公開日:2025.10.17 更新日:2025.09.26
NEW不動産売却にかかる税金を徹底解説!計算方法から節税対策、注意点まで紹介

不動産売却には、譲渡所得税や住民税、印紙税、登録免許税など、想像以上に多くの税金がかかります。これらの税金を事前に把握しておかないと、資金計画が大きく狂ってしまうこともあります。
この記事では、不動産売却時に関わる税金の種類から計算方法、節税の特例や確定申告の注意点まで幅広く解説します。不動産を賢く売却するためのヒントとして、ぜひお役立てください。
目次
不動産売却にかかる主な税金の種類と概要

不動産売却を決めたら、まず「どんな税金がかかるのか」を把握することが重要です。主な税金は、大きく分けて以下の4つです。
- 印紙税:売買契約書に貼付する税金
- 登録免許税:所有権移転登記など、登記手続きにかかる税金
- 譲渡所得税・住民税:売却益(譲渡所得)に課される税金
- 消費税:仲介手数料や建物にかかる税金
これらの税金は、それぞれ計算方法や支払うタイミングが全く違います。たとえば、契約時に現金で支払うものもあれば、翌年の確定申告で精算するものもあります。
そのため事前に把握しておかないと、資金繰りに困ってしまうことも。ここでは、それぞれの税金の仕組みや注意点を整理して解説します。
印紙税:売買契約書に必要な税金
印紙税は、不動産売買契約書などの課税文書を作成する際に収入印紙を貼付して納める国税です。契約金額に応じて税額が決まり、金額が高いほど負担も大きくなります。
たとえば1,000万円を超える契約では1万円以上の印紙税が必要になるケースもあります。数千万円や1億円を超える高額物件なら、さらに大きな額になるでしょう。
また、一定の期間には軽減措置が設けられることもあり、契約のタイミング次第で税負担を抑えられる可能性があります。契約書を交わす前には必ず最新の印紙税額を確認しておきましょう。
登録免許税:名義変更にかかる税金
登録免許税は、不動産の名義変更や抵当権設定といった登記を行う際に課される税金。所有権移転を公的に証明するため不可欠であり、売却時に避けて通れない手続きです。
税額は不動産の評価額や登記の種類に応じて変動し、住宅用地と事業用地で税率が異なることもあります。一般的に、売却後は買主への名義変更でこの税金が発生しますが、誰が負担するかは契約内容によって異なるため、売買契約書や重要事項説明書であらかじめ確認しておくことがトラブル防止につながります。
譲渡所得税・住民税:売却益に応じて課税される税金
不動産を売却して利益が出た場合、その利益は譲渡所得として課税対象になります。所得税と住民税は、給与所得などの他の所得とは分離して計算される「分離課税」方式で課税される点が特徴です。
譲渡所得は「総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で求められ、譲渡した年の1月1日時点での所有期間によって、短期譲渡所得(所有期間5年以下)と長期譲渡所得(所有期間5年超)に区分されます。
短期と長期では税率が大きく異なるため、所有期間をしっかりと確認しましょう。なお、納付は売却翌年の確定申告時に行います。急な出費で慌てることのないよう、資金計画に余裕を持って進めましょう。
消費税:仲介手数料などにかかる税
土地そのものの売買には消費税はかかりませんが、建物や仲介手数料、司法書士への報酬などには消費税が課税されます。契約前にこの点を踏まえて費用を計算しておくことが大切です。
宅地建物取引業者などの事業者が売主となる場合や、事業用の不動産を売却する場合には、不動産の売買自体が消費税の課税対象となることがあります。
さらに、消費税率が引き上げられると仲介手数料への課税額も自動的に上がります。将来的に増税が見込まれる場合は、そのタイミングを踏まえて売却戦略を考えましょう。
その他費用:譲渡費用・測量費なども要チェック
不動産売却では、税金以外の諸費用も発生します。代表的なのが譲渡費用で、仲介手数料や広告費など売却に直接関わる支出が含まれます。
また、土地売却の際には境界を確定させるために測量士へ依頼する測量費が必要になることもあります。これらの費用の一部は譲渡所得の計算時に控除可能ですが、リフォーム費用のように経費算入できないものもあります。
どの費用が経費に含まれるのかをきちんと確認しておくことで、余計な負担の回避につながるでしょう。
不動産売却における譲渡所得の計算方法と税率

