公開日:2026.07.09 更新日:2026.06.24
NEW不動産相続の手続きの流れから税金・相続後の活用まで徹底解説
不動産相続の手続きとは、亡くなった方(被相続人)が所有していた土地や建物の名義を、相続人へ変更する(相続登記)ことです。
不動産の相続は、人生で何度も経験することではないため、「何から手をつけたらいいのかわからない」「税金はいくらかかるのか」など不安を感じる方も多いはず。
そこで本記事では、不動産の相続に必要な手続きから税金計算、さらには相続後の選択肢まで、詳しく解説します。
目次
不動産相続とは?対象となる財産と基本を解説

不動産相続とは、被相続人の逝去に伴い、その人が所有していた土地や建物などの不動産所有権を、民法が定める法定相続人が包括的に引き継ぐ手続きです。預貯金など他の遺産と同様に、法律に則った分割や名義変更の手続きが必要となります。
相続の対象となる不動産は、自宅やマンション、店舗、事務所などの建物はもちろん、それらの建物が建っている土地、さらには駐車場や農地などさまざま。一見すると不動産とは異なるように思える借地権や地上権、賃借権なども、不動産に関する権利として相続の対象となる場合があります。
不動産相続の3つの主要な方法と特徴

不動産の相続には、主に3つの方法があります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じた最適な方法を選択しましょう。
遺言による相続:被相続人の意思を反映させる方法
遺言書による相続は、被相続人の意思が最も尊重される形です。遺言書には、どの財産を誰にどのように相続させるかを具体的に記載することができます。例えば、「自宅の土地と建物は長男に、金融資産は長女に」といった具体的な指定も可能です。
遺言書には、主に「公正証書遺言」「自筆証書遺言」があります。このうち、公正証書遺言は公証役場で作成するため、法的な有効性が高く、紛失や偽造のリスクが低いというメリットがあります。一方、自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、形式不備や内容の不明瞭さから無効になるケースや、相続発生後に家庭裁判所での検認手続きが必要となる場合があります。
これらの遺言書がある場合、その内容に従って遺産が分割されるのが基本です。ただし、遺留分(民法で定められた、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障されている相続分の割合)を侵害する内容の遺言書の場合、遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。
遺産分割協議による相続
遺言書がない場合や、遺言書の内容がすべての財産について網羅されていない場合、または遺言書の内容に異議がある場合でも、法的効力がある限りは原則としてその内容に従います。例外的に、遺留分侵害がある場合には遺産分割協議が必要になります。遺産分割協議は、法定相続人全員の参加と同意が必要であり、一人でも欠けると協議は無効となります。
この協議では、不動産を誰が相続するか、他の財産と組み合わせてどのように分配するかなどを自由に決めることができます。例えば、複数の不動産がある場合、特定の不動産を特定の相続人が単独で取得し、その代わりに他の相続人が現金や他の財産を受け取る、といった調整も可能です。
協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」として書面にまとめ、相続人全員が署名・押印します。この遺産分割協議書は、後の相続登記や相続税の申告の際に必要です。相続人の中に未成年者がいる場合は、家庭裁判所への特別代理人の選任が必要になるため注意しましょう。
民法の相続割合(法定相続)による相続
遺言書がなく、かつ遺産分割協議が成立しない場合は、民法で定められた法定相続人と法定相続分に従って遺産が分割されます。法定相続人となるのは、配偶者、子、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹です。常に相続人となる配偶者と、順位に応じて第一順位の子、第二順位の直系尊属(父母など)、第三順位の兄弟姉妹です。それぞれの順位と相続分は以下の通りです。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の相続分 | 各相続人の法定相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 2分の1 | 子:2分の1(複数の場合は均等に分割) |
| 配偶者と直系尊属(父母など) | 3分の2 | 直系尊属:3分の3(複数の場合は均等に分割) |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹:4分の1(複数の場合は均等に分割) |
法定相続分はあくまでも目安であり、実際の不動産は物理的に分割しにくい性質があるため、共有名義にするか、代償分割などの方法を検討する必要があります。
代償分割・換価分割・現物分割の違いとは

