公開日:2025.10.04 更新日:2025.10.07
持ち家を賃貸に出すには?メリット・デメリット・手順・税金を徹底解説

空き家を持っている人であれば、一度は「持ち家を賃貸に出して活用できないか」と考えたことがあるのではないでしょうか?
しかし「借り手がつかないのではないか」「修繕費や管理費で赤字になるのではないか」といった不安が頭をよぎり、なかなか一歩踏み出せない方も多いでしょう。
そこで本記事では、持ち家を賃貸に出すメリット・デメリット、手続きの流れ、注意すべきポイントを詳しく解説します。これから持ち家の活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
持ち家を賃貸に出す主なメリット

持ち家を賃貸に出す大きなメリットは、今まで負担にしかならなかった空き家を、収益を生む資産へと転換できることです。
家賃収入で固定資産税や維持費をまかなえるだけでなく、将来の選択肢を残しながら建物の劣化も防げるため、想像以上にさまざまな効果をもたらしてくれます。そこでここでは、特に押さえておきたい4つの代表的なメリットを解説します。
家賃収入による副収入の獲得
持ち家を賃貸に出す最大の魅力は、毎月家賃収入を得られることです。空き家にしておくと固定資産税や管理費ばかりがかかりますが、賃貸に出すことができれば、これらの支出をカバーできるうえに、副収入として家計の助けにもなります。
長期的に貸すことができれば、生活費の補填や子どもの教育資金、老後の備えとしても活用しやすく、家計全体の安定につながります。使っていない資産が収益を生み出すという点でも、効率的な資産運用といえるでしょう。
空き家対策としての有効活用
空き家を放置することで高まる、建物の老朽化や防犯上のリスクを解消できるのも大きなメリットです。人が住んでいれば換気や設備の使用が定期的に行われるため、劣化の進行を抑えることができますし、放火や不法侵入などが起こる可能性も低くなります。
再度同じ家に住むことが可能
転勤や介護などで一時的に自宅を離れる場合、将来的にまた住みたいと考える方もいるでしょう。このようなケースでは「定期建物賃貸借契約(借地借家法第38条)」という、契約期間の満了により確定的に終了する契約形態を結べば、スムーズに自宅を返してもらうことが可能です。
なお、定期建物賃貸借は書面での契約と事前説明が必要です。中途解約の可否や満了時の手続きも事前に整理しておくと、明け渡しを巡るトラブルを抑えられます。
相続税や固定資産税の節税効果がある
相続税においては、土地の上に賃貸物件が建ち、他人が居住している状態の場合に「貸家建付地(かしやたてつけち)」として評価され、土地の評価額が下がる場合があります。この場合、「自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」という計算式で評価額が減額されます。
また、固定資産税についても、建物が建っている土地の固定資産税が最大6分の1まで減額される「住宅用地特例」が適用されます。この制度は建物を取り壊して更地にしてしまうと適用されなくなるため、土地の評価額が高い場合は、解体よりも賃貸の方が節約できる可能性が高まります。
持ち家を賃貸に出すリスクやデメリット

持ち家を賃貸に出すことには、空室やトラブル、修繕費の発生といったリスクが伴います。これらのデメリットを事前に理解し、しっかりと対策を講じることが、賃貸経営を成功させるための重要なポイントです。
空室リスクと家賃滞納リスク
賃貸経営で特に不安の声が多いのが、空室が続いて家賃収入が入らないリスクです。実際、築年数が古い物件やアクセスの悪い立地では、募集をかけてもなかなか入居者が見つからないことがあります。また、入居者がいる場合でも、家賃の滞納が発生すれば収益が不安定になり、対応にも時間を取られることになります。
こうしたリスクに備えるには、まず複数の不動産会社に査定を依頼し、周辺相場に合った現実的な家賃設定を行うことが欠かせません。さらに、保証会社を活用すれば、万が一の滞納リスクをカバーすることもできます。
物件の劣化と修繕コスト
物件の修繕にかかるコストは、継続的にかかるうえに、劣化が進んだ場合はリフォームの必要性も出てくるため、事前に見込んでおく必要があります。さらに築年数が古い物件では、入居前にまとまったリフォームが必要になることもあります。
これらのコストに備えるには、あらかじめ修繕用の予算を確保しておくことが欠かせません。また、契約の際には原状回復の範囲や費用負担について国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に沿って定め、不要な出費が発生しないように心がけましょう。
売却価値の下落リスク
賃貸に出している間にも、建物は徐々に劣化していきます。外壁や屋根、水回りなどが古くなると修繕費がかかるだけでなく、売却時の評価額が下がる要因にもなります。さらに土地についても、周辺の地価が下落し、想定よりも低い価格でしか売れなくなる可能性もあります。
こうしたリスクを抑えるには「定期借家契約」で契約することが有効です。契約期間を明確に設定しておけば、退去時期をコントロールしやすく、予定した時期にスムーズに売却できます。
住宅ローン残債がある場合の注意点