不動産の売却で得られる譲渡所得は、取得費や譲渡費用をしっかり把握することで正確に算出できます。さらに、所有期間によっては大きく税率が変わる点にも注目が必要。売却益の計算方法や適用される税率を理解していないと、思わぬ税負担に驚かされることもあります。
ここでは譲渡所得の算出式や特別控除、さらに所有期間による税率の違いを整理し、計画的な売却判断につなげるための基本を解説します。
譲渡所得の求め方:取得費・譲渡費用・特別控除
譲渡所得は「譲渡収入-(取得費+譲渡費用)-特別控除」という式で求めます。取得費には、不動産の購入代金だけでなく、売買契約書に記載される仲介手数料や司法書士報酬、登録免許税など購入時にかかった関連費用も含まれます。不動産取得税や固定資産税精算金も取得費として計上できます。
特別控除の代表例は、居住用財産を売却した際の3,000万円特別控除です。居住用財産として一定期間使用していた物件であれば適用でき、この控除を使うことで課税額を大幅に軽減できます。
注意点としては、複数の特例を重複して適用できないケースがあります。国税庁のサイトや専門家のアドバイスを活用しながら、自身に合った制度を選びましょう。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違い
所有期間が5年以下の不動産を売却した場合は「短期譲渡所得」となり、所得税30.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%)、住民税9%が課税されます。
一方、5年を超える不動産の売却は「長期譲渡所得」として扱われ、所得税15%、住民税5%が適用されます。
このように所有期間の長短によって税率は大幅に変わり、売却益が同じでも負担額に数十万円単位の差が生じることも。可能であれば長期保有を前提に売却を検討し、自分にとってベストなタイミングを見極めましょう。
不動産売却の税金はいつ支払う?支払いタイミングと注意点
不動産売却で発生する税金は、売却直後にまとめて支払うのではなく、原則として翌年の確定申告時期に納付する流れになります。譲渡所得税や住民税は、売却益を計算し確定申告で申告したうえで支払うため、すぐに資金が必要になるわけではありません。
ただし、印紙税や登録免許税といった費用は、売買契約書の作成時や登記の段階で支払いが求められます。
さらに、利益が大きく出る場合には仮納税や追加納付が必要になるケースもあるため、税理士など専門家へ事前に相談しておくと安心。納税時期を誤ると延滞税や追徴課税につながる可能性があるため、余裕をもった資金計画をしましょう。
具体例で学ぶ!不動産売却時の税金シミュレーション

不動産売却でかかる税金は、所有期間や売却益の大きさによって大きく変動します。制度を理解していないと「こんなに負担があるのか」と驚くことも少なくありません。
ここでは、所有期間5年以下のケースや購入価格が不明なケース、相続した不動産を売却するケースなど、実際に起こりやすい具体例を挙げながら、税額シミュレーションを紹介します。
所有期間5年以下のケース:短期譲渡での税負担
所有期間が5年以下の不動産は「短期譲渡所得」となり、高い税率が適用されます。たとえば売却益が1,500万円なら、所得税30%と住民税9%を合わせた39%が課税対象です(復興特別所得税を除く)。
この場合、税額だけでおよそ600万円となり、想定以上の出費に直面する可能性があります。売却を急がないのであれば、長期譲渡に切り替えられる時期を待つことで節税につながることもあります。
ただし、資金が早急に必要な場合には短期売却を選ばざるを得ません。その場合は、譲渡費用や特別控除が適用できるかどうかを確認してから契約を進めるのが理想的でしょう。
所有期間10年以上のケース:長期譲渡での税負担
所有期間が譲渡した年の1月1日時点で10年を超える物件を売却する場合、特定の条件を満たせば「居住用財産を譲渡した場合の10年超所有軽減税率の特例」が適用される可能性があります。この特例は、原則として3,000万円特別控除と重複して適用できます。
これはマイホームの売却に限られますが、税率が通常の長期譲渡よりもさらに低く抑えられるため、節税効果が大きいのが特徴です。
具体的には、課税対象額に応じて優遇税率が適用され、計算結果によっては数十万円単位の節税が期待できることもあるでしょう。
ただし、譲渡所得がマイナス(譲渡損失)となった場合でも、他の所得との損益通算や繰越控除の特例を受けるためには確定申告が必要です。賃貸に出していた期間が長い場合などは対象外となるケースもあるので注意しましょう。
購入価格が不明な場合の取得費の計算方法
相続などで取得した不動産の場合、購入当時の契約書や領収書が見つからず、取得費が不明なケースは珍しくありません。このような場合、概算取得費として、売却価格の5%を取得費とすることが認められています。
ただし、実際の購入価格が不明な場合、この概算取得費は実際の購入価格よりも大幅に小さくなることが多く、結果として譲渡所得が大きく算出され、その分課税額が増える可能性があります。可能な限り過去の資料や取引記録を探し出し、正確な取得費を計上できるように努めましょう。
資料が見つからない場合は、購入当時に関与した不動産会社や司法書士に問い合わせるなど、あらゆる方法を検討しましょう。わずかな差でも最終的な税負担に直結するため、慎重な対応が求められます。
相続した不動産を売却する際の税金と特例
相続した不動産を売却する場合、所有期間の計算は被相続人が不動産を取得した日から引き継がれます。このため、長期譲渡所得の条件である5年超を早期に満たせるケースがあります。
また、相続税を納めている場合、その金額を取得費に加算できる相続税の取得費加算の特例があり、譲渡所得を減らして課税額を軽減できる可能性もあります。
さらに、相続した不動産が共有名義の場合は、共有者全員の同意と書類手続きが不可欠です。税金面だけでなく、手続きの煩雑さも相続物件の売却に伴う大きな課題といえるでしょう。そのため早めに税理士や不動産会社に相談するのがおすすめです。
節税につながる控除・特例制度を最大限活用しよう

