公開日:2026.10.20
NEW共有持分を手放したいときの方法と手続き

相続などで不動産を共有名義にしたものの「管理が大変だから、自分の共有持分を手放したい」と悩むこともあるでしょう。結論からいうと、自分の共有持分だけを手放すことは可能です。
共有持分を手放す方法には、他の共有者や第三者への売却、持分の放棄、共有物分割請求などがあります。また、相続の段階であれば相続放棄が選択肢になる場合もあり、状況や目的によって適した方法は異なります。
この記事では、共有持分を手放す主な方法を整理したうえで、共有持分放棄の手続きや費用・税金、手放す前に確認しておきたいポイントまで解説します。
目次
共有持分とは何か

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有しているときに、それぞれが持つ所有権の割合を指します。たとえば、兄弟3人で不動産を相続し、それぞれ3分の1ずつ所有している場合、その3分の1が各共有者の共有持分です。
自分の共有持分については単独で処分できる場合がありますが、不動産全体を売却したり、大きく変更したりする場合には、ほかの共有者の同意や協力が必要になることがあります。そのため、共有持分を手放したいと考えたときは、自分だけで進められることと、共有者との調整が必要なことを分けて考える必要があります。
なお、共有持分は不動産の特定の場所を示すものではありません。たとえば持分が2分の1あっても「建物の1階部分は自分のもの」といったように、所有する範囲を自由に区切って使えるわけではありません。共有持分は、あくまで不動産全体に対する「所有権の割合」として捉えるとわかりやすいでしょう。
共有持分を放置するリスク
共有持分を放置する主なリスクは以下のとおりです。
- 固定資産税や管理費などの負担が続く
- 不動産全体の売却や活用を進めにくくなる
- 相続によって共有者が増え、権利関係が複雑になる
- 費用負担や管理方法を巡って共有者同士で揉めることがある
使っていない不動産であっても固定資産税や管理費などの負担は続きます。マンションであれば管理費や修繕積立金、戸建てであれば草刈りや修繕などの維持費がかかることもあります。共有者のうち誰がどこまで負担したのかが曖昧になると、あとから精算を巡って揉める原因にもなります。
また、共有状態では、不動産全体の売却や建て替え、解体、大規模な改修などを自由に進められないことがあります。共有者の意見がまとまらなかったり、連絡が取れない人がいたりすると、売却や活用を進めたくても動けない状態になりがちです。
さらに、相続が重なると共有持分が細かく分かれ、関係する共有者が増えることもあります。人数が増えるほど話し合いや手続きも複雑になりやすいため、共有持分を手放したいと考えているのであれば、早めに今後の方法を検討しておくとよいでしょう。
共有持分を手放す主な選択肢

共有持分を手放す方法は一つではありません。現金化したいのか、できるだけ早く共有関係から抜けたいのか、共有そのものを解消したいのかによって、選ぶ方法は変わります。
ここでは主な選択肢として、以下の5つを解説します。
- 他の共有者に売却する
- 第三者に売却する
- 共有持分を放棄する
- 共有物分割請求で共有状態を解消する
- 相続放棄で権利ごと放棄する
他の共有者に売却する
自分の共有持分をほかの共有者に買い取ってもらう方法です。
もともと不動産を共有している相手なので、物件や権利関係について説明しやすく、売却後の共有関係も整理しやすい点がメリットです。たとえば兄弟3人で共有している不動産について、自分の持分をほかの兄弟のどちらかに売却すれば、自分は共有関係から抜けられます。
ただし、相手に購入する意思や資金がなければ成立しません。また、持分の価格を巡って意見が分かれることもあるため、不動産会社の査定などを参考にしながら条件を話し合うとよいでしょう。
第三者に売却する(仲介・専門買取)
自分の共有持分だけを、共有者ではない第三者へ売却する方法です。
共有持分は単独で売却できますが、不動産全体を自由に利用できるわけではないため、一般的な不動産より買い手が限られます。そのため通常の仲介では、売却まで時間がかかったり、希望価格で売れなかったりすることがあります。
一方、共有持分を扱う専門の買取会社であれば、比較的早く売却できる場合があります。ただし、価格は不動産全体を売却した場合の持分割合相当額より低くなる傾向があります。
共有持分を放棄する
共有持分を放棄し、対価を受け取らずに共有関係から抜ける方法です。
民法第255条の規定により、共有持分を放棄すると、その持分は「他の共有者へ持分割合に応じて自動的に帰属」します。買い手を探す必要はありませんが、代金は一円も入らず、無償で譲り渡す形になります。 共有持分の維持や管理の負担から離れたい場合に選択肢となります。
ただし、不動産では持分移転の登記手続きが必要となるほか、持分を取得したほかの共有者に贈与税が課される場合があります。放棄を検討するときは、司法書士や税理士などに手続きや税負担を確認しておくと安心です。
共有物分割請求で共有状態の解消を求める
共有者同士の話し合いがまとまらない場合には、共有物分割請求によって共有状態の解消を求める方法があります。
まずは共有者間で分割方法を話し合いますが、合意できない場合は、調停を利用したり、裁判所に共有物分割を請求したりすることができます。裁判による主な分割方法には、不動産そのものを分ける「現物分割」、一部の共有者が不動産を単独取得し、離脱する共有者へ持分に見合うお金を支払う「代償分割(価格賠償)」、不動産全体を競売にかけて売却代金を分け合う「換価分割(形式的競売)」があります。
相続放棄で権利ごと放棄する
まだ相続の手続き段階であれば、相続放棄によって共有持分を取得しない方法もあります。
相続放棄をすると、その不動産だけでなく、預貯金などの財産や借金も含めて、相続人としての地位そのものを手放すことになります。そのため、「共有不動産だけ相続したくない」という理由で、その不動産だけを選んで放棄することはできません。
ただし、相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります。相続放棄を検討している場合は、財産の処分に着手する前に弁護士などの専門家へ相談しましょう。
なお、相続放棄は、原則として自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ申述(しんじゅつ)する必要があります。
共有持分を手放すのに共有者の同意は必要?

