公開日:2026.08.17 更新日:2026.07.27
NEW空き家の3,000万円控除とは?適用条件と確定申告の流れを解説

親が亡くなり、相続した実家が空き家のまま残っている…こうしたケースは珍しくありません。売却した場合、税金がいくらかかるのか不安という方も多いでしょう。
そこで知っておきたいのが「相続空き家の3,000万円特別控除(相続空き家特例)」です。空き家の3,000万円控除とは、一定の要件を満たして相続した空き家を売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
この記事では、制度の全体像から最新の法改正、具体的な適用要件、手続きの流れ、判断に迷いやすいケースまで解説します。
目次
制度の概要と控除できる税金

「相続空き家の3,000万円特別控除(相続空き家特例)」は、相続後に空き家となった家屋や敷地等の流通を促すための特例措置です。適用要件を満たせば、売却で生じた譲渡所得から最大3,000万円を控除することができます。
ただし、令和6年(2024年)1月1日以後に相続人が3人以上で譲渡した場合は、相続人1人あたりの控除額が最大2,000万円となります。
控除の対象は売却代金ではなく譲渡所得です。譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いて算出します。売買契約書や仲介手数料の領収書など、確定申告で必要となる書類は大切に保管しておくのが望ましいでしょう。
この特例で軽減できるのは、譲渡所得にかかる所得税(復興特別所得税を含む)と住民税です。相続税が減額される制度ではありません。相続税の特例である「小規模宅地等の特例」とは対象や目的が異なるため、混同しないよう注意しましょう。
3,000万円控除で税金はいくら減るか(計算の考え方)
3,000万円特別控除で軽減されるのは、税金そのものが直接3,000万円減るわけではありません。売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を引き算することで、そこにかかる所得税や住民税を「結果的にゼロまたは最小限」にする仕組みです。
具体的な計算の流れは以下の3ステップです。
1.譲渡所得(売却益)を計算する
売却代金 −(取得費+譲渡費用)
2.特別控除(引き算)を適用する
売却益から最大3,000万円(一定の場合は2,000万円)を差し引く
3.最終的な税額を計算する
差し引き後の譲渡所得に税率をかけて、実際の税額を算出する
例えば、譲渡所得が3,000万円であれば、特例を適用することで課税対象が0円となり、譲渡所得にかかる所得税・住民税は発生しません。譲渡所得が1,000万円の場合も、その全額を控除できるため税額は0円になります。
また、取得費が少ないほど譲渡所得は大きくなり、税負担も増えやすくなります。親が実家を買ったときの古い「売買契約書」や、大規模なリフォーム費用の領収書は非常に重要です。これらがないと、売却代金の「5%」という非常に低い金額が取得費とみなされ、税金がはね上がってしまいます。売却活動を始める前に、必ず家の中を探して整理しておきましょう。
適用要件(対象者・家屋敷地・売却)

相続空き家の3,000万円特別控除は、要件を一つでも満たさないと適用できません。 ここからは、適用要件について解説していきます。
対象となる人の要件(相続人・共有名義)
相続空き家の3,000万円特別控除は、原則として相続または遺贈(包括遺贈や死因贈与を含む)により、被相続人居住用家屋や敷地等を取得した相続人が売却した場合に適用されます。そのため、相続人以外の名義で売却した場合には、特例の対象とはなりません。
共有名義で相続した場合は、共有者それぞれが適用要件を満たしていれば、各自が特例を利用できる可能性があります。確定申告は共有者ごとに行う必要があるため、必要書類もそれぞれが準備しておくのが基本です。
また、親子や夫婦など特別な関係にある人への売却は、原則として特例の対象外となります。親族間での売却を予定している場合は、契約を結ぶ前に適用要件を確認したうえで、不動産会社や税理士に相談するとよいでしょう。
対象となる家屋・敷地の要件(被相続人居住用家屋)
対象となるのは、相続開始直前まで被相続人が生活の拠点として住んでいた「被相続人居住用家屋」と、その敷地等です。そのため、別荘や一時的に利用していた建物は、原則として対象になりません。なお、老人ホーム等へ入居していた場合は例外が設けられています。詳しくは後述します。
