公開日:2025.06.20 更新日:2026.08.31
譲渡税とは?不動産売却の税金の計算と3,000万円控除を解説

譲渡税とは?不動産売却時にかかる所得税・住民税の計算方法、3,000万円控除などの特例までを解説。
本記事では、譲渡にかかる税金の仕組みから、節税につながる各種特例の活用方法まで、基本をわかりやすく解説します。
目次
まず押さえておきたい譲渡所得税の基本
『譲渡税』とは、正式には『譲渡所得税』を指し、土地・建物・株式などの売却で得た利益(譲渡益)にかかる税金の総称です。所得税・住民税・復興特別所得税で構成され、給与などとは分けて計算する『分離課税方式』で、譲渡所得専用の税率が適用されます。
取得費や譲渡費用など、売却までにかかった費用を差し引いてから税額を計算できる点が特徴です。また、所有期間が5年超か以下かによって「長期」「短期」に区分され、税率も異なります。
特例や控除は税制改正で変わることが多いため、最新情報の確認が欠かせません。マイホームの売却など特例が複数絡むケースでは、専門家に相談しながら計算することが適切な節税につながります。
譲渡所得の対象になるケース・ならないケース
譲渡所得の対象となる主な例としては、不動産売却によって得た利益や、土地・建物・株式などの資産の売却益が挙げられます。
一方で、事業用の棚卸資産や山林の売却などは、税法上、「譲渡所得」ではなく「事業所得」などに区分される場合があります。また、公益目的での譲渡は、地方税法や租税特別措置法に基づいて非課税または軽減措置が認められる場合があります。軽減措置が適用される特例もあります。
自身が売却検討している資産の性質や用途を事前に確認することで、意図しない課税を避けることが可能です。
譲渡所得の計算方法:収入金額・取得費・譲渡費用のポイント
譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除
譲渡収入金額には売却代金のほか、権利金や物品の時価なども含まれます。契約書だけでなく実際の受取内容を確認し、正確に把握しましょう。
また、売買代金に上乗せされることのある未経過固定資産税や敷金精算については、契約内容や取引の実態により、譲渡収入金額に含まれる場合とそうでない場合があります。たとえば、実質的に譲渡対価とみなされる場合には収入金額に含まれることがありますが、単なる税負担の精算や預かり金の返還は原則として譲渡収入には該当しません。
契約書の内容や金銭の性質に基づき、税理士や司法書士などの専門家の確認を得ながら慎重に判断する必要があります。誤った判断を防ぐためにも、契約書をよく確認し、不明点は専門家に相談することが重要です。
取得費・譲渡費用に含まれるもの・含まれないもの
| 区分 | 差し引ける(該当する)主な項目 | 差し引けない(該当しない)主な項目 |
|---|---|---|
| 取得費 | 土地・建物の購入代金や建築費/購入時の仲介手数料・登記費用/資産価値を高めるリフォーム・改良工事費 | 売却物件の維持費や修繕費/購入時の住宅ローン金利(一部例外あり) |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料/売買契約書の印紙代/売却のための広告費/建物を解体して売る場合の解体費用 | 売却活動と直接関係のないリフォーム費用/引越し費用や住民票の移転費用 |
取得費・譲渡費用の算出には、購入時の領収書や仲介契約書などの保管が不可欠です。建物の減価償却費など考慮すべき項目も多いため、関係書類は売却後も大切に保管しておきましょう。
取得費と減価償却費の計算方法
取得費には、購入代金、仲介手数料、登記費用、改良工事費などの「資産価値を高める目的の支出」が含まれますが、修繕費や維持費は対象外です。
ただし、建物の場合は経年で価値が減ることを考慮し、取得費から減価償却費を差し引く仕組みがあるため、実際の取得費が大きく変化する点に注意が必要です。みなし償却費の計算には「取得日」や「法定耐用年数」の確認が必要で、適切な証憑書類とともに税務署提出が求められます。正しく把握して計算することが譲渡所得の精度を左右します。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いと税率

譲渡所得税の税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間で変わります。5年を超えれば『長期譲渡所得(20.315%)』、5年以下なら『短期譲渡所得(39.63%)』で、短期のほうが約2倍高くなります。
| 区分 | 所有期間(売却した年の1月1日時点) | 総税率 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315% | 所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% | 所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9% |
