公開日:2025.11.24 更新日:2025.11.14
相続不動産の相続税評価額を徹底解説計算方法や特例制度など
相続で不動産を引き継ぐ際、特に不安なのが、土地の評価額と、それに基づく相続税の額ではないでしょうか。
しかし、不動産の評価額は路線価・公示地価・固定資産税評価額など、複数の基準で算出されるため理解が難しく、しかも、誤った判断が相続税の過不足や家族間のトラブルにつながることもあります。
そこでこの記事では、相続不動産の評価額を求めるための仕組みや計算方法、建物ごとの算定基準、評価を下げる特例制度までをわかりやすく整理します。正しい評価を理解して余計な税負担を防ぎ、円満な相続を目指しましょう。
目次
相続不動産の評価額とは?基本的な考え方

相続不動産の「評価額」とは、相続税の算出や遺産分割の基準を決める際に用いられる、不動産の価値を金額で表した数値のことです。
市場の売買価格とは異なり、税務上の統一的な基準として算定されるため、地域による偏りをなくして公平な課税を実現する制度として運用されています。
相続不動産の評価の方法は、土地の場合は「路線価方式」か「倍率方式」が用いられ、建物の場合は原則として固定資産税評価額がそのまま使われます。土地の評価方法は、不動産の所在地(路線価が設定されているか否か)や環境によってどちらを使うかが決まります。
また、評価額は相続の円滑化や資産の適正な把握にも役立ちます。たとえば、遺産分割協議では評価額を基準に各相続人の取り分を調整できるため、感情的な対立を防ぎやすくなりますし、不動産を売却する際の判断材料や、将来的な資産計画を立てる際の目安にもなります。
不動産の相続税評価額の計算方法
先ほど説明した「路線価方式」と「倍率方式」の具体的な説明に移ります。ここでは、制度の概要や使われる場面、計算方法を中心に解説していきます。
それぞれの計算例も提示しますので、ここでしっかりイメージをつかんでください。
路線価方式とは
路線価方式は、国税庁が毎年公表する道路ごとに1㎡あたりの価格である「路線価」を基準にして土地の評価額を求める方法です。 路線価は実勢価格(実際の取引価格)の約7〜8割を目安に設定されており、税務上の評価は実際の売買価格より低くなるのが一般的です。
この方式は、都市部を中心に地価の動きが詳細に把握されている地域で使われています。地方部では路線価が定められていないエリアもあり、そのような場合は倍率方式が用いられます。
路線価方式の計算式は以下のとおりです。
- 相続税評価額 = 路線価 × 土地面積 × 各種補正率(※)
※ 奥行価格補正率や側方路線影響加算率、二方向路線影響加算率など
たとえば、ある土地の路線価が20万円/㎡、面積が100㎡、奥行価格補正率が0.9の場合は以下のように計算します。
- 20万円 × 100㎡ × 0.9 = 1,800万円
倍率方式とは
倍率方式は、国税庁が定めた「評価倍率」に土地の固定資産税評価額を掛けて求める方法です。評価倍率は地域ごとに毎年公表されており、土地の種類や所在地によって異なります。この方式は、地方部を中心とした路線価が設定されていない地域で用いられています。
倍率方式の計算式は以下のとおりです。
- 相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円で、評価倍率が1.1の場合は以下のように計算します。
- 1,000万円 × 1.1 = 1,100万円
ちなみに、土地の固定資産税評価額は、自治体から送られてくる固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書で確認できます。課税明細書が無い場合は、自治体の窓口で固定資産課税台帳を閲覧して確認しましょう。
建物の相続税評価方法

建物の相続税評価は土地とは異なり、各自治体が評価した「固定資産税評価額」をそのまま用いるのが基本です。
ただし、建物を貸している場合は、権利関係を踏まえて評価額が調整されます。たとえば貸家を相続する場合は、建物の固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた額が適用されます。建物の固定資産税評価額は、あくまで相続評価額を算出するための基礎の値と考えておきましょう。
建物の経年減点補正率とは
建物の経年減点補正率とは、建物が経過年数とともに価値が下がっていくことを考慮して、固定資産税評価額を補正するための指標です。
たとえば木造住宅の場合、経年減点補正率は新築時(0年経過時)が1.00で、築1年で0.80前後、その後年数に応じて下がり、築27年で下限の0.20が適用されます。軽量鉄骨造や鉄筋コンクリート造など、構造が丈夫な建物ほど補正率の下がり方は緩やかになります。
たとえば、木造住宅の新築時評価額が2,000万円で、築27年が経過している場合は次のように計算します。
2,000万円 × 0.20 = 400万円
相続不動産の評価額を下げる特例と減額要素

