公開日:2026.05.10 更新日:2026.04.27
NEW【空き家特例】耐震基準の要件を徹底解説|2024年以降の解体・改修ルールも網羅
相続した実家を売るときの税金を減らせる「空き家特例(3,000万円特別控除)」は、重要な要件の一つに「耐震基準」が含まれています。しかし、こういった制度になじみがないと 「どこまで基準を満たせばいいのか」「古い家でもそのまま売れるのか」が分かりにくいと感じる方も多いでしょう。
そこで本記事では、相続空き家の3,000万円特別控除の基本から、耐震基準が求められる理由、耐震改修と解体のどちらを選ぶべきか、申請の流れや必要書類まで整理して解説します。
目次
空き家特例(相続空き家の3,000万円特別控除)とは

空き家特例とは、相続した一定の空き家を売却したときに、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。
ここで気を付けたいのは、相続した空き家なら何でも対象になるわけではないという点です。控除を受けるには、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であり、かつ当該被相続人以外に居住していた者がいないことや、一定の耐震基準を満たすこと、または解体して更地で売ることなど、いくつかの要件があります。
そのため、相続した実家を売るときは、売却価格だけでなく、この特例が使えるかどうかまで含めて確認することが大切です。適用できれば、手元に残る金額が大きく変わることがあります。
空き家特例(相続空き家の3,000万円特別控除)の計算式と使用例
空き家特例の効果を見るために、まず譲渡所得税がどう決まるのかを理解しておきましょう。空き家を売却したときに税金がかかるのは売却額そのものではなく、売却によって出た利益にあたる「譲渡所得」です。相続空き家の3,000万円特別控除は、この譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度です。
計算の流れは、次のようになります。
- 譲渡所得 = 収入金額(売却価格) − 取得費 − 譲渡費用
- 特例適用後の課税譲渡所得 = 譲渡所得 − 特別控除額(最大3,000万円)
- 税額 = 課税譲渡所得 × 税率
ここでいう取得費は、その家を取得したときの購入代金などです。譲渡費用には、仲介手数料や測量費、解体費など売却のために直接かかった費用が含まれます。ここで控除後の課税譲渡所得が0円以下となる場合、譲渡所得に対する所得税および住民税は課税されません。
たとえば、相続した実家を4,000万円で売却し、取得費が500万円、譲渡費用が200万円だったとします。この場合、まず特例を使わない譲渡所得は以下のとおりです。
- 4,000万円 − 500万円 − 200万円 = 3,300万円
この3,300万円に所得税と住民税の 税率を乗じます。税率は所有期間により異なりますが、相続の場合は被相続人の所有期間を引き継ぐため、多くは「長期譲渡所得(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)」が適用されます。
- (3,300万円 × 15%)+(3,300万円 × 0.315%)+(3,300万円 × 5%)= 670万3,950円
一方で、空き家特例を使える場合は、上記の計算で求められた譲渡所得額である3,300万円からさらに3,000万円を差し引けます。
- 3,300万円 − 3,000万円 = 300万円
この場合、課税対象となる譲渡所得は300万円まで下がり、税額も約61万円まで下がります。特例を使わない場合と比べて約600万円の差が出る計算です。
耐震基準を含む、空き家特例(相続空き家の3,000万円特別控除)の要件

空き家特例制度を利用する際に特に重要なのが、基本的に旧耐震基準で建築されている「 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物(新築)であること」と、売却時に「現行の耐震基準を満たしていること、または、建物を解体していること」の2点です。
しかし、その他にも、対象となる家屋や敷地の条件、相続後の利用状況や売却時の状態にも細かな要件が設けられています。ここでは、それらの要件をまとめてチェックしていきましょう。
特例の対象になる家屋・敷地
特例の対象になるのは、被相続人が相続開始の直前まで居住していた家屋と、その敷地です。基本的には、親が一人で住んでいた古い実家を相続したケースが想定されています。
対象となるのは、以下の条件すべてを満たしている場合です。
- 被相続人が相続開始の直前まで住んでいた家であること
- 昭和56年5月31日以前に建築された家であること
- 区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)ではないこと(一戸建てであっても、登記上区分所有されていれば対象外)
- 相続開始の直前に、被相続人以外が住んでいないこと
また、建物だけでなく、その家の敷地として用いられていた土地と、その土地にある権利も特例の対象になります。ただし、同じ土地に母屋や離れなどの用途上不可分の関係にある建築物がある場合は、被相続人が居住していた家屋の床面積の占める割合で按分した面積のみ対象になります。
空き家特例の耐震基準要件は?売却後に耐震改修・解体してもOK?
