公開日:2025.10.23 更新日:2025.09.26
NEW3,000万円特別控除を徹底解説!適用要件・確定申告やよくある疑問など

不動産売却で最も気になることの一つが、税金の負担ではないでしょうか。特に譲渡所得に課される税率は高いため、手元にいくら残るのか心配になる方も多いはずです。
そこで知っておきたいのが「3,000万円特別控除」です。本制度を利用すれば、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できるため、課税対象となる所得額を大幅に減らせます。
この記事では、3,000万円特別控除の仕組みや適用条件、申告の手順、他の特例との関係までを詳しく解説します。売却を検討している方は、控除を使えるかどうかを確認することで、節税につながる大きな一歩になるでしょう。
目次
3,000万円特別控除とは?

3,000万円特別控除とは、マイホームを売却したときに発生した譲渡所得から最大3,000万円まで差し引ける減税制度です。課税対象となる所得額をそのまま減額できるため、不動産を譲渡した際に発生する税金を大幅に軽減できます。
たとえば、課税対象となる譲渡所得が2,800万円だった場合、3,000万円控除を使えば譲渡所得はゼロとなり、結果として課税される所得税・住民税は発生しません。
不動産を譲渡した際の税率は、所有期間によって異なり、譲渡所得税・住民税の合計税率は以下のとおりです。
不動産を譲渡した際の税率表
区分 | 所得税 | 住民税 |
長期譲渡所得(5年を超えて所有) | 15% | 5% |
短期譲渡所得(5年以下の所有) | 30% | 9% |
3,000万円特別控除の適用要件
3,000万円控除を受けるための要件は以下のとおりです。
家屋に関する条件
- 1.現に自分が住んでいる家屋
- 2.以前に住んでいた家屋で、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合
- 3.1または2とともに売った敷地や借地権
- 4.1または2を取り壊した場合の敷地で、以下の要件に当てはまるもの
- ①:家屋を取り壊した日から1年以内に譲渡契約が締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- ②:家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、別の用に供していないこと
- 5.家屋が災害により滅失した敷地で、次の区分に応じた期限までに売るもの
- ①:1の家屋の敷地の場合は、災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
- ②:2の家屋の敷地の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
申請する者に関する条件
- 1.家屋を売った年の前年および前々年に、本特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。ただし、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例によって特例を受けている場合を除く
- 2.家屋を売った年とその前年、および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
- 3.売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
- 4.親子や夫婦などの「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと
基本的には、自分が住んでいた住宅とその敷地で、住まなくなってから3年を経過する日の属する年末までに売却した場合に対象になると考えておけばOKです。この条件に該当する場合、すでに売却していても対象になります。
住宅を取り壊して更地で売却した場合であっても、家屋に関する条件の4に当てはまれば対象になるため、忘れずチェックしておきましょう。
適用除外となる場合
3,000万円の特別控除が適用されないのは以下のケースに該当する場合です。
- 1.この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 2.居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
- 3.別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋
1は制度を悪用しようとした場合。2は一時的な住宅の場合。3は別荘やセカンドハウスなどの場合が該当します。本制度はあくまで自分がメインで住んでいた住宅を売却した場合に受けられる制度なので、上記のようなケースでは対象になりません。
3,000万円特別控除は他の特例と併用できる?

住宅に関する減税制度はさまざまな種類があり、いずれも節税効果が高いことで知られています。しかし、各制度は必ず併用できるわけではなく、制度ごとに可・不可が異なります。
そこでここでは、3,000万円控除と関りが強い「住宅ローン減税」と「10年超所有軽減税率」との関係を整理しておきましょう。
住宅ローン減税は基本的に併用不可
住宅ローン減税とは、住宅の新築や取得、または増改築等に伴って住宅ローンを借り入れた場合に、翌年から最大13年間、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。その節税効果の高さから、住宅ローンを組んだほとんどの人が利用しています。
住宅ローン減税は確定申告時に利用しますが、この際に3,000万円特別控除との併用は認められていません。どちらか一方のみの適用となります。
そのため、住み替えを予定していて「売却」と「購入」の双方に関わる場合は、どちらを優先するかを慎重に検討する必要があります。たとえば、売却益が大きい場合は3,000万円特別控除のほうが有利になることが多く、逆に購入後のローンが大きい場合は住宅ローン控除の恩恵が大きくなる可能性があります。
ちなみに、長期優良住宅を対象とした、認定住宅新築等特別税額控除との併用も認められていません。
10年超所有軽減税率の特例は併用可能
「10年超所有軽減税率の特例」とは、10年以上所有していたマイホームを売却した場合に、通常の譲渡所得税率よりも低い税率が適用される制度のことです。この制度は、長期保有者の税負担を軽減するために設けられたもので、3,000万円特別控除と併せて使うことが可能です。
本制度により受けられる軽減税率は以下のとおりです。
- 6,000万円以下:課税長期譲渡所得金額(※) × 10%
- 6,000万円超: (課税長期譲渡所得金額 - 6,000万円) × 15% + 600万円
※:(土地建物を売った収入金額) - (取得費+譲渡費用) - 特別控除
両制度を併用する場合は、まず譲渡所得から3,000万円を控除し、その残りの金額に軽減税率を適用します。たとえば、譲渡所得が4,000万円あった場合、控除後の1,000万円に軽減税率がかかるため、通常の税率よりも大きな節税効果を期待できます。
3,000万円控除を利用した確定申告の方法

