公開日:2025.06.20 更新日:2026.06.03
不動産売却の譲渡税とは?計算方法や3000万円控除の特例を解説
譲渡税とは?不動産売却時にかかる所得税・住民税の計算方法、3,000万円控除などの特例までを解説。
本記事では、譲渡にかかる税金の仕組みから、節税につながる各種特例の活用方法まで、基本をわかりやすく解説します。
目次
まず押さえておきたい譲渡所得税の基本
譲渡所得税とは、土地・建物・株式などの売却で得た「譲渡益」に課される税金です。通常の収入とは別に計算する「分離課税方式」が採用され、譲渡所得専用の税率が適用されます。
取得費や譲渡費用など、売却までにかかった費用を差し引いてから税額を計算できる点が特徴です。また、所有期間が5年超か以下かによって「長期」「短期」に区分され、税率も異なります。
特例や控除は税制改正で変わることが多いため、最新情報の確認が欠かせません。マイホームの売却など特例が複数絡むケースでは、専門家に相談しながら計算することが適切な節税につながります。
譲渡所得の対象になるケース・ならないケース
譲渡所得の対象となる主な例としては、不動産売却によって得た利益や、土地・建物・株式などの資産の売却益が挙げられます。
一方で、事業用の棚卸資産や山林の売却などは、税法上、「譲渡所得」ではなく「事業所得」などに区分される場合があります。また、公益目的での譲渡は、地方税法や租税特別措置法に基づいて非課税または軽減措置が認められる場合があります。軽減措置が適用される特例もあります。
自身が売却検討している資産の性質や用途を事前に確認することで、意図しない課税を避けることが可能です。
譲渡所得の計算方法:収入金額・取得費・譲渡費用のポイント
譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除
譲渡収入金額には売却代金のほか、権利金や物品の時価なども含まれます。契約書だけでなく実際の受取内容を確認し、正確に把握しましょう。
取得費・譲渡費用の算出には、購入時の領収書や仲介契約書などの保管が不可欠です。建物の減価償却費など考慮すべき項目も多いため、関係書類は売却後も大切に保管しておきましょう。
譲渡収入金額に含まれるもの・含まれないもの
| 費用の区分 | 該当する(差し引ける)主な項目 | 該当しない(差し引けない)主な項目 |
|---|---|---|
| 取得費 | ・土地・建物の購入代金や建築費 ・購入時の仲介手数料や登記費用 ・リフォームや改良工事費(資産価値を高めるもの) | ・売却物件の維持費や修繕費 ・購入時の住宅ローン金利(一部例外あり) |
| 譲渡費用 | ・売却時の仲介手数料 ・売買契約書の印紙代 ・売却のために支払った広告費 ・建物を解体して売る場合の解体費用 | ・売却活動とは直接関係のないリフォーム費用 ・引越し費用や住民票の移転費用 |
譲渡収入金額には、売買契約で定められた売却代金や、譲渡時に受け取る権利金などが含まれます。
また、売買代金に上乗せされることのある未経過固定資産税や敷金精算については、契約内容や取引の実態により、譲渡収入金額に含まれる場合とそうでない場合があります。たとえば、実質的に譲渡対価とみなされる場合には収入金額に含まれることがありますが、単なる税負担の精算や預かり金の返還は原則として譲渡収入には該当しません。
契約書の内容や金銭の性質に基づき、税理士や司法書士などの専門家の確認を得ながら慎重に判断する必要があります。誤った判断を防ぐためにも、契約書をよく確認し、不明点は専門家に相談することが重要です。
取得費と減価償却費の計算方法
取得費には、購入代金、仲介手数料、登記費用、改良工事費などの「資産価値を高める目的の支出」が含まれますが、修繕費や維持費は対象外です。
ただし、建物の場合は経年で価値が減ることを考慮し、取得費から減価償却費を差し引く仕組みがあるため、実際の取得費が大きく変化する点に注意が必要です。みなし償却費の計算には「取得日」や「法定耐用年数」の確認が必要で、適切な証憑書類とともに税務署提出が求められます。正しく把握して計算することが譲渡所得の精度を左右します。
譲渡費用になる費用・ならない費用
譲渡費用として認められる主なものに、物件の仲介手数料や売却に要した広告費、契約書の印紙代などが挙げられます。
一方で、不動産の改修費用のように、本来は資産価値の向上を目的とした支出は譲渡費用に該当しない場合もあります。実際にどの支出が譲渡費用に含まれるかは税法上の定義に基づくため、判断が難しい場合は専門家に確認することがリスク回避のポイントです。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いと税率

譲渡資産の所有期間によって税率が変わり、納税額に大きな影響を与えます。
| 区分 | 所有期間の基準(売却した年の1月1日時点) | 総税率(所得税・住民税・復興特別所得税の合算) | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超(取得から5年が経過している) | 20.315% | 所得税:15% 復興特別所得税:0.315% 住民税:5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下(取得から5年以下である) | 39.63% | 所得税:30% 復興特別所得税:0.63% 住民税:9% |