特例の適用を受けるには、対象となる家屋・敷地であることに加えて、相続後から売却までの扱い方にも注意が必要です。特に見落としやすいのは、「相続した後の使い方」と「売却時の建物の状態」です。
押さえておきたい主な要件は、以下のとおりです。
- 売却者は、相続または遺贈によって被相続人の居住用住宅を相続した人であること
- 売却した物件が、以下のいずれかに該当すること
- 1.相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋、または、被相続人居住用家屋と被相続人居住用家屋の敷地(譲渡をする時点において一定の耐震基準を満たしていること/相続してから売却するまで「居住用」「事業用」「貸付用」 として使っていないなどの要件あり)
- 2.相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を取壊した後に、その敷地を売却する
- 3.相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋、または、被相続人居住用家屋と被相続人居住用家屋の敷地で、1とは別の各種条件を満たしている場合(相続の時から譲渡の時までの間に事業の用、貸付けの用、居住の用に供されていないこと/譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったこと/譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、被相続人居住用家屋の取壊しを行ったこと)
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること(共有相続人全員の売却代金の合算額で判定)
なお、2024年(令和6年)1月1日以降の譲渡では、売却時に耐震基準を満たしていなくても、譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または解体を完了すれば特例の適用が可能になりました。
これらの条件が複雑なため、詳細は国税庁のウェブサイトを確認するか、税務に精通した不動産会社や税理士へ相談することをお勧めします。
なお、上記の条件から、耐震基準に関する要件を整理すると、以下の2パターンに整理できます。
- 耐震改修をして、建物付きで売る
- 建物を解体して、更地で売る
つまり、特例を使うには空き家に対して耐震改修か解体で安全性を担保する必要があるということです。旧耐震の家をそのまま売るだけでは、特例は使えません。
耐震基準が旧耐震建築物に限定されている理由は?
空き家特例が旧耐震建築物に限定されているのは、老朽化した住宅の流通や除却を促すためです。
本制度で対象となっている1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された住宅は、その多くが「旧耐震」と呼ばれる基準で建築されています。これは、1981年6月以降に建築確認を受けた「新耐震」の住宅に比べて耐震性が弱い傾向にあり、そのままの状態で流通させるにはリスクが伴います。
そこで国は、一定の要件を満たして売却した場合に3,000万円特別控除を認めることで、「古い空き家をそのまま放置せず、耐震改修や解体を進めて市場に出してもらう」ことを後押ししているわけです。
つまり、この特例は単なる相続支援ではなく、老朽空き家対策としての意味合いが強い制度なのです。
「一定の耐震基準」をクリアするには「耐震改修」と「解体」のどちらがいい?

空き家特例の要件の一つである「一定の耐震基準」を「耐震改修をして建物付きで売る」と「建物を解体して更地で売る」のどちらで満たすかは、空き家の状態や市場価値などによって判断が変わります。
まず、耐震改修をして売却する方法は、空き家の状態が比較的良好なら選択肢になります。住宅が残っていれば「すぐ住める」「リフォーム前提で活かせる」といった魅力が打ち出せます。
逆に空き家の老朽化が進んでいる場合は、改修費用がかかりすぎてしまう恐れがあるため、耐震改修をしても効果が見込みにくいでしょう。
解体して更地で売る方法は、空き家の傷みが大きい場合や、土地としての需要が見込めるエリアにある場合などに選択肢になります。買主にとっては古家の撤去費用を節約できたり、すぐに建築に取り掛かれたりといったメリットがあるため、新築用の土地を探している人には魅力的に映ることでしょう。
ただし、更地にしたまま翌年を迎えてしまうと、住宅が建っている土地の固定資産税が最大6分の1になる「住宅用地の特例」が解除されて、固定資産税の負担が上がる可能性があります。そのため、解体するタイミングは検討する必要があります。
空き家特例を申請する流れ
空き家特例が適用されるには、要件を満たした状態で売却したうえで、必要書類をそろえ、確定申告時に申請する必要があります。
手続きの基本的な流れは、次のとおりです。
- 1.相続した家が特例の対象になるか確認する
- 2.必要に応じて耐震改修または解体を行う
- 3.家屋や土地を売却する
- 4.建物が存在する市区町村で、要件を満たす建物であることを証明する被相続人居住用家屋等確認書を取得する
- 5.その他の必要書類を取得する
- 6.確定申告で特例の適用を申請する
