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2021.08.02

【特別対談/積立王子×ジェクトワン】長期投資と空き家活用-二人が目指す“本来の姿”とは (後編)

セゾン投信 代表取締役会長CEO 中野晴啓氏

ジェクトワン 代表取締役 大河幹男

2本の長期資産育成型ファンドを運用し、“積立王子”の愛称で親しまれている、セゾン投信の代表取締役会長CEO・中野晴啓氏。一方で、マルチカテゴリーの不動産事業を展開するかたわら、不動産事業としては珍しい空き家活用事業「アキサポ」(※)に取り組む株式会社ジェクトワンの代表取締役・大河幹男。二人が目指したのは、それぞれの“本来の姿”の実現でした。前編に続き、後編では、ここでしか聞けないお二人の素顔に迫ります。

※アキサポ…所有者から空き家を借り受け、ジェクトワン負担でリノベーションし、新たな利用者に一定期間賃貸する仕組み。一定期間経過後は、生まれ変わった空き家を自ら使用することも、所有者と利用者との間で賃貸を継続して賃料収入を得ることもできる。

≪写真左:ジェクトワン 代表取締役 大河幹男 写真右:セゾン投信 代表取締役会長CEO 中野晴啓氏≫

―小さい頃はどんな少年でしたか?

中野氏:小さい頃は、“ザ・地味”。僕、親から、目立たない人生を送りなさい、人並みでいいのよ、みんなに叩かれたりしない、そーっとした人生が一番いいんだからと言われて育ったんですよ。だから普通を絵に描いたような子だったんです。

でも思い起こすと、少年野球大会をやると8番目くらいに選ばれる。1,2番目には絶対選ばれないんですけどね(笑)あと、合唱コンクールでも歌う側がいいなと思っていても、指揮者に選ばれる。「あいつに指揮者やらせようぜ」みたいな感じで(笑)学級委員も立候補はしないけど3番目くらいに名前がある。自分から何かというタイプではないけど、周りから可愛がられるタイプだったのかな。

大河:僕はね、たまたま最近、実家で一人暮らしの高齢の母が引っ越すとなって、荷物の整理に行ったんですよ。そしたら古いアルバムが出てきて。で、見て、思い出したんですけど、僕、高校のとき、ヤンキーだったんですよ、パーマかけて(笑)でもそんなことその時まで一切忘れていたんです。

中野氏:人間って忘れたいこと封印するんですよね、解放されちゃったんですね(笑)

大河:あ、ヤンキーのことは書かなくていいですからね!(笑)えっと、高校3年生の時に、松本清張の小説を読んで「弁護士になりたい!」と思って大学受験したんですけど、うまくいかなくて。なので入学後はもう諦めて普通に働くしかないなって思っていましたね。

中野氏:弁護士を目指されていたんですね。僕は小さい頃、交換日記していた女の子のお父さんがNHKのアナウンサーで、テレビに出ていたんです。その姿がやっぱりかっこよくて、アナウンサーになりたいって思ったんですよ。そこで自我が目覚めたんですよね、テレビに出るってこんなにかっこいいんだ!自分もなりたい!と。今でこそアナウンサー以上にお話する場をいただいていますけど、元々引っ込み思案の性根ですから、すぐ赤くなっちゃうんですよ。

大河:そんな風には見えないのですが(笑)

―今の業種を志したきっかけは?

大河:僕は元々商社にいたんですけど、平均年齢42歳ぐらいの会社で、入社したときはろくな仕事をさせてもらえないんです。そんなとき、僕の近しい人で、野村不動産で土地の仕入をやっている人がいて、その人の話を聞いたらデベロッパーの仕事って面白いな、土地買って建物を作るって面白いな、と感じて転職しました。

転職後に初めて土地を買い、2年後、その土地にマンションが完成したんです。何もなかった土地にマンションが建ち、洗濯物が干されている、子どもたちの笑い声が聞こえる、夜になったら明かりがついているだとか、すごく生活感を感じて、震えてきて、何にもなかったところに僕が関わるとこんな大きなものができるのか、と感動して、この仕事は一生続けようと思ったのが25歳の時でした。何もなかったところに目に見えるものができてそれが残る、というのに面白さを感じました。

中野氏:僕はセゾングループという会社を志向した理由が、「婦人服を売りたかった」なんですよ。

大河:えっ?婦人服?