一般に、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」とされ、20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税率が適用されます。これに対し、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、39.63%(所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%)の高い税率が課されます。
これは短期間の投機的売買を抑制し、住宅や土地を長く保有することで税負担が抑えられる制度的配慮によるものです。
なお、所有期間の起算日は売却の契約日ではなく、原則として取得日(購入日)から計算されるため注意が必要です。取得時期の判断を誤ると、長期と短期を取り違え、後に修正申告が必要になる場合があります。
売却を検討している場合は、取得日を基準に5年を超えるかどうかを確認し、所有期間に応じた税率での申告準備を行うことが重要です。
マイホーム(居住用財産)に適用される特別控除・特例
居住用財産の場合は、ほかの不動産とは異なる特典が設けられており、要件や仕組みの理解が重要です。
マイホームを売却する場合、一般の投資用不動産と比べて大きな税制優遇を受けることができます。たとえば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「3,000万円特別控除」や、所有期間が10年以上の場合の軽減税率などが挙げられます。これらの特例制度を活用するには、居住実態や保有期間、家屋の利用状況などについて厳格な条件を満たす必要があります。
一方で、これらの特例を適用できない事情も存在します。過去に同じ特例を使った売却を短期間に行っていたり、家族の住民票の移転が間に合っていない場合などは、適用が認められないことがあります。
申告期限に余裕を持ち、抜け漏れなく書類を整えることで、正しく特例を適用して納税額を抑えられるようになります。
3,000万円特別控除の要件
居住用財産を売却した際、最大3,000万円までの譲渡所得が非課税扱いになる非常に強力な特例です。
ただし、この要件として、居住用途として使用している期間や家族の生活拠点があった事実を示す資料などが求められます。短期間で複数回利用するといった濫用を防ぐため、前回の特例適用から一定期間が経過していることなど、細かな条件を満たすことが必要です。
こうした条件についても、国税庁が公表する資料を参照することで正確な確認が可能です。
10年超所有軽減税率の特例
居住用財産を10年以上所有している場合、通常の長期譲渡所得よりさらに税率が軽減される特例です。この制度を利用することで、譲渡に伴う税負担を大幅に軽減することが可能です。
ただし、税負担を大幅に抑えられる一方、要件として売却する家屋が実際に居住事実があったものであることや、所有期間を正確に計算できる書類が必要となります。長期所有によるメリットは大きいものの、取得日と契約日の取り違いなど、誤って所有期間を計算した場合には適用されないため、契約書の日付チェックや所有権移転登記のタイミングに注意が必要です。
買換え特例と譲渡損失繰越控除の概要
マイホームを売却して新たな住居を購入する場合、一定の要件を満たせば、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べできる「買換え特例」を利用することが可能です。
また、売却によって譲渡損失が生じた場合にも、繰越控除を利用して将来の所得と相殺できる「譲渡損失の繰越控除」という制度が設けられています。こうした特例を活用する際には、住宅ローンの借り入れ状況や売却時の残債額なども審査項目に含まれ、条件を満たしたうえで確定申告時に必要書類を添付することが欠かせません。
譲渡所得税以外の税金:印紙税・登録免許税など

資産の譲渡にあたっては、所得税以外にも印紙税や登録免許税などが発生する場合があります。
不動産の売買契約書には、契約書自体に貼る印紙税が発生します。印紙税額は契約金額に応じて決まり、高額物件を取引する際には税額も増大する点に注意が必要です。また、売却後に所有権移転登記を行う場合には登録免許税が発生するため、コストを見積もる際にはこれらの税金を織り込んでおく必要があります。
これらの税金は譲渡所得に直接影響するものではありませんが、譲渡費用として認められる場合もあり、結果として申告内容に関係する可能性があります。特に契約書を複数作成する場合や、司法書士などの専門家を介する場合は、税金だけでなく印紙代や登記費用、手数料も考慮しなければなりません。複合的な費用負担を把握したうえで、売却金額や申告内容を慎重に検討することが大切です。
譲渡損失が出た際の損益通算と繰越控除
譲渡所得がマイナスになった場合、ほかの所得と相殺したり将来へ繰り越したりする特例制度が整備されています。
譲渡損失が発生した場合、他の譲渡所得や給与所得などと相殺する損益通算が認められ、その損益通算金額によって最終的な課税所得が変わることがあります。特にマイホーム売却による損失では、一定の要件を満たすことで、翌年以降に損失を繰り越して他の所得と相殺できる「繰越控除」の適用が可能です。繰越控除は最大で3年間利用できるケースがあり、大きな節税効果が期待できます。
