公開日:2025.10.15 更新日:2025.09.29
NEW売れない土地を手放す方法とリスクを解説|早期処分・放棄の合法的手段

土地を所有していても、買い手が見つからず悩むケースは少なくありません。売却しても問い合わせがなく、周辺相場と価格差があるなど、売れない要因はさまざまです。
本記事では、売れにくい土地の特徴、早期処分の具体策、所有を続けるリスクとその解消策を、法的根拠とともに解説します。民法や不動産登記法などの法的制約、建築制限への対応策も実務的視点で整理します。
相続したが建築基準法で定める「接道義務」を満たしていない土地や、長期に売れない土地を持て余している方は、ぜひ最後まで読んでください。疑問や不安を解消し、効率的に土地を手放すヒントを得ましょう。
目次
売れない土地とは?代表的な特徴と注意すべきリスク

売れにくい土地には複数の要因が絡むため、相場や物件状態を正確に把握することが重要です。ここでは代表的な特徴を紹介します。
売れない土地とは、市場需要が低く、高値では買い手がつきにくい物件を指します。主な要因は価格設定や地理的条件に加え、民法や建築基準法による規制、再建築の可否などです。
さらに境界が曖昧だったり、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の疑い、災害リスクがある土地は買い手に敬遠されやすく、放置すれば管理コストが増大します。
一方で、価格調整や手続き次第で売れない土地が魅力的な物件に変わることもあります。まず以下の特徴を押さえ、自分の土地と照らし合わせて改善策を検討しましょう。
① 売却価格が高すぎる
相場より高すぎる価格設定では買主は関心を示しません。近隣相場を把握していないと希望価格が市場とかけ離れる恐れがあります。
相場以上の価格は長期売れ残りの原因となり、初期の注目時期を逃すと関心も薄れがちです。結果的に値下げを強いられる恐れもあるため、市場動向を踏まえ早期に適正価格を見極めることが重要です。
② 立地条件・利便性が悪い
売れない土地で多いのは、交通や周辺施設の利便性が低いケースです。駅や道路から遠く、生活必需施設が近隣にないと買主の利便性が下がります。
都市部では再開発や交通整備が進む一方、郊外や地方は人口減少で需要自体が少ない場合もあります。
ただし資材置き場や再生可能エネルギー特別措置法用地などの需要もあるため、地域特性とニーズのマッチングが重要です。
③ 再建築不可や土地の形状に問題がある
建築基準法で定める接道義務を満たさない土地や極端に狭い形状の土地は、建築用途が制限されます。
再建築不可は住宅用地価値が下がり買主の意欲も低下します。制限解除には行政との協議が必要な場合もあります。分筆や合筆で形状を整えれば売却しやすくなることもあり、将来の資産価値向上を考えるなら検討に値します。
④ 土地の境界が未確定でトラブルのリスクがある
境界未確定のまま売却すると、買主は将来の紛争リスクを警戒して敬遠します。隣地との境界紛争に発展する恐れもあります。
測量図が明確なら買主も安心ですが、曖昧だと測量費用や手間が発生し敬遠されやすくなります。境界確定は不動産登記法および筆界特定制度に基づき、早めに専門家を交えて行うのがおすすめです。
⑤ 土壌汚染・地中埋設物・災害リスク
土壌汚染や埋設物がある土地は、安全性に問題があるため買主にとって大きなリスクとなります。これらが発覚した場合、撤去や改良に多額の費用がかかることも少なくありません。
加えて、洪水や土砂崩れなどのリスクが高い地域では保険料が割高になりやすく、需要が下がる要因にもなります。こうしたリスクは、事前に調査と対策を講じたうえで情報を開示することで、買主の不安を和らげることができます。
売れない土地を手放す5つの具体的な方法

