公開日:2025.06.13 更新日:2026.07.22
長期譲渡所得の税率は20.315%|計算方法と空き家の特例を解説
長期譲渡所得とは、所有期間が5年を超える土地や建物を売却して得た利益のことで、税率は所得税・住民税・復興特別所得税をあわせて20.315%です。所有期間が5年以下の短期譲渡所得(39.63%)と比べて税率が大きく下がるため、売却前に自分がどちらに当たるかを把握しておくことが大切です。
この記事では、長期譲渡所得の定義や計算方法、10年超のマイホーム軽減税率や相続した空き家の特別控除といった税優遇制度まで、幅広く解説します。
目次
譲渡所得とは?課税対象になる不動産売却益の基本

まずは、譲渡所得の基本から見ていきましょう。
譲渡所得の計算式|譲渡価額・取得費・譲渡費用とは?
譲渡所得は、次の式で計算します。
譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)
それぞれの概要は以下のとおりです。
- 取得費:売った土地・建物の購入代金や購入手数料など取得に要した金額に、その後支出した改良費・設備費を加えた合計額
- 譲渡費用:売るために支出した費用。仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人への立退料、建物を取り壊して土地を売る場合の取壊し費用など
さらに3,000万円などの特別控除が使える場合は、譲渡所得からその額を差し引いて、最終的な課税譲渡所得を算出します。
取得費が不明な場合の「概算取得費」とは
購入時の資料(契約書や領収書など)がなく、正確な取得費が分からないときに使えるのが「概算取得費」です。譲渡価額の5%を取得費とみなす方法で、実際の取得費が譲渡価額の5%未満の場合も、あえて概算取得費を選べば課税所得を抑えられることがあります。
ただし、実際の取得費のほうが大きければ、そちらを使ったほうが税負担は軽くなります。資料が残っていれば正確な取得費で計算するのが有利になることが多いため、購入時の書類は大切に保管しておきましょう。
長期譲渡所得の定義と判定基準

では、どのようなケースが長期譲渡所得に当たるのか、詳しく見ていきましょう。
所有期間5年超が基準|取得日と譲渡日の数え方
長期譲渡に当たるかどうかは、「譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているか」で決まります。ポイントは、売却日ではなく“その年の1月1日”を基準に数えることです。
たとえば2024年中に売る物件は、2024年1月1日時点で所有5年を超えているかで判断します。2019年3月1日に取得して2024年12月に売却した場合、2024年1月1日時点では5年未満のため、長期譲渡には該当しません。一方、2018年に取得していれば、同じ2024年の売却でも長期譲渡扱いになります。
なお、相続や贈与で取得した不動産は、被相続人や贈与者がその不動産を取得した日を引き継いで所有期間を数えます。
📅長期・短期は「譲渡した年の1月1日時点」で判定
所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下なら短期です。数えるのは売却日ではなく、譲渡した年の1月1日時点である点に注意します。
例1:2019年3月取得 → 2024年12月売却
2024年1月1日時点で所有5年未満 → 短期譲渡(税率39.63%)
例2:2018年3月取得 → 2024年12月売却
2024年1月1日時点で所有5年超 → 長期譲渡(税率20.315%)
相続・贈与で取得した場合は、被相続人・贈与者の取得日を引き継いで所有期間を数えます。
また、相続や贈与で取得した場合は、被相続人や贈与者がその不動産を取得した日を引き継ぐ形となります。
短期譲渡所得との違い|税率・控除額を比較
譲渡所得は、不動産の所有期間に応じて長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つに分けられ、不動産を売るタイミング次第では節税をすることも可能です。
長期譲渡所得と短期譲渡所得には、主に税率の違いがあります。
| 項目 | 長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 |
|---|---|---|
| 所有期間(譲渡年の1月1日時点) | 5年超 | 5年以下 |
| 所得税率 | 15% | 30% |
| 住民税率 | 5% | 9% |
| 復興特別所得税 | 0.315% | 0.63% |
| 合計税率 | 20.315% | 39.63% |
長期譲渡所得と短期譲渡所得を比較すると、最大で約19%の税率差が生じます。不動産の売却時期を調整して長期譲渡所得として売るだけで、税金を大幅に減らせる可能性があるため、節税を考えるなら短期売却を避けるのが得策です。
相続・贈与で取得した不動産の取り扱い
相続・贈与で不動産を取得したものの、自分で使用する予定がなく、空き家のままになっているなら、早めの売却も選択肢のひとつ。空き家を所有している場合、維持費や固定資産税の負担が続くことになる上、放置していても価値が下がる一方です。
