公開日:2025.08.23 更新日:2025.08.04
NEW放置空き家とは?原因・リスク・行政対策を徹底解説

空き家問題は全国で深刻化しており、高齢化が進む地域では特に顕在化しやすい状況です。従来は家を相続しても比較的容易に活用先が見つかりましたが、近年は人口減少の影響で需要が減り、空き家を持て余すケースが増加しています。放置された空き家は景観の悪化や治安リスクを高め、地域にとって大きな課題となります。
放置空き家が増える背景には、相続登記の未了、管理責任の所在の不明確化、固定資産税の住宅用地特例の影響など多面的な要因があります。適切に管理されない場合、老朽化による倒壊や害虫の発生など、周辺環境に深刻な影響を及ぼすリスクが高まります。これを受け、各自治体は空家等対策の推進に関する特別措置法(通称「空家等対策特別措置法」)などに基づく対応を進めていますが、所有者一人ひとりの意識と行動が重要な鍵を握っています。
本記事では、放置空き家が増加する要因とリスク、特定空家制度や行政対応、空き家の有効活用方法について解説します。さらに、相続時に必要な手続きや注意点を整理し、放置を防ぐ具体的なステップを紹介します。これらを参考に、放置空き家が引き起こす問題を予防し、地域や資産を守るための対応を検討してください。
目次
放置空き家が増える背景|少子高齢化・相続問題・税制

近年、空き家が増加する要因には、少子高齢化や相続問題、税制上の優遇措置などが挙げられます。ここでは、その主な背景を解説します。
まず、少子高齢化の進行により人口が減少し、住宅需要が縮小していることが大きな要因です。子どもの数が減り、一戸建てやマンションを購入する人が少なくなると、相続した家屋を放置するケースが増えます。その結果、市場に中古物件が多く出回り、供給過多に陥る傾向が見られます。
相続問題も背景として重要です。相続人が複数いる場合、登記手続きや管理方法の合意が難しく、相続税の負担も大きいと感じられがちです。特に遠方に住む人や実家に戻る予定がない人にとって、定期的な管理や維持は負担になりやすいでしょう。
税制面では、固定資産税の住宅用地特例が空き家増加の一因と指摘されています。住宅が残る限り税負担が軽減されるため、解体せずに維持する選択が取られる場合があります。しかし老朽化が進むと、倒壊リスクや修繕費の増大など、結果的にさらに大きな負担を招く可能性があります。
放置空き家のリスクとデメリット

