公開日:2022.02.15 更新日:2024.01.09
中古住宅売却に利用できる「安心R住宅」とは
中古住宅の売却をサポートしてくれる「安心R住宅」という制度をご存じでしょうか?
2017年に始まった、リフォーム済みまたはリフォーム提案書付きの中古住宅に対して品質保証を与える制度になっています。
購入者からすれば、中古住宅にはどんな瑕疵が隠れているか分からない不安があります。安心R住宅制度は、その不安を取り除くのが目的。まだまだ使える中古住宅の流通を促すための制度なのです。
この記事では、安心R住宅の制度やメリット、さらに制度を使う際に注意したいポイントも解説します。
安心R住宅とは
「安心R住宅」とは、国土交通省が2017年に創設した、リフォーム済みまたはリフォーム提案書をつけることができる中古住宅(建築後、極めて短い物件は不要)を対象とした、品質認証制度です。
目的は中古住宅の流通促進で、中古住宅に抱きがちな「不安」「汚い」「わからない」といったマイナスイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」と思える住宅にするためのポイントが多く盛り込まれています。
制度のポイントは、制度対象がリフォーム済みまたはリフォーム提案書付きの中古住宅であること。
認定条件には耐震性の確保やインスペクション(建物状況調査)が行われていることなどが定められています。ちなみに、インスペクションには調査費用がかかりますが、その分しっかり調査ができ、認証制度の信頼度向上に寄与しています。
ちなみに安心R住宅の「R」とは、Reuse(再利用)・Reform(改装)・Renovation(改修)の頭文字を意味しており、空き家の解消や既存の住宅ストック活用といった効果も期待されています。
対象と認証条件
安心R住宅の認定対象と条件は下記のとおりです。
・認定対象 ◦ 中古住宅(賃貸住宅を除く) ・認定条件 ◦ 耐震性等の基礎的な品質を備えている ◦ リフォームを実施済み又はリフォーム提案が付いている ◦ 設計図書、点検記録等の情報の保管状況について情報提供が行われる |
認定対象に賃貸住宅が含まれないのは、本制度が住宅購入者に正確な情報を分かりやすく提供するための制度であるためです。
ただ、売却の流通形態は限定していないため、業者が家を買い取ってリフォーム後に販売する「買取再販」以外の方法でも大丈夫です。
「安心R住宅」の仕組みと認証手続
安心R住宅の認証制度は、上図のように国が認証要件を設定し、その要件に基づいて事業者団体が認証手続きを行う仕組みになっています。
また、認証要件は認証に関する手続きは下記のとおりです。
安心R住宅の認証手続き
1. 安心R住宅事業者団体に属する会社に相談する 2. 専任媒介契約または専属専任媒介契約の締結 3. インスペクション・リフォームプランの手配 4. 安心R住宅のロゴマークを付けて広告 5. 購入希望者と売買契約を締結 |
登録事業者団体は令和4年2月時点で13団体あり、それぞれが国の定めた認定条件に従って審査を行います。
ただ、国は認証要件の詳細事項まで定めていないため、認証条件の詳細は団体によって異なります。
審査を依頼する際には、各登録事業者団体に認証要件を問い合わせておきましょう。
安心R住宅のメリット
安心R住宅制度の主なメリットは、中古住宅の品質を公に保証できることです。
中古住宅は詳細な品質が分からないことも多いため、改めてインスペクションを実施しているのは、購入者にとって大きなメリットです。
また、インスペクションは売買後に契約内容に適合しない部分が見つかった場合に責任を負う「契約不適合責任」を回避する効果や、ブランディングによる早期売却効果なども期待できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
公的に耐震性や品質の証明ができる
安心R住宅一番のメリットが、耐震性や品質の証明ができる点です。
今まで中古住宅の品質を証明する制度は無かったため、それを公的に証明できるようになったのは中古住宅市場にとって大きなメリットです。
現在の日本は多くの空き家が問題になるほど既存住宅のストックが飽和している状態です。
将来的に空き家はさらに増加していくことが予測されており、そんな飽和状態の中、安心R住宅は、ほかの空き家と差別化する効果も期待できます。
また、耐震性を証明できる点は中古住宅市場において大きなアドバンテージになります。
現在出回っている中古住宅は「新耐震」と呼ばれる一定の耐震性能を有した住宅が中心ですが、現況と設計図面に差があったり、経年劣化や損傷によって性能が低下していたりするケースも少なくありません。
しかし、その点安心R住宅では、実際に現況を調査するインスペクションを行ってから耐震性を証明するため、より正確な耐震性を示すことができます。
保険の加入や住宅ローン控除の対象にもなる
