公開日:2025.07.06 更新日:2025.08.12
不動産としての空き家をどうすべき?放置リスクから売却・活用方法まで徹底解説【相談先も紹介】

空き家を放置していると、固定資産税の負担増、老朽化による倒壊・近隣トラブル、行政からの「特定空き家」指定など、大きな損失やリスクにつながるおそれがあります。手をつけられていないまま、時間だけが過ぎている…そんな方に向けて、空き家の定義や現状課題、売却・管理・活用などの方法を不動産の視点から解説します。
目次
空き家とは?不動産としての定義と現状の課題

空き家問題を考える前に、そもそも「空き家」とはどのような状態のことを指すのでしょうか。まずは、不動産としての定義や現状の課題とは何かを見ていきましょう。
総務省が発表する空き家の定義と「特定空き家」認定の基準
空き家とはどういう状態?
総務省が発表している「住宅・土地統計調査」では、空き家は実は大きく4つに分類されています。
①賃貸用の住宅
新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅のこと。
②売却用の住宅
新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅のこと。
③二次的住宅
週末や休暇のときに、避暑・避寒、保養といった目的として使用する別荘や、自宅とは別にたまに寝泊まりするなど、普段は人が住んでいない住宅のこと。
④その他の住宅
上記の他に人が住んでいない住宅のこと。たとえば、相続や入院、転居などの理由で長期不在となっている住宅や、取り壊すことになっている住宅のこと。
賃貸用に空けている、別荘として使っているなどの場合も空き家に含まれますが、これら①②③は、二次的な活用のために何らかのかたちで管理されているものと判断されます。
しかし、④その他の住宅に分類される空き家は、誰も住んでおらず、長期にわたって管理されていない住宅であるといえます。つまり、昨今のニュースなどで社会問題とされている空き家とは、④に該当する住宅ということになります。
「特定空き家」とは?
上記で分類した④その他の住宅のなかでも、周囲に悪影響をもたらす可能性のある状態のものを、行政が「特定空き家」と判断するケースがあります。これは2015年5月に施行された「空き家対策特別措置法(空家特措法)」に基づき、各自治体が判断・認定する制度です。
総務省や国土交通省のガイドラインでは、たとえば、次のような基準を満たすと「特定空き家」として認定されるとされています。
・建物が壊れかけていて、倒壊の恐れがある
・ ごみが溜まり、不衛生で悪臭がする
・雑草や木が生い茂り、景観や衛生に悪影響を及ぼしている
・害虫や動物の住処になっている
・近隣住民に迷惑をかけている
全国的な空き家増加と社会的背景
国土交通省が発表した「空き家制作の現状と課題及び検討の方向性」によると、居住目的のない空き家はこの20年で1.9倍に増加しているという報告があります。今後の人口減少の予測を鑑みても、これからさらに空き家は増えていくと想定されるでしょう。
では、なぜこれほどまでに空き家が増えてしまったのでしょうか。その背景には、主に次の要因があります。
人口減少と少子高齢化
日本の空き家問題を語るうえで欠かせないのが人口減少。人口が減ると、不動産を売りたい・貸したい人がいても買い手や借り手がいない状態になり、「家はあるのに、人がいない」という構図に。今後、人口がさらに減っていくと予想されているいま、人口減少による空き家の増加は避けられないといえます。
また日本の高齢化は、世界的にみても類を見ない速さで進んでいます。とくに昨今の日本では、若い世代は進学や就職を機に地元を離れて、都市部に定住するケースが増えています。親が亡くなったあと、実家を相続しても住む予定がない、管理がむずかしいといった理由で、空き家がどんどん増えてしまうのです。
相続問題と手続きの複雑さ
国土交通省の「空き家制作の現状と課題及び検討の方向性」によると、空き家の取得理由は、相続が最も多く全体の約55%を占めています。親から空き家を相続するにしても、相続登記、名義変更、税金手続きといったややこしい手間がかかるのは容易に想像できるでしょう。解体するにも、かなりのコストがかかるため、誰の管理下にもおかれないまま空き家化していくのです。
管理や活用が難しい
不動産価値を維持するためには、空き家の定期的な管理が欠かせません。とくに築年数の古い住宅の場合、空き家を活用しようにも大規模なリフォームが必須になることも。その費用は、数百万円単位になることもあります。空き家が遠方にある場合は、移動や手続きに時間と労力がかかります。そういったトータルコストを踏まえ、費用対効果を考慮すると、空き家を修繕するよりも新築を選択するケースも少なくありません。
放置することで起こる主な問題点
今は忙しいから…、空き家が遠方だから…と後回しにしていると、負債に変わるリスクがあります。
倒壊のリスク
不動産としての空き家は、人が住んでいない状態が続くと、劣化のスピードが速まります。たとえば、長期にわたって放置されている家は、換気不足により湿気が溜まったり、害虫により柱や土台が浸食されたりすることで、構造の強度を弱めてしまいます。台風や地震といった自然災害の影響で、屋根や壁が倒壊する危険性も高まるでしょう。
近隣トラブルの発生
庭に草木が生い茂って野生動物の住処になってしまったり、不審者の侵入・不法投棄の温床になったりすることで、近隣住民にとっては「早くなんとかしてほしい」という迷惑な存在に。空き家が発端で、通行人や近隣住民に危害を与えてしまった場合、空き家の所有者が損害賠償責任を問われるケースもあります。
税負担が増える
通常、住宅が建っている土地には固定資産税の軽減措置が適用されています。しかし、空き家を放置し続けて「特定空き家」に認定された場合、この軽減措置が解除されて固定資産税が6倍になる可能性があります。“特定空き家の予備軍”として勧告後に改善命令に従わない場合、行政代執行が実施され、その費用が所有者に請求されることになります。
空き家を所有している人がまず確認すべきこと