所有を続けるほど地方税法に基づく固定資産税や管理コストが増すため、早期処分を検討することが重要です。所有するだけでも維持費が発生し、使い道がなければ時間とともに家計を圧迫します。
さらに長期的に売れない場合、周辺環境の変化や災害リスクなど予期せぬトラブルに巻き込まれる恐れもあります。
ここでは、不動産買取、相続放棄、相続土地国庫帰属制度、寄付・贈与、仲介会社の見直しという5つの主な手放し方を紹介します。
① 不動産買取業者に直接買い取ってもらう
不動産買取業者に直接依頼すれば、仲介手数料なしで早期売却が期待できます。条件が悪い土地でも、業者の再活用ノウハウで買い取られる可能性があります。
ただし、仲介より価格は低くなりやすいため、スピードと価格どちらを優先するかを判断しましょう。複数社に査定を依頼すれば条件を比較でき、短期売却を目指す場合に有力な選択肢です。
② 相続放棄を検討する
相続人が土地を含む全相続財産を放棄すれば所有権を失います(民法)。管理負担は避けられますが、他の財産も全て放棄が必要です。
相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内と民法で定められており、期限を過ぎると放棄できません。迅速な判断が必要です。財産を失うリスクと放置リスクを比較し、専門家の助言を得て慎重に判断しましょう。
③ 相続土地国庫帰属制度を利用し国に返す
2023年開始の相続土地国庫帰属制度では、費用と審査を経て相続土地を国に引き取ってもらえます。再建築不可など条件で利用不可の場合もあるため事前確認が必須です。手数料や負担金はかかりますが、今後の固定資産税負担や管理責任から解放される利点があります。
活用見込みが薄い土地には有効な手段です。申請〜許可に時間がかかるため余裕ある計画が必要です。
④ 寄付・贈与で手放す
自治体・公共団体・NPO法人に寄付や贈与で土地を手放す方法もありますが、受け入れ側にメリットがなければ断られます。
学校用地や公共事業用地など用途が合えば受け入れ先が見つかる場合もあります。自治体方針に左右されるため事前確認が欠かせません。個人間贈与は相続税法(贈与税規定)に基づき課税対象となるため、税理士に相談しつつ進めましょう。
⑤ 不動産仲介会社の乗り換えを含め売り方を見直す
長期間売れない場合、担当会社や戦略に問題があることも。別会社や担当に切り替えれば新たな視点やネットワークで売却を加速できます。
他社で難しい土地も専門業者なら買い手が見つかる場合があり、広告やオンライン発信を見直すことも重要です。価格だけでなく再建築案や用途提案を打ち出せる業者を選ぶと売却可能性が高まります。
土地売却を成功させるために見直すべき重要ポイント

売れ残りを解消するには、適正価格設定や民法など法的問題の整理が欠かせません。
長期売れ残る土地は、市場とかけ離れた価格設定や建築基準法上の再建築制限など共通要因があります。これらを一つずつ解消するのが成功への近道です。
契約後のトラブル防止には、事前の測量・境界確定・土壌汚染対策法に基づく土壌調査が不可欠です。土地形状や法的制限がネックなら、自治体や専門家と協議して活用案を検討しましょう。
また、不動産会社と連携し、市場ニーズを踏まえて価格や戦略を柔軟に見直すことで、売却成功率を高められます。
売却価格の再設定と販売戦略
市場価格帯とのギャップを埋めることが売却成功の第一歩です。過去の成約事例や周辺相場を参考に適正価格を再設定しましょう。
売却戦略を多角的に見直すのも有効。オンライン広告強化、看板設置、SNSや地域コミュニティ活用などで認知度を高めましょう。
タイミングを逃さず柔軟に価格や戦略を変えれば、予想外の買い手が現れる可能性もあります。
土地の境界確定や測量の実施
買主に安心感を与えるには、境界線を明確にすることが重要です。測量を行えば将来トラブルを防ぎ、交渉もスムーズに進みます。
境界確定は不動産登記法および筆界特定制度に基づき専門家に依頼する必要がありますが、将来紛争を防げると考えれば有意義な投資です。隣地との争いは消耗するため早めに対応しましょう。
境界確定図や測量図を提示できれば信頼性が高まり、買い手の検討意欲も向上するでしょう。
再建築不可の解消・分筆などの具体策
一度再建築不可とされた土地は建築基準法により制限されますが、自治体と協議し道路新設や隣地と一体開発するなど、まれに制限解除の余地もあります。
変形地は分筆して複数区画にすれば活用範囲が広がり、売却しやすくなることもあります。分筆には測量や不動産登記法に基づく分筆登記が必要ですが、買い手には魅力的に映ります。
専門家と相談し長期視点で土地を再構築することで、売却価格を引き上げられる可能性もあります。
所有し続けるリスク|土地を手放さない場合の影響

