公開日:2025.10.16 更新日:2025.09.26
NEW空き家解体のすべて|費用相場・補助金・メリット・デメリットを徹底解説

近年、人口減少や高齢化の影響で全国の空き家は増え続け、老朽化や管理コスト、近隣への危険性といった問題が深刻化しています。特に放置された建物は劣化が早く、台風や地震といった自然災害時には倒壊リスクが高まり、所有者に大きな責任が及ぶことも少なくありません。
このような背景から、空き家を解体して土地を有効活用したり、補助金を活用して空き家を再利用したりする動きが注目されています。
この記事では、空き家解体にかかる費用相場や補助金制度、解体のメリット・デメリットを整理。解体を考える際の業者選びのポイントや解体せずに売却・再利用する選択肢についても解説します。
目次
空き家の定義と増え続ける空き家問題を理解しよう

少子高齢化や人口減少を背景に増え続けている空き家。所有者個人の問題にとどまらず、社会全体で空き家対策を進める必要性が高まっています。放置すれば資産価値の低下や景観の悪化、さらには安全面のリスクにもつながるため、早めの対策が重要です。
空き家の定義と現状
空き家解体を進めるにあたり、まず知っておきたいのが法律上の空き家の定義です。法律上の空き家は、住居として建てられたものの、実際には人が住んでいない建物を指します。
総務省の統計や国勢調査によると全国の空き家率は上昇傾向にあり、特に地方では人口減少や高齢化によって問題が深刻化しています。自治体によっては独自の基準を設け、特定空家等に指定する場合もあります。
また、都市部においても相続や転勤をきっかけに空き家となる例は珍しくありません。老朽化した建物を放置してしまうと資産価値の低下を招くため、財産管理の観点からも早めの対応が求められます。
老朽空き家によるリスクと社会的課題
老朽化した空き家は外壁や屋根の劣化が進みやすく、地震や台風などの自然災害で倒壊する危険性があります。空き家を放置することは、倒壊リスクだけでなく、近隣への被害、景観悪化、さらには特定空家等への指定など、さまざまな問題の発端となります。
特に構造上の強度が落ちている建物は、倒壊事故や周辺住民への被害を引き起こす可能性が高く、適切な管理や早期の対策が求められます。
さらに不法侵入や放火、ゴミの不法投棄といった治安上の問題も発生しやすく、地域住民の安心を脅かす要因に。加えて、景観の悪化や周辺不動産の価値低下といった影響も見過ごせません。
こうした背景から、行政は条例や指導を通じて危険な空き家の解体を促すケースを増やしています。空き家問題は所有者個人の責任にとどまらず、地域全体で向き合うべき社会的課題といえるでしょう。
空き家解体にかかる費用相場と見積もりのポイント

空き家の解体には建物本体の工事費だけでなく、廃材処分や付帯工事など様々な費用がかかります。構造や立地条件によって金額は大きく変動し、見積もり内容をしっかり確認しなければ、思わぬ追加費用が発生することも。
無駄な出費を避けるためには、現地調査や不用品処分の段取りを含め、事前に計画を立てて進めましょう。
解体費用の内訳:構造や立地で異なる費用要素
解体費用には工事費用に加え、産業廃棄物の処分費やアスベスト除去費などが含まれます。木造の場合は比較的解体しやすいですが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造は重機や人員が増えるため高額になりやすい傾向があります。
また、道路が狭い立地や隣家との距離が近い場合は重機が使えず、手作業が増える分だけ費用が上がることもあります。さらに、フェンスや庭木の撤去、コンクリート基礎の除去といった付帯工事も追加費用となる場合があるため、見積もりの段階で範囲はどれくらいかを明確に確認しておく必要があります。
解体費用を抑えるための事前準備と不用品処分
費用を抑える工夫として、不用品や家具など処分可能なものは事前に整理しておくのがおすすめです。リサイクルショップや中古品買取を活用すれば、処分費用の削減にもつながります。自治体の粗大ごみ回収を利用する方法も有効です。
ただし、不用品の処分タイミングを誤ると解体工事とスケジュールがずれ、二度手間になる可能性があります。あらかじめ計画を立て、効率的に不用品を整理することで、最終的に廃材の総量を減らし、処分費用全体を抑えることにつながるでしょう。
空き家解体の補助金・助成金制度

