公開日:2022.03.02 更新日:2026.07.14
空き家×DIY賃貸の仕組みとは?メリットと費用を抑えるコツ
DIY型賃貸借とは、物件を購入するリスクを避け、賃貸でありながら借主負担で自由に内装を改装できる契約形態です。国土交通省が契約書式を整備するなど国も制度を後押ししており、空き家の有効な活用手段として需要が高まっています。
この記事では、DIY型賃貸借の基本的な仕組みをはじめ、オーナー・入居者双方のメリット・デメリット、トラブルを防ぐための注意点までわかりやすく解説します。
DIY型賃貸借とは?

DIY型賃貸借とは、一般的な建物賃貸借契約をベースに、借主による内装の改装を認める特約や合意書を追加した契約形態です。
賃貸ならではの気軽さと持ち家のようなリフォームの自由度を両立できる仕組みであり、契約時には「施工可能な範囲」「退去時の原状回復ルールの設定」「金銭負担の割合」について個別のすり合わせが必要となります。
DIY可能な範囲は物件ごとに異なる
DIYが許可される範囲は一律ではなく、建物の状態やオーナー(貸主)の意向によって物件ごとに設定されます。
一般的に、壁紙の張り替えや塗装などの「表装改修」は認められやすい一方、建物の耐震性や安全性に影響する「柱や構造壁の解体」は原則禁止です。ただし、一戸建て物件は集合住宅に比べて規約や他住戸への影響が少ないため、交渉次第で施工範囲の条件を緩和してもらえる可能性が高くなります。
DIY型賃貸借契約と一般的な賃貸借契約の違い
DIY型賃貸借契約と一般的な賃貸借契約の主な違いは下記の2点です。
| 比較項目 | 一般的な賃貸借契約 | DIY型賃貸借契約 |
|---|---|---|
| リフォーム・改装 | 原則禁止(事前の承諾が必要で退去時原状回復) | 特約の範囲内で自由にDIY・内装工事が可能 |
| 施工部分の所有権 | 貸主に帰属 | 建物と一体化しない施工部分は借主の所有権を明確化 |
| 契約の進め方 | 賃貸借契約書のみを取り交わす | 賃貸借契約に加えDIY工事の申請・承諾・合意書が必要 |
DIY型賃貸借の契約形態と手順
DIY型賃貸借の契約形態は、基礎となる建物賃貸借契約に、改装の許可範囲や退去時の取り扱いを定めた「DIY特約(または合意書)」を組み合わせることで成立します。
退去時の原状回復トラブルや費用清算の行き違いを防ぐため、施工部分の所有権の帰属を書面で明確に定義しておくことが実務上極めて重要です。
DIY施工部分の所有権と退去時のルール
DIYによって設置された造作物の所有権は、工事の内容によって以下のように整理されます。
- 貸主(オーナー)に帰属するケース:壁紙の張り替えや壁の塗装、床材の敷設など、建物本体と一体化して分離できなくなった施工部分は、民法の規定(付合)に基づき所有権が貸主に帰属します。
- 借主(入居者)に帰属するケース:後付けの棚や照明器具など、建物に損傷を与えずに取り外し可能な造作物は借主に所有権が残ります。
これらを退去時に「借主が撤去して元の状態に戻す」のか、「そのまま残して退去する(残置)」のかは事前の合意で決定します。なお、借主が費用を出して物件の価値を高めた場合でも、トラブル回避のために「有益費償還請求権(かかった費用を貸主に請求できる権利)」を放棄する特約を交わすケースが一般的です。
契約手続きの構造
DIY型賃貸借の手続きは、「建物の賃貸借契約」と「DIY工事の承諾・合意」の2軸で進行します。入居後に借主が具体的な工事仕様書や図面をオーナーへ提出し、双方が合意書を交わしてから着工するのが基本の流れとなります。
🏠DIY型賃貸借の契約手続きフロー
通常の賃貸借契約に加えて、DIY工事の申請書と合意書の取り交わしが必要です。
不明な点は国交省のガイドラインで確認
権利関係や取り決め事項が複雑になりがちなDIY型賃貸借において、国土交通省が発行するガイドブック「DIY型賃貸借のすすめ」は、貸主・借主双方が実務上の指針とすべき最も信頼性の高い公式資料です。契約手順の解説に加え、巻末には法的トラブルを予防するための「標準的な契約書式例」や「合意書の雛形」が網羅されています。