住宅ローンを返済中の家を賃貸に出したい場合は、必ず契約条件を確認してから動きましょう。契約内容によっては、無断で賃貸に出すと契約違反とみなされ、残債の一括返済を求められたり、住宅ローン控除を打ち切られたりする可能性があります。
ここでは、こうしたリスクを避けるために、事前に押さえておくべき3つの重要なポイントを紹介します。
住宅ローン契約の規約確認
住宅ローン契約の特約事項は必ず確認してください。ほとんどの住宅ローン契約は、利用目的が「本人または家族の居住用」に限定されており、契約書の特約事項に「賃貸利用禁止」「転貸不可」と書かれているケースが一般的です。
規約違反が発覚した場合、契約違反として残債の一括返済を求められる可能性があります。まずは契約書をよく確認し、不明点がある場合は必ず金融機関に問い合わせてください。
金融機関への事前相談と借り換え検討
契約内容が賃貸利用を認めていない場合でも、事前に事情を説明すれば、契約条件の変更や賃貸用ローン(アパートローン)への借り換えが可能な場合があります。
ただ、アパートローンに切り替えるとローンの金利は高くなるのが一般的なので、月々の返済額は増えると想定しておきましょう。
ローン返済額を低く抑えるには、複数の金融機関から見積もりを集めて、家賃収入とのバランスが取れる条件を探すことが大切です。
住宅ローン控除の適用要件
住宅ローン控除は「自己の居住用」であること(※)が適用要件。住宅を賃貸に出すと、原則として翌年から適用されなくなります。例えば、年末残高が2,000万円あり控除率1%の場合、年間20万円の節税効果がありますが、賃貸に出した年の翌年からはこの節税が受けられなくなります。
再び自宅として利用する場合でも、返還後すぐに適用再開できるわけではなく、一定期間以上の居住や入居時の条件を満たす必要があります。
※一定の要件を満たす場合、単身赴任などの例外が認められる場合があります。
賃貸収入に関わる税金と費用

賃貸運営を始めると、家賃収入だけでなく、以下のような税金や維持費用も発生します。
- 所得税・住民税
- 固定資産税・都市計画税
- 管理費・修繕費
- 保険料(火災保険・地震保険など)
- その他の諸費用
これらを事前に把握しておかないと、思ったよりお金が残らなかったという事態になりかねません。ここでは、各税金と費用の概要と大まかな額を紹介します。
所得税・住民税
所得税・住民税は、賃貸経営で得た家賃収入に必ず関わってくる基本的な税金です。これらの税金の対象になるのは、年間の家賃収入から管理費・修繕費・保険料・減価償却費などの必要経費を差し引いた額です。
所得税は累進課税方式で5%〜45%、住民税は一律10%が課税されます。
例えば、年間120万円の賃貸収入があり、経費を30万円計上できた場合、課税対象は90万円となります。
この額から所得税と住民税を計算すると、所得税は税率5%(所得90万円の場合)で4万5,000円、住民税は税率10%で9万円、合計13万5,000円の税負担となります。所得が増えるほど所得税の税率も上がるため、複数の物件を所有している場合やほかの所得と合算される場合は、税額が想定より大きくなることもあります。
なお、実際には、所得税所得税額×2.1%の復興特別所得税も上乗せされます。実際の負担感を把握するため、見積もり時はこれも含めて試算してください。
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税は、物件を所有している限り毎年必ずかかる税金です。固定資産税は、自治体が算定する固定資産税評価額に基づき、原則1.4%の税率で課税されます。都市計画税は、都市計画区域内に所在する場合に対象となり、上限0.3%が加算されます。
例えば、評価額が2,000万円の土地・建物の場合、固定資産税は年間28万円、都市計画税は最大6万円となり、合計で年間34万円の税負担となります。
管理費・修繕費
管理費・修繕費は、賃貸経営を続けるうえで継続的に発生する運営コストです。管理を不動産会社に委託する場合、家賃の集金、入居者対応、建物の巡回点検、共用部分の清掃などを含めて、家賃収入の3〜5%程度が管理費としてかかります。
また、修繕費は、給湯器やエアコンなどの設備交換、外壁塗装や屋根修理などの大規模工事が該当します。軽微な修繕でも数万円、大規模修繕では数十万〜数百万円規模になることも珍しくありません。
予期せぬ出費や大規模修繕に備えるためには、毎月の家賃収入から一定額を修繕積立金として確保しておくことが大切です。賃貸に出し始める前に、住宅の状態を踏まえた修繕積立の計画を立てておきましょう。
保険料(火災保険・地震保険など)
まず火災保険は、火災・落雷・水漏れ・風災などによる建物や設備の損害を補償してくれます。賃貸物件用の火災保険料は、補償範囲や保険期間にもよりますが、年間1〜3万円程度が一般的です。
ここに地震保険を付帯する場合は、建物の構造・所在地・保険金額・補償範囲に応じた額が加算されます。保険料は物件ごとに差が大きいため、見積もりをとって確認してください。
その他にも「家主賠償責任保険」や「施設賠償責任保険」など、入居者や第三者に損害を与えた場合に備える保険もあります。住宅の状態や立地から、過不足の無い保険選びを心がけましょう。
その他の諸費用
その他の諸費用には、入退去時や募集活動に伴って発生するさまざまなコストが含まれます。代表的なものとしては、入居者募集のための仲介手数料や、広告掲載料、部屋を魅力的に見せるための装飾を施すホームステージング費用などがあります。
また、入退去の際には室内クリーニングや壁紙・床材の張り替え、鍵交換費用などもかかります。これらは入居者の負担とする場合もありますが、オーナー側が負担するケースも少なくありません。
さらに、入居者募集が長引くと空室期間中の光熱費や管理費もオーナー負担となります。こうした費用は一度に発生する額が大きくなりやすいため、事前に予算として確保し、資金繰りに余裕を持たせておくとよいでしょう。
賃貸管理を成功させるポイント

