公開日:2025.08.26 更新日:2025.07.29
NEW【建築リサイクル】建設リサイクル法とは?対象・手続き・罰則まで徹底解説

建設現場で大量に発生する廃棄物を適切に処理し、再資源化を進めることは地球環境を守るうえで非常に重要です。建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)は、この課題に対応するために制定されました。同法は、工事規模や対象資材を定め、解体・建設における具体的な手続きを規定しています。
本記事では、建設リサイクル法の成立背景や具体的な対象資材、手続きの流れ、そして違反時の罰則まで、重要なポイントを分かりやすくまとめました。
目次
建設リサイクル法の背景と目的

まずは建設リサイクル法の基本情報を確認しておきましょう。
法制定の背景となった廃棄物問題と不法投棄
建設リサイクル法は、社会や建設業界における廃棄物問題の深刻化を受けて制定されました。その目的は、建設資材の再利用(建築リサイクル)を促進し、環境負荷を低減することにあります。
この法律が制定される以前は、建設現場から出る廃材が大量に埋め立てられたり、不法投棄される事例が後を絶ちませんでした。加えて、施設の処理能力を超える事態も発生し、住民の健康被害や景観の悪化など、社会的にも無視できない問題が顕在化しました。
こうした背景を受け、国土交通省が建設リサイクル法を制定。これにより、解体・建設現場での分別や再資源化が義務付けられ、より効率的な廃棄物管理が可能になったのです。
建築業界における環境負荷軽減の重要性
建設作業には多くの資源が必要になる一方、建築業界全体としては環境負荷の削減努力を行い、持続的な資源利用を目指す取り組みも重要視されています。特に、再利用可能なコンクリート塊や木材などの活用を推進し、地球資源の枯渇リスクを抑制することは、今後の環境保全において重要な役割を担います。さらに、再資源化の過程で生まれる新たな雇用や技術開発の可能性も見逃せません。
このような環境に配慮した建設プロセスを確立すれば、業界のイメージ向上にも直結し、市場競争力を高める起爆剤になるでしょう。
建設リサイクル法の対象と特定建設資材とは

建設リサイクル法の対象になる工事や特定建設資材にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に確認していきましょう。
工事規模や対象外となるケースの例
建設リサイクル法においては、一定規模以上の工事が適用範囲と定められています。具体的には、床面積が80平方メートル以上の解体工事や、500平方メートル以上の新築・増築工事などが該当します。これらの要件を満たす工事を行うためには、施工前に必要な手続きを行い、資材を分別解体しなくてはなりません。
一方で、工事規模が小さい場合や、対象となる特定建設資材をあまり使用しない改修工事などは、建設リサイクル法の義務対象から外れるケースがあります。ただし、対象外でも廃棄物の適正処理が不要になるわけではなく、廃棄物処理法など他の法令を踏まえた管理が必要です。
特定建設資材の種類
建築リサイクルの対象となる特定建設資材に指定されているのは、以下の4品目です。
- コンクリート
- コンクリート及び鉄から成る建設資材
- 木材
- アスファルト・コンクリート
これらは再利用の可能性が高い資材とみなされ、解体時に分別することで、再生砕石や再生木材など、さまざまな形でリサイクルすることができます。
工事関係者が押さえるべき手続きの流れ