共有持分を手放す際に、ほかの共有者の同意や協力が必要かどうかは、選ぶ方法によって異なります。
| 方法 | 共有者の同意・協力 |
|---|---|
| 自分の共有持分だけを売却する | 原則として同意不要 |
| 不動産全体を売却する | 共有者全員の合意が必要 |
| 共有持分を放棄する | 放棄自体に同意は不要だが、持分移転登記は原則として他の共有者との共同申請が必要 |
| 共有物分割を求める | 話し合いがまとまらない場合は調停・訴訟で解決を求められる |
| 相続放棄をする | ほかの共有者の同意は不要 |
このように、自分の共有持分だけを手放す場合と、不動産全体を処分する場合では必要な同意が異なります。特に共有持分の放棄は、法律上はほかの共有者の同意がなくても行えますが、放棄した持分はほかの共有者に帰属します。
注意が必要なのは、民法上は単独で放棄できても、不動産登記法上、持分移転登記は「放棄した人」と「持分を取得した他の共有者」の全員による共同申請が原則である点です。他の共有者が書類への押印や協力を拒否した場合、登記を引き受けてもらうために登記引取請求訴訟を起こす必要があります。
なお、共有持分放棄と相続放棄は別の手続きです。共有持分放棄は、自分が所有している特定の不動産の持分を手放す方法ですが、相続放棄は相続人としての地位そのものを手放します。そのため、相続放棄では共有不動産だけを選んで放棄することはできません。
共有持分の放棄を選ぶ場合は、こうした違いを理解したうえで、放棄の意思表示から登記まで進める必要があります。次に、具体的な手続きの流れを見ていきましょう。
共有持分放棄と持分移転登記の流れ

共有持分を放棄した場合は、その権利変動を登記簿に反映するため、持分移転登記を行います。大まかな流れは以下のとおりです。
- 共有者へ放棄する意思を伝える
共有持分の放棄自体にほかの共有者の同意は必要ありません。ただし、持分移転登記ではほかの共有者の協力が必要になるため、あらかじめ放棄する意思を伝えておくと手続きを進めやすくなります。後のトラブルを防ぐため、必要に応じて内容証明郵便などを利用し、伝えた内容や日付を記録に残しておく方法もあります。 - 登記に必要な書類を準備する
持分移転登記に向けて、登記識別情報や印鑑証明書、登記原因証明情報などを準備します。あわせて、登録免許税を計算するために固定資産評価額も確認します。登記簿上の住所や氏名が現在と異なる場合や、相続登記が済んでいない場合は、先に必要な登記を行うことがあります。
なお、共有者が登記に協力してくれない場合は、まず事情を説明し、必要書類や費用負担について話し合います。
それでも共同で登記を進められない場合は、登記手続きを求める訴訟などの法的対応が必要になることがあります。登記手続きについては司法書士、共有者との対立や訴訟に発展している場合は弁護士へ相談するとよいでしょう。
共有持分放棄にかかる費用と税金

共有持分の放棄は対価を受け取らずに持分を手放す方法ですが、手続きにはある程度費用がかかります。なお、放棄する側だけでなく、持分を取得する共有者側にも費用や税金が生じる可能性があります。
| 負担する人 | 主な費用・税金 | 内容 |
|---|---|---|
| 登記当事者 | 登録免許税 | 持分移転登記を行う際にかかる税金。実際の費用負担は当事者間で調整することがある |
| 当事者間で負担を調整 | 必要書類の取得費 | 印鑑証明書など、登記に必要な各種書類の取得にかかる費用 |
| 依頼した人など | 司法書士報酬 | 登記手続きを司法書士へ依頼する場合に発生する |
| 主に取得する側 | 贈与税 | 個人間で持分を放棄した場合、税法上(相続税法第9条・みなし贈与)、持分を得た他の共有者が「持分の時価相当額をタダでもらった」とみなされ、取得者側に高額な贈与税が課税されるリスクがある。 |
| 取得する側 | 不動産取得税 | 持分の取得に伴い課税される場合がある |
| 1月1日時点の登記上の所有者等 | 固定資産税 | 毎年1月1日時点の所有者に対して課税される |
このほか、登記簿上の住所や氏名が現在と異なる場合や、相続登記が済んでいない場合には、持分移転登記の前に別の登記が必要となり、その分の費用が加わることもあります。
特に注意したいのが、持分を受け取る共有者側の税負担です。共有持分を無償で取得したことで贈与税などが生じる可能性があるため、放棄する側だけでなく、取得する側にも事前に説明しておく必要があります。
共有持分を手放す前のチェックポイント