このガイドブックには、DIY型賃貸借の基本的な仕組みだけでなく、具体的な改修事例やオーナー・入居者間の費用負担割合の決め方などが詳細に定義されています。
契約後の予期せぬトラブルを防ぐためにも、不動産会社へ相談する前、あるいは契約書を作成する前の段階で、公式ガイドラインの基準や書式例を確認しておくことが実務上推奨されます。
【出典:国土交通省「DIY型賃貸借のすすめ(改訂版)」】
DIY型賃貸借のメリット
DIY型賃貸借は、貸主にとっては「事前のリフォーム費用を抑えて空き家を早期収益化できる」という利点があり、借主にとっては「物件購入のリスクを負わずに自分好みの空間を作れる」という、双方のニーズが合致した契約形態です。
市場に少ない希少物件として、明確なターゲット層へアピールできる強みもあります。
貸主(空き家オーナー)側のメリット
空き家を賃貸物件として流通させる際、オーナー側には以下の3つのメリットがあります。
| 貸主側のメリット | 具体的な内容と効果 |
|---|---|
| リフォーム費用を大幅に節約できる | 通常の賃貸物件では入居者募集前にオーナー負担で内装リフォームを行う必要がありますが、DIY型賃貸借では借主が自費で改装を行うため、事前の室内改修費用がかかりません(※躯体や水道ガス等のインフラ修繕を除く)。 |
| ターゲット層が明確で集客しやすい | 「古くても自分の手で家を改装したい」という明確な目的を持ったDIY需要層へピンポイントに訴求できるため、一般的な賃貸市場では敬遠されがちな築古の空き家でも強みを持たせることができます。 |
| 退去時に物件がグレードアップする可能性 | 契約時の特約で「退去時のDIY部分の残置」を取り決めておけば、入居者が施した良質な内装や造作物をそのまま引き継ぐことができ、次回の入居者募集時に物件価値が向上しているケースがあります。 |
借主(入居者)側のメリット
物件を借りてDIYを行う入居者側には以下の3つのメリットがあります。
| 借主側のメリット | 具体的な内容と効果 |
|---|---|
| リフォーム未施工の分だけ家賃が安い傾向にある | オーナー側が事前のリフォーム費用を家賃に上乗せしていないため、周辺の同条件の改装済み物件に比べて月々の賃料が低く抑えられているケースが多く、固定費の削減につながります。 |
| 物件を購入せずに自分好みのリフォームができる | 一戸建てや古民家をDIYする場合、通常は物件の購入費用や固定資産税、将来売却する際の手間が発生しますが、賃貸契約であれば初期費用を抑えつつ、ライフステージに合わせた住み替えも容易です。 |
| 住みながら必要に応じて収納などを追加できる | 一般的な賃貸住宅では禁止されている壁への棚の設置や間取りの微調整が可能なため、実際に暮らし始めてから気づいた動線や使い勝手に合わせて、柔軟に部屋をカスタマイズできます。 |
DIY型賃貸借のデメリット

DIY型賃貸借には、貸主側に「施工中の建物損傷リスクや複雑な特約締結の負担」、借主側に「仕上がりの自己責任や退去時の原状回復費用リスク」というデメリットが存在します。
自由度が高い反面、事前の取り決めを怠ると金銭トラブルに発展しやすいため、あらかじめリスクと対策を把握しておくことが重要です。
貸主(空き家オーナー)側のデメリット
空き家をDIY賃貸として提供する際、オーナー側が注意すべきリスクは以下の3点です。
| 貸主側のデメリット | 具体的なリスクと対策 |
|---|---|
| 施工中に建築物本体を損傷されるリスク | 借主の技術不足や知識不足により、建物の耐震性や安全性に関わる重要な構造部(柱、梁、耐力壁など)を誤って解体・破損される恐れがあります。これを防ぐため、事前に施工禁止エリアを明確に指定する必要があります。 |
| 入居需要(ニーズ)がニッチで客層が限られる | ターゲットが自費と時間をかけてDIYをしたい人に限定されるため、通常の賃貸物件に比べて市場の需要(分母)は少なくなります。募集の際はターゲット層が集まる専門ポータルサイトやSNSを活用したピンポイントな集客が必要です。 |
