公開日:2025.09.16 更新日:2026.06.11
空き家特例(3,000万円特別控除)を徹底解説!令和6年以降の改正ポイントと要件・手続きを網羅
空き家特例(3,000万円特別控除)とは、相続した一戸建て住宅を売却する際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる税制上の優遇措置です。
親から相続した空き家をどうするべきか、処分のタイミングや税金の負担に頭を悩ませていませんか?中には、どこから手を付けていいかわからず放置してしまっている方もいるのではないでしょうか。
そんな悩みを軽減する制度が、最大3,000万円の特別控除が受けられる「空き家特例」です。一定の条件を満たせば、売却益から最大3,000万円の控除ができ、税負担を大幅に抑えることができます。
この記事では、空き家特例の基本や適用される要件をはじめ、具体的な計算例や、これから売却する際に押さえておきたい令和6年の法改正などを網羅的に解説していきます。
目次
空き家特例とは?空き家を売却する際に受けられるメリットは?

空き家特例(3,000万円特別控除)とは、相続した一戸建て住宅を売却する際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる税制上の優遇措置です。最大のメリットは、売却益にかかる所得税や住民税を大幅に軽減できる点にあり、売却益が3,000万円以下であれば譲渡所得税が実質ゼロになります。
この特例の大きなメリットは、売却益に対する税金を大きく減らせることです。たとえば、売却益が3,000万円以下であれば、特例を適用すれば所得税や住民税がかからなくなる可能性もあります。
この制度が登場した背景には空き家の増加という社会課題が大きくかかわっています。空き家が放置されてしまうと周辺環境の悪化を招くだけでなく、住宅の流通も滞ってしまうため、特例の活用は社会的意義のある制度でもあるといえるでしょう。
空き家特例が適用される要件
空き家特例の適用要件は、大きく「特例の対象となる家屋・敷地の条件」と「相続人に関する個別の売却条件」の2つに大別されます。主に昭和56年5月31日以前に建築された一戸建てであること、売却代金が1億円以下であること、相続から3年目の年末までに売却することなどが必須条件となります。
ここでは、それぞれが分かりやすいように、要件をリスト形式にして紹介します。
特例の対象となる家屋と敷地及び権利
| 対象項目 | 適用される主な要件 |
|---|---|
| 家屋の建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(区分所有建物登記を除く) |
| 家屋の登記状態 | 区分所有登記がされていないこと |
| 被相続人の居住状況 | 相続開始の直前まで、被相続人以外に居住者がいなかったこと(老人ホーム入所時は一定の要件あり) |
| 相続後の利用状況 | 相続開始後から譲渡時まで、事業、貸付、または居住の用に供されていないこと |
| 敷地および権利 | 相続開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地、またはその土地の上に存する権利であるこ |
特例の適用を受けるための個別の要件
| 要件の分類 | 具体的な適用条件 |
|---|---|
| 取得者の条件 | 相続または遺贈により、被相続人の居住用家屋と敷地等を取得した相続人であること |
| 売却の行為 | 家屋と敷地を同時に売却、または家屋をすべて取り壊した後にその敷地等を売却すること |
| 売却の期限 | 相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること |
| 売却代金の上限 | 売却した代金の総額が1億円以下であること |
| 他の特例との併用 | 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や、収用等の特別控除などの特例が適用されていないこと |
| 重複適用の排除 | この特例の適用を受けた同一の被相続人から相続した他の家屋や敷地がないこと |
| 親族間売買の制限 | 親子や夫婦などの特別の関係がある人に対して売却したものでないこと |
譲渡所得の計算方法と3,000万円特例の仕組み

次に、具体的な計算例を見ながら、空き家特例を適用する場合の計算方法を見ていきましょう。まず、譲渡所得の計算式は以下のとおりです。
- 譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 各種控除
空き家特例による3,000万円控除は「各種控除」の部分で取り扱います。この式を踏まえて、以下のようなケースを考えてみましょう。
譲渡所得の計算例
相続した空き家を更地にして4,000万円で売却したケース(取得費は不明なため概算取得費5%を適用)
| 計算項目 | 控除なしのケース | 空き家特例ありのケース |
|---|---|---|
| 売却価格 | 4000万円 | 4000万円 |
| 概算取得費(5%) | 制限マイナス200万円 | 制限マイナス200万円 |
| 譲渡費用(仲介手数料等) | 制限マイナス100万円 | 制限マイナス100万円 |
| 空き家特例の控除額 | 0円 | 制限マイナス3000万円 |
| 譲渡所得(課税対象額) | 3700万円 | 700万円 |
このように、空き家特例が適用されることで、最終的な課税対象額が大きく減少することが分かります。とくに取得費が不明な場合は「概算取得費(売却価格の5%)」で計算されることが多いため、控除の効果はより大きくなります。
2024年の空き家特例に関する法改正のポイント

空き家特例は2024年から法改正に基づく新たな制度が運用されています。これに伴い、制度の期限が2027年12月31日まで延長され、さらに以下の点が大きく変更されました。
- 買主が除却または耐震改修を行った場合も対象に
- 相続人が3人以上の場合は特別控除は2,000万円までに
この背景には、高齢化や相続の増加にともなう空き家問題の深刻化があります。制度の乱用を防ぎつつ、必要とされる人が公平に活用できるように「利便性」と「公正さ」のバランスを重視した改正を行った形です。
ここでは、今回の法改正でとくに注意すべき2つのポイントを解説します。
買主が除却または耐震改修を行った場合も対象に
また、これまでボトルネックになっていた、空き家の除却または耐震改修の工事を売主が行うべきという要件についても緩和が行われ、空き家の買主が翌年の2月15日までに除却または耐震改修の工事を行った場合においても特例措置の対象になるようになりました。
これらの改正により、以前よりも空き家を売却しやすくなり、より活発な空き家の流通が見込まれるようになりました。
相続人が3人以上の場合は特別控除は2,000万円まで
これまでは相続人の数に関係なく特別控除を3,000万円まで受けられましたが、2024年1月1日以降の譲渡からは、相続人の数が3人以上の場合、特別控除の額が最大2,000万円までに減額されました。
こちらは1,000万円分控除額が減ってしまうので、単純にデメリットといえます。相続税は法定相続人が多いほど基礎控除額が増えるので、心配な方はあらかじめ基礎控除やその他の控除制度を活用するプランを立てておいた方がよいでしょう。
空き家特例の提出先・提出期限・必要書類