賃貸経営は「貸したら終わり」ではなく、その後の管理体制や入居者の満足度、収益性などが継続して良好になって初めて成功と言えます。そこでここでは、長期的な賃貸を成功させるために必ず抑えておきたいポイントを3つ紹介します。
管理方法(自主管理・管理委託・サブリース)の選択
管理方法には絶対的な正解はありません。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の目的や使えるリソースに適したものを選びましょう。
まず自主管理は、入居者対応や設備トラブルの処理をオーナー自身で行うため、手数料がかからずコストを抑えられるメリットがあります。デメリットはその裏返しで、手間と時間がかかることです。
管理委託は、入居者募集から家賃回収、トラブル対応まで管理会社が代行してくれるため、手間と時間を大きく削減できるメリットがあります。ただ、管理手数料として家賃収入の3〜5%程度を支払う必要があるデメリットがあります。
サブリースは空室の有無にかかわらず一定額の賃料が保証されるため、収入の安定性が高い点が最大のメリットです。一方で、実際に受け取れる賃料は市場相場より低くなる傾向があり、契約内容によっては途中で賃料が減額されるケースもあります。
長期安定運用のための修繕計画
住宅の屋根や壁、設備などは計画的に修繕を行っていく必要があります。劣化や破損が大きくなってから対応すると、予想以上に高額になることがありますし、十分な費用が用意できない恐れがあるためです。
このような問題を避けるには、あらかじめ10年単位の長期的な修繕計画を立てておき、その計画に沿って修繕費用を積み立てておくことが必要です。また、定期点検を行い、小規模な劣化や破損が見つかった場合は早期に修繕しておくことで、大規模な修理を未然に防げます。
入居者満足度向上のための設備投資
入居者満足度を向上させ、物件の競争力を高めるには、入居者のニーズに合った設備投資が有効です。特にキッチンやバスルームなどの水回りは満足度に直結しやすいため、リフォームの優先度が高いポイントといえるでしょう。
さらに、高速インターネット回線やセキュリティ設備の導入、収納スペースの拡充なども人気があるポイントです。満足度が向上すれば空室期間の短縮につながるため、長期的な安定収益の確保にもつながります。
【まとめ】持ち家を賃貸に出すことで空き家を将来を支える資産へ
今回の記事で、持ち家を賃貸に出す際のメリットとリスク、それぞれの特徴を整理できたと思います。持ち家の賃貸は、リスクを上手にコントロールできれば、安定した家賃収入を得られる可能性が広がりますし「維持するだけの負担」から「将来を支える資産」へと生まれ変わる可能性も秘めています。
空き家を持っていても、どう扱えばいいのか分からず迷っている人は少なくありません。しかし、具体的なシミュレーションをしてみると、思ったより無理なくできそうだと気づくケースも多いです。「アキサポ」のような専門家に相談をしてみるだけでも、状況が好転することも珍しくありません。
小さな行動からでも始めれば、持ち家は負担ではなく大切な資産として活かせます。将来に向けて安心を築くためにも、今できる一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。