| 契約時に明確にすべき特約事項が非常に多い | DIYを許可する範囲の指定だけでなく、退去時の残置・撤去ルール、入居期間中の修繕費用負担など、通常の契約よりも細かなルール設定が必須となります。トラブル回避のため、必ず専門知識を持つ不動産会社を仲介させるのが鉄則です。 |
借主(入居者)側のデメリット
物件を借りてDIYを行う入居者側が覚悟すべきリスクは以下の3点です。
| 借主側のデメリット | 具体的なリスクと対策 |
|---|---|
| 居住環境の仕上がりが自らの技術に依存する | 専門業者による施工ではないため、事前のイメージ通りに仕上がらない可能性や、施工後に建て付けの不具合などが生じるリスクはすべて自己責任となります。 |
| 入居初期のコンディション(物件状態)が悪いケースがある | オーナー側が事前に室内クリーニングや内装補修を行わない状態で引き渡されることが多いため、DIYに着手して実際に住める状態にするまでに相応の時間と労力(および材料費)がかかります。 |
| 特約で原状回復が必要とされた場合の金銭的負担 | 契約時に退去時は元の状態に戻すことと合意していた場合、大がかりなDIYを施した分だけ退去時の解体・撤去費用や原状回復費用が膨らみ、大きな金銭的負担となるリスクがあります。 |
DIY型賃貸借の注意点
DIY型賃貸借で発生しやすい金銭・法的トラブルを防ぐには、契約前に「退去時の造作物の取り扱い」「建物の安全性に関わる施工禁止範囲」「入居期間中の修繕責任の所在」の3点を合意書で明確にすることが最重要です。自由度が高い反面、民法の原則を修正する特約が多いため、書面での正確な取り決めが求められます。
1. DIY部分の退去時の取り扱い(撤去か残置か)を明記する
退去時にDIY施工した部分を「解体して元の状態に戻す(撤去)」のか、「そのままの状態で引き渡す(残置)」のかを必ず書面で明確にします。
- 撤去の場合:どこまで原状回復を行うかの基準を事前にすり合わせ、借主側の退去費用リスクを確定させます。
- 残置の場合:入居者が物件の価値を高めたとしても、退去時にオーナーへ費用の支払いを求めないよう、有益費償還請求権(民法第608条)を放棄する特約を交わすのが不動産実務上の標準です。
2. 建築物の主要構造部を損傷・改変させない
DIY工事で最も避けるべきなのは、建物の耐震性や安全性を揺るがす重大な損傷・改変です。
- 構造への影響と建築確認:内装の塗り替えや収納の追加などは問題ありませんが、柱や梁、耐力壁などの「主要構造部」に手を加えるリフォームは、建物の寿命を縮めるだけでなく、規模によっては建築基準法上の「建築確認申請」が必要となる場合があります。オーナーは図面や申請書を事前にチェックし、構造に関わる部分の施工を明確に禁止しておく必要があります。
3. 入居期間中の修繕・管理責任の所在を明確にする
DIYを実施した箇所について、入居中に不具合(塗装の剥がれや造作棚の破損など)が起きた際の修繕・管理をどちらが担うかを定めておきます。
- 修繕義務(民法第606条)の特約化:民法の原則では貸主に修繕義務がありますが、DIY部分に関しては「借主が自費と自己責任で修繕・管理を行う」とする特約を設けるのが一般的です。退去時に残置する予定の設備であっても、入居期間中のメンテナンス責任は借主にあることを明確にすることで、居住中の認識のズレによるトラブルを未然に防ぎます。
出典:国土交通省「DIY型賃貸借のすすめ(改訂版)」 / 法務省「民法の一部を改正する法律」
🏠空き家のDIY賃貸に関するよくある質問
まとめ
DIY型賃貸借は、オーナーにとって事前のリフォーム費用をかけずに空き家を収益化でき、入居者は自由に好みの住まいを作れる双方にメリットの大きい契約形態です。
一方で、柱や外壁など構造体への施工禁止範囲の設定や、退去時の残置・原状回復に関する所有権のルールを合意書で明確にしておくことがトラブル防止の必須条件となります。
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※建物の状況等によっては、一部費用のご負担をお願いする場合がございます。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。