使い道のない土地を所有し続けると、コスト面・トラブル面で大きなリスクを抱えます。
利用価値の低い土地を長期保有すると地方税法や管理費がかさみ、費用対効果は低下します。特に建築基準法上の再建築不可や需要の薄い立地は負担が増す一方です。
また、放置が続くと防犯・衛生面の問題から近隣トラブルに発展しやすく、雑草や不法投棄など小さな問題が大ごとになることもあります。
所有リスクを認識し、早期に現状を打開する方法を検討することが大切です。
固定資産税などのランニングコストが増え続ける
土地は未利用でも地方税法が課され、所有年数が長いほど総コストが膨らみがちです。都市部など地価が下がりにくい地域は特に負担が重くなります。
更地でも課税評価は下がらず、資金余裕のない相続人ほど土地を手放せず負担が重くなりがちです。将来のライフプランや収支を考えると、不要な負担は早めに減らすべきです。
管理が行き届かず損害賠償リスクが高まる
定期的な草刈りや清掃を怠ると、雑草や害虫、不法投棄が発生し景観を損ねます。
不法侵入事故や火災、崖崩れなどが起きた場合、所有者は民法に基づき管理責任を問われ、損害賠償を求められる可能性もあります。こうしたリスクを考えると、土地を手放すか活用するかを早期に決断すべきです。
早期処分前に確認!売れない土地を高く売るためのコツ
売れづらい土地でも、売却前に一手間加えれば魅力が向上する場合があります。
需要が低い土地でも、用途を明確にし買い手の懸念を解消すれば、取引成立につながります。特に地中埋設物や土壌汚染対策法に基づく土壌汚染リスクを調査し、安全性を確認できれば買い手の関心は高まります。
また家庭菜園や資材置き場など使用例を示すだけでも価値を感じてもらいやすくなります。事前に調整・改善を行うほど土地の印象は良くなり、交渉でもプラス要素となります。
地中埋設物の撤去や土壌汚染調査を事前に行う
土地の安全性を示すためには、地中埋設物の撤去や土壌汚染対策法に基づく土壌汚染調査結果を示すことが有効です。
これにより買い手が後から負う費用やリスクを減らせます。
事前調査は費用がかかりますが、安全性が客観的に確認された土地は市場評価が高まり、特に商業・工業用地では土壌汚染の有無が大きな懸念材料です。
調査結果は買主への信頼材料となり、早期売却にも有効です。
活用アイデアを提示して買主にメリットを示す
活用が難しそうな土地でも、アイデア次第で買主に利用価値を感じてもらえます。
駐車場や資材置き場、再生可能エネルギー特別措置法に基づく太陽光発電設備などの事例を示すと検討の幅が広がります。立地特性を活かした経済的メリットや将来の再開発可能性を示すのも有効です。
写真や図面を活用し買主が想像しやすい形で提案しましょう。活用アイデアは交渉での差別化要素となり、使い道を具体的に示すことで買主の心を動かしやすくなります。
売れない土地に関するよくある質問と基本知識

土地に関する法制度や手続きは複雑でわかりにくく、実際に手放そうとすると相続や登記などの手続きでつまずくことも少なくありません。特に民法に基づく相続放棄や、相続土地国庫帰属制度といった制度は要件が細かく、混乱しやすい分野です。
本セクションでは、よくある疑問を一問一答形式で整理します。あくまで一般的な解説のため、最終的な判断は専門家へ相談することをおすすめします。
Q1:相続放棄と相続土地国庫帰属制度の違いは?
相続放棄(民法)は、すべての相続財産を一括して放棄する制度であり、特定の土地だけを切り離して手放すことはできません。
そのため、ほかに相続したい財産がある場合は慎重な判断が必要です。
一方、相続土地国庫帰属制度による制度は、一定の要件を満たす土地のみを国に帰属させる仕組みです。審査や費用負担はあるものの、他の財産を手放さずに土地だけを処分できる点が大きな違いといえます。
どちらの制度にも長所と制約があるため、条件適合や手続き方法を事前に確認し、比較検討することが欠かせません。
Q2:自治体へ寄付できる土地の要件とは?
自治体は、道路拡張や公園整備、学校や医療施設の建設など、公共性の高い用途に活用できる土地を優先して受け入れる傾向があります。
ただし、財政状況や周辺環境、維持管理コストの問題から寄付を断られることも少なくありません。土地の立地や将来的な利用価値といったメリットを丁寧に示し、自治体側が受け入れる理由を明確にすることが重要です。
最終的には自治体の判断によるため、早い段階から相談し、必要な書類を整えておくとスムーズです。
Q3:土地を売り出しても全く買い手がつかない場合は?
まずは価格設定を見直したり、測量や土壌調査を行ったりして、買い手が敬遠している要素を取り除くことが大切です。雑草やゴミを撤去し、道路状況や最寄り駅からのアクセスを丁寧に情報提供するなど、地道な工夫も効果を発揮します。
不動産会社の乗り換えや買取業者への依頼も検討材料となります。それでも売れない場合は、相続土地国庫帰属制度や寄付・贈与を考えることも視野に入れるべきでしょう。
大切なのは、行き詰まっている原因を正しく把握し、解決策に向けて行動することです。根本的な問題を解決すれば、買い手が現れる可能性は十分あります。
まとめ
売れない土地を放置すると地方税法に基づく固定資産税負担や管理リスクが増す一方です。不要な土地は条件を見直し、早めに手放す検討が必要です。
売れない土地の要因は価格設定や利便性、建築基準法による再建築制限や境界未確定など多岐にわたりますが、問題を把握し適切に対策すれば売却・処分の可能性は広がります。
建築基準法上の再建築不可でも分筆や用途転換で活用幅が広がる場合があり、相続土地国庫帰属制度を使って公的に手放すのも有効です。所有リスクと比較しながら最適な手段を選びましょう。
時間が経つほど地方税法に基づく固定資産税や維持管理の負担は増えていきます。早めに動き、専門家と連携して売却や転用の可能性を探る行動力が何より大切です。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。