公開日:2025.06.13 更新日:2025.06.03
NEW長期譲渡所得とは?空き家売却で損をしないための税知識を解説

譲渡所得とは、土地や建物の売却によって得た所得のこと。不動産を売って得た利益は所得税・住民税の対象になり、その税率は所有していた期間によって変わるため、売却前に仕組みを把握しておくことが大切です。
今回は、長期譲渡所得にフォーカスを当て、定義や計算方法、税優遇制度まで幅広くご紹介します。
目次
譲渡所得とは?課税対象になる不動産売却益の基本

まずは譲渡所得の基本について見ていきましょう。
譲渡所得の計算式|譲渡価額・取得費・譲渡費用とは?
譲渡所得は以下の方法で計算します。
譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用) |
それぞれの金額の概要は以下の通りです。
- 取得費
売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額 - 譲渡費用
土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用など
参照:国税庁
さらに、3,000万円の控除が適用される場合があるため、譲渡所得から特別控除を差し引き、最終的な課税譲渡所得を算出します。
取得費が不明な場合の「概算取得費」とは
不動産の購入時の資料(契約書や領収書など)がない場合、正確な取得費を出すのは困難です。その際に使えるのが「概算取得費」で、譲渡価額の5%を取得費とみなす方法です。
上記のケースのほか、実際の取得費が譲渡価格の5%未満なら、あえて概算取得費を選ぶことで課税所得を少なくできるケースもあります。
実際の購入費が分からないときや、記録が残っていないときの代替手段として便利な措置ですが、正確な取得費を把握するほうが有利になることが多いため、資料は大切に保管しておくようにしましょう。
長期譲渡所得の定義と判定基準

では、譲渡所得のうち、長期譲渡所得に該当するのはどのようなケースなのでしょうか。以下、長期譲渡所得について詳しく解説していきます。
所有期間5年超が基準|取得日と譲渡日の数え方
長期譲渡に該当するかどうかは、「譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうか」が基準。
例えば、2024年内で売却する物件は、2024年の1月1日の時点で所有期間が5年経過しているかどうかで判断されるため、2019年3月1日に取得し、2024年12月に売却した場合、2024年の1月1日時点で5年未満のため長期譲渡には該当しません。一方で、2018年に取得していれば長期扱いです。
■2019年3月1日に取得→2024年12月に売却 ※2024年1月1日の時点で5年未満 →長期譲渡ではない ■2018年3月1日に取得→2024年12月に売却 ※2024年1月1日の時点で5年以上 →長期譲渡に該当 |
また、相続や贈与で取得した場合は、被相続人や贈与者がその不動産を取得した日を引き継ぐ形となります。
短期譲渡所得との違い|税率・控除額を比較
譲渡所得は、不動産の所有期間に応じて長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つに分けられ、不動産を売るタイミング次第では節税をすることも可能です。
長期譲渡所得と短期譲渡所得には、主に税率の違いがあります。
長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
所有期間 | 5年超 | 5年以下 |
所得税率 | 15% | 30% |
住民税率 | 5% | 9パーセント |
復興特別所得税 | 0.315% | 0.63% |
合計税率 | 20.315% | 39.63% |
長期譲渡所得と短期譲渡所得を比較すると、最大で約19%の税率差が生じます。不動産の売却時期を調整して長期譲渡所得として売るだけで、税金を大幅に減らせる可能性があるため、節税を考えるなら短期売却を避けるのが得策です。
相続・贈与で取得した不動産の取り扱い
相続・贈与で不動産を取得したものの、自分で使用する予定がなく、空き家のままになっているなら、早めの売却も選択肢のひとつ。空き家を所有している場合、維持費や固定資産税の負担が続くことになる上、放置していても価値が下がる一方です。
相続で取得した不動産については、被相続人の取得日をそのまま引き継ぐため、長期譲渡所得として扱われるケースが多くなります。一方で、贈与によって取得した場合は、贈与を受けた日が取得日となるため、所有期間が短くなり、短期譲渡所得として扱われる可能性もあります。売却益が出れば譲渡所得税が発生しますが、長期譲渡扱いとなれば税負担が軽減され、結果的に手元に多くの資金が残ることも期待できます。
長期譲渡所得の税率と計算方法

ここからは、長期譲渡所得の税率と計算方法について解説。正しく理解して、損することなく不動産の売却を行いましょう。
税率は約20.315%|内訳(所得税・住民税・復興特別所得税)
長期譲渡所得の税率は、所得税・住民税・復興特別所得税をあわせて20.315%になります。
<長期譲渡所得の税率内訳>
所得税率 | 15% |
住民税率 | 5% |
復興特別所得税 | 0.315% |
合計税率 | 20.315% |
上記の税率を、課税譲渡所得にかければ、譲渡所得にかかる税金を計算できます。
特別控除・損益通算は使える?
空き家を売却した場合、一定の要件を満たせば特別控除や損益通算などの税優遇制度を活用することができます。特に注目すべき制度のひとつが、「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」。これは、10年以上所有したマイホームを売却した場合に、6,000万円までの売却益に対して税率がさらに軽減されるという制度です。
売却後に新たな住居を購入する際の資金負担を軽減する目的で設けられたもので、特に高齢の親から空き家を相続したケースなどで適用されます。また、空き家の売却により譲渡損が発生した場合は、他の所得と損益通算を行うことで所得税の軽減を図ることも可能。譲渡損の損益通算は、居住用財産に限られるため、空き家に適用されるかは要確認です。
これらの特例を最大限活用するためにも、適用要件を事前に確認した上で計画的に売却手続きを進めるようにしましょう。
具体的なシミュレーション事例(表あり)
では、具体的にどのような計算式になるのか、居住用マンションを売却した場合で長期譲渡所得税を計算してみましょう。
<条件>
譲渡収入金額 | 5000万円 |
取得費 | 300万円 |
譲渡費用 | 200万円 |
特別控除 | 居住用財産の3,000万円特別控除を使用 |
まずは、 課税譲渡所得金額を計算します。計算式は、
譲渡収入金額 ー( 取得費+譲渡費用)ー特別控除額=課税譲渡所得金額。
5000万ー(300万+200万)ー3000万=1500万 |
課税譲渡所得金額は、1,500万円です。ここに、長期譲渡の税率20.315%をかけます。
1,500万円✕20.315%=304万7,250円 |
長期譲渡所得税は304万7,250円となります。
空き家売却で活用できる長期譲渡所得の特例