放置された空き家には多様なリスクが存在し、周辺地域や所有者に深刻なデメリットをもたらします。このセクションでは具体的なリスクを解説します。
空き家を長期間放置すると、建物の老朽化や不衛生な環境が進み、地域住民とのトラブルが起こりやすくなります。不法投棄やごみの散乱による景観悪化も無視できません。これらの影響は地域全体の地価に波及し、資産価値の低下を招く恐れがあります。
さらに放置空き家は自然災害に弱く、台風や大雨で屋根や外壁が損壊しやすい点も見逃せません。深刻な被害が出た場合、所有者に損害賠償責任が発生し、想定外の負担を負うことがあります。こうしたリスクは保険だけで十分に補償されない場合もあります。
行政が実施する調査で、老朽化が進んだ建物は特定空き家の候補として把握されます。特定空き家に指定されると固定資産税の優遇が外れるほか、勧告や命令など行政処分の対象となります。その結果、所有者のコスト負担が大幅に増える可能性があります。
近隣トラブル・衛生面の悪化・治安リスク
放置空き家があると雑草の繁茂やごみの堆積で、害虫やネズミの発生源となる恐れがあります。害虫の増加は住宅の被害を拡大させ、周辺住民から苦情が寄せられやすくなります。こうした衛生面の問題は地域コミュニティの価値を損なう要因となります。
また、窓や扉が破損していると不法侵入者が立ち入りやすくなり、犯罪リスクが高まります。夜間は特に放火や器物損壊など被害に遭いやすく、治安悪化の懸念が強まります。
さらに、長期間監視が及ばない空き家は違法行為の温床になりやすい点も問題です。管理が不十分なまま放置されると、内部で不適切な行為が行われても気づきにくく、地域住民の不安感を高める要因となります。
倒壊・浸水など災害時の損害賠償リスク
老朽化が進んだ建物は耐久性が低下し、地震や台風をきっかけに倒壊する恐れがあります。特に柱や梁が腐食していると、小さな揺れでも重大な損壊を起こす場合があります。
倒壊によって近隣の建物や通行人に損害を与えた場合、所有者は損害賠償責任を負う可能性があります。このような事態は金銭的負担に加え社会的信用の低下も招き、二次的な影響が大きい点に注意が必要です。
また、長期間の放置で排水設備が劣化し、豪雨で内部が浸水するケースもあります。浸水が進むと建物の耐久性はさらに低下し、解体や修繕に高額な費用がかかる恐れがあります。
固定資産税の増税や修繕コストの増大
特定空き家に指定されると、まず自治体から助言や勧告が行われます。勧告に従わない場合は命令に移行し、命令を無視し続けると行政代執行に至ります。行政代執行では解体・撤去が行われ、その費用は空家等対策特別措置法に基づき所有者に請求されます。
さらに、固定資産税の住宅用地特例が適用除外となることも多く、固定資産税の税負担が最大6倍に増加します。修繕を先送りするほど老朽化が進み、リフォームや撤去費用も増加します。さらに火災保険や地震保険に加入していても、リスクの上昇に伴い保険料が引き上げられる場合があります。結果的に空き家を放置するほど管理コストが増え、資産価値の維持に多額の支出が必要となる悪循環に陥りやすくなります。
特定空き家とは?指定される基準と行政対応

倒壊や衛生問題など周辺に悪影響を及ぼす空き家は、特定空き家として行政の指導や措置の対象となります。ここでは認定基準と対応の流れを解説します。
特定空き家とは、周辺の生活環境や安全に深刻な影響を与える恐れがあると認められる空き家を指します。倒壊リスクや不法投棄による衛生問題など、空家等対策の推進に関する特別措置法に定められた基準に基づき、さまざまな要素を総合的に判断して指定されます。同法に基づき、行政は助言、指導、勧告、命令、代執行を通じて所有者に対策を求めます。
指定されると所有者には早急な修繕や安全対策が求められ、改善が見られない場合はさらに命令や行政代執行が行われます。この段階に進むと負担が急増するため、放置せず早期に対応することが重要です。
行政側も問題解消のため、助言や支援体制を整えています。相談窓口や補助金制度を活用すれば、修繕や解体費用を抑えて対策を進められる場合があります。ただし、認定前に相談しておく方が望ましいといえます。
特定空き家に認定される流れ
まず自治体が老朽化の程度や安全性を調査し、著しく危険と判断される場合は候補となります。周辺住民からの通報や巡回によって発覚するケースも多いです。指定に際しては現地調査や写真など客観的資料が用いられます。
その後、自治体から所有者に連絡があり、建物の状況や対応意向を確認します。修繕の意思がなく放置が続く場合、特定空き家として正式に指定される流れに進みます。調査や通知を受けた段階で対策を検討することが重要です。
一度指定されると、勧告や命令が行われる前に自主的な対応が求められます。短期間で修繕や解体を行うかどうかが大きな分岐点となり、期限を超えると行政が強制措置を実施する可能性があります。
認定後の勧告・命令・税制優遇の除外
特定空き家に指定されると、まず自治体から勧告や助言が行われます。従わない場合は命令に移行し、無視が続くと行政代執行に至ります。代執行では解体・撤去が行われ、その費用は所有者に請求されます。
さらに、固定資産税の住宅用地特例が除外されることも多く、税負担が大幅に増加します。これにより長期放置していた負担が一気に顕在化する点は注意が必要です。
行政手続きが進む一方で、相談窓口や補助制度も用意されています。早期に相談すれば手続きの負担や費用増大を抑えられる可能性があります。しかし何もしないまま放置すれば、結果的に高額なコストを支払うリスクが高まることを意識しておきましょう。
空き家を有効活用するには?