家屋については一定の要件があり、昭和56年5月31日以前に建築された建物であることが求められます。また、区分所有建物登記がされているマンションは、原則として対象外です。
敷地等についても、その家屋の敷地として利用されていた範囲に限られます。同じ土地であっても利用状況によって対象範囲が異なる場合があります。母屋以外の建物や広い敷地がある場合は、不動産会社や税理士へ相談しながら確認するとよいでしょう。
売却の要件(期限・譲渡価額・耐震・解体)
特例を利用するには、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。なお、この特例制度そのものの実施期限は、最新の税制改正により令和9年(2027年)12月31日までの売却と決まっています。
売却価格(譲渡価額)は1億円以下であることも要件です。共有名義や分割して売却するケースでは、売却方法によって判定が変わる場合があるため、事前に不動産会社や税理士へ相談することをおすすめします。
さらに、相続から売却までの間は、原則として家屋を居住用・事業用・貸付用として利用していないことが求められます。家屋付きで売却する場合は、昭和56年5月31日以前の古い建物(旧耐震基準)であるため、そのままでは新耐震基準を満たしません。また、家を売ったあとに雨漏りや建物の傾きといった不具合が見つかった場合、買主から修理代などを請求される「契約不適合責任(古い法律での『瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)』)」を追及されるリスクがあります。
そのため、2024年の税制改正によって可能になった「売却後に買主側で耐震工事や解体を行う方法」を活用し、売主の責任範囲を契約書で明確に免責しておくことが極めて安全な防衛策となります。
2024年以降の改正ポイント(買主の耐震改修・解体、相続人3人以上)

令和6年(2024年)以降の譲渡では、適用要件が見直され、売却方法や控除額に影響する改正が行われています。特に「買主による耐震改修・解体」と「相続人が3人以上の場合の控除額」は、売却前に押さえておきたいポイントです。
大きな改正点のひとつは、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡について、売却後に買主が耐震改修や解体を行う場合でも、一定の要件を満たせば特例を適用できるようになったことです。従来は、原則として売主自身が耐震改修を行うか、家屋を解体して更地にしてから売却する必要があり、時間や費用の負担が課題となっていました。
改正後は、売却した翌年の2月15日までに買主が工事や解体を完了すれば特例が使えます。ただし、万が一買主の遅れで期限を過ぎると、売主は特例を使えず多額の税金を課されます。そのため、売買契約書に「買主の都合で特例が使えなくなった場合、税金分の損害賠償を請求できる特約」を必ず入れて防衛しましょう。
もうひとつの改正点は、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡において、相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除上限額が2,000万円となったことです。相続人が多いケースでは、売却時期や税負担への影響も出てくるため、早めに売却計画を立てておくと、その後の手続きがスムーズです。
手続きの流れ(相続から確定申告まで)
相続空き家の3,000万円特別控除を利用するには、「被相続人居住用家屋等確認書」の取得と確定申告が必要です。相続から申告までの流れを確認しておきましょう。
相続空き家特例適用の5ステップ
昭和56年5月31日以前の建築か、被相続人が一人で住んでいたか等の前提条件を漏れなくチェックします。
更地にして売るか、耐震改修をして売るかを選択。買主が購入後にこれらを行う方法(2024年以降対応)も検討可能です。
売却代金が1億円以下であることを確認し、契約書や仲介手数料の領収書、古い購入契約書を厳重に保管します。
空き家があった役所へ「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請します。発行まで数週間かかるため早めの行動が吉です。
取得した確認書を添付し、税務署へ確定申告を行うことで初めて最大3,000万円の控除が適用されます。