中野氏:洋服が好きで、デパートでDCブランドを取り扱いたくて、入社したんですけど、そういったところに配属されなくて、入社3日目で運用の部署に配属されちゃったんですね。だから自分がやりたいことではなかったというスタートだったんですけど、そのおかげでセゾングループにおけるジョブローテーションから外れて、専門職としてその仕事をずっとやり続けて。

運用の現場でファンドマネージャーも10年以上やれましたし、結果的にはそれが自分に向いている仕事だったんですね、天才的に向いていたんですね(笑)やりたい仕事ではなかったんですけど、こんなに面白くて、こんなに簡単にアドバンテージをとれる仕事はないなって思ったんですよね。

当時、資産運用の仕事をしてる人なんて少なくて、“オジサン”しかいないんですよ。オジサンは株を売ったり買ったりっていうことしか頭になくて勉強しないんですけど、僕は当時金融理論から入っていって、デリバティブ取引(※株式、債券、預貯金・ローン、外国為替などの金融商品のリスクを低下させたり、リスクを覚悟して高い収益性を追及したりする手法)とかそういった高度な金融知識まで、若いから簡単に身につくわけですよ。で、気づいたらオジサンの中で自分が最先端になっていて、これは日本において自分が高いレベルの専門職として生きていけるなと。

そういった機会を得られてありがたかったですね。それを経てたどり着いたのが長期投資だったんです。1年でいくら儲けた、とかいうのは金融じゃないと、気づくわけですよ。本来の運用というのは5年スパン、10年スパンできちんと世の中の付加価値を提供していく支えになる、金融としての役割を果たしていくのが長期投資なのだと。

―経営者としての日々のプレッシャーに対して、息抜きの方法は?

大河:僕、無趣味なんで(笑)仕事が趣味みたいな・・・仕事がストレスとか、感じたことないんですよね。

中野氏:誰かからムカつくこと言われたら、どうしています?(笑)

大河:ああ、まあ、時間が解決するかなって(笑)

中野氏:えー、結構忍耐強いんですか?

大河:そんなこともないんですけど(笑)周りの経営者を見てると、みんないろいろ趣味があってうらやましいと思います。僕、いまだに土日も現調(※現地調査。物件を実際に見に行くこと)行くんですよね。好きで見に行くんですよ。あえて言うなら、寝る前に本読んだりテレビ観たりしてリラックスするぐらいですかね。

中野氏:古いタイプの…(笑)

大河:いや、もう、そうですね(笑)だから逆にゴールデンウィークとかの長期休暇が嫌なんですよ(笑)

中野氏:ですよね、めちゃくちゃ共感します(笑)僕も趣味ないですもん、だから「趣味:仕事」って言わざるを得ないんですけど。そうそう、周りから嫌なこと言われると、結構それがネチネチと忘れられなくて、「いつか見返してやる」とか思っちゃって、これがまあストレスなんですね(笑)

大河:そんな言われることあるんですか?(笑)

中野氏:ありますよ!結構執念深く考えちゃうんで、そういうときの息抜きってことだったら、僕はやっぱり温泉ですかね。お風呂が好きで、毎日必ず湯船にお湯を張って、しっかりお湯に浸かって、一日の嫌なことを洗い流すと(笑)これが日々の解消法ですね。

お風呂から出たら「あいつのこと、許してやろう」って気持ちをコントロールしています。入浴剤はいろんな種類をまとめて大人買いしてストックしてるんです。で、毎回、考えないでぱっと取ったやつを入れる、入れてから「あ、今日のお風呂は緑だったんだ!」って気づくみたいな(笑)いろんな種類ありますけど、やっぱり乳白色のお風呂がよいですね。

―経営者としての楽しさ・やりがいと大変さを、割合で言うなら?

大河:大変さは2,3割。あとはやりがいとか楽しさがそれ以上ですね。

中野氏:僕は…いつまでもはやっていたくはないかな。経営者は一度やったらやめられないって言う人もよくいるんですけど、僕はまぁ、向いていないのかもしれないですね、A型で細かくて、どっしりしていないんで(笑)楽しさは何か、といえば自分がやりたいと思うことをやれる、ということですね。何か次、違うことやりたいというときも自分でやりたいというのはありますね。

大河:それは確かにそうですね。

中野氏:自分でこうやりたいというものをやりたいですよね。大変なところもこれもまた単純で、自分で決めないといけない。決めないといけないことは前向きなことばかりではない。社員は何も決めてくれない。決められないことはたくさんありますよね、どうしよう、これは答えがないと。そのときはもう、勘です。最後は自分で全て決めなければいけない。ゆえに経営者が孤独というのは万人が言いますよね。あと、飲み会も僕だけ誘われないとか(笑)