放置空き家を防ぐには、早い段階から管理や活用の選択肢を検討することが重要です。ここでは具体的な方法を紹介します。
空き家を持て余している場合、まず考えたいのが適切な管理と定期点検です。巡回して換気や清掃、雑草の除去を行うだけでも老朽化や害虫被害を抑えられます。管理を専門業者に委託する方法もあり、費用はかかりますが安全性や安心感を確保しやすい利点があります。
資産価値を維持する観点では、修繕や改装を行って活用を検討する方法も有効です。売却や賃貸に限らず、カフェやゲストハウス、地域のコミュニティスペースへの転用など、事業活用の事例が増えています。自治体によっては空き家再生の補助制度が用意されているため、積極的に情報収集を進めることが重要です。
いずれの方法でも、老朽化が進んでいる場合は修繕や補強工事が必要です。築年数や劣化状況を確認し、専門家の助言をもとに最適な選択肢を検討しましょう。売却や解体も含め、総合的な視点で判断することが大切です。
空き家を売却・賃貸に出す選択肢
最も一般的な活用方法は、売却や賃貸に出すことです。不動産会社に仲介を依頼すれば、相場を踏まえた適正な査定が受けられます。魅力を高めるため、必要に応じてリフォームや清掃を行うことも検討しましょう。
売却時には譲渡所得税や登録免許税などの費用が発生するため、事前にシミュレーションが必要です。賃貸に出す場合は家賃収入が得られますが、維持管理や修繕責任が伴う点も考慮しましょう。
地域によっては需要が低く、買い手や借り手が見つかりにくい場合もあります。その際は価格調整や賃貸活用を検討し、柔軟に対応する必要があります。
リフォームやリノベーションによる再利用
空き家をリフォームやリノベーションして新たな価値を生む方法も注目されています。耐震性や断熱性を高め、快適な住空間に変える事例が増えています。
個人利用だけでなく、シェアハウスや店舗、観光拠点として改装する事例も多く、地域活性化につながるケースもあります。こうした取り組みには自治体の補助を利用できる場合があります。
ただし、リノベーション費用は建物の状態次第で大きく変わるため、事前調査が欠かせません。基礎や構造の問題を見落とすと後から高額な補修費が発生する恐れがあるため、専門家による確認と見積もりが重要です。
解体・更地化のメリットとデメリット
老朽化が激しい場合や活用が難しい場合は、解体して更地にする選択もあります。更地化すれば倒壊リスクや管理負担を大幅に減らせますが、住宅用地特例が適用されなくなり固定資産税が増加する点に注意が必要です。
解体費用は建物の規模や構造により変動し、古い建物ほど高額になる傾向があります。解体後は新たな建築や駐車場利用など活用の幅が広がりますが、土地の需要や用途を見据えた計画が欠かせません。
一方、利用計画が定まらないまま更地化すると、維持費だけが増える恐れがあります。市場ニーズを踏まえた判断が求められます。
空き家バンクやマッチングサービスの活用
自治体や民間が運営する空き家バンクやマッチングサービスに登録することで、購入や利用希望者と出会うチャンスが広がります。特に移住希望者向けの需要が増えています。
登録には物件情報や写真の用意が必要で、不動産会社に査定を依頼すると手続きがスムーズです。自治体によっては仲介手数料の助成を受けられる場合もあります。
空き家バンクは通常の市場とは異なる層とマッチングできる点がメリットです。ただし条件が合わなければ長期化することもあるため、情報更新や管理状況の見直しが重要です。
相続と名義変更|放置空き家を生まないための手続き

