公開日:2020.07.14 更新日:2026.06.24
相続放棄の手順と必要書類|メリット・デメリットも解説
相続放棄とは、被相続人の財産・負債のすべてを相続しないことを家庭裁判所に申述する法的手続きです(民法第938条)。相続開始を知った日から3か月以内に申述しないと、原則として相続したものとみなされます。
住む予定のない空き家を相続することになり、固定資産税などの維持費負担を避けたいと考えている方の選択肢のひとつです。ただし、相続放棄はプラスの財産も含めてすべての相続権を手放すことになるため、慎重な判断が必要です。
本記事では、空き家を相続する場合の相続放棄の概要・メリットとデメリット・手続きの流れを具体的に解説します。
相続放棄とは何か?

相続放棄とは、被相続人が遺したプラス・マイナス両方の財産に対するすべての権利を引き継がないことです。家庭裁判所への申述が必要な法的手続きで、相続の開始を知った日から原則3か月以内に申し立てなければなりません(民法第938条)。
一度相続放棄をすると、不動産・現金などのプラスの資産だけでなく、借金などのマイナスの資産に関する権利もすべて失います。
相続放棄と財産放棄(遺産放棄)の違い
相続放棄は「相続する権利そのものを放棄する」手続きです。一方、財産放棄(遺産放棄)は「相続した財産を手放すこと」を指し、遺産分割協議の中で自分の取り分を放棄する行為です。
重要な違いとして、財産放棄はプラスの財産のみを手放す行為であり、負債などのマイナスの義務は引き続き負う可能性があります。負債から逃れたい場合は、相続放棄の申述が必要です。
相続放棄で対象となる財産
民法第896条に基づき、相続の対象は以下のとおりです。
【プラスの財産】
- 不動産(土地・建物)とその所有権
- 現金・預貯金・金銭債権
- 車・家具・事業用設備
- 著作権・特許権などの各種権利
【マイナスの財産(義務)】
- 借入金・ローンの返済義務
- 未払い金の支払い義務
- 他人の債務に対する保証義務
相続放棄のメリット
①負債を相続しなくて済む
被相続人に借金があり、財産よりも負債額が大きい場合は相続放棄が有効な選択肢です。返済遅延による遅延損害金や連帯保証人としての義務も相続されるため、明らかにマイナスの場合は早めに判断しましょう。
②相続問題に巻き込まれない
相続放棄をすれば遺産分割協議への参加義務がなくなり、他の相続人との交渉や連絡に対応する必要もなくなります。相続人間のトラブルを避けたい場合にも有効です。
③管理費がかかる不動産を相続しなくて済む
遠方の山林・農地・空き家などを相続すると、管理費用が継続的に発生します。住む予定のない空き家は土地の資産価値が低い場合、解体費用が売却益を上回るリスクもあります。こうした負担を避けるためにも、相続放棄は有効な手段です。
相続放棄のデメリット

①限定承認が使える場合は損をする可能性がある
負債額が不明確な場合は「限定承認」も検討できます。限定承認は、相続した資産の範囲内でのみ負債を負う制度で、残したい遺産を「先買権」で確保することも可能です。ただし相続人全員の同意が必要なため、手続きハードルが高い点に注意が必要です。
②プラスの財産も含めてすべてを手放すことになる
相続放棄をすると、プラスの財産も含めてすべての相続権を失います。被相続人と同居していた場合、他に相続人がいなければ住む場所を失うリスクもあります。不利な遺産だけを選んで手放すことはできないため、保有したい財産がある場合は慎重に検討しましょう。
相続放棄の具体的な方法
相続放棄の手続きは以下の4ステップで完了します。全体で1か月程度かかるのが一般的です。
相続放棄の4ステップ
なお、申述は相続の開始を知った日から原則3か月以内に行う必要があります(民法第938条)。期限を過ぎると原則として相続したものとみなされるため、早めに準備を始めましょう。
①必要な書類の収集
相続放棄に必要な書類は、相続人と被相続人の関係性によって変化します。
| 申立人と被相続人の関係 | 必要な書類 |
|---|---|
| 全員共通(基本3書類) | 相続放棄申述書・被相続人の住民票除票または戸籍附票・申立人の戸籍謄本 |
| 配偶者 | 基本3書類+被相続人の死亡を証明する戸籍謄本 |
| 子・孫 | 基本3書類+被相続人の死亡を証明する戸籍謄本(孫の場合は本来の相続人の死亡証明も) |
| 両親・祖父母(直系尊属) | 基本3書類+被相続人の出生〜死亡時の戸籍謄本・子や直系尊属に死亡者がいる場合はその戸籍謄本 |
| 兄弟姉妹・甥姪 | 基本3書類+被相続人の出生〜死亡時の戸籍謄本・子や直系尊属の戸籍謄本(甥姪の場合は本来の相続人の死亡証明も) |
いずれの場合も必要な書類は以下の3つです。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申立人の戸籍謄本
②家庭裁判所に相続放棄申述書を提出
書類が揃ったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
申立人本人が手続きを行うのが原則ですが、未成年者の場合は親権者が代理人として申し立て可能です。 申し立ては「自己のために相続の開始があったことを知った日」から3か月以内(熟慮期間)に行う必要があります。
疎遠だった被相続人の死亡を後から知った場合は、その知った日が起算点となるため、死亡から3か月が過ぎていても申し立てができるケースがあります。
③家庭裁判所からの照会書に返信する
申し立て受理後、約10日で裁判所から照会書が届きます。相続放棄の意思を確認する最終確認書類です。必要事項を記入して裁判所に返送してください。
④相続放棄申述受理通知書を受け取る
照会書の返送からさらに約10日で「相続放棄申述受理通知書」が届き、正式に相続放棄が認められます。この通知書は再発行不可のため、大切に保管してください。紛失した場合は「相続放棄申述受理証明書」を別途取得することができます。
まとめ
相続放棄は、負債の多い遺産や維持費のかかる空き家を相続しないための有効な手段です。ただし、一度申述するとプラスの財産も含めてすべての相続権を失うため、慎重な判断が求められます。
主なポイントを整理すると以下のとおりです。
- 申述期限は相続の開始を知った日から原則3か月以内(熟慮期間)
- 負債額が不明な場合は「限定承認」も選択肢になる
- 空き家だけを選んで放棄することはできない
- 手続きは家庭裁判所への申述書提出から受理通知書受け取りまで約1か月
相続放棄を検討している方も、「手放す前に活用できないか」と迷っている方も、まず一度専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄をしなくても、空き家は活用できます
住む予定のない空き家でも、賃貸活用・売却・リノベーションによって収益化できるケースは少なくありません。「どうすればいいかわからない」という段階からでも、アキサポにご相談いただけます。
アキサポでは、費用面のハードルを抑えながら空き家のリノベーションと賃貸活用をサポートしています。相続放棄すべきか迷っている方も、まずはお気軽にご連絡ください。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。