手続きで気を付けたいのは、売却したら自動的に適用されるのではなく、要件確認・書類取得・申告までを完了して初めて特例が使えるということです。また、途中で要件を外れてしまうと適用できなくなるため、売却前の段階から必要書類や手続きの流れを確認しておきましょう。
事前に適用されるか確かめたい場合は、基本条件を整理したうえで、自治体窓口や税理士、不動産会社などの専門家に確認しておきましょう。特に、市区町村で取得する「被相続人居住用家屋等確認書」は重要な判断材料になるため、売却後に慌てないよう、早めに取得条件を確認しておきましょう。
申請に必要な書類
空き家特例の申請では、相続した家が要件を満たしていることや、実際に売却したことを示す書類が必要です。
なお、建物付きで売却する場合と、解体して更地で売却する場合の違いによって、必要書類が変わってきます。
主な必要書類は、以下のとおりです。
建物のみ、または建物と土地を売却する場合
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)土地・建物用
- 売却した資産の登記事項証明書で、一定の必要要件を明らかにするもの
- 被相続人居住用家屋等確認書(一定の要件あり)
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(譲渡の日前2年以内に証明のための調査が終了しているまたは評価されているもの)
- 売却代金が1億円以下であることを証明する書類(売買契約書の写しなど) など
解体して更地で売却する場合
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)土地・建物用
- 売却した資産の登記事項証明書で、一定の必要要件を明らかにするもの
- 売却代金が1億円以下であることを証明する書類(売買契約書の写しなど)
- 被相続人居住用家屋等確認書(一定の要件あり)
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写しまたは、期間内に被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした旨を証する書類 など
よくある疑問(Q&A)

空き家特例は要件が細かいため「自分のケースでも使えるのか」が分かりにくい制度です。そこでここでは、制度の適用要件について、3つのよくある疑問に回答していきます。
マンションやアパートは対象になる?
空き家特例の対象になるのは、区分所有建物ではない家屋に限定されるため、マンションやアパートは原則として対象になりません。
そのため、親が一人で住んでいた家を相続した場合でも、それがマンションであれば空き家特例は使えません。「被相続人が住んでいた家かどうか」だけでなく「建物の種類」まで確認する必要があります。
兄弟など複数人で相続した場合の扱いは?
兄弟など複数人で空き家を相続した場合でも、要件を満たせば、それぞれが空き家特例を使える可能性があります。
たとえば、被相続人の親から子ども2人が空き家になっている実家を相続し、その家と土地を共有したまま売却したケースでは、2人それぞれが最大3,000万円の特別控除を使える可能性があります。
ただし、2024年改正により、相続人の数が3人以上である場合、特別控除額は1人あたり2,000万円に制限されます。この「3人」には、特例を適用しない相続人も含めた「相続による取得者の総数」でカウントされる点に留意してください。
また、特例の適用を受けるには、居住用家屋とその敷地の両方を相続していることが必要です。家屋と敷地をそれぞれ共有で相続しているなら対象になり得ますが、家屋は兄、敷地は弟というように別々で保有している場合は適用できません。
自宅売却の特例と空き家特例の併用はできる?
自宅売却の3,000万円特別控除と、相続空き家の3,000万円特別控除は、同じ不動産に対して二重に使うことはできません。 そもそも対象となる不動産の性質が異なり、自宅売却の特例は自分が住んでいた家、空き家特例は相続した一定の空き家が対象です。
そのため「自分の家を売るケース」と「相続した実家を売るケース」は基本的に別制度として考える必要があります。相続した実家について空き家特例を使う場合は、その不動産が要件を満たしているかを個別に確認することが重要です。
また、特例には併用できない組み合わせや、選択が必要になるケースもあります。売却前に制度の適用関係を整理しておかないと、想定していた控除が使えないこともあるため、不安があれば税理士や税務署に確認しながら進めたほうが安心です。
まとめ:空き家特例と耐震基準を踏まえたスムーズな売却を
空き家特例で大切なのは「対象になる家か」「耐震基準をどう満たすか」「申告まできちんと完了できるか」を順番に確認することです。特に、建物付きで売るなら耐震改修、建物を残す意味が薄いなら解体して更地で売るなど、空き家の状態と売り方に合わせた判断がそのまま特例の使いやすさにつながります。
また、この制度は節税効果が大きい反面、耐震性や利用状況、必要書類など要件が細かく、途中で条件を外すと適用できなくなることもあります。売却を進める前に、自治体で確認書の取得条件を確認し、不動産会社や税理士とも相談しながら進めていくと安心です。特例は「あとで申告すればいい制度」ではなく、売る前の段階から逆算して準備しておく制度だと考えると動きやすくなります。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。