不動産売却では高額な税金が発生することがありますが、控除や特例制度を賢く利用すれば負担を大幅に減らすことが可能です。
代表的なのは、居住用財産を売却した際に適用できる「3,000万円特別控除」や、所有期間が10年以上の物件に認められる「軽減税率の特例」です。これらを上手に活用すれば、売却時のコストを抑えられるでしょう。
さらに譲渡損失が出た場合には、損益通算や繰越控除を利用して他の所得と相殺できるケースもあります。住宅ローンを利用している方であれば「買い替え特例」によって、所得税や住民税を軽減できる可能性もあります。
ただし、いずれの制度も適用条件や申請期限が細かく決められており、手続きを怠ると本来受けられる減税が無効になることがあります。最新の制度内容をこまめにチェックし、必要な書類を整えて計画的に活用しましょう。
確定申告の手続きと必要書類|申告漏れを防ぐポイント

不動産を売却し、譲渡所得がプラスとなった年の翌年には確定申告が必要になります。ただし、譲渡所得がマイナス(譲渡損失)となった場合でも、特例の適用を受けるためには、損益通算や繰越控除の確定申告が必要です。
申告を怠ると無申告加算税や延滞税が発生するリスクがあるため、期限内に正確な書類を提出しましょう。ここでは、必要書類の種類や申告の流れを整理していきます。
申告に必要な主な書類一覧
確定申告で準備すべき代表的な書類がこちら。提出時にコピーが必要になるので、原本とセットで保管しておきましょう。
・譲渡に関する書類(不動産売買契約書、仲介手数料の領収書など)
・取得に関する書類(取得時の売買契約書、建築請負契約書、仲介手数料の領収書など)
・税金関連の書類(固定資産税の納税通知書、不動産取得税の領収書など)
・登記関連書類(登記簿謄本など)
加えて、3,000万円特別控除や軽減税率の特例を利用する場合には、居住用財産だったことを証明する住民票や各種証明書も必要です。書類の不足は申告漏れにつながりやすいため、疑問点は税務署や税理士に確認しておくと安心です。
なお、申告書には分離課税用の第三表を使用するため、事前にチェックリストを作っておくとスムーズ。忙しい時期でも漏れなく準備できるでしょう。
確定申告の流れと注意点:期限厳守でスムーズに進める
確定申告は、原則として例年2月16日から3月15日までの期間に行われます。期限直前になると税務署が混雑するため、早めに準備を始めましょう。
特に不動産売却では取得費や譲渡費用の証明、特例適用の根拠資料など必要な書類が多く、記載ミスや添付漏れがあれば修正申告や追加納税が必要になることもあります。
申告はオンライン(e-Tax)でも可能。昨今は書類を電子データで提出する方法が広がっています。ただし電子申告であっても不備があれば指摘されるため、事前の確認を怠らず、正確さを優先して進めましょう。
不動産売却の税金を理解し、賢く取引を進めましょう
不動産売却にかかる税金は種類も多く、所有期間や売却益によって負担額が大きく変わります。譲渡所得税・住民税では取得費や特別控除の有無が重要であり、印紙税や登録免許税は契約段階で必要となります。
さらに、確定申告で控除や特例を活用すれば大幅な節税につながることもあります。誤解や申告漏れは余計な出費の原因になりかねません。資金計画と合わせて、制度や仕組みを正しく理解して、安心できる不動産売却を実現しましょう。
不動産売却の税金や空き家の活用はアキサポへ
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この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。