確認書の申請先は、対象不動産の所在地を所管する市区町村役場です。窓口または郵送での申請が可能ですが、必要書類や処理期間は自治体ごとに異なるため、事前に問い合わせておくのが確実です。
また、書類の提出期限は確定申告期限となる、譲渡した翌年の3月15日までです。期限を過ぎると、たとえ全条件を満たしていても特例は適用されません。
初めて申請する方は、申告時に求められる添付書類の多さや記載ミスで想定以上に時間を取られることが多いため、早めにチェックリストを作って書類を整理しておきましょう。手続きが不安な場合は、税務署の事前相談窓口や税理士に相談しながら進めるとよいでしょう。
また、空き家特例を申請するためには以下のような書類が必要になります。添付資料は自治体や物件の状況によって変わることがあるため、先に申請先に確認しておきましょう。
主な必要書類
| 必要書類の名称 | 確認・証明される主な内容 |
|---|---|
| 譲渡所得の内訳書 | 確定申告書付表兼計算明細書として譲渡益や経費を計算したもの |
| 売った資産の登記事項証明書等 | 相続や遺贈の事実、および区分所有の事実がないことを証明するもの |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 売却した建物や土地の所在地の市区町村役場から交付を受けた確認書 |
| 耐震基準適合証明書等の写し | 譲渡日より2年以内に調査が終了し、現行の耐震基準に適合していることを証明するもの |
| 売買契約書の写しなど | 売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの |
空き家特例を受ける手続きの流れ
空き家特例を利用するためには、必要な書類を揃えて確定申告をする必要があります。一般的な流れは以下のとおりです。
対象不動産の所在地を所管する市区町村役場で「被相続人居住用家屋等確認書」を申請し、交付を受けます。
登記事項証明書、耐震基準適合証明書、売買契約書の写しなど、申告時に求められる各種添付書類を整理・取得します。
売却価格から取得費や仲介手数料(譲渡費用)などの明細を差し引き、正確な譲渡所得の計算と内訳書作成を行います。
売却した翌年の3月15日までに、作成した確定申告書と取得した確認書などの必要書類を一式揃えて税務署へ提出します。
制度を適用するうえで特に重要なのがスケジュール管理です。相続人が複数いるケースでは名義や持ち分の整理が必要になり、想定より時間がかかる恐れがあるため、早めに準備を始めましょう。
また、財産が複雑だと税理士や司法書士などの専門家に依頼する必要も出てきます。専門家を探すにも時間がかかるので、より早めに動き出しましょう。
空き家特例に関するよくある質問(Q&A)

空き家の管理状況は家族の都合や劣化具合などによって大きく変わるため、中には空き家特例を受けられるのか不安に思っている方もいると思います。そこでここでは、空き家特例に関するよくある質問を3つ紹介します。
Q1:土地と建物を別々に売却した場合は?
空き家特例の適用要件の一つに「相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること」という項目があるため、建物と土地は同時に売却することが原則となります。
もし、別々の時期に売却した場合、原則として本特例の適用対象外となるため、注意が必要です。
Q2:取り壊して更地で売却したらどうなる?
建物を取り壊し、更地の状態で売却した場合も、空き家特例の要件を満たせば適用可能です。ただし、この場合は以下のような点を書類や現況から確認する必要があります。
確認事項
事業の用、貸付けの用、又は居住の用に供されていないこと
確認書類
| 確認が必要な事項 | 提出を求められる主な確認書類 |
|---|---|
| 事業、貸付、居住の用に供されていないこと | 譲渡日が確認できる売買契約書のコピー、電気・水道・ガスの使用中止日が確認できる書類、現況が空き家かつ取壊し予定である旨を表示した宅建業者による広告、家屋取壊し後の閉鎖事項証明書 |
| 建物や構築物の敷地の用に供されていないこと | 家屋取壊し後の更地であることが分かる写真 |
Q3:耐震リフォームをして家付きで売却した場合は?
耐震リフォームをした建物を売却する場合、空き家特例の適用要件に「当該家屋が譲渡時において、その譲渡の日の属する年の2月末日までに現行の耐震基準に適合していること」が条件に含まれており、この基準を満たしている場合には売却が可能になります。
基本的に耐震リフォームは現行の耐震基準をクリアするように行われますが、空き家特例を使う際には、その事実を書面で証明する必要があります。耐震性を証明する書類としては、「建築士による耐震診断結果」や「耐震改修工事の実施証明書」などがあります。これらの書類は、特例の適用を受ける際に税務署へ提出する可能性があるため、必ず保管しておきましょう。
まとめ|空き家特例を賢く活用して譲渡所得の負担を軽減しよう
空き家特例によって譲渡所得の税負担を大きく減らすことができる制度です。上手に活用すれば、相続後の不安を減らせるだけでなく、さらにその後の活用や売却といった選択肢も描きやすくなります。税金が心配で一歩動き出せなかった人は、この制度をきっかけに空き家対策を始めてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。