公開日:2023.08.18 更新日:2026.06.09
空き家3000万円控除の要件チェックシート!適用条件や書類を解説
相続した空き家を売却して利益が出た場合、所得税をはじめとした税金の負担が悩みの種になりがちです。
しかし通称「空き家特例」が適用されると、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円が控除されるため、税負担を大きく軽減できます。なお、2024年1月1日以降の譲渡では以下の2点が改正されています。
・買主が売買契約に基づき取得後に除却または耐震改修を行った場合も特例の対象となった(従来は売主が引渡し前に実施する必要があった)
・相続人が3人以上いる場合の控除額は1人あたり最大2,000万円に変更(2人以下は従来どおり3,000万円)
特例の適用期限は2027年12月31日までです。
本記事では「相続した空き家の3,000万円控除(空き家特例)」の制度概要・適用要件・申請手続きを解説するとともに、相続した空き家の賢い使い道に役立つ情報もあわせてご紹介します。
目次
相続した空き家の3,000万円控除(空き家特例)とは?

相続で取得した空き家を売却した際に生じた譲渡所得から、最大3,000万円を控除できる制度です。
正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で、2016年度の税制改正により創設されました。不動産の売却で譲渡所得が発生した場合、所得税などが課税されますが、本特例が適用されると控除後の金額をもとに税額を計算するため、税負担を大幅に軽減できます。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
取得費とは購入時の価格や仲介手数料・リフォーム費用などの合計から建物の減価償却費を差し引いた金額(実額法)、譲渡費用とは売却時にかかった仲介手数料・印紙税などです。
取得費の計算方法
取得費は以下のいずれか金額が大きい方を使用します。
①実額法:取得にかかった費用の合計から建物の減価償却費を差し引いた金額
②概算法:譲渡収入金額×5%
購入時の売買契約書や領収証がない場合は概算法(5%)を適用するルールとなっており、実際の取得費より低くなるため課税額が増えるリスクがあります。通称「悪魔の5%ルール」と呼ばれるため、該当しそうな場合は事前に専門家へ相談することをおすすめします。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は以下の計算式で算出します。
「譲渡所得」×「税率」=「譲渡所得税」
相続した空き家に3,000万円控除(空き家特例)が適用される場合は、以下のような計算式が成り立ちます。
「譲渡所得-3,000万円」×「税率」=「譲渡所得税」
なお、肝心の税率については不動産の所有期間によって異なります。
| 所有期間 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得(5年超) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
3,000万円控除の適用で最大約600万円の減税効果(所有期間5年超の場合)
空き家特例では譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。ただし、2024年1月1日以降の譲渡において相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除上限は2,000万円に縮小されるため注意が必要です。
相続人が2人以下で3,000万円の控除が適用される場合、所有期間5年超(長期譲渡所得)の税率20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)で計算すると、最大で約609万円の減税効果となります。
3,000万円 × 20.315% = 約609万円
※復興特別所得税は2037年12月31日までの適用。
数百万円単位で税負担が変わるため、空き家特例の節税効果がいかに大きいかが分かります。
空き家の3,000万円控除の適用要件【チェックシート】
相続した空き家の3,000万円控除(空き家特例)は無条件で適用されるものではありません。適用を受けるには、11個の適用要件をすべて満たしている必要があるのです。
ここから、それぞれの適用要件を順に解説するとともに、判断時に役立つチェックシートも用意しましたので参考にしてください。
満たす必要がある11の適用要件
ここからさらに、一つひとつの適用要件について解説します。
①相続または遺贈により取得した建物・土地か
売却した建物や土地が、相続または遺贈(遺言によって法定相続人以外の人に財産を取得させる方法)により取得されていることが条件です。