相続が発生した際、必要な手続きや名義変更を速やかに行わないと、結果的に空き家を放置する要因になります。放置空き家を未然に防ぐために重要なポイントを整理します。
相続が発生すると、まず相続人全員で財産分配を協議し、遺産分割協議書を作成する必要があります。不動産の相続人や管理責任が不明確なままだと、維持費や相続登記(名義変更)の調整が進まず、放置空き家状態が長期化しやすくなります。
合意が得られたら、不動産登記の所有権移転登記(相続登記)を速やかに行うことが重要です。相続登記を怠ると、売却や賃貸などの処分が滞るだけでなく、相続税や固定資産税の納税義務が不透明になり、トラブルを招きます。なお、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続の開始を知った日から3年以内に登記申請を行う必要があり、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となります。この義務化は過去に発生した相続にも適用されるため、まだ登記が済んでいない不動産をお持ちの方は注意が必要です。
また、遠方に住む相続人の場合は、定期的に物件を確認できず管理が行き届かないことが問題を深刻化させます。この場合、管理代行サービスの利用や地域の親族との連携など、早期に具体策を講じることが重要です。
早めに取り組むべき空き家対策の手順

空き家を任意のタイミングで処分や活用できるよう、事前に対策の手順を把握しておくことが重要です。以下に進め方の具体例を示します。
まず、家族や親族と話し合い、空き家になる可能性のある物件の扱いについて意見をすり合わせましょう。将来的に住む人がいるのか、売却や賃貸を検討するのかを共有することで、方針が決まりやすくなります。
次に、不動産会社や行政書士、税理士、司法書士、弁護士など専門家への相談を検討します。不動産の相場や法律知識を持つ専門家と情報交換することで、相続や登記手続きに関する不安を軽減できます。
加えて、解体やリノベーションの見積もり、税負担の確認を行い、複数の選択肢を比較検討することが重要です。放置すればコストが増大しリスクも高まるため、早めの判断と行動が空き家問題を防ぐ鍵になります。
親との話し合い・専門家への相談
所有者が高齢の場合、今後の資産や住居の意向を共有しておくと、相続時のトラブルを回避しやすくなります。生前贈与や遺言書の作成など、早期に専門家と連携することで相続発生後の手間が減ります。
また、実家に愛着がある場合は、どのように管理やリフォームを行うか具体的に話し合うのも有効です。感情面と経済面を両立する方針が家族にとって大きなテーマとなるでしょう。
専門家相談では、法的な視点だけでなく不動産価格やリフォーム費用の見通しなど多角的な情報を得ることが大切です。疑問点を事前に整理しておくと、必要な手続きや費用を明確に把握できます。
必要書類や費用の把握
相続登記には戸籍謄本や除籍謄本、被相続人の住民票除票などが必要です。取得には時間と手数料がかかるため、早めに準備すると手続きがスムーズです。
解体やリフォームを検討する場合は、複数の業者から見積もりを取って比較検討することが重要です。業者ごとに費用や工期、施工内容が異なるため、適正なコストで納得のいくサービスを選べます。
また、固定資産税や不動産取得税など税負担も事前に把握しておく必要があります。想定外の費用が発生すると資金計画に支障が出るため、余裕を持った予算設計でリスクを抑えることが大切です。
まとめ

放置空き家の問題を解決するには、早期の対策と計画的な管理が欠かせません。今後の手順やアクションを振り返り、具体的な行動に移しましょう。
空き家を放置すると、周辺環境の悪化や倒壊リスクだけでなく、所有者に経済的負担が大きくのしかかります。相続手続きや税金対策を早めに進め、余裕を持って対応することが重要です。
特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置が外れ、勧告や命令など厳しい措置を受ける恐れがあります。これを回避するためにも、早期に修繕・活用・解体など適切な対策を検討する必要があります。
また、放置空き家を生まないためには、家族や専門家との継続的なコミュニケーションが不可欠です。相続や名義変更の段階で将来の計画を明確にし、必要書類や費用を把握しておくことで、問題に迅速かつ的確に対応できるでしょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。