空き家売却の際、特例を上手く活用すれば税金対策を行うことができます。長期譲渡所得に適用できる特例をご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
空き家特例(3000万円控除)の条件と注意点
相続または遺贈で取得した空き家を売却し、所得が発生した場合、最大3,000万円の特別控除を受けることが可能です。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例」と言い、「空き家特例」と呼ばれることもあります。
この特例は、以下の要件を満たした不動産が対象です。
<適用要件>
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された建物であること
- 区分所有建物登記がされていない建物であること
- 相続開始の直前まで被相続人以外が居住していなかったこと(※被相続人が老人ホーム等に入居していた場合などの例外規定もある)
参照:国税庁
このほか、「相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること」など、複数の要件も満たさなくてはなりません。
なお、取得した相続人が2人までの場合は各人の控除額は3,000万円が上限になりますが、令和6年1月1日以後の譲渡から、相続人が3人以上の場合の特別控除は2,000万円になります。
適用要件のほか、適用期限にも注意が必要で、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却を完了する必要があります。また、制度自体の期限も令和9年(2027年)12月31日までとされているため、売却を検討している方はなるべく早めに対応するようにしましょう。
マイホーム(居住用財産)特例との違い
空き家特例と同じく、3,000万円が控除される制度として「マイホーム(居住用財産)特例」というものがあります。
どちらも譲渡所得に対する税負担を軽減する制度ですが、空き家特例は相続によって取得した家屋や土地を売却する際に適用されるもので、マイホーム特例は自分が住んでいたマイホームを売却した際に適用されるものです。
マイホーム特例は以下の不動産が対象になります。
- 現に自分が住んでいる家屋
- 以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却する場合)
- 住んでいた家屋と一緒に売却する敷地や借地権
- 取り壊した家屋の敷地(次の要件を満たす場合)
①家屋を取り壊してから1年以内に売却契約が締結されていること
②取り壊し後、敷地を駐車場などほかの用途に使用していないこと - 災害によって滅失した家屋の敷地
①現在住んでいた場合:災害発生日から3年以内
②以前住んでいた場合:住まなくなった日から3年以内
参照:国税庁
そのほか、空き家特例と同様、細かい適用要件が指定されているので、あらかじめ自分の売りたい物件が該当するのかどうか確認しておきましょう。
複数の特例を併用できるのか?優先順位に注意
空き家特例をはじめとする税制優遇措置には、複数の制度が存在しますが、同一の不動産に対してこれらを重複して適用することは原則不可です。ただし、一部特例については、条件を満たすことで併用することができます。
<空き家特例と併用できる措置法規定>
- 居住用財産の3,000万円控除(35条1項・・・ただし両者併せて同一年内3,000万円を限度)
- 特定居住用財産の買換え特例(36条の2)
- 居住用財産の譲渡損失の繰越控除等(41条の5)
- 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等(41条の5の2)
- 住宅ローン控除(41条)
- 認定住宅の新築等の所得税額の特別控除(41条の19の4)
例えば、上記にもあるように、空き家特例とマイホーム特例は併用が可能な場合もありますが、控除額の合計が3,000万円を超えない範囲での適用となります。
ただし、売りたい不動産が複数ある場合は、優先順位をを決めておくことが重要。例えば、売却益の低い不動産から先に売ってしまい、いつの間にか特例の適用期限が過ぎていたというリスクも。損をしないためにも、大きな減税効果が見込める売却益の高い不動産から売ることをおすすめします。
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まとめ|空き家売却では「長期譲渡所得」の判定が損益に直結する

空き家を売却する際は、長期譲渡所得で売ることができるかどうかが大きなカギになります。
所有期間の確認と節税シミュレーションが重要
空き家を売却するなら、まずは「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」のどちらに該当するのかを確認することが必須。その上で特例の控除が受けられるかどうかも加味し、どのくらい節税できるかシミュレーションしましょう。ここでしっかり計算しておくことで、節税につなげることができます。
早めの税理士相談で最大限のメリットを得よう
売却手続きは、なるべく早く行うのがおすすめ。特に、空き家特例などは適用期限があり、期間を過ぎると大きな節税チャンスを逃すことになります。
また、税務の知識がない状態で進めてしまうと、本来受けられるはずの特例を見落としてしまうケースもあるため、税理士など専門家に相談して適切な対応を取るようにしましょう。