共有持分を手放す方法が決まっていても、登記や権利関係に問題が残っていると手続きが途中で止まることがあります。売却や放棄を進める前に、不動産の状況や共有者との関係を一度整理しておきましょう。
権利関係のポイント(相続登記・抵当権・差押え)
まず確認したいのが、登記上の権利関係です。相続で共有持分を取得したものの相続登記が済んでいない場合は、現在の所有関係が登記簿に反映されておらず、そのままでは次の手続きを進めにくいことがあります。
相続登記は、自分が相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請しなければなりません。2024年4月の法改正前に相続していた過去の物件も対象で、2027年3月31日までに登記申請を行わないと、10万円以下の過料(ペナルティ)が科されるおそれがあります。
また、不動産に抵当権が設定されていたり、差押えが入っていたりすると、売却や持分移転に影響する場合があります。登記事項証明書を取得し、名義人や持分割合、抵当権・差押えの有無などをあらかじめ確認しておきましょう。
登記簿上の住所や氏名が現在と異なる場合も、先に変更登記が必要になることがあります。手続きを始める前に、必要な登記が残っていないか確認しておくと、その後の進行がスムーズです。
物件種別の制約(農地・共有名義土地など)
不動産の種類によっては、通常の土地や建物とは異なる確認が必要になることもあります。
たとえば共有不動産に農地が含まれる場合は、農地法上の手続きも確認が必要です。農地の共有持分を放棄する場合、農地法3条の許可は不要です。また、相続等で許可なく権利取得した際に求められる届出(農地法第3条の3)についても、持分放棄は「包括承継等」に当たらないと解されており、原則として届出も不要とされています(ただし、自治体・農業委員会によって運用や確認を求められる場合があるため、事前の確認が推奨されます)。また、持分を売買・贈与する場合には、農地法3条の許可が必要となることがあります。
共有者が多い場合や、相続を繰り返して共有者が増えている場合は、誰がどの持分を所有しているのか、連絡が取れる状態なのかも確認しておきましょう。物件そのものだけでなく、共有関係の状況まで把握しておくことが大切です。
トラブルを防ぐための進め方
共有持分を手放すと、ほかの共有者の持分や税金、今後の管理にも影響することがあります。そのため、いきなり放棄の通知を送るのではなく、できる限り事前に事情や今後の選択肢を説明しておくとよいでしょう。
話し合った内容や合意事項は、後から認識が食い違わないよう書面やメールなどで記録に残しておくと安心です。特に費用負担や登記への協力については、誰が何を行うのかをあらかじめ整理しておきましょう。
手続きが複雑な場合は、内容に応じて専門家へ相談する方法もあります。登記手続きなら司法書士、共有者との交渉や紛争なら弁護士、贈与税など税金については税理士が主な相談先です。共有者との話し合いが難しい場合や権利関係が複雑な場合は、早めに専門家へ相談すると進め方を整理しやすくなります。
A1. 放棄の意思を伝えただけでは、登記簿の名義は自動的に変わりません。持分移転登記は原則として、放棄する人と持分を取得する共有者が共同で申請します。協力を得られない場合は、司法書士や弁護士に相談しましょう。
A2. 対価を受け取らずに手放す方法ですが、登記の登録免許税や書類の取得費、依頼する場合の司法書士報酬などがかかります。また、個人間では持分を取得する共有者に贈与税などが生じる場合があるため、双方の負担を確認しましょう。
A3. 不動産全体の売却には原則として共有者全員の同意が必要です。一方、自分の持分だけなら単独で売却できます。共有状態そのものを解消したい場合は共有物分割請求も選択肢になるため、話し合いが難しいときは弁護士に相談しましょう。
まとめ|共有持分を手放したいときは自分に合った方法を選ぼう
共有持分を手放したいときは、まず「何を優先したいのか」を整理することが大切です。現金化したいのか、共有関係から抜けたいのか、共有状態そのものを解消したいのかによって、選ぶ方法は変わります。
共有持分は、放置するほど権利関係や費用負担が複雑になりやすいものです。手放したいと考えているのであれば、現在の登記や共有者の状況を確認したうえで、無理のない方法を早めに検討していきましょう。
どの方法が自分の状況に合っているか判断がつかない場合や、共有者との話し合いが難しい場合は、アキサポの空き家の相談窓口もご活用ください。物件の状態や共有関係を伺いながら、進め方を一緒に整理します。
この記事の監修者
白崎 達也 アキサポ 空き家プランナー
一級建築士
中古住宅や使われなくなった建物の再活用に、20年以上携わってきました。
空き家には、建物や不動産の問題だけでなく、心の整理が難しいことも多くあります。あなたが前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてサポートいたします。