相続で取得した不動産については、被相続人の取得日をそのまま引き継ぐため、長期譲渡所得として扱われるケースが多くなります。一方、贈与で取得した場合も、相続と同じく贈与者がその不動産を取得した日を引き継いで所有期間を数えます。したがって、贈与者の取得日から数えて、譲渡した年の1月1日時点で5年を超えていれば長期譲渡所得として扱われます。
売却益が出れば譲渡所得税が発生しますが、長期譲渡扱いとなれば税負担が軽減され、結果的に手元に多くの資金が残ることも期待できます。
長期譲渡所得の税率と計算方法

ここからは、長期譲渡所得の税率と計算方法を解説します。正しく理解して、損のない不動産売却につなげましょう。
税率は20.315%|内訳(所得税・住民税・復興特別所得税)
長期譲渡所得の税率は、所得税・住民税・復興特別所得税をあわせて20.315%です。内訳は次のとおりです。
| 税目 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 住民税 | 5% |
| 復興特別所得税 | 0.315% |
| 合計 | 20.315% |
この税率を課税譲渡所得にかければ、譲渡所得にかかる税金を計算できます。
特別控除・軽減税率・損益通算は使える?
空き家やマイホームの売却では、一定の要件を満たせば特別控除や軽減税率などの優遇を活用できます。ただし、制度ごとに対象が異なるため、自分のケースに合うものを見極めることが大切です。
代表的なのが「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(10年超所有の軽減税率)」です。10年を超えて所有した“自分のマイホーム”を売却した場合に、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の税率が軽減されます(6,000万円以下の部分は復興特別所得税を含め14.21%)。対象はあくまで売主自身の居住用財産のため、自分が住んでいない相続空き家には原則適用されません。相続した空き家には、別枠の「空き家特例(3,000万円特別控除)」が使える場合があります。
また、売却で譲渡損が出た場合、他の所得と損益通算できることがあります。ただし損益通算・繰越控除はマイホーム(居住用財産)に限られるのが原則で、居住用でない空き家に使えるかは個別に確認が必要です。
いずれの制度も適用要件が細かいため、事前に確認したうえで計画的に売却を進めましょう。
具体的なシミュレーション事例
居住用マンションを売却した場合を例に、長期譲渡所得税を計算してみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 譲渡収入金額 | 5,000万円 |
| 取得費 | 300万円 |
| 譲渡費用 | 200万円 |
| 特別控除 | 居住用財産の3,000万円特別控除を使用 |
まず、課税譲渡所得金額を計算します。
課税譲渡所得金額=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
=5,000万円−(300万円+200万円)−3,000万円=1,500万円
この1,500万円に長期譲渡の税率20.315%をかけます。
1,500万円 × 20.315% = 304万7,250円
長期譲渡所得税は304万7,250円となります。
空き家売却で活用できる長期譲渡所得の特例
空き家の売却では、特例を上手に使えば税負担を抑えられます。ここでは、長期譲渡所得に適用できる特例を紹介します。
空き家特例(3,000万円控除)の条件と注意点
相続・遺贈で取得した空き家を売却して利益が出た場合、一定の要件を満たせば最大3,000万円を控除できます。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、「空き家特例」とも呼ばれます。
対象となるのは、次の要件を満たす不動産です。
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された建物であること
- 区分所有建物登記がされていない建物であること
- 相続開始の直前まで被相続人以外が居住していなかったこと(被相続人が老人ホーム等に入居していた場合などの例外あり)
このほか、「相続・遺贈で取得した被相続人の居住用家屋を売る、または家屋とともにその敷地を売る」など、複数の要件を満たす必要があります。
控除額にも注意が必要です。取得した相続人が2人までなら各人の上限は3,000万円ですが、令和6年1月1日以後の譲渡からは、相続人が3人以上の場合、1人あたりの上限が2,000万円になります。
適用期限は二重にあります。相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却を終える必要があり、さらに制度自体も令和9年(2027年)12月31日までです。売却を検討している方は、できるだけ早めに動きましょう。
国税庁:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
マイホーム(居住用財産)特例との違い
