に物件の調査や査定を依頼し、建物の状態やエリアの相場から賃料の提案を受けるのが一般的な流れです。提示された契約条件や賃料に納得できれば契約を締結し、鍵の引き渡しや管理方法のすり合わせなどの詳細を決めていきます。その際、複数社に同時に見積りを取ることで比較・検討でき、自分の都合にあった管理会社を見つけやすくなる上、よりよい条件を引き出すための交渉もしやすくなるでしょう。
トラブルやクレーム対応のポイント
契約前に物件の不具合や修繕履歴を明らかにしておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。契約中にクレームが発生した場合は、まず管理会社と連絡を取り合い、迅速かつ適切に対応してもらうことが重要です。定期的なコミュニケーションと書面でのやり取りを徹底することで、万が一問題が起きてもスムーズに解決へつながりやすくなるでしょう。
成功する借り上げのポイントと活用事例

借り上げ制度を上手に利用するためには、物件の魅力や入居者満足度の向上を図る施策が重要となります。具体的な事例を3つご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
物件の魅力強化とリフォーム
古くなった設備や内装を定期的にリフォームすることで、物件の価値を維持しやすくなります。キッチンや浴室などの水回りの設備を最新のものに更新したり、壁紙やフローリングを一新するだけでも、入居希望者の印象は大きく変わります。リフォームにかかる費用はある程度必要ですが、長期的には入居率向上や賃料アップにつながるでしょう。
入居者満足度を高める施策
入居者が満足して暮らせる環境を整えるためには、住環境の安全性や快適性を重視することが重要です。例えば、セキュリティシステムの導入や定期的な共用部の清掃を徹底し、生活しやすい雰囲気をつくることで長期入居を促すことができます。問い合わせやクレーム対応を迅速に行う体制が整っているかどうかも、入居者の満足度を左右するポイントといえるでしょう。
実際の借り上げ事例
地方の過疎化が進むエリアで、空き家をリノベーションして一括借上げを導入したところ、若いファミリー層からの人気が高まり、地域再生に貢献した事例があります。また、都市部のマンションを高級志向の内装にリフォームし、管理会社を通じて長期契約の募集を行った結果、空室率が大幅に改善したケースも。これらの事例からわかるように、物件の条件や立地を踏まえた施策を講じることで、借り上げを成功へ導く可能性は大いに高められます。
借り上げのQ&A

最後に、よくある質問とその回答をまとめました。契約前の不安を解消し、納得してから運用をスタートするための参考にしてみてください。
借り上げ契約は途中解約できる?
途中解約は契約内容によって可否や違約金の有無が大きく異なります。多くの場合、契約期間中の解約には違約金が発生するか、事前通知期間が定められているケースが一般的です。また、途中解約には定期借家契約による制限があるほか、特定貸主義務に抵触する可能性もあるため、弁護士等への事前相談が望ましいです。契約前に必ず解約条件を確認し、万が一の計画変更に備えておきましょう。
不可抗力での修繕費は誰が負担する?
天災や事故など、不可抗力による物件の損傷が発生した場合、基本的には保険の適用範囲や契約で定められた負担区分に従います。借り上げ会社側が保険でカバーしてくれるケースもありますが、オーナー自身が保険に入っておくことも重要です。事前に管理会社と保険適用範囲を確認し、想定外の出費を防ぐために準備しておきましょう。
管理委託と一括借上げはどちらがお得?
管理委託は空室リスクをオーナーが負担する代わりに、満室時の収入は最大化しやすいという特徴があります。一方で、一括借上げは安定的な収入を得られますが、相場よりも低い賃料設定となる場合も少なくありません。どちらが得かは物件の立地やオーナーのリスク許容度によるため、自分の目的や条件に応じて最適な契約形態を選択するとよいでしょう。
まとめ・総括

借り上げを活用することで空室リスクを大幅に減らし、長期的な収益やマイホームの有効利用が期待できます。総合的な判断材料を確認し、自身の状況に合った最適な運用プランを選びましょう。
借り上げは、一括借上げによる安定収益の確保からマイホーム借上げ制度による空き家対策まで、多岐にわたるメリットをもたらす制度です。ただし、契約内容の詳細や経済状況によってはデメリットやリスクも存在するため、事前の情報収集と複数社の比較検討を徹底することも忘れずに。自分に合った方法を選択して、賢く物件を運用し、将来的な資産形成やライフスタイルの充実につなげましょう。