空き家の解体費用は高額になることが多く、自治体や国の補助金をうまく活用することがキーポイントに。補助制度は老朽化した危険な空き家ほど手厚い支援が受けられるケースが多く、条件を満たせば数十万〜100万円を超える助成も期待できます。ここからは、国や自治体の制度の概要を詳しく確認していきましょう。
国や自治体の制度の概要
国の制度では、空き家対策特別措置法を背景に補助金や税控除といった優遇措置が整備されています。地方創生や都市再生の一環として取り組んでいる自治体が多く、老朽化が進んだ危険な空き家に対して積極的に補助金を出しているケースも少なくありません。
また、国土交通省や総務省が主導する施策では、解体だけでなく再利用を支援する制度もあり、場合によってはリノベーションの助成が優先されるケースもあります。
国の施策は大枠にとどまり、実際には各自治体の制度が中心となります。居住地や物件所在地の役所・公式サイトをしっかりと確認しておきましょう。
各地域で異なる補助金の上限金額・対象要件
空き家解体費用に対する補助金は、自治体ごとに上限金額や申請対象となる空き家の条件が異なります。築年数や危険度、住宅密集度などによって補助額に差が出る場合もあり、対象外となるケースも少なくありません。
支給額は数十万円〜100万円程度が一般的ですが、特定地域に限りさらに高額の支援が行われる例もあります。人気の施策では年度前半で予算が尽きることもあるため、申請のタイミングを逃さないことが重要です。
また、居住地要件や収入制限、空き家が特定空家等に指定されているかなど、細かな条件が設けられていることも多く、要件チェックは抜かりなく行いましょう。
申請時の必要書類と申請フロー
補助金を受けるためには、見積書、建物登記簿謄本、所有者を証明する書類などの提出が必要です。自治体ごとに求められる書類が異なるため、必ず役所の窓口や公式サイトで確認しましょう。
一般的な申請フローは、仮申請の提出後に現地調査や審査を経て本申請が承認され、その後に着工という手順です。補助金決定前に工事を始めると対象外になる場合もあるため、工事開始時期には特に注意を。
書類の不備や期限切れで申請が無効になるケースもあるため、早めに準備を進めることがスムーズな手続きにつながります。
空き家を解体しない場合のデメリットとリスク

空き家を放置すると、倒壊の危険性や特定空家等の指定、税負担の増加といった多くのリスクが生じます。老朽化した建物は災害時に被害を拡大させる要因となり、近隣住民とのトラブルに発展することも。
また税制上の優遇措置を失い、結果的に高い維持費を支払い続けるケースも少なくありません。早めの対策が不可欠です。
特定空家や倒壊などの危険性
行政が定める特定空家等に指定されると、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、周囲に著しく悪影響を及ぼす建物と見なされます。
そして市町村長は、行政代執行による強制解体を行うよう所有者に勧告や命令、行政代執行を行う権限を持ちます。この場合の解体費用は所有者に請求されるうえに、緊急対応のため割高になってしまうこともあります。
経年劣化が進んだ建物は小さな地震や台風でも倒壊のリスクがあり、被害が拡大する恐れがあります。周辺住民との関係悪化や思わぬトラブルを避けるためにも、老朽化した空き家は早期に対応するのが望ましいでしょう。
固定資産税・都市計画税などの税制上の要注意点
通常、建物がある土地は固定資産税の住宅用地特例を受けられますが、特定空家等に指定され、市町村長の改善命令に応じなかった場合、優遇が外れ、税額が大幅に上がる可能性があります。これは固定資産税額が最大で6倍になることを意味します。
都市計画税についても自治体ごとに課税率や軽減措置が異なるため、放置した場合の負担額を事前に把握しておきましょう。
老朽化が進んでいる場合は、補助金制度を活用しながら早めに解体を検討するのが得策です。税金が膨らみ続ければ、無駄な出費を強いられる可能性があります。
空き家を解体するメリット・デメリット