大河:そうそう、「社長は忙しそうだから…」って言って、僕以外でみんな楽しくやってる(笑)今思うと、社員数が10,20人の頃は楽しかったなぁ。今ぐらいの50人規模になると、飲み会でも社長としてあるまじき姿を見せていけないと。社員旅行に行っても、社長と遊びたいという人もいないし。部屋で一人過ごすことになっちゃって。

中野氏:僕も12人で始まった創業時は、みな“仲間”と感じていましたね。今は“会社”になっちゃった。だから羽目を外せなくなったのかもしれませんね。

大河:あと、ジェクトワンの平均年齢って32歳ぐらいで、みんな若くて、僕と歳が結構離れてるんですよ。

中野氏:先ほど社内を見学させていただきましたけど、確かにみなさんお若いですよね。そういった悩みも出てきてしまいますね。

≪フリーアドレスを実践しているジェクトワンのオフィス≫

≪対談当日は2体のLOVOT(うりぬし・かいぬし)が中野氏を出迎えた≫

―最後に、今後の展望は?

中野氏:大きな目標という意味では、長期投資マネーをものすごく大きな流れにして世の中のスタンダードにして、日本のお金の流れを変えるというのが僕らのミッション。今、日本のお金の流れは金融主導、政府主導になってしまっていますけど、これを民間主導、生活者主導に変えるというのがセゾン投信の社会的ミッションだと思っています。

僕のそもそもの究極の事業目的は、投資信託、長期投資というのをしっかりと支えて、そのお金が市民権を得てきちんと産業界に存在価値と影響力を与える、この金融サイクルを作っていくことなんです。そうするとこの金融サイクルの主役が、我々市民生活者になるんですよ。我々自身の意思が産業界に反映されて、産業界はそのお金で頑張って付加価値を作っていくと。その頑張った価値が世界にリターンで返ってくるというサイクルを作るというね。

では目先は何を考えているかといえば、やっぱり今ある15万人のお客さまの満足度を高めていかなければいけない。信頼はしていてくれているが、人は飽きてしまうんです。飽きてしまうと弱い、易きに流れる、浮気されてしまう。浮気されてしまうと本来出せるはずの成果を出せなくなってしまうので顧客本位が果たせない。ゆえに浮気しないための仕組みが必要で、そういうのをきちんと作っていくことで、セゾン投信の独自性がより確立されるんだろうなと思っています。

大河:大きな目標としては、アキサポ事業を拡大していって、一般の人に「空き家=そのままにしておく」ということではなくて「空き家=活用する、売却する」といった空き家に対して何か能動的に動くという意識の定着ですね。それにより、目に見える形で、現状の空き家率(※総住宅数に占める空き家の割合)を食い止めていく一助になればいいなと。

そもそも、不動産業者は一般的にネガティブなイメージなんですよ。勝手に物を作る、いたるところに建てる。なぜか商社マン、銀行マンとあるのに不動産マンとは呼ばれず、“不動産屋”とある種差別用語で呼ばれる。一方で、アメリカでは、不動産屋は医者や弁護士に続く高い位置づけにあると聞きます。

この見られ方の違いの原因は、おそらく今まで不動産業の“不透明性”のせいでイメージもネガティブに捉えられがちなのかなと。その部分の透明性を出して、それをBtoCの場面にまで浸透させて、ジェクトワンが空き家事業含めてお客さまから信頼していただけるような会社になり、不動産業全体の信頼につながるような、そういった構造にしたいですね。

中野氏:お互い今後も素敵に成長していきましょう!

対談者紹介

中野晴啓(なかの・はるひろ)氏/セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO

東京都出身。1987年クレディセゾンに入社。セゾングループ内の投資顧問事業を立ち上げ、海外資産運用コンサルティングなどに従事。インベストメント事業部長等を経て、2006年にセゾン投信株式会社を創業。以来、「セゾン 資産形成の達人ファンド」「セゾン バンガード・グローバルバランスファンド」の2本の長期資産育成型ファンドを通じて「長期・積立・国際分散」投資の啓発活動を行っている。2021年4月2日、2本のファンドを合わせた運用資産残高は4,000億円を突破した。

大河幹男(おおかわ・みきお)/株式会社ジェクトワン代表取締役

三重県出身。大手デベロッパーを経て、「地域や場所ありきの開発をしたい」という思いから2009年に株式会社ジェクトワンを創業。世の中に真に望まれる不動産事業に取り組むために、単一ではなくマルチカテゴリーの不動産事業を展開。2016年より従来の空き家活用とは一線を画した地域に目を向けた社会問題解決型の空き家活用サービス「アキサポ」をスタート。2021年6月より、アキサポの加盟店事業「アキサポネット」を開始。