これは短期間の投機的売買を抑制し、住宅や土地を長く保有することで税負担が抑えられる制度的配慮によるものです。
なお、所有期間の起算日は売却の契約日ではなく、原則として取得日(購入日)から計算されるため注意が必要です。取得時期の判断を誤ると、長期と短期を取り違え、後に修正申告が必要になる場合があります。
売却を検討している場合は、取得日を基準に5年を超えるかどうかを確認し、所有期間に応じた税率での申告準備を行うことが重要です。
マイホーム(居住用財産)に適用される特別控除・特例
居住用財産の場合は、ほかの不動産とは異なる特典が設けられており、要件や仕組みの理解が重要です。
マイホームを売却する場合、一般の投資用不動産と比べて大きな税制優遇を受けることができます。たとえば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「3,000万円特別控除」や、所有期間が10年を超える場合の軽減税率などが挙げられます。これらの特例制度を活用するには、居住実態や保有期間、家屋の利用状況などについて厳格な条件を満たす必要があります。
一方で、これらの特例を適用できない事情も存在します。過去に同じ特例を使った売却を短期間に行っていたり、家族の住民票の移転が間に合っていない場合などは、適用が認められないことがあります。
| 特例 | 内容 | 主な要件・ポイント |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 居住用財産の譲渡所得から最高3,000万円を控除 | 居住実態などの要件あり。前回適用から一定期間の経過が必要 |
| 10年超所有の軽減税率 | 所有10年超のマイホームは長期より低い税率になる | 3,000万円控除と併用可。所有期間の正確な確認が必要 |
| 買換え特例 | マイホーム買換え時、譲渡益への課税を将来へ繰り延べ | 2027年12月31日までの譲渡が対象(令和8年度改正で延長) |
| 譲渡損失の損益通算・繰越控除 | 売却損を他の所得と相殺し、最長3年繰り越せる | 2027年12月31日までの譲渡が対象。住宅ローン等の要件あり |
申告期限に余裕を持ち、抜け漏れなく書類を整えることで、正しく特例を適用して納税額を抑えられるようになります。
3,000万円特別控除の要件
居住用財産を売却した際、最大3,000万円までの譲渡所得が非課税扱いになる非常に強力な特例です。
ただし、この要件として、居住用途として使用している期間や家族の生活拠点があった事実を示す資料などが求められます。短期間で複数回利用するといった濫用を防ぐため、前回の特例適用から一定期間が経過していることなど、細かな条件を満たすことが必要です。
こうした条件についても、国税庁が公表する資料を参照することで正確な確認が可能です。
10年超所有軽減税率の特例
居住用財産を10年を超えて所有している場合、通常の長期譲渡所得よりさらに税率が軽減される特例です。この制度を利用することで、譲渡に伴う税負担を大幅に軽減することが可能です。
ただし、税負担を大幅に抑えられる一方、要件として売却する家屋が実際に居住事実があったものであることや、所有期間を正確に計算できる書類が必要となります。長期所有によるメリットは大きいものの、取得日と契約日の取り違いなど、誤って所有期間を計算した場合には適用されないため、契約書の日付チェックや所有権移転登記のタイミングに注意が必要です。
買換え特例
買換え特例とは、マイホームを売って新たな住まいに買い換えたとき、譲渡益への課税を将来に繰り延べられる制度です。税金が非課税になるわけではなく、あくまで先送りする仕組み。さらに、3,000万円特別控除や10年超所有の軽減税率とは併用できず、いずれか一つを選ぶ選択制です。どの特例が有利かを試算したうえで選びましょう。
譲渡所得税以外の税金:印紙税・登録免許税など

資産の譲渡にあたっては、所得税以外にも印紙税や登録免許税などが発生する場合があります。
不動産の売買契約書には、契約書自体に貼る印紙税が発生します。印紙税額は契約金額に応じて決まり、高額物件を取引する際には税額も増大する点に注意が必要です。また、売却後に所有権移転登記を行う場合には登録免許税が発生するため、コストを見積もる際にはこれらの税金を織り込んでおく必要があります。
これらの税金は譲渡所得に直接影響するものではありませんが、譲渡費用として認められる場合もあり、結果として申告内容に関係する可能性があります。特に契約書を複数作成する場合や、司法書士などの専門家を介する場合は、税金だけでなく印紙代や登記費用、手数料も考慮しなければなりません。複合的な費用負担を把握したうえで、売却金額や申告内容を慎重に検討することが大切です。
譲渡損失が出た際の損益通算と繰越控除
譲渡所得がマイナスになった場合、ほかの所得と相殺したり将来へ繰り越したりする特例制度が整備されています。