空き家を解体するか残すかは、将来の資産運用や税金対策に直結する重要な判断です。更地にすれば土地活用の選択肢が広がる一方で、税制上の優遇が失われるといったデメリットも存在します。
解体費用やリスクを正しく理解したうえで、所有する土地の条件や将来の活用計画に沿った最適な選択をしましょう。
土地活用の自由度と資産価値の向上
築年数や構造に難がある建物を残しておくよりも、更地にしてしまったほうが活用の自由度は高まります。住宅用地として売却するのか、商業施設や事業用に転用するのかなど幅広い選択肢が生まれるでしょう。
古い建物が残っていると、買主はリフォーム費用や解体コストを考慮するため価格交渉が難航するケースも考えられます。更地であればこうした懸念が解消され、売却がスムーズに進む傾向があります。
また、投資目的で新たに建築する場合も最新の設備や設計を採用でき、資産価値の向上につながる可能性があります。ただし、解体や建築にかかる費用を回収できるかは立地や需要によって変動するため、十分な市場調査が大切です。
軽減措置を活かせなくなるリスク
解体を行う際に注意したいのが、固定資産税の住宅用地特例や都市計画税の軽減措置がなくなるリスクです。住宅が建っている土地は小規模住宅用地の特例で優遇されている場合が多く、解体後は税額が増えるケースがあります。
この税制面でのデメリットを補うには、土地活用による収益化や売却益を見込む必要があります。具体的には、駐車場経営や賃貸アパート建設などが候補になります。ただし、それぞれの事業に伴うリスクとリターンを見極めなければなりません。
また、建物の状態が良好であればリフォームや部分改修による活用のほうが、税負担を抑えながら資産価値を高められる可能性もあります。状況に応じて、複数の選択肢を比較検討しましょう。
解体工事業者の選び方とトラブル防止策

空き家の解体において、信頼できる業者の見極めも肝心です。業者の実績や資格を確認するのはもちろんのこと、契約内容を明文化し、工事の進行状況を共有する仕組みに整えることでトラブルを未然に防ぐことができます。
また、資金面での不安がある場合には、ローンや分割払いといった支払い方法の選択肢もあります。
優良業者を見極めるチェックポイント
業者を選ぶ際、まずは建設業許可や解体工事業登録の有無を確認しましょう。業界団体への加盟状況や施工実績の公開も信頼性を測る判断材料になります。ホームページで過去の事例や施工写真を確認できれば、作業内容や品質をイメージしやすくなるでしょう。
口コミや紹介も参考になりますが、個人の主観が含まれるため複数の意見を比較することが大切です。不法投棄や追加請求などのトラブルを避けるには、書面での契約や明確な仕様書を交わし、工事の進捗報告をこまめに受ける体制を整えておくと安心です。
解体ローンや分割払いの活用方法
解体費用が高額になる場合は、解体工事専用ローンを扱う金融機関を利用する方法があります。ローン審査が通れば、まとまった初期費用を一度に捻出しなくても工事を進めることが可能です。
また、分割払いに対応してくれる業者を選ぶことで、工事の進行に合わせて支払い、資金繰りを安定させることができます。
ただし、金利や手数料がかかることもあります。ローンを組む場合は、工事後の土地活用計画や売却価格とのバランスを考慮し、月々の返済が無理のない範囲に収まるかを事前に確認しておきましょう。
解体しない場合の売却・賃貸・再利用を検討する方法

空き家を所有しても必ずしも解体が最適とは限りません。物件の状態や立地条件によっては、古家付き土地として売却したり、賃貸や事業用途として活用する方法も有効です。
ただし、それぞれにメリットとリスクが存在するため、費用対効果や市場需要を冷静に見極めることが欠かせません。ここでは、代表的な活用方法と注意点を整理します。
古家付き土地として売るメリットと注意点
古家付き土地として売却する最大のメリットは、解体費用を買主側に任せられる点です。買主がハウスメーカーやリフォーム会社と直接相談できるため、売主は解体の初期費用や手間を省けます。
一方で、建物が著しく老朽化している場合には、売却価格が大きく下落するリスクもあります。買主が想定以上の費用を見積もった場合、大幅な値下げを求められる可能性があるためです。
さらに、需要が低い地域では売却まで時間がかかることもあります。 売却を円滑に進めるためには、古家の状態やリフォームの可能性を丁寧に開示し、買主がリスクを把握しやすい情報提供を行うことが重要です。地盤調査や建物診断を事前に実施し、安心材料を提示できれば交渉を有利に進められるでしょう。
賃貸や店舗運用などの活用例
空き家をリノベーションして賃貸住宅やシェアハウスとして運営する事例も増えています。初期費用はかかりますが、長期的には家賃収入が得られるため、収益モデルとして成り立つ可能性も。観光地や地方都市では、ゲストハウスや民泊に転用するケースも見られます。
また、立地によっては店舗や事務所としての再利用も考えられます。古民家カフェのように建物の趣を生かしたビジネスは人気が高く、安定的なテナント契約につながることもあります。
ただし、耐震補強や水回りの改修など大規模工事が必要になる場合も少なくありません。リフォームにかかる費用と見込まれる収益のバランスを十分にシミュレーションし、採算が取れるかどうかを慎重に判断しましょう。
空き家解体後の土地活用アイデア