確認書の取得に必要な書類が不足していると、手続きが滞ってしまいます。解体契約書や土地・家屋の利用状況が分かる資料などは、売却前からきちんと整理しておきましょう。
共有名義の場合は、確定申告は各相続人が行います。売却手続きや書類の準備は共有者全員で進める必要があるため、役割分担やスケジュールを決めておくとスムーズです。
被相続人居住用家屋等確認書の取得方法
相続空き家の3,000万円特別控除を利用するには、市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。
確認書は、家屋・敷地等の所在地を管轄する市区町村へ申請します。申請様式は、譲渡した年や売却方法(家屋付きでの売却、解体後の売却、譲渡後に買主が耐震改修・解体を行う場合など)によって異なるため、自分のケースに合った様式を選びます。
審査で確認されるのは、被相続人が居住していた事実や、相続開始から譲渡までの利用状況、耐震改修や解体の状況などです。住民票だけでは判断できない場合は、電気や水道の使用中止記録、建物の解体契約書、現地の写真などを求められることもあります。
共有名義の場合は、相続人ごとに申請が必要となるケースがあります。また、確認書の交付まで一定期間かかることもあるため、売却が決まってからではなく、売却活動と並行して準備しましょう。
確定申告の申告方法・提出先・提出時期
相続空き家の3,000万円特別控除は、自動で適用される制度ではありません。売却した翌年の確定申告で、必要書類を添付して申告する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告時期 | 売却した年の翌年の確定申告期間 |
| 提出先 | 住所地を管轄する税務署 |
| 主な提出書類 | 確定申告書、譲渡所得の内訳書(計算明細書)、被相続人居住用家屋等確認書、売買契約書、取得費・譲渡費用が分かる書類など |
| 申告内容 | 売却代金、取得費、譲渡費用、3,000万円特別控除を反映して譲渡所得を計算し、申告する |
会社員など、普段は確定申告をしない方であっても、不動産を売却した場合には申告が必要です。また、取得費の根拠となる契約書や領収書などの書類は、税務署から確認を求められることがあります。あらかじめ整理したうえで保管しておきましょう。
令和6年(2024年)以降に新設された「譲渡後に買主が耐震改修・解体を行う」ルートを利用する場合は、翌年2月15日までに工事や解体、必要書類の準備を完了させる必要があります。売買契約の段階から買主や解体業者とスケジュールを共有し、計画的に進めましょう。
必要書類一覧(確認書・売買契約書・登記事項など)
相続空き家の3,000万円特別控除では、売却方法によって必要書類が異なります。申告期限が近づいてから書類不足に気付くと、確認書の取得や確定申告が間に合わなくなることも。余裕を持って準備を進めておきましょう。
主な必要書類
| 書類 | 用途・確認内容 |
|---|---|
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 特例の適用要件を満たしていることを証明する |
| 売買契約書の写し | 売却日・譲渡価額を確認する |
| 確定申告書・譲渡所得の内訳書(計算明細書) | 特例を適用して譲渡所得を申告する |
| 登記事項証明書など | 相続による取得や建築時期、家屋の状況を確認する |
| 取得費・譲渡費用(売却にかかった経費)の根拠書類 | 売買契約書、領収書など譲渡所得の計算に使用する |
売却方法ごとに追加で必要となる主な書類
| 売却方法 | 主な書類 |
|---|---|
| 家屋付きで売却 | 耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書など |
| 解体後に更地で売却 | 解体工事関係書類、建物滅失登記に関する書類など |
| 買主が耐震改修・解体を行う場合(令和6年以降) | 買主による工事・解体を証明する書類など |
登記事項証明書は、不動産番号を記載することで添付を省略できる場合があります。ただし、市区町村への確認書の申請では、別途提出を求められるケースもあります。自己判断で省略せず、申請先や税務署の案内に沿って準備を進めましょう。
よくある適用可否(老人ホーム入居、更地売却、マンション、親族への売却)

特に問い合わせの多いケースについて、適用可否はこちらです。