では、空き家を「どう管理・活用していくか」の道筋を描くためにはどのようなことを確認すれば良いのでしょうか。
名義・登記状況の確認と相続手続きの有無
まず確認すべきは、空き家の「権利」です。親が亡くなった後も名義が親のままというケースは非常に多く、その場合は売却や建て替え、解体といった法的な選択ができません。
法務局で「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得することで、誰の名義になっているかが分かります。最近では、法務省の登記情報提供サービスによるオンラインでのチェックも可能です。
もし登記名義が亡くなった親や祖父母のままであれば、相続登記が必要になります。2024年4月1日施行の改正不動産登記法により、相続登記は義務化されました。3年以内に行わないと10万円以下の過料が科される可能性もあるため、早めに確認しましょう。
建物状態と土地条件の確認
権利確認と並んで重要なのが、建物と土地の「現状」の確認です。屋根や外壁に破損がないか、シロアリやカビ、腐食などの被害がないか、庭木が越境していないかといった老朽化や危険性をチェックしましょう。
空き家を遠方に所有している場合や自己判断が難しい場合には、建築士や空き家管理サービスのプロに点検を依頼するのもおすすめです。
土地の広さや形状、電気・ガス・水道などの生活インフラが整っているかといった、活用や売却を考える上での基本情報も確認しておきましょう。また、建築基準法で接道義務を満たしていない場合、建て替えができないこともあります。必要に応じて、前面道路の幅や接道状況を確認しましょう。
空き家の活用・処分方法にはどんな選択肢がある?

空き家を上手く活用・処分するには、状況にあった選択がカギを握ります。ここからは代表的な3つの選択肢について、それぞれの特徴や注意点を解説していきます。
売却|市場価格と売れる空き家の条件
空き家の不動産売却を成功させるには、立地・築年数・設備といった条件の確認が不可欠です。たとえば、以下のようなチェックポイントが条件になります。
・立地
駅やバス停、スーパー、病院などが近くにあり、生活環境が整っている地域にある。
・築年数
築年数が浅く、建物の状態が比較的良好。劣化が少ない、またはリフォームの必要がなく、そのまま住める状態。
・インフラ
上下水道や電気、ガスが整備されている。
賃貸|収益化できるパターンと管理上の課題
空き家を賃貸として活用する場合、以下のようなパターンであれば収益化しやすいでしょう。
・長期賃貸
空き家を長期賃貸に出す方法。入居者が長期的に住み続けると、家賃収入の安定が見込める場合も。ただし、リフォーム費用が発生する可能性があります。
・短期賃貸
空き家を短期滞在向けの宿泊施設として運営する方法。たとえば、民泊やゲストハウスなど、旅館業法や条例による規制があるため、運営には法的な確認が必要です。一方で、宿泊客のトラブルや法規制の遵守といった運用上の手間がかかります。
・レンタルスペース
絵画や工芸品などを開催するギャラリーや、撮影のためのハウススタジオなど、レンタルスペースとして事業を展開する方法。集客の工夫やセキュリティ対策、貸し出し後の清掃などの管理が必要です。
解体・更地化|費用と補助金の活用可能性
空き家を活用する予定がなく、老朽化が深刻になっている場合は、思い切って解体して更地にするという選択肢もあります。これは、空き家放置による倒壊や苦情といった近隣トラブルを未然に防げるというメリットも。
ただし、解体にはそれなりの費用がかかります。木造住宅であれば、30坪程度の住宅で一般的に約90〜150万円が目安ですが、鉄骨造や鉄筋コンクリートの場合、さらに高額になることも考えられます。また、解体には建物だけでなく、庭木・ブロック塀・井戸などの処分費用も別途かかる場合も。
一方で、多くの自治体では、老朽化が著しい空き家に対して解体費用の一部を負担してくれる制度もあります。補助を受けたい場合は、補助金の目安や条件を、解体前に必ず市町村に問い合わせておきましょう。
空き家の管理・税金・リスクを放置しないために