不動産の相続においては、その性質上、単純に分割することが難しいケースが多々あります。そこで、遺産分割協議の際に検討される分割方法として、「代償分割」「換価分割」「現物分割」の3種類が検討されます。
| 分割方法 | 特徴・概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 遺産をそのままの形状で個別に取得する | 手続きがシンプルで費用が抑えやすい | 不動産が1つの場合など公平な分割が難しい |
| 換価分割 | 不動産を売却して現金化し分割する | 公平に分配しやすく共有名義を回避できる | 売却の手間や譲渡所得税等のコストがかかる |
| 代償分割 | 特定の人が取得し他者へ代償金を支払う | 不動産を売却せず現物を残すことができる | 取得者に十分な資金力(資力)が必要となる |
現物分割は、不動産が複数ある場合に「Aの土地は長男、Bの建物は次男」というように、それぞれを現物で取得する形です。あるいは、土地を物理的に分筆して共有名義を解消するケースも現物分割に含まれます。しかし、不動産が1つしかない場合や、公平な分割が難しい場合には不向きな方法です。
換価分割は、自宅を売却し、その売却益を法定相続分に応じて均等に分配するなどがこれにあたります。この方法は、不動産の共有名義を避けたい場合や、相続人が複数いてそれぞれの現金が必要な場合に有効です。ただし、売却には時間と費用がかかり、譲渡所得税などの税金が発生する可能性があります。また、売却価格が相続人の希望に沿わない場合もあるため、慎重な検討が必要です。
代償分割は、不動産を売却せずに、特定の相続人が住み続けたい場合などに有効な方法。代償金を支払う側の相続人に十分な資力があることが前提となる上、代償金の金額をどのように評価するかで揉める可能性もあるため、不動産評価額の算出がポイントになります。
不動産の相続に必要な手続きとその流れ
多くの手続きを伴う不動産の相続。ここでは、その主要な流れと必要な手続きについて解説します。
法定相続人を確定する
まず、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍などを含む)を収集し、親子関係や婚姻関係を確認して法定相続人を確定させましょう。
戸籍謄本の収集は、本籍地の役所で行います。郵送での請求も可能です。すべての戸籍が揃ったら、相続関係説明図を作成すると、誰が相続人であるかを一目で把握でき、後の手続きがスムーズに進みます。この段階で、相続放棄を検討する相続人がいないかどうかも確認しておきましょう。
遺産と債務の確認
次に、被相続人の残した遺産と債務をすべて洗い出し、正確に把握します。不動産だけでなく、預貯金、株式、自動車、骨董品などのプラスの財産、そして借金や未払いの税金、買掛金などのマイナスの財産も含まれます。
不動産については、固定資産税の納税通知書や権利証、登記簿謄本などで所有状況や評価額を確認し、借入金やローンがある場合は、金融機関に照会するなどして債務の有無と金額を把握しておきましょう。
相続財産の調査の結果、債務が遺産を上回る場合は、相続放棄をした方がよいケースもあります。相続放棄は原則として、自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があるため、要注意です。
遺産分割協議を行う
法定相続人と遺産・債務が確定したら、遺言書がない場合は遺産分割協議を行い、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。
協議がまとまったら、その内容を遺産分割協議書として書面に作成し、相続人全員が署名・押印します。
相続登記を申請する
不動産を相続した際は、法務局へ相続登記(所有権移転登記)を行うことが法律で義務付けられています。この相続登記の義務化は2024年4月1日に施行され、正当な理由なく相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内に申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される対象となります。【出典:法務省】
相続登記を行うことで、相続した不動産の所有権を第三者に対して主張することが可能になります。また、共有名義の不動産がある場合も、相続登記によって各相続人の持分を明確にすることができます。
相続登記の必要書類
相続登記には、さまざまな書類が必要です。主なものは以下の通りです。
| 必要書類 | 主な取得先・作成者 | 備考 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 法務局ホームページ等で入手 | 申請人が作成 |
| 被相続人の除籍・戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 出生から死亡までの連続したものすべて |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の役場 | 遺産分割協議を行う場合に必須 |