②被相続人がひとりで居住していたか
相続開始の直前において、被相続人以外に居住していた人がいなかったことが条件です。亡くなった時点で同居者がいた場合は、原則として特例の適用を受けられません。
③1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物か
対象となる家屋は、1981年5月31日以前に建築された建物に限定されています。建物が未登記で登記事項証明書による証明ができない場合は、①被相続人から相続等により取得したこと、②区分登記建物でないこと、③1981年5月31日以前に建築されたこと、の3点を証明する書類の提出で要件を満たしたとみなされます。
④相続開始から売却までの間、空き家のままだったか
相続してから売却するまでの間、居住・事業・貸付などに使用していた事実があると特例は適用されません。
⑤耐震基準を満たしているか、または解体して土地だけを売却するか
売却時に家屋が耐震基準を満たしていることが原則ですが、満たしていない場合は売主が耐震改修または取り壊しを行う必要があります。ただし2024年1月1日以降の譲渡では、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行った場合も特例が適用されます。
⑥建物だけでなく、土地も相続したか
家屋だけでなく敷地等(土地および土地の上に存する権利を含む)も合わせて相続または遺贈により取得している必要があります。家屋と敷地を別々の人が取得した場合は特例の適用外となります。
⑦区分所有建物(マンションなど)ではないか
マンション・アパート・区分登記された二世帯住宅など、区分所有建物は特例の対象外です。
⑧相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するか
相続開始日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却することが条件です。例えば2019年4月1日に相続が発生した場合、2022年12月31日が期限となります。
⑨売却金額が1億円以下か
売却金額(譲渡価額)が1億円以下であることが条件です。分割して売却する場合は、最初の譲渡日から3年後の12月31日までの売却金額の合計が1億円以下かどうかで判定されます。
⑩売却先が第三者(特別な関係にない人)であるか
親子・夫婦・生計をともにする親族・内縁関係者・特殊な関係のある法人などへの売却は特例の対象外です。
⑪既に空き家特例やその他の控除を受けていないか
同じ土地や建物について他の特例の適用を受けていないことが条件です。なお、本特例は相続人1人につき1回しか適用を受けられません。
空き家3,000万円控除の申請方法・必要書類
ここでは、「相続した空き家の3,000万円控除(空き家特例)」の申請方法、および必要書類をご紹介します。
申請方法
「相続した空き家の3,000万円控除(空き家特例)」の申請は確定申告のタイミングで行います。
申請の流れを以下にまとめますので参考にしてください。
| 1.電気やガスの閉栓証明書、水道の使用廃止届出書などを用意する 2.空き家を管轄する市区町村へ「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請する 3.「被相続人居住用家屋等確認書」を市区町村から受領する 4.「被相続人居住用家屋等確認書」など申請に必要な書類を添付し確定申告を行う |
必要書類
「相続した空き家の3,000万円控除(空き家特例)」の申請に必要な書類は以下のとおりです。
| 提出・申請先 | 必要書類の名称 | 主な役割・確認内容 |
|---|---|---|
| 税務署(確定申告時) | 確定申告書付表兼計算明細書 | 譲渡所得(売却益)の計算内訳を申告する書類 |
| 税務署(確定申告時) | 売却した空き家の全部事項証明書 | 登記簿謄本。建物の建築年や土地の所有権を確認する |
| 税務署(確定申告時) | 被相続人居住用家屋等確認書 | 自治体(市区町村)から交付を受けた確認書の原本 |
| 税務署(確定申告時) | 耐震基準適合証明書、または建設住宅性能評価書の写し | 家屋が耐震基準を満たしていることを証明する書類 |
| 税務署(確定申告時) | 不動産売買契約書の写し | 売却日や売却金額(1億円以下であること)を証明する |
| 市区町村(確認書申請時) | 被相続人の住民票の除票の写し | 亡くなった方が一人で住んでいたことを確認する書類(原本) |
| 市区町村(確認書申請時) | 相続人の住民票の写し | 相続人全員の情報を確認する書類(原本) |
| 市区町村(確認書申請時) | 電気・ガスの閉栓証明書、水道の使用廃止届出書 | 相続開始から売却まで、事業や居住に使われず空き家だった証拠 |