不動産にかかる相続税は、必ずしも満額が課されるわけではなく、一定の条件に当てはまる場合は減額される場合があります。
代表的な制度には以下のようなものがあります。
- 小規模宅地等の特例
- 貸家建付地
- 借地権割合
- 貸家(建物)の評価減
これらを適用できれば、納めるべき相続税額を大きく減らすことができ、場合によっては0円にできることもあります。では、どのような場合に適用されるのか、それぞれ見ていきましょう。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた自宅や事業に使っていた土地などを相続する場合に、宅地の一定の面積まで相続税の減額を受けられる制度です。
条件を満たせば被相続人等の居住の用に供されていた宅地は330㎡まで80%、被相続人等の事業の用に供されていた宅地は、400㎡まで80%の評価減が認められるなど、相続税対策のなかでも特に効果が大きい制度になっています。
ただし、制度の適用を受けるには、相続人の居住状況や事業の継続期間など、細かな要件をクリアする必要がある点には注意しましょう。
貸家建付地による評価減
貸家建付地とは、賃貸住宅などの建物が建っている土地のことです。このような土地は、建物を借りて住んでいる借主がいることで所有者が自由に使うことができないため、自用地に比べて評価額が低くなる特例が適用されます。
貸家建付地の評価額は次の式で算出されます。
- 貸家建付地評価額 = 自用地としての評価額 -(自用地としての評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
借地権割合や借家権割合は地域によって異なりますが、概ね10〜30%程度の減額効果が見込めます。なお、賃貸割合(実際に貸している面積)が低い場合は、評価減も小さくなるため注意が必要です。
貸宅地の評価減
貸宅地とは、借地権や地上権のように宅地の上に付与された権利の目的となっている宅地のことです。これらの権利が設定されている土地は、所有者(地主)が自由に売却・利用できないため、底地部分の評価額が低くなります。
たとえば、借地権の目的となっている宅地の評価額は以下の計算式で求められます。
- 自用地としての価額 - 自用地としての価額×借地権割合
また、地上権の目的となっている宅地の評価額は以下の計算式で求められます。
- 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 相続税法第23条に定める地上権の割合
ちなみに、借地人(借地権を持つ側)はその権利自体に価値があるため、借地権部分が相続財産として評価されます。
貸家(建物)の評価減
貸家の評価減は、賃貸に出している建物に適用される制度です。賃借人が居住しているため、所有者が自由に使えず、固定資産税評価額よりも低く算定されます。
相続税評価では、以下の計算式で求めます。
- 貸家評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
借家権割合はほとんどのエリアで30%とされています。たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の賃貸アパートについて、建物全体を賃貸に出している賃貸割合100%の場合は、以下のように計算します。
- 2,000万円 ×(1 − 0.3 × 1.0)= 2,000万円 × 0.7 = 1,400万円
ちなみに、本制度は貸家建付地の評価減と併用が可能です。両制度を組み合わせれば、土地と建物の両方で評価を下げられるため、大きな相続効果を生み出せます。
ケース別|遺産分割協議利用される相続税評価額

不動産評価額は、相続する遺産の分け方を決める「遺産分割協議」でも活用されます。ここで覚えておきたいのが、遺産分割協議では相続税評価額だけでなく、市場価格である「実勢価格」が用いられるケースもあるということです。
両者は価格に大きな差が出ることがあるため、どちらを基準にするかによって相続人それぞれの取り分が変わる場合があります。そこでここでは、遺産分割協議で相続税評価額がどのように利用されるのか、状況別に3つのケースを見ていきましょう。
ケース1:相続人全員が相続税評価額を基準に合意する場合
多いのが、相続人全員が相続税評価額を基準に分け方を決めるケースです。相続税評価額は、国税庁が定めた「財産評価基準」に基づいて計算されているため、誰にとっても公平性が高く、税務申告との整合もとれます。
また、相続税の申告書に記載する金額と一致させられるため、後のトラブルや再計算の手間が減るという利点もあります。
ただし、この評価額は実際の市場価格よりも低く算定される傾向がある点には注意しましょう。たとえば、路線価に基づいて3,000万円と算出された土地が、実際には3,600万円で取引されることもあります。
不動産をそのまま相続して保有する場合は問題になりにくいですが、将来的に売却を予定している場合は、実勢価格との差を踏まえて調整しておく必要があるでしょう。
ケース2:評価額に意見の相違がある場合
相続人の間で評価額について意見が分かれた場合は、第三者の客観的な意見を取り入れて、どちらの価格を用いるかを決めましょう。
代表的な方法としては、不動産鑑定士に正式な鑑定を依頼する方法や、複数の不動産会社に査定を依頼して比較する方法があります。
それでも意見が一致しない場合は、家庭裁判所の調停制度を利用するのも一つの方法です。第三者を交えて冷静に話し合えるため、感情的な対立を避けながら解決を図ることができるでしょう。
ケース3:裁判・調停で評価が判断される場合
協議や調停でも合意に至らない場合は、最終的には家庭裁判所が評価基準を判断します。このとき裁判所が重視するのは、相続税評価額ではなく実勢価格(市場価格)です。
たとえば、相続税評価額が2,500万円でも、周辺の取引価格が3,200万円前後であれば、裁判所は3,200万円を基準として分割を決定する可能性が高いでしょう。
ちなみに、相続税評価額と実勢価格の差が大きいほど、相続人同士の認識がずれやすく、紛争が長期化するリスクも高まる傾向にあります。意見が食い違ってからでは場を治めるのが難しくなるため、相続開始前から相続税評価額と実勢価格の両方を把握しておき、根拠を整理しておくことが重要です。
まとめ|相続不動産の評価額を理解して円満な相続を
相続不動産の評価額は、税額の計算だけでなく、家族間の話し合いを円滑に進めるうえでも重要な基準になります。評価方法を誤ると、税金を払いすぎたり、分割の不公平感が生まれたりすることもあるため、専門家の力を借りて透明性を高く保ちながら手続きを進めていきましょう。
このとき、専門家との対話をスムーズに進めるためにも、路線価や倍率方式といった評価の基本は把握しておきましょう。内容が理解できるか否かで、提示された内容の納得感が大きく変わってくるはずです。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。