| 被相続人の住民票の除ップ | 最後の住所地の市区町村役場 | 本籍地の記載があるもの |
| 相続人全員の住民票 | 各相続人の住所地の役場 | マイナンバーの記載がないもの |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 登録免許税の計算に必要 |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員で作成 | 相続人全員の実印での押印が必要 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人の住所地の役場 | 遺産分割協議書に添付 |
| 委任状 | 申請人(相続人) | 司法書士へ手続きを委任する場合に必要 |
これらの書類は、一つでも欠けると手続きが進まないため、事前にしっかりと準備することが重要です。
相続登記の簡単な流れ
1.必要書類の収集: 上記の書類を収集。
2.登記申請書の作成: 法務局のホームページなどで書式を入手し、必要事項を記入。
3.法務局への申請: 必要書類と登記申請書を揃え、不動産の所在地を管轄する法務局に提出。郵送での申請も可能。
4.審査・登記完了: 法務局で審査が行われ、問題がなければ登記が完了。
相続登記は複雑な手続きを伴うため、自身で行うのが難しい場合は、司法書士に依頼することも検討しましょう。
相続税の申告・納付する
相続税は、相続または遺贈によって財産を取得した場合に課される税金です。相続税には基礎控除額があり、遺産総額がこの基礎控除額を超えた場合にのみ相続税が課税されます。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
相続税の申告と納付の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内。期限内に申告・納付しないと、延滞税や加算税などのペナルティが課される可能性があります。
不動産の相続税の計算方法

不動産の相続税は、その評価方法によって大きく変動します。ここでは、土地と建物の評価方法、そして賃貸に出している場合の特例などについて解説します。
土地の相続税計算方法
土地の評価方法は、主に「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。
路線価方式は、主要な道路に面した宅地の1平方メートルあたりの評価額のことで、国税庁の財産評価基準書で確認できます。都市部の宅地など、多くの土地がこの方式で評価されており、この路線価に、土地の面積や形状、道路との接道状況、利用状況などに応じた補正率を乗じて評価額が算出されます。
倍率方式は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算出する方法。路線価が定められていない地域(主に郊外や農村部)の土地で利用されています。
建物の相続税計算方法
建物の評価額は、原則として固定資産税評価額がそのまま用いられます。固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されており、一般的に時価の50%〜70%程度が目安です。
賃貸に出している場合
賃貸アパートやマンションなど、賃貸に出している場合の不動産は、自用(自分で住んでいる)の場合よりも相続税評価額が低くなります。これは、他人に貸していることで、所有者の自由な利用が制限されるためです。
土地については「貸宅地」として、建物については「貸家」として、それぞれ評価額が減額。具体的な減額割合は、借地権割合や借家権割合、賃貸割合によって異なりますが、相続税を節税できる可能性があります。
不動産の相続税に適用できる特例・制度
不動産の相続税には、いくつかの特例や制度が適用される場合があります。これらを活用することで、相続税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
- 小規模宅地等の特例
被相続人や被相続人と生計を一つにしていた親族が居住用または事業用として使用していた宅地について、一定の要件を満たせば、評価額が最大80%減額される特例。 - 配偶者の税額軽減
配偶者が相続する財産については、1億6000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税がかからない制度。 - 農地の納税猶予の特例
農地を相続した場合に、一定の要件を満たせば相続税の納税が猶予される制度。
これらの特例や制度の適用には厳しい要件が定められており、適用漏れや適用誤りがないよう、税理士と密に連携を取りながら進められるようにしましょう。
不動産を相続する際にかかるその他の税金と費用
| 費用・税金項目 | 計算式・費用の目安 | 性質・支払先 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% | 相続登記の際に法務局へ納める国税 |
| 固定資産税 | 課税標準額×1.4%(標準税率) | 毎年1月1日時点の所有者に課される地方税 |