- 老人ホームへ入居していた場合
相続開始直前に自宅へ住んでいなくても、要介護認定など一定の要件を満たして老人ホーム等へ入居していた場合は、特例の対象となる可能性があります。ただし、入居後に家屋を第三者へ貸していたり、事業用として利用していた場合は適用できないことがあります。 - 更地にして売却する場合
家屋を解体して更地で売却すること自体は特例の対象です。ただし、解体後から売却までの間に駐車場として貸し出したり、事業用として利用したりすると、適用要件を満たさなくなる可能性があります。 - マンションを売却する場合
区分所有建物であるマンションは、原則として相続空き家特例の対象外です。 - 親族へ売却する場合
親子や夫婦など特別な関係がある人への売却は、原則として特例を利用できません。
他の特例との違いと併用可否(居住用3,000万円、取得費加算、小規模宅地等)
相続した不動産を売却する際は、複数の特例が関わってくることがあります。名称が似ていても対象や税目が異なる場合があります。どの特例が使えるのか、併用できるのかをあらかじめ整理しておきましょう。
| 特例の名称 | 対象となる主な不動産 | 軽減される税金の種類 | 相続空き家特例との併用 |
|---|---|---|---|
| 相続空き家の3,000万円特別控除 | 相続した「古い空き家」やその敷地 | 所得税・住民税(売却益に対する課税) | 不可(本特例そのもの) |
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 自分が「現在住んでいる(マイホーム)」家や土地 | 所得税・住民税(売却益に対する課税) | 重複して適用することは原則不可 |
| 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例 | 相続した不動産(相続税を支払っている場合) | 所得税・住民税(売却益に対する課税) | 同一の不動産において併用は不可(選択適用) |
| 小規模宅地等の特例 | 相続した「一定の宅地(実家など)」の評価額を減額 | 相続税(亡くなった時点の財産に対する課税) | 併用可能(税金の種類が異なるため影響なし) |
特に注意したいのは、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」です。同じ不動産では、相続空き家の3,000万円特別控除と併用できないケースがあります。どちらが有利になるかは、譲渡所得や相続税額、取得費などによって異なるため、試算したうえで選択しましょう。
また、小規模宅地等の特例は相続税を軽減するための制度であり、譲渡所得を軽減する相続空き家特例とは、そもそも目的が異なります。相続税と売却後の税負担をあわせて考えることで、より有利な売却プランを立てやすくなるでしょう。
介護が必要になり特別養護老人ホーム等へ入所していた場合、入所直前まで本人が住んでおり、入所後にその実家を第三者に貸し出すなどしていなければ、特例の適用が可能です。
建物を壊してから売るまでの間に、一時的であっても駐車場や資材置き場などの「事業用」「貸付用」として活用してしまうと要件から外れます。売却までは完全に更地のまま管理してください。
2024年の税制改正により、相続人が3人以上(共有名義等)のときは1人あたり2,000万円が上限となりました。全員が特例要件を満たしていれば、合計で最大6,000万円が控除されます。
空き家の3,000万円控除のポイントまとめ
相続空き家の3,000万円特別控除は、相続した空き家を売却すれば自動的に適用される制度ではありません。適用要件をすべて満たしたうえで、被相続人居住用家屋等確認書の取得と確定申告の手続きが必要です。特に、相続開始からの期限や譲渡価額1億円以下の要件、相続から譲渡までの利用状況は、早い段階で確認しておきましょう。
令和6年(2024年)の改正では、一定の要件を満たせば、譲渡後に買主が耐震改修や解体を行う場合も特例措置の対象となりました。これにより、工事期限や必要書類の準備など、新たに確認すべきポイントも増えています。
相続した家屋や土地の状況、売却時期、譲渡方法によって、適用可否は異なります。判断に迷う場合は、不動産会社や税理士に相談しながら、確認書の取得から確定申告までを見据えて手続きしましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