空き家特例と同じく、3,000万円が控除される制度として「マイホーム(居住用財産)特例」というものがあります。
| 比較項目 | 空き家特例 | マイホーム(居住用財産)特例 |
|---|---|---|
| 対象 | 相続・遺贈で取得した被相続人の居住用家屋・敷地 | 自分が住んでいる(住んでいた)マイホーム |
| 特別控除額 | 最大3,000万円(相続人3人以上は1人あたり2,000万円) | 最大3,000万円 |
| 主な要件 | 昭和56年5月31日以前の建築、区分所有登記でない、相続直前まで被相続人以外が居住していない等 | 現に住む家屋、または住まなくなって3年を経過する年の12月31日までの売却等 |
| 期限 | 相続開始から3年を経過する年の12月31日まで(制度は2027年末まで) | 特に定めなし(要件を満たせば継続適用) |
どちらも譲渡所得への税負担を軽くする制度ですが、対象が異なります。空き家特例は相続・遺贈で取得した家屋や土地を売るときに、マイホーム特例は自分が住んでいた(住んでいる)マイホームを売るときに適用されます。
マイホーム特例の対象は、次の不動産です。
- 現に自分が住んでいる家屋
- 以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却する場合)
- 住んでいた家屋とともに売る敷地や借地権
- 取り壊した家屋の敷地(下記を満たす場合)
- ① 取り壊しから1年以内に売却契約を締結していること
- ② 取り壊し後、その敷地を駐車場など他の用途に使っていないこと
- 災害で滅失した家屋の敷地
- ① 住んでいた場合:災害発生日から3年以内
- ② 以前住んでいた場合:住まなくなった日から3年以内
これらのほかにも細かい要件があるため、自分の物件が該当するかを事前に確認しておきましょう。
複数の特例は併用できる?優先順位に注意
空き家特例などの優遇措置は複数ありますが、同一の不動産にこれらを重ねて適用するのは原則できません。ただし一部の特例は、条件を満たせば併用が可能です。
空き家特例と併用できる主な措置法規定は、次のとおりです。
- 居住用財産の3,000万円控除(35条1項。ただし両者あわせて同一年内3,000万円が限度)
- 特定居住用財産の買換え特例(36条の2)
- 居住用財産の譲渡損失の繰越控除等(41条の5)
- 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等(41条の5の2)
- 住宅ローン控除(41条)
- 認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除(41条の19の4)
たとえば空き家特例とマイホーム特例は併用できる場合がありますが、控除額の合計が同一年内で3,000万円を超えない範囲での適用になります。
また、売りたい不動産が複数あるときは、優先順位を決めておくことが重要です。売却益の低い物件から先に売ってしまい、気づかないうちに特例の適用期限を過ぎていた、という事態も起こりえます。損をしないためにも、どの物件をいつ・どの特例で売るかを、期限を意識して計画的に整理しておきましょう。
🏠長期譲渡所得に関するよくある質問
Q. 長期譲渡所得の税率は何%ですか?
合計20.315%です(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)。所有期間が5年以下の短期譲渡所得は39.63%で、長期のほうが大幅に低くなります。
Q. 長期と短期はどうやって判定しますか?
譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下なら短期です。売却日ではなく1月1日時点で数える点に注意しましょう。相続・贈与で取得した場合は、被相続人・贈与者の取得日を引き継いで所有期間を計算します。
Q. 相続した空き家の売却で使える特例はありますか?
一定の要件を満たせば、最大3,000万円を差し引ける「空き家特例」が使えます。昭和56年5月31日以前の建築であることなどが条件で、相続開始から3年を経過する年の12月31日まで、かつ制度は2027年末までが期限です。相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円になります。
まとめ|空き家売却では「長期譲渡所得」の判定が損益に直結する
空き家を売却するときは、長期譲渡所得として売れるかどうかが税額を大きく左右します。まずは「短期」と「長期」のどちらに該当するかを、譲渡年の1月1日時点の所有期間で確認しましょう。そのうえで、空き家特例(3,000万円特別控除)などの適用可否も加味し、どのくらい節税できるかを試算しておくことが大切です。空き家特例には適用期限があるため、早めの対応が節税につながります。
とはいえ、「相続した実家をどう売ればいいか」「特例が使えるのか」を一人で判断するのは簡単ではありません。
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この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。