空き家を解体した後の土地は、そのままにしておくよりも有効に活用することで資産価値を高められます。駐車場経営や建て替えによる収益化、地域に役立つ公共利用など、立地や予算に応じた選択肢は多様です。
ここからは、代表的な活用方法をご紹介します。
駐車場経営や建て替えによる収益化
解体後の更地を活用する代表例が、コインパーキングや月極駐車場の経営です。初期費用を抑えて安定収入を得やすく、特に商業施設や住宅が集まるエリアでは需要が期待できます。ただし、近隣の駐車ニーズのリサーチは欠かせません。
建て替えて新築物件を開発する場合は、家賃収入や売却益を見込めますが、建設コストや融資条件といった課題も増えます。地価や入居需要を十分に調査し、長期的な収支計画を立てることが重要です。駐車場として一時的に活用し、後に建築へと段階的に切り替える戦略もおすすめです。
公共施設や商業施設としての再利用
地域活性化の観点から、解体後の土地をコミュニティスペースやイベント会場に活用する方法もあります。自治体や非営利団体からの補助を得られることもあり、所有者の負担を軽減しながら地域貢献につなげられるのが魅力です。
一方で、商業施設として再開発する場合は大規模な投資が必要となり、テナント誘致に失敗すれば維持費すら回収できないリスクもあります。立地条件や商圏を丁寧に分析し、計画段階でのリスク管理をしっかりと行いましょう。
行政が進める街づくり計画と連携することで、各種支援を受けられる可能性も広がります。商業施設の誘致や公共施設の整備は、地域経済への波及効果が期待できるため、自治体との協働を検討することで新たな活用プランが生まれるケースも多いでしょう。
よくある質問:空き家解体に関する疑問を解決

空き家の解体は費用や期間だけでなく、法的な責任や相続の手続きなど多面的な知識が求められます。放置した場合のリスクや、相続後の所有権手続きに関する注意点など、所有者が直面しやすい疑問をあらかじめ理解しておくことが重要です。空き家解体に関して多く寄せられる質問に答えながら、実務に役立つ視点を整理していきます。
解体工事に必要な期間はどのくらい?
木造住宅の場合は規模にもよりますが、おおむね1〜2週間で工事が完了するのが一般的です。鉄骨造やRC造では重機や廃材処理の工程が増えるため、2〜4週間以上を見込む必要があります。
解体工事は天候に大きく左右されることもあります。大雨や台風、積雪などで工程が遅れる可能性があるため、余裕をもったスケジュールを組んでおきましょう。
加えて、近隣への騒音や振動への配慮も不可欠です。工事時間帯や作業ルールを確認し、業者と工程表を共有することがトラブル防止につながります。
空き家を放置した際の所有者責任
所有者には、民法第717条に基づき、建物が周囲に危険を及ぼさないよう管理する義務(土地工作物責任)があります。老朽化による倒壊や部材の落下で近隣に被害を与えた場合、損害賠償責任を負う可能性は高いです。
特定空家等に指定されると、固定資産税の優遇措置が外され、行政代執行による強制解体や費用請求といったペナルティが科されることもあります。これらを避けるためには、定期的な点検や修繕を行うと同時に、解体や活用を含めた長期的な管理方針を早めに検討することが大切です。
相続した物件を解体する場合の注意点
相続登記が済んでいない場合、所有権が確定していないため、所有者全員の同意がなければ解体工事の契約ができません。まずは法務局での相続登記を完了し、所有権を正式に確定させておく必要があります。
相続税の支払いや節税対策は、解体や売却のタイミングに影響するため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。相続人が複数いる場合には合意形成が難航することも多いため、費用負担や活用方法を巡って意見が割れる場合は、弁護士など第三者を交えて早めに調整することが円滑な解決につながるでしょう。
リスク回避と資産価値維持のための空き家解体
空き家をそのまま放置すると、倒壊リスクや治安の悪化、税負担の増加など、所有者にとって大きな不利益を招きかねません。特定空家等に指定されれば、行政代執行による強制解体や費用請求の対象となる可能性もあります。
解体を決断すれば補助金制度の活用や不用品整理によって費用を抑えられ、駐車場経営や新築開発など土地の新たな活用にもつながります。リスクとメリットを比較検討し、自分に合った選択肢を取ることが将来的な資産価値を守る第一歩となるでしょう。
アキサポで専門家にお気軽に相談を
空き家の解体には、費用・補助金制度・税制上の注意点など、専門的な知識が欠かせません。自己判断だけで進めると、結果的に余計な出費やトラブルにつながる可能性もあります。そんなときは、空き家活用や解体サポートに強い専門家に相談するのが安心です。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。