譲渡損失が発生した場合、他の譲渡所得や給与所得などと相殺する損益通算が認められ、その損益通算金額によって最終的な課税所得が変わることがあります。特にマイホーム売却による損失では、一定の要件を満たすことで、翌年以降に損失を繰り越して他の所得と相殺できる「繰越控除」の適用が可能です。繰越控除は最大で3年間利用できるケースがあり、大きな節税効果が期待できます。
ただし、損益通算や繰越控除はすべてのケースに適用されるわけではなく、マイホームの買換えや住宅ローン残高など、法律で定められた要件をクリアする必要があります。申告にあたって、損失の発生状況がわかる契約書類や支出の証拠書類をきちんと整備し、制度を活用できるかどうかを検討することが不可欠となります。
相続・贈与で取得した土地や建物を譲渡するときの注意点

相続や贈与で取得した資産を譲渡する際は、取得費や所有期間の扱いが通常と異なるため、特別な留意が必要です。
たとえば、相続や贈与で受け取った土地や建物を売却する際、元の所有者(被相続人や贈与者)の取得費や所有期間を引き継いで計算されることがあります。これは、一般的に相続や贈与を受けた時点では利益確定とはみなされないためです。
また、贈与税や相続税を支払ったケースであっても、譲渡所得の計算には直接反映されない場合があります。後の申告で混乱を避けるためにも、相続や贈与時の手続きをきちんと行い、財産評価額や取得経緯を正確に記録しておくことが必須です。
確定申告の流れと必要書類:申告漏れを防ぐために
譲渡所得の計算内容や特例の適用を正しく申告するために、確定申告の手順や必要書類を整理します。
✅譲渡所得の確定申告 準備チェックリスト
申告漏れを防ぐために、準備・確認したい項目です。済んだものをタップしてチェックしましょう。
まず譲渡所得の計算を行い、特例を適用する場合は各特例の要件をきちんとクリアしているかを確認します。続いて、譲渡所得に関する明細書や売買契約書、必要に応じて登記事項証明書、住宅ローン残高証明書などの必要書類を揃えておきましょう。申告書類の記入漏れや書類不備があると、追徴課税や修正申告が発生する可能性があるため、十分な確認が必要です。
📝不動産売却後の確定申告 5ステップ
譲渡所得の計算・特例要件の確認
売却代金から取得費・譲渡費用を差し引き、譲渡益が出ているか計算。3,000万円特別控除などの適用要件も確認します。
必要書類・証明書の用意
購入時・売却時の売買契約書、領収書、登記事項証明書などを準備。特例を使う場合は戸籍謄本や住民票の写しも揃えます。
確定申告書・明細書の作成
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などで、譲渡所得の内訳書と確定申告書を作成・記入します。
税務署へ申告書を提出
売却した翌年の2月16日〜3月15日に、管轄の税務署へ提出します(e-Taxによる電子申告も可能)。
所得税の納付(または還付)
期限内に所得税を納付(口座振替も可)。売却に伴う住民税は、その年の6月以降に通知が届きます。
確定申告の提出期間は、通常、翌年の2月16日から3月15日までとされており、この期間内に確定申告書と必要書類を税務署に提出します。電子申告(e-Tax)を利用すれば、書類の準備や手続きがスムーズになるケースも増えています。
期日を守り、正確に申告することで、延滞税やペナルティの発生を防ぐことができます。
🏠譲渡税(譲渡所得税)に関するよくある質問
Q.売却して損失(譲渡損失)が出た場合も確定申告は必要ですか?
損失で税金がかからない場合、原則として申告義務はありません。ただしマイホーム売却で一定の要件を満たせば、損失を他の所得と相殺したり翌年以降に繰り越したりできる特例があり、これを使うには損失でも確定申告が必要です。
Q.相続した実家を売る場合、所有期間は「長期」「短期」どちらで数えますか?
相続や贈与で取得した不動産は、亡くなった元の所有者(被相続人)が取得した日を引き継いで所有期間を計算します。そのため相続から数か月でも、親が5年超所有していれば「長期譲渡所得」の低い税率が適用されます。
Q.3,000万円特別控除を使うと、住民税も安くなりますか?
安くなります。3,000万円特別控除は課税対象の利益そのものを最大3,000万円減らす制度のため、所得税だけでなく、翌年に課される住民税も連動して下がります。税額がゼロでも、適用には確定申告書の提出が必要です。
まとめ
譲渡税(譲渡所得税)は、不動産の売却益にかかる所得税・住民税です。税額は所有期間で変わり、売却年の1月1日時点で5年超なら長期(20.315%)、5年以下なら短期(39.63%)です。取得費や譲渡費用を差し引いて計算でき、3,000万円特別控除や10年超の軽減税率、買換え特例、譲渡損失の繰越控除といった制度を正しく使えば、税負担は大きく抑えられます。印紙税や登録免許税などの付随費用も含め、売却のトータルコストで判断することが大切です。
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この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。