| 市区町村(確認書申請時) | 家屋の閉鎖事項証明書(※更地売却時のみ) | 建物が取り壊され、除去されたことを証明する書類(原本) |
また、申請手続きに必要な「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受けるには以下の書類が必要です。
| ・被相続人の住民票の除票の写し(原則コピー不可) ・申請被相続人居住用家屋の相続人の住民票の写し(原則コピー不可) ・申請被相続人居住用家屋又はその敷地等の「譲渡の時」を明らかにする書類として、申請被相続人 居住用家屋又はその敷地等の売買契約書のコピー等 ・申請被相続人居住用家屋又はその敷地等が「相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと」を証する書類(電気、水道またはガスの使用中止日(閉栓日、契約廃止日等)が確認できる書類など) |
※被相続人が老人ホーム等に入所していた場合には、別途複数の書類を提出
【1】
| ・確定申告書付表兼計算明細書 ・売却する空き家の全部事項証明書 ・被相続人居住用家屋等確認書(申請時には別途下記【2】の書類を提出) ・耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書、いずれかの写し ・不動産売買契約書の写し |
【2】
| ・亡くなった方の「住民票の写し」原本 ・対象家屋の相続人全員分の「住民票の写し」原本 ・「不動産売買契約書」などの写し(譲渡の時期を明らかにする書類) ・対象家屋の「閉鎖事項証明書」などの原本(取り壊しや除去されたことを明らかにする書類) ・「電気・ガスの閉栓証明書」や「水道の使用廃止届出書」(相続開始から売却まで空き家だったことを示す書類) |
※被相続人が老人ホーム等に入所していた場合には、別途複数の書類を提出
相続した空き家の「活用」もご検討を!
空き家を相続した場合、そのまま住む・売却・解体などさまざまな選択肢がありますが、近年とりわけ注目を集めているのが「空き家活用」です。
空き家活用とは、所有する空き家をリノベーションして第三者に貸し出し、家賃収入を得る方法です。賃貸住宅・宿泊施設・シェアオフィス・貸倉庫など、立地や物件の特性に合わせた多様な形態を選べる柔軟性が強みです。
売却と異なり資産を保有したまま定期収入を得られる点、リノベーションにより資産価値を維持できる点、倒壊リスクや犯罪への悪用を防げる点も大きなメリットです。
空き家活用のご相談は「アキサポ」へ
「最適な活用方法が分からない」「リノベーション費用が心配」といった空き家オーナーのお悩みに、アキサポは独自の仕組みでお応えしています。
※建物の状況等によっては、一部費用のご負担をお願いする場合がございます。
実際の活用事例も以下でご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
アキサポの事例
事例1:設備周りを一新し使い勝手の良い賃貸住宅へ

木造2階建てのこちらの物件は、長期間空き家だったことで内装・設備の劣化が進んでいました。
傷んだ内装や古くなった設備を中心にリノベーションを実施し、生い茂った庭木の整理や傷んだカーポートの修繕など屋外環境も整備。住む人が快適に過ごせる賃貸住宅として生まれ変わり、所有者様にも安心してご活用いただける物件へと再生しました。
事例2:ポイントを抑えたリノベーションを施し新たなご家族へ

「相続した空き家を売却せずに活用したい」というご相談から始まったこちらの物件。
所有者様がすでに内装の表層リフォームを済ませていたため、アキサポでは水回りの改修や一部倉庫の補修など、必要な箇所にしぼったリノベーションを実施しました。無駄のない施工で物件の魅力を引き出した結果、活用開始後すぐに入居が決まった事例です。
事例3:空き家になった大切な自宅は新たな賃貸住居へ

10年間空き家状態が続いていたこちらの物件ですが、所有者様が日頃からこまめに換気・掃除を続けていたことで、建物の状態は驚くほど良好でした。
「大切にしてきた家の雰囲気は残してほしい」というご要望を受け、リノベーションは必要最小限にとどめる方針で進めました。元の空間の良さを活かした仕上がりとなり、賃貸住宅として運用を開始後、入居者様にもご満足いただいている事例です。
まとめ
空き家特例(3,000万円控除)は、要件を満たせば大きな節税効果が得られる制度です。適用条件は複数あるため、売却を検討する際は事前に確認しておきましょう。
売却以外にも、資産を保有したまま家賃収入を得られる空き家活用という選択肢もあります。どちらが自分の状況に合っているか迷ったら、まずはアキサポにご相談ください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。