ただし、損益通算や繰越控除はすべてのケースに適用されるわけではなく、マイホームの買換えや住宅ローン残高など、法律で定められた要件をクリアする必要があります。申告にあたって、損失の発生状況がわかる契約書類や支出の証拠書類をきちんと整備し、制度を活用できるかどうかを検討することが不可欠となります。
相続・贈与で取得した土地や建物を譲渡するときの注意点

相続や贈与で取得した資産を譲渡する際は、取得費や所有期間の扱いが通常と異なるため、特別な留意が必要です。
たとえば、相続や贈与で受け取った土地や建物を売却する際、元の所有者(被相続人や贈与者)の取得費や所有期間を引き継いで計算されることがあります。これは、一般的に相続や贈与を受けた時点では利益確定とはみなされないためです。
また、贈与税や相続税を支払ったケースであっても、譲渡所得の計算には直接反映されない場合があります。後の申告で混乱を避けるためにも、相続や贈与時の手続きをきちんと行い、財産評価額や取得経緯を正確に記録しておくことが必須です。
確定申告の流れと必要書類:申告漏れを防ぐために
譲渡所得の計算内容や特例の適用を正しく申告するために、確定申告の手順や必要書類を整理します。
まず譲渡所得の計算を行い、特例を適用する場合は各特例の要件をきちんとクリアしているかを確認します。続いて、譲渡所得に関する明細書や売買契約書、必要に応じて登記事項証明書、住宅ローン残高証明書などの必要書類を揃えておきましょう。申告書類の記入漏れや書類不備があると、追徴課税や修正申告が発生する可能性があるため、十分な確認が必要です。
売却代金(収入金額)から取得費や譲渡費用を差し引き、プラス(譲渡益)が出ているか計算。「3,000万円特別控除」などの特例が適用できるか要件をチェックします。
売買契約書(購入時・売却時)、領収書、登記事項証明書などを揃えます。特例を適用する場合は、戸籍謄本や住民票の写しなど、自治体が指定する添付書類も準備します。
税務署の窓口や、国税庁ウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」を利用して、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)および確定申告書を作成・記入します。
不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間内に、管轄の税務署へ書類を提出します(e-Taxによる電子申告も可能です)。
申告内容に基づき、期限内に所得税を納付します(口座振替も選択可能)。なお、売却に伴う住民税は、申告した年の6月以降に別途住民税の通知として届きます。
確定申告の提出期間は、通常、翌年の2月16日から3月15日までとされており、この期間内に確定申告書と必要書類を税務署に提出します。電子申告(e-Tax)を利用すれば、書類の準備や手続きがスムーズになるケースも増えています。
期日を守り、正確に申告することで、延滞税やペナルティの発生を防ぐことができます。
よくある質問
Q:不動産を売却してマイナス(譲渡損失)が出た場合でも、確定申告をする必要はありますか?
A: 譲渡損失が出た(売却益がない)場合、税金はかからないため原則として確定申告の義務はありません。ただし、マイホームの売却で一定の要件を満たしている場合、損失をその年の他の所得(給与所得など)と相殺したり、翌年以降に繰り越したりできる「損益通算と繰越控除」の特例を利用できます。この税制上の優遇措置を受けるためには、損失が出ている場合であっても確定申告が必要です。
Q:親から相続した古い実家を売却する場合、「長期」か「短期」かの所有期間はどのように数えますか?
A: 相続や贈与によって取得した土地や建物の場合、所有期間は相続した日からではなく、「亡くなった元の所有者(被相続人)がその不動産を取得(購入)した日」をそのまま引き継いで計算します。そのため、相続してから数ヶ月しか経っていなくても、親が5年以上所有していた物件であれば「長期譲渡所得」の低い税率が適用されます。
Q:マイホーム売却の「3,000万円特別控除」を利用した場合、所得税だけでなく住民税も安くなりますか?
A: はい、安くなります。3,000万円特別控除は、譲渡所得(課税対象となる利益)そのものを最大3,000万円差し引く制度です。分離課税の計算ベースとなる所得自体が減る(またはゼロになる)ため、所得税だけでなく、翌期に課される住民税も連動して減額、もしくは非課税となります。特例を適用するには、税額がゼロになる場合でも必ず確定申告書を提出しなければなりません。
まとめ・総括
譲渡所得税は、所有期間や用途によって税率・適用特例が大きく異なります。3,000万円特別控除・買換え特例・軽減税率など、使える制度を正しく把握することが節税の第一歩です。
また、印紙税・登録免許税など付随費用も見落とさず、売却にかかるトータルコストで判断しましょう。損益通算や繰越控除の活用も、税負担を抑える有効な手段です。
適用条件の確認や申告は、国税庁のホームページで最新情報を確認しつつ、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。