公開日:2025.10.23 更新日:2026.06.25
準防火地域とは?規制内容・防火地域との違いをわかりやすく解説
家を建てたり不動産を購入したりする際、「準防火地域」という指定があると、建築コストが上がったり、希望の間取りや窓のデザインが制限されたりするケースが少なくありません。
準防火地域は火災の延焼を防ぐための重要な規制ですが、「知らずに土地を買ってしまい、後から予算オーバーになった」という失敗も後を絶ちません。
そこで本記事では、準防火地域の具体的な建築基準や、気になる「費用・設計への影響と対策」をわかりやすく解説します。
- 準防火地域とはどのような区域か
- 防火地域や法22条区域との違いは何か
- 建築物に求められる具体的な基準
- 費用・設計への影響と対策
記事を読み終えたとき、準防火地域の規制を正しく理解し、安心して不動産取得や建築計画を進められる状態になることを目指しています。
目次
準防火地域とは?

準防火地域とは、住宅や建物が密集する市街地において火災の延焼を防ぐため、建築基準法第61条に基づき耐火・準耐火構造などの防火性能が建築物に義務付けられる都市計画上の地域指定です。
主に、市街地や主要施設の周辺など、建物が密集する場所が対象となり、建物の防火性能を高めるための建築基準法上の制限が課せられます。建築時に求められる条件は、区域内にある建築物は階数と延べ床面積に応じて以下のように変わります。
準防火地域で求められる制限一覧
| 階数 | 500㎡以下 | 500㎡超〜1,500㎡未満 | 1,500㎡超 |
|---|---|---|---|
| 4階以上 | 耐火構造 | 耐火構造 | 耐火構造 |
| 3階建 | 一定の防火措置 | 準耐火構造 | 耐火構造 |
| 2階建 | 防火構造(木造建築物等に限る) | 準耐火構造 | 耐火構造 |
| 1階建 | 防火構造(木造建築物等に限る) | 準耐火構造 | 耐火構造 |
準防火地域では、延焼の恐れのある部分の開口部には20分の遮炎性能を持つ防火設備が義務付けられています(建築基準法第61条)。
規制の対象となる「延焼のおそれのある部分」とは?
準防火地域内であっても、建物すべての窓や外壁に厳しい規制がかかるわけではありません。対象となるのは、法律で定められた「延焼のおそれのある部分」に限られます。
具体的には、隣の家で火災が起きた際に、火をもらいやすい以下の範囲(距離)を指します。
- 1階部分:
隣地境界線や道路中心線から、水平距離で3メートル以内にある建物の部分 - 2階以上の部分:
隣地境界線や道路中心線から、水平距離で5メートル以内にある建物の部分
敷地が広く、隣地境界線から3〜5メートル以上離して建物を建てられる場合は、その離れた部分にある窓(開口部)には、網入りガラスや高価な防火サッシを使う必要はありません。一般的な透明ガラスやデザイン性の高いサッシを選べるため、土地の広さや配置(配置計画)次第で建築コストを抑えることが可能です。
準防火地域と「防火地域」の違い・規制一覧
防火地域は、火災リスクが特に高い場所に指定される、準防火地域よりも規制が厳しい区域指定です。規制の内容は以下のとおりで、規制対象となる延べ床面積が大幅に少なくなっていることが分かります。
防火地域で求められる制限一覧
| 階数 | 100㎡以下 | 100㎡超〜500㎡以下 | 500㎡超 |
|---|---|---|---|
| 4階以上 | 耐火構造 | 耐火構造 | 耐火構造 |
| 3階建 | 耐火構造 | 耐火構造 | 耐火構造 |
| 2階建 | 準耐火構造 | 準耐火構造 | 耐火構造 |
| 1階建 | 防火構造(付属建築物に限る) | 準耐火構造 | 耐火構造 |
また、準防火地域同様に、すべての条件で窓に20分の遮炎性能を持つ防火設備を設け、屋根に不燃材料等を用いることが求められます。
準防火地域と「法22条区域(屋根不燃化区域)」の違い
法22条区域とは、建築基準法第22条に基づき、準防火地域や防火地域よりも緩やかな規制が適用される区域です。
法22条区域内では、すべての建物に「屋根不燃構造」が求められ、さらに屋根に不燃材料等を使用することと、窓に20分の遮炎性能を持つ防火設備を設けることが求められます。
準防火地域の戸建てに求められる4つの建築基準

ここでは、準防火地域で求められる主要な4つの基準、耐火構造・準耐火構造・一定の防火措置・防火構造について、その具体的な内容を解説します。
なお、規制の厳しい順に並べると、耐火構造 > 準耐火構造 > 一定の防火措置 > 防火構造となります。
耐火構造
耐火構造とは、通常の火災が発生した際、建築物が火災の終了まで倒壊や延焼を防ぐために必要な性能を持った構造のことです。建築基準法第2条第7号に定められており、具体的な構造の条件は、建築基準法施行令第107条に定められています。
具体的には、壁・柱・床・はり・屋根・階段の主要構造部が、下記表に記した時間の間、構造耐力上支障のある変形、溶解、破壊、その他の損傷を生じないことが求められます。
耐火建築物における階数と主要構造部による制限
| 対象の部位 | 最上階および最上階から数えた階数が2以上4以内の階 | 最上階から数えた階数が5以上9以内の階 | 最上階から数えた階数が10以上14以内の階 | 最上階から数えた階数が15以上19以内の階 | 最上階から数えた階数が20以上の階 |
|---|---|---|---|---|---|
| 間仕切り壁(耐力壁に限る) | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 外壁(耐力壁に限る) | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 柱 | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 床 | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2.5時間 | 3時間 |
| はり | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 屋根 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 |