| 譲渡所得税 | (売却価額-取得費-譲渡費用)×税率 | 相続不動産を売却して利益が出た場合の国税・地方税 |
| 必要書類取得費 | 1通あたり300円〜750円程度 | 戸籍謄本や住民票などの市区町村役場の手数料 |
| 司法書士報酬 | 数万円〜数十万円程度 | 相続登記の手続き代行費用(物件数や複雑さによる) |
| 税理士報酬 | 数十万円〜数百万円程度 | 相続税申告の代行費用(遺産総額や規模による) |
不動産の相続では、相続税以外にもさまざまな税金や費用が発生します。事前に把握して予期せぬ出費に慌てることないように資金計画を立てましょう。
登録免許税
登録免許税は、不動産の相続登記を行う際に法務局に納める国税のこと。登記の種類によって税率が異なり、相続登記の場合は不動産の固定資産税評価額の0.4%が課税対象です。例えば、評価額が3000万円の不動産であれば、12万円の登録免許税がかかります。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点での不動産登記簿上の所有者に課される地方税です。不動産を相続した場合、その年の固定資産税は、被相続人が亡くなった日までの分は被相続人が支払い義務を負い、それ以降の分は相続人が支払い義務を負います。ただし、実務上は相続人同士で日割り計算して精算することが一般的です。
譲渡所得税
相続した不動産を売却した場合、売却益が出ると譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税は、売却価格から取得費(被相続人が購入した際の費用など)と譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いた利益に対して課税される所得税と住民税の総称です。
この譲渡所得税の計算には、被相続人が不動産を取得した時期や金額がポイントになります。不動産評価額だけでなく、過去の売買契約書などが必要になるため、事前に確認しておきましょう。
なお、相続した不動産を売却した場合に適用できる「相続空き家の3,000万円特別控除」や「居住用財産の3,000万円特別控除」などの特例もあり、これらを適用できれば、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
必要書類の取得費用や司法書士への報酬
相続手続きを進める上で、様々な書類を取得するための費用が発生します。
- 戸籍謄本や住民票の取得費用: 1通あたり数百円程度
- 固定資産評価証明書の取得費用: 1通あたり数百円程度
また、相続登記を司法書士に依頼したり、相続税の申告を税理士に依頼したりする場合には、それぞれの専門家への報酬が発生します。
- 司法書士への報酬: 相続登記の複雑さや不動産の数によって異なりますが、数万円から数十万円程度が一般的です。
- 税理士への報酬: 相続財産の総額や複雑さによって異なりますが、数十万円から数百万円になることもあります。
これらの費用も考慮に入れた上で、相続手続きを進める計画を立てることが重要です。
相続後に不動産をどうする?選択肢とリスク
空き家のままにしておくリスク

相続した不動産を空き家のまま放置すると、多くのリスクが伴います。固定資産税などの維持費がかかる上、 適切な管理が行われないと、建物の老朽化が急速に進み、資産価値が低下。さらに、不審者の侵入や不法投棄の温床になったり、雑草の繁茂、害虫の発生、建物の破損による倒壊リスクなどによる近隣住民とのトラブルも懸念されます。
適切な管理が行われず放置された空き家は、2023年12月施行の改正空家法に基づき、特定空き家の一歩手前である「管理不全空き家」に指定されるリスクがあります。自治体からの改善勧告を受けると、土地の固定資産税を最大6分の一に減額していた「住宅用地特例」の優遇措置が即座に解除され、税負担が実質最大6倍に跳ね上がります。
これらのリスクを避けるためにも、相続した不動産、特に空き家は、早めに売却、利用、賃貸などの対策を講じることが重要です。
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不動産の相続は、人生においてそう何度も経験するものではありません。そのため、多くの人にとって手続きは複雑で、疑問や不安が尽きないものです。相続税の計算や不動産評価額の算出、相続登記といった法的な手続き、さらには遺産分割協議における調整など、専門的な知識が求められる場面が多々あります。
また、空き家を相続した場合は、固定資産税などの維持費用だけでなく、管理不全によるリスクも考慮しなければなりません。有効活用や売却など、早期の対策が重要となります。
少しでも疑問や不安を感じたら、ぜひ「アキサポ」にご相談ください。税理士や司法書士など専門家と連携し、遺言書の作成から相続税の申告、名義変更に至るまで、複雑な手続きを丁寧にサポート。相続後の利活用についても、ひとりひとりの状況に合わせて最適なアドバイスを提供いたします。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。