まだ大丈夫と思って放置し続けていると、思わぬところで行政指導の対象になったり、税負担が重くのしかかったりすることも。「特定空き家」に指定された場合の影響や、固定資産税の増額リスクと住宅用地特例の注意点についても知っておきましょう。
空き家特措法の内容と「特定空き家」に指定された場合の影響
2015年に施行され、2023年にも改正が行われた空家等対策の推進に関する特別措置法、通称「空き家特措法」は、安全で快適な住環境の確保を目的に定められました。つまり、これまでは“私有財産で手が出せなかった”空き家に対して、法的根拠に基づいた行政措置ができるようになったのです。
放置された空き家のなかでも特に問題がある「特定空き家」に指定されると、市町村から助言・指導・勧告といった段階的な措置がおこなわれます。このような行政指導に従わない場合、最終的には命令という強制措置となります。
命令に違反すると、50万円以下の過料(罰金)が科される場合があります。さらに、命令すら無視して放置を続けると、行政が強制的に建物を取り壊す代執行をおこなうことができます。このときの解体費用は所有者に請求され、未払いが続けば土地や財産の差し押さえにつながる場合もあります。
固定資産税の増額リスクと住宅用地特例の注意点
土地や建物などの不動産を所有すると「固定資産税」を納める義務が生じます。評価額に応じて税金が決まりますが、住宅が建っている土地に対しては税負担を軽くするための「住宅用地特例」が設けられています。
たとえば
・200㎡以下の部分(小規模住宅用地) → 固定資産税が 6分の1 に
・200㎡を超える部分(一般住宅用地) → 固定資産税が 3分の1 に
ところが、特定空き家として「勧告」されると、住宅用地特例が適用外となり固定資産税から軽減措置が外れるため、税額が増えてしまうのです。
また、建物を解体して更地にした場合も、住宅用地特例は翌年から適用されなくなります。老朽化しているから壊しておこうと解体すると、土地の固定資産税が最大で6倍に増えるリスクがあるので注意が必要です。
アキサポなら空き家の売却・活用・管理までワンストップで対応可能

空き家をいずれ何とかしなきゃと思いつつ、現実的な対応に踏み出せていないというのはよくある話です。アキサポなら、売却・活用・管理まで一括でサポートします。空き家の価値を最大限に引き出し、条件にベストマッチする活用方法をご提案します。
売却査定・相続サポート・解体相談まで一括支援
売却査定や専門家による相続・名義変更のアドバイス、解体が必要かどうかを含めた現地調査など、空き家所有者さまの意向に応じてアシスト。総合的な現状把握と、さまざまな可能性を知り、後悔のない判断につなげましょう。
相談無料・オンライン対応もOK|まずはお気軽にお問い合わせを(CTA)
忙しくて空き家対策の時間がなかなか取れない…そんな方でもご安心ください。アキサポでは、オンラインでのご相談にも対応しています。まずはお気軽に専門スタッフへお話をお聞かせください。
まとめ|不動産としての空き家は放置せず「今すぐ相談」が将来の安心に

空き家を“とりあえず放置”は危険信号。空き家を不動産として活かすなら、早い段階でどうするかを考える必要があります。高く売却するタイミング、リフォームやリノベーションによる価値向上も期待できるでしょう。
放置=資産価値の目減り。早めの判断がカギ
不動産は管理していない時間が長いほど価値が下がっていくもの。見た目の劣化や内部の腐食、害虫や害獣による近隣トラブルなど、放置しているうちに資産価値がどんどん損なわれていく可能性があります。後回しにせず、早めの判断がカギ。空き家を適切に活用するために、未来の選択を一緒に考えませんか?
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。