公的に耐震性や品質の証明ができることで、保険への加入条件が整い、それに伴って中古住宅であっても住宅ローン控除の適用対象となります。
また、引き渡し後に構造上の不具合や雨漏りが見つかった場合、一定期間は保険で対応可能なため、引き渡し後に起こりうるトラブルを回避するためにも安心R住宅はおすすめです。
インスペクションにより契約不適合責任を回避できる
中古住宅の売買で注意したいことの1つに、契約内容と現物の品質に差がある「契約不適合責任」があります。中古住宅は引き渡しが済んだ後に不適合箇所が見つかるケースもあります。
特に、柱や床の傾きやシロアリの存在といった住宅の安全性に係る場合は要注意。後から修理を要求されたり、代金の減額を求められたりすることが考えられ、多額の出費に繋がる可能性があります。
しかし、安全R住宅を取得する適合基準にはインスペクションの実施が含まれているため、事前に契約不適合責任を起こす可能性があるポイントをチェックできます。
契約後に多額の出費が発生すると、予定していた売却代金の使い方ができなくなる可能性もあるため、契約不適合責任を未然に防止できるインスペクションの実施は大きなメリットとなります。
ブランドが付くことで早期売却を期待できる
安心R住宅を取得した中古住宅は、広告販売時に、認証済みであることを証明する安心R住宅のロゴマークを付けられるようになります。これにより、中古住宅に対する買い手の不安を軽減し、早期売却の実現が期待できます。
ロゴマークが付いていると品質が保証されていることが一目で分かりますし、不動産紹介サイトでは安全R住宅に絞って紹介しているサイトもあり、目に留まりやすいという効果も期待できます。
今後、人口減少に伴って中古住宅のさらなる増加が見込まれるため、合わせて制度の認知度もアップし、ブランド効果が上がっていくことも期待できます。
安心R住宅で注意したいポイント
安心R住宅には大きなデメリットはありませんが、制度のコスパやブランド効果についてはいくつか注意が必要なポイントがあります。
住宅市場の前提として、いまだに流通商品の中心は新築にあり、中古住宅の売却は思ったように進まないケースもあります。
そのため、コスパ・ブランド効果が十分発揮されないと、安心R住宅の取得にかけた費用だけが残ってしまう結果にもなり得ます。
この問題を避けるには、制度の注意点を熟知しておくことが重要。ここでは、特に注意したいポイントを3つ紹介します。
インスペクションや耐震改修などにコストがかかる
認証に必要なインスペクションには、1軒当たり5~10万円ほどの費用がかかります。
そして、インスペクションの結果、耐震性能が不十分であると判明した場合、認証条件をクリアするために耐震改修が必要になるケースもあります。
耐震改修工事にかかる費用は物件ごとに異なりますが、100万円単位の費用がかかるケースも珍しくありません。そのため、耐震改修をして認証を受ける場合は、売却した場合に利益が発生するかをチェックしておきましょう。
一般媒介契約が結べない
安心R住宅のロゴマークを使用して媒介行為を行う場合には、専任媒介契約または専属専任媒介契約を結ぶ必要があります。
専任媒介契約または専属専任媒介契約では同時に一社としか契約を結べません。専任媒介契約及び専属専任媒介契約では、物件の指定流通機構(レインズ)への登録義務が発生するため、情報を広く知ってもらえる利点がありますが、複数社に媒介を依頼できないほか、売主が自分で買主を見つける「自己発見取引」が禁止されています。
そのため、状況に応じて媒介形態を選びたい方にとっては、大きなデメリットとなり得ます。
制度の知名度が低く思った効果が得られないことも
安心R住宅制度は2018年4月からスタートした制度ですが、制度の周知が済んでいない状況があります。例えば、2019年に既存住宅が流通した件数は60万件以上にのぼりますが、そのうち安心R住宅の流通量は、上半期(4~9月)で687件にとどまっています。
そのため、制度の認証を受けても思ったような効果が得られない可能性があります。
インスペクションや耐震改修に費用がかかることもあるため、制度取得の際は媒介を依頼する不動産会社と相談をして、取得の有無を決定しましょう。
中古住宅の流通促進にはイメージアップが重要
安心R住宅は、中古住宅のイメージアップを行うことで流通を促進する制度。「まだまだ使えるのに買い手がつかない」という悩みの解決に効果が期待できる注目の制度です。
また、安心R住宅のイメージアップ効果は、中古住宅の一形態である空き家の流通促進にもかかせないポイント。空き家の処分に困っている方は取り入れてみてはいかがでしょうか。
ただ、安心R住宅制度は売却に限った制度であり、インスペクションや耐震改修に費用が掛かる点は覚えておきましょう。
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