| 階段 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 |
また、表に該当しない壁と床については1時間、非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分は30分間、それぞれ火熱された場合に、可燃物が燃焼する恐れのある温度に到達しないことが求められます。
さらに、表に該当しない外壁と屋根は1時間、非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分と屋根は30分間、それぞれ火熱された場合に、屋外に火炎を出す原因となる亀裂や損傷を生じないことが求められます。
なお、主要構造部に使用する材料は、その性能を保証するために、国土交通大臣の認定を受けたものを使用する必要があります。
準耐火構造
準耐火建築物とは、建築基準法第2条第7号の2に定められた、通常の火災が起こった場合に、一定時間、建築物の倒壊や延焼を防止できる性能を持った構造の建築物です。具体的な構造の条件は、建築基準法施行令第107条の2に定められています。全体的に耐火建築物より基準が緩やかになっています。
準耐火建築物における階数と主要構造部による制限
| 対象の部位 | 最上階および最上階から数えた階数が2以上4以内の階 | 最上階から数えた階数が5以上9以内の階 | 最上階から数えた階数が10以上14以内の階 | 最上階から数えた階数が15以上19以内の階 | 最上階から数えた階数が20以上の階 |
|---|---|---|---|---|---|
| 間仕切り壁(耐力壁に限る) | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 外壁(耐力壁に限る) | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 柱 | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 床 | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2.5時間 | 3時間 |
| はり | 1時間 | 1.5時間 | 2時間 | 2時間 | 2時間 |
| 屋根 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 |
| 階段 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 |
また、上記の表に記載がない壁、床、軒裏については、45分間、延焼の恐れがある部分以外の非耐力壁である外壁と軒裏については30分間、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないことが求められます。
さらに、上記の表に記載がない外壁と屋根については45分間、延焼の恐れがある部分以外の非耐力壁である外壁については30分間、屋外に火炎を出す原因となる亀裂や損傷を生じないことが求められます。
なお、使用する材料は、耐火建築物と同じく国土交通大臣の認定を受けたものに限ります。
一定の防火措置
一定の防火措置とは、火災時に倒壊しない寸法の柱やはり、防火構造の外壁や軒裏などを満たすことをいいます。具体的な条件は以下のとおりです。
- 隣地境界線等から1m以内の外壁の開口部に防火設備を設けること
- 外壁の開口部の面積を、隣地境界線等からの距離に応じた数値以下にすること
- 外壁を防火構造とし、屋内側から燃え抜けが生じない構造にすること
- 軒裏を防火構造にすること
- 柱・はりが一定以上の小径、又は防火上有効に被覆されていること
- 床・床の直下の天井は燃え抜けが生じない構造であること
- 屋根・屋根の直下の天井は燃え抜けが生じない構造であること
- 3階の室の部分とそれ以外の部分とを間仕切壁又は戸で区画すること
防火構造
防火構造とは、建築基準法第2条第8号に定められた、外壁と軒裏が一定の防火性能を満たしている構造のことです。具体的な条件は建築基準法施行令第108条に定められており、以下のようになっています。
- 耐力壁である外壁が、通常の火災により火熱を加えられた場合に、30分間構造耐力上支障のある変形、溶解、破壊その他の損傷を生じないこと
- 外壁及び軒裏が、通常の火災により火熱を加えられた場合に、30分間、加熱面以外で屋内に面するものの温度が、可燃物燃焼温度以上に上昇しないこと
不動産が準防火地域と他エリアにまたがる場合の扱い

土地が複数の防火規制区域にまたがる場合は、面積の割合にかかわらず最も厳しい地域の基準が建物全体に適用されます。ただし、防火壁で区画することで区域ごとに別々の基準を適用できる場合もあります。
| またがる地域の組み合わせ | 優先適用される地域 |
|---|---|
| 準防火地域 + 防火地域 | 防火地域 |
| 準防火地域 + 法22条区域 | 準防火地域 |
この場合、敷地がまたがっている割合に関係なく、最も厳しい規制が適用されます。
ちなみに、準防火地域と法22条区域にまたがっている場合は、建物内におけるエリアの境目に防火壁を設ければ、延焼の可能性が低いとみなされ、建物の準防火地域と法22条区域を分けて扱うことができます。
準防火地域で不動産を取得・建築する際のポイント
準防火地域は建築物の設計に大きな影響を与えるため、不動産を取得・建築する場合は、本当に妥当な選択なのかを確認する必要があります。ここでは、その際に特に注意したい3つのポイントを紹介します。
希望通りの設計ができるかを調べる
最初に確認すべき点は、準防火地域の制限下においても自分の希望するデザインや間取りが実現するかです。
特に新築するときは要注意ですが、どんなこだわりを持って建築に臨んでも、法令に定められる基準に適合しなければ建築確認が出ず、建築行為に移ることができません。使用材料が指定される部分も多いので、事前に建築士や工務店と相談し、希望するデザインがどこまで実現できるか確認しておきましょう。
また、中古物件を購入する場合も、その物件が準防火地域の建築基準に適合しているかを確認しましょう。中には、建築確認を取得せずに建てられた「違法建築物」も存在します。
準防火地域では「網入りガラス」を拒否して、透明なガラスにできる?
