公開日:2025.12.12 更新日:2025.12.02
NEW第二種住居地域とは?特徴・用途制限・建築規制を網羅的に解説
第二種住居地域は、住みやすさと利便性のバランスが取れたエリアです。住宅だけでなく中規模な店舗や事務所も建てられるため、静かに暮らしたいけれど、日常の利便性もほしいという方にとって心強い選択肢となります。
本記事では、第二種住居地域が持つ特徴をはじめ、用途制限や建ぺい率・容積率といった建築規制の基本のルールをご紹介。さらには家づくりで注意したいポイントなどにも触れていきます。
目次
第二種住居地域とは?定義と都市計画法上の目的

第二種住居地域とは、建築基準法で定められた13種類の用途地域のうち、住居系に分類される地域の一つです。都市計画法第9条では「主として住居の環境を保護するため定める地域」と定義されています。
都市計画法における位置づけ
第二種住居地域は、住居系の中でも比較的商業性のある施設を受け入れる地域として位置づけられており、「日々の暮らしの快適さと利便性をどちらも大切にしたい」というニーズに応えるエリアといえます。
具体的には、第二種住居地域は次のような場所に指定されます。
・駅周辺の商業エリアに隣接する住宅地
・幹線道路沿いの地域
・中規模店舗やオフィスが混在する住宅エリア
・商業地域と純粋な住宅地の中間的な地域
第二種住居地域の基本:第一種住居地域などとの違い

ここからは、第二種住居地域が第一種住居地域やその他の住居専用地域とどう異なるのか、基本から整理していきましょう。
第一種住居地域との比較ポイント
第一種住居地域と比べると、店舗や事務所、遊興施設などの建築規制がやや緩和されている第二種住居地域。具体例として、床面積の合計が制限される店舗の面積上限が広がるほか、カラオケボックスのような遊戯施設も立地しやすい点が挙げられます。
ただし、誰もが落ち着いて暮らせる環境を守るため、延べ床面積10,000㎡超の大型商業施設や大規模工場などの建築は基本的に認められません。騒音や振動を伴う施設への配慮は引き続き規制がかかります。
中高層住居専用地域・低層住居専用地域との違い
中高層住居専用地域や低層住居専用地域は、住環境をより強く守るため、高さ制限や用途制限が第二種住居地域よりも厳格に設定されています。
それに対して第二種住居地域では、商業利用の幅がやや広く、多様な建築が可能です。ただし、建物の規模や用途によっては、騒音や日影の影響が大きくなることもあります。
そのため建築計画の段階では、周辺への影響にどう配慮するかが重要なポイントになります。防音対策や景観への配慮など、住環境を守る視点が求められるのです。
準住居地域・近隣商業地域との関係性
第二種住居地域よりもさらに商業性が高い用途地域として、「準住居地域」や「近隣商業地域」があります。
準住居地域は、幹線道路沿いの地域特性を活かし、自動車関連施設などの利便性向上を目的としたエリアです。住居も建てられますが、第二種住居地域と比べると、道路沿道の商業性がより強調されています。
さらに近隣商業地域になると、住宅よりも商業施設が中心となり、周辺住民の日用品供給をメインとした商業エリアへと性質が変わります。このように、第二種住居地域は住居系の中でも商業性が高い一方で、「あくまで住宅が主体である」という点が大きな特徴です。
用途制限:どんな建物が建てられる?