工事の着工前から完了後まで、建設リサイクル法に基づいて必要な手続きは段階ごとに存在します。各段階で求められるポイントを確認しましょう。
工事着工前の説明と契約時に求められる対応
一般的には、工事着工前に分別解体等の計画書を作成し、自治体への届け出を行うことからスタートします。発注者と請負者の間では、特定建設資材の再資源化について事前に協議し、工事計画書や契約内容に明記しておくことが重要です。特に、解体工事で発生する廃棄物の処理費用や、再資源化プロセスの費用負担を明確にすることで、契約に関するトラブルを未然に防ぎやすくなります。
また、工事を行う周辺地域の住民に向けても、分別解体の内容や騒音・振動の対策などを説明しておくことも重要です。このような事前対応により、工事の透明性や信頼性が向上し、円滑な施工が期待できます。
届け出に必要な書類と提出先
届け出は、工事現場の所在地を管轄する自治体へ提出するのが一般的です。その際、工事内容や規模を記載した書類のほか、分別解体計画書などが必要となります。また、書類の中では、施工方法や各資材の処理方法、搬出計画なども具体的に示さなければなりません。
自治体によっては独自の提出フォームや電子申請システムを用意しているケースがあるため、スムーズな手続きのためにも事前に確認することをおすすめします。
分別解体・再資源化の実施ポイント
実際の解体作業では、コンクリートやアスファルト、木材などを素材ごとに適切に分別することがポイント。これにより、リサイクル事業者が再生砕石や再生木材などに加工しやすくなり、再資源化率が高まります。
さらに、分別解体等を行う作業員への適切な教育や安全対策を徹底することも重要です。現場での分別が徹底されていない場合、後工程での仕分けに時間とコストが増加するだけでなく、最終的には不適正処理や不法投棄につながる恐れもあります。
完了報告と記録の保管義務
工事終了後には、分別解体や再資源化をしっかり行ったことを証明するために、完了報告書の提出と保管が義務付けられています。
施工実績や実際にリサイクルされた資材の量などを正確に記録し、3年間保管しておくことで、後日トラブルが発生した際にも適正処理を行った証拠として提示することが可能。企業のコンプライアンス体制強化にもつながります。
違反した場合の罰則とリスク

法律違反が認められた場合、監督官庁からの営業停止命令や罰金納付など厳しい処分(例:20万円以下の罰金)を受ける可能性があります。また、自治体や業界団体からの不信感も高まり、社会的信用を大きく損なうリスクも。こうした事態を回避するためにも、日頃から関係法令を遵守し、適切な再資源化と書類管理を行うことが重要です。
建設リサイクル法の適用事例と今後の法的・政策的展望

近年では、大手ゼネコンが大規模な解体工事において高い分別解体率を達成し、再資源化された特定建設資材を新たな建築プロジェクトに採用する成功事例が増加。これらの事例は、環境負荷を抑制しつつ経済性も確保できることを明確に示しており、建築リサイクルのさらなる普及に貢献しています。
今後、国や自治体による再資源化率や廃棄物削減目標は、法的拘束力を持つ形でさらに強化される可能性も。関連する法改正や行政施策の動向には常に注意を払い、最新の法令に基づいた分別解体等の計画を策定することが、企業の法的リスク管理および持続可能な事業運営において極めて重要です。
建設リサイクル法と密接に関連する法律・制度:建築リサイクルを推進するために

建設リサイクル法を遵守するうえで、把握しておきたい関連法律についても確認しておきましょう。
まず、建設リサイクル法と密接に関連する法律として、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が挙げられます。同法は、廃棄物の排出抑制、適正な処理、生活環境の保全、および公衆衛生の向上を目的とする基本法です。具体的には、廃棄物の排出から保管、収集、運搬、再生、処分に至るまでの全プロセスに関するルールを定めており、特定建設資材以外の廃棄物の管理については、原則として廃棄物処理法の規定に従う必要があります。
また、建築物等の解体工事を実施する際には、建設業法に基づく建設業許可(解体工事業に限る)、または建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律に基づく解体工事業の登録が必須要件となります。これらの法的要件を満たし、かつ適切な技術力と実績を有する業者を選定することが、建設リサイクル法の適正な遵守において極めて重要です。
これらの関連する法的・制度的枠組みを総合的に把握し、適切に対応することで、法的リスクを低減しつつ、スムーズな行政手続きと円滑な工事進行を実現できるでしょう。
まとめ:建設リサイクル法の重要性と建築リサイクルの未来
建設リサイクル法は、解体工事や新築工事を行う上で極めて重要な法律です。特定建設資材の分別解体、自治体への届出、記録の保管など、各ステップを丁寧かつ確実に遵守することで、社会的責任を果たすだけでなく、事業活動の信頼性向上にも繋がります。
建設リサイクル法を正しく運用し、再資源化のメリットを最大限に活用することは、持続可能な建築産業への道をさらに切り拓くでしょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。