準防火地域で家を建てる際、多くの人が直面するのが「窓が網入りガラス(ワイヤー入りのガラス)になってしまい、景色が見えにくくなる」という悩みです。結論から言うと、網入りガラスを拒否して、完全に透明な窓にすることは可能です。
以前は選択肢がほぼ網入りガラスに限られていましたが、現在は各サッシメーカー(LIXILやYKK APなど)から、網の入っていない「耐熱強化透明ガラス」を使用した防火設備サッシが販売されています。
【透明なガラスにする際の注意点】
- 建築コストが跳ね上がる:
耐熱強化透明ガラスは、通常の網入りガラスに比べて部材費用が大幅に高くなります。すべての窓を透明タイプに変更すると、数十万〜100万円以上の追加費用(オプション代)がかかるケースが一般的です。 - メーカーやサイズに制限がある:
ハウスメーカーの標準仕様から外れる場合があるため、間取りや窓のサイズによっては対応できないこともあります。
「リビングの大きな窓だけは開放感を出すために透明な耐熱ガラスにし、寝室や水回りの小窓はコストを抑えるために網入りガラスにする」といった、メリハリをつけた予算配分がおすすめです。
コストへの影響を調べる
設計の自由度と合わせてコストへの影響もチェックしておきましょう。耐火構造や準耐火構造で求められる材料は、通常の建築材料よりもコストが高いことが多く、それが積み重なっていくと、全体のコストが大きく上がる可能性があります。
建築メーカーに見積もりを取る際は「準防火地域対応の仕様」で算出してもらい、準防火地域以外で建築した場合との差も出してもらいましょう。
- サッシ(窓・ドア)のグレードアップ:
最もコストが上がる部分です。網入りガラスや、国土交通大臣認定の「防火設備(アルミサッシ・樹脂サッシ)」にする必要があり、一般的な窓に比べて数十万〜100万円以上のコストアップになることがあります。 - 外壁・軒裏の仕様変更:
火に強いサイディングの選定や、下地に石膏ボードを重ね貼りするなどの手間と材料費がかかります。 - 換気口(ガラリ)などの細かなパーツ:
火災時に自動で閉鎖する「防火ダンパー」付きの換気口にする必要があります。
※ハウスメーカーによっては、最初から「準防火地域仕様」が標準プランに含まれている会社と、すべてオプション扱い(坪単価+数万円)になる会社があるため、相見積もりでの確認が必須です。
周辺環境の確認
準防火地域は、住宅や商業施設が密集しているエリアに指定されることが多いため、隣地との距離や建築物の配置にも注意が必要です。特に建築物同士が近い場合は延焼リスクも高くなりやすいため気を付けましょう。
また、建築物が密集していると、日当たりや風通し、騒音といった居住環境にも影響が出ます。特に日当たりは季節や時間帯で変わるので、購入前に現地で確認しておくと安心です。準防火地域かどうかを調べるには?
準防火地域の調べ方
準防火地域の指定は、該当する市区町村の公式サイトで下調べをしてから、窓口で確認するのが確実です。中にはウェブ上で確認できるサービスもあったりしますが、建築物全体に関係する大きな規制なので、法令を管理している自治体で信頼できる情報を得るべきです。
具体的には、市区町村の建築担当や都市計画担当で確認できます。また、窓口で「都市計画図」という、準防火地域を含む都市計画法上の制限を図示した図面を販売しているので、資料として購入しておくとよいでしょう。
ただ、都市計画図は縮尺が大きいので、細かな範囲を確認したい場合は、担当職員に直接教えてもらう必要があります。
まとめ・総括
準防火地域は、防火地域に比べると規制は緩やかですが、建築基準法第61条に基づき建物の防火性能が求められる点で、一般地域と比べると厳格な規制です。制限を理解せずに建築を進めると、設計変更や追加費用に直面するリスクがあるため、指定されている場合は必ず条件を把握したうえで、建築や売買を進めましょう。
また、区域が複数の規制にまたがる場合に、より厳しい基準が適用される点には要注意です。ここを間違えると前提が変わってしまい、設計通りの建築物が建てられなくなる恐れがあります。
建築や売買を進める場合は、まず専門家や自治体窓口に相談し、法令を遵守する形でプランを描くところから始めましょう。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。