第二種住居地域では、住宅を中心にしつつ、事務所や一定規模の店舗など、暮らしを支えるさまざまな施設が認められています。
建築可能な施設と制限の具体例
第二種住居地域で建築可能な主な施設は以下のとおりです。
住宅関連
・一戸建て住宅、共同住宅(マンション・アパート)
・寄宿舎、下宿
・兼用住宅(住宅と店舗・事務所などの併用)
商業・業務施設
・店舗、飲食店(床面積の合計が10,000㎡以下)
・事務所
・ホテル、旅館
・ボウリング場、スケート場、水泳場、ゴルフ練習場等の運動施設
・カラオケボックスなど、建築基準法別表第二で『遊戯施設』に該当するもの
・映画館、演芸場(客席部分200㎡未満の劇場等)
公共・公益施設
・病院、診療所
・学校(大学・高専・専修学校など)
・図書館、博物館
・老人ホーム、保育所、福祉ホーム
その他
・自動車教習所
・神社、寺院、教会
・公衆浴場
・巡査派出所、公衆電話所 など
第二種住居地域では、住宅、小規模店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスまで幅広く建築可能で、日常生活に必要なサービスは十分に整えられます。
その一方で、床面積の合計が10,000㎡を超える大型ショッピングモールや工場など、周囲の住環境に大きな影響を与える建物は原則として不可です。振動・騒音をともなう工場などについても、特定行政庁による厳しい制限や自治体の条例、住民合意が必要になることがあります。
建築できない施設
反対に、第二種住居地域では建築が認められない主な施設は以下のとおりです。
・床面積の合計が10,000㎡超の店舗、飲食店、展示場
・客席200㎡以上の映画館や演芸場
・キャバレー、料理店、ナイトクラブなど
・個室付浴場など
・危険性の大きい又は環境を悪化させるおそれが著しい工場(床面積の合計50㎡超の原動機を使用する工場等)
・危険性や環境悪化の恐れが大きい工場
このように第二種住居地域は、住環境を守りながら、暮らしを支える商業・業務施設の立地を認めるというバランスの取れた用途制限が特徴。利便性と静かな住環境、そのどちらも大切にしたい方にとって、安心して暮らせる地域といえるでしょう。
建ぺい率と容積率|計画の要点

住環境を守りながら、土地を無駄なく活用するためには、建ぺい率や容積率の理解が欠かせません。第二種住居地域で家や施設を建てる場合、どこまで建てられるのかという基本条件をまずは把握しましょう。
建ぺい率(建蔽率)の基準
建ぺい率(建蔽率)とは、敷地面積に対して建物が水平投影面積でどれくらいの面積を占めてよいのかを示す割合のことです。一般的には50〜80%で設定されるケースが多く、地域によってバランスの取り方が異なります。
住宅が多いエリアでは、日照や通風を確保するために建ぺい率を低めに抑える傾向があります。一方、商業性が高い場所では有効活用を目的として高めの建ぺい率が採用されることもあり、自治体の条例や周辺環境によって変動します。
容積率の考え方
容積率は、敷地面積に対する延べ床面積の割合のことで、100〜500%の幅で設定されるのが一般的です。容積率が高い地域では、中高層のマンションやオフィスビルを建てやすく、街の景観や人口密度にも影響を与えます。
ただし、容積率の算定には、前面道路幅員による制限(幅員4m未満は算定に含めない等)も考慮する必要があります。
そのため、容積率の確認は街全体の調和を考えた計画に欠かせないポイント。建築の初期段階でしっかり確認しておくことで、法令に抵触することなく、後のトラブル回避につながります。
具体的な建築規制|高さ・斜線・日影の制限

建物の高さや隣地との距離、そして日影に関する規制は、第二種住居地域で暮らす人々の安心と快適さを守るための建築基準法に基づく重要なルールです。具体的な建築規制の詳細を確認しておきましょう。
道路斜線制限・隣地斜線制限とは
道路や隣地から一定の角度をもって建物の高さを制限する「斜線制限」(道路斜線制限・隣地斜線制限)は、圧迫感を抑え、風通しや採光を確保するために設けられています。
高い建物が密集すると風が抜けにくくなり、ヒートアイランド現象を招くこともあるため、適度な空間を保つことは都市環境にとって非常に重要です。斜線制限によって空がひらけ、周囲の住宅にも光が届きやすくなるなど、街区全体の暮らしやすさを底上げする効果があります。
日影規制とセットバック・天空率での緩和
日影規制とは、特に冬至のように日照が少ない時期でも、周囲の住宅や公共スペースに「一定時間以上の日影を生じさせない」よう建物の高さや形状をコントロールする仕組みのことです。この規制があることで、低層住宅でも日当たりが確保され、健康的な生活環境が維持されます。
また、建物を後退させるセットバックや、建物の形状に応じて高さ制限を緩和できる天空率を活用すれば、採光や景観に配慮しつつ、効率的な建築計画を立てることも可能です。
第二種住居地域で家を建てる際の留意点

第二種住居地域は駅や商業施設が近く、生活の便利さを感じられる魅力的なエリアですが、快適に暮らすためには事前に知っておきたいポイントがいくつかあります。
騒音・交通量への配慮が必要
夜間や早朝に聞こえる車の音、人通りの多さ。こうした日常の騒音は、住まいの快適さを左右する大きな要因です。
とくに幹線道路沿いでは大型車両の通行も多く、振動や排気ガスが気になるケースも。 そのため、断熱・防音性の高い窓や壁材を選ぶ、居室の位置を工夫するなど、設計段階での配慮が必要です。
防火地域・準防火地域や周辺環境の確認
都市部で多く指定されている防火地域・準防火地域では、建物の外壁や屋根などに一定以上の耐火性能が求められます。商業施設や工場が近いエリアでは火災リスクも高まりやすいため、使用する建材や建物構造を慎重に検討する必要があります。
さらに、自治体の環境情報や周辺住民の口コミなどを調べておくと、将来リフォームする際の備えにも役立ちます。周辺環境をしっかり把握したうえで計画を立てることで、長く安心して暮らせる住まいへとつながります。
よくある質問(FAQ)

日々の暮らしや家づくりを考えるうえで、第二種住居地域の気になるポイントをピックアップ。ここでは、多くの方が疑問を抱きやすい内容をまとめました。
第二種住居地域は住みやすい?
駅や商業施設へのアクセスが良く、日常生活に必要なものが身近でそろうため、共働き世帯や単身世帯からの人気も高めです。 ただし、交通量や人通りが多くなる場所もあるため、静かな暮らしを最優先したい方にはやや不向きなケースも。気になる地域があれば、実際に歩いてみて、時間帯ごとの雰囲気を確かめておくと安心です。
第一種住居地域と第二種住居地域、どちらを選ぶべき?
選ぶポイントは「静けさ」と「利便性」のどちらを優先するかです。
第二種住居地域は比較的商業性が高く、大きめの店舗や娯楽施設も建ちやすい反面、人の往来や騒音が増えやすい傾向があります。
第一種住居地域は、店舗の規模や用途の制限が厳しく、落ち着いた住環境が期待できます。 家族構成やライフスタイル、在宅勤務の有無などを含め、自分たちが何を心地よいと感じるかを軸に判断すると、後悔のない土地選びにつながります。
第二種住居地域で店舗併用住宅は建てられる?
第二種住居地域では、住宅と店舗を組み合わせた併用住宅の建築が可能です。ただし、併用住宅における店舗部分も、用途地域の店舗面積制限(10,000㎡以下)の適用を受けます。建ぺい率や容積率などの基本ルールも守る必要があります。
自宅で小規模な店舗やサロン、事務所を開きたい方にとっては、柔軟な建築がしやすい、相性のよい用途地域といえるでしょう。
将来的に用途地域は変更されることがある?
用途地域は、都市計画の見直しによって変更されることがあります。再開発や都市のマスタープランの更新に合わせて規制が緩和されることもあれば、逆に厳しくなることもあります。
そのため、気になる土地がある場合は、自治体の都市計画課や都市計画審議会の情報を定期的にチェックしておくと、将来の見通しが立てやすくなります。
まとめ|第二種住居地域の特徴と注意点・総括
第二種住居地域は住宅を主体としながらも、ある程度の商業や業務機能を受け入れる柔軟性のある用途地域です。建ぺい率や容積率、斜線制限や日影規制などを把握しつつ、騒音や防火対策など周辺環境への配慮も欠かせません。
最終的には自治体の条例や個別の立地条件とも照らし合わせ、自分や家族にとって理想的な暮らしを実現できるよう、不動産や建築の専門家を交えて慎重に検討しましょう。
第二種住居地域の土地活用はアキサポへ
第二種住居地域での家づくりや土地活用を考える際は、用途制限や周辺環境の特性など、専門的な視点を踏まえた判断が欠かせません。
どの活用方法が自分の土地に合っているのか、将来の売却も視野に入れたいなど、迷う場面も多いものです。
アキサポでは、空き家の活用や売却、老朽化した建物の対応まで、状況に合わせた最適なプランをご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
岡崎 千尋 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
都市計画コンサルタントとしてまちづくりを経験後、アキサポでは不動産の活用から売買まで幅広く担当してきました。
お客様のお悩みに寄り添い、所有者様・入居者様・地域の皆様にとって「三方良し」となる解決策を追及いたします。