3,000万円特別控除を受ける場合は、マイホームを売却した翌年の確定申告で申告する必要があります。申告の大まかな手順は以下のとおりです。
- 1.譲渡所得の計算:売却額から取得費や仲介手数料などの譲渡費用を差し引く
- 2.控除額の適用:譲渡所得から3,000万円を控除する
- 3.税額の算出:残額に税率をかけ、所得税と住民税を計算する
- 4.確定申告書の作成:不動産の売却情報や経費内訳を記載
- 5.必要書類の添付と提出:各種証明書を添えて税務署へ提出する
なお、申告期限は通常2月16日から3月15日までです。3月15日が土日祝日の場合はその翌日までです。不動産売却に関する申告は添付書類が多く、初めての場合は特に時間がかかるため、早めの準備を心がけましょう。あらかじめe-Taxによる電子申告ができるように準備しておけば、家にいながらでも申告が可能になります。
なお、申告内容に誤りがあると修正申告や追徴課税のリスクが生じるため、仲介を依頼した不動産会社や税理士などの専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。
3,000万円控除を適用した場合の税額シミュレーション
3,000万円特別控除を実際に利用した場合を想定して、具体的な条件を決めたシミュレーションをしてみましょう。今回の条件は以下のとおりです。
条件
- 売却物件:マイホーム(居住用財産)
- 売却額:5,000万円
- 取得費・譲渡費用の合計:1,000万円
- 所有期間:10年超(長期譲渡所得)
譲渡所得の計算
売却額 5,000万円 −(取得費+譲渡費用 1,000万円)= 4,000万円
これにより、3,000万円控除を差し引くと、元の譲渡所得は 4,000万円 となります。ここから、控除を適用した場合としなかった場合で税額を比較してみましょう。
3,000万円控除を適用した場合
- 4,000万円 − 3,000万円 = 1,000万円
課税対象は 1,000万円 に縮小され、所得税額は以下のようになります。
- 1,000万円 × 20% = 200万円
3,000万円控除を適用しなかった場合
譲渡所得4,000万円全額が課税対象となり、所得税・住民税の合計額は以下のようになります。
- 4,000万円 × 20% = 800万円
両制度の差額は実に約600万円となり、その節税効果の大きさが分かります。このように、3,000万円特別控除の適用が可能な場合は、手間をかけてでも利用するメリットが十分にあると言えます。
よくある疑問とトラブル防止策

最後に、3,000万円特別控除に関するよくある疑問をQ&A形式で見ていきましょう。要件を満たしているかあいまいなまま売却を進めてしまうと、申告後に追加書類を求められたり、最悪の場合適用できなくなったりすることがあります。疑問がある場合はあらかじめクリアにしておき、必要に応じて税務署や税理士などにも相談しましょう。
売却相手が親族や配偶者の場合はNG?
売却先が配偶者や親子などの「特別な関係がある者」である場合、3,000万円特別控除は適用されません。税務上の判断では、書類上の名義だけでなく居住の実態なども重視されます。名義上は第三者に売却したように見えても、実際には血縁関係者への譲渡であれば、税務調査で否認される可能性があります。
なお、「特別の関係がある人」の判断基準は、書類上よりも実際の状態が優先されます。たとえば、実際には結婚していなくても内縁関係にある人や、生計を一にする親族、売却した家屋で同居する親族などが含まれます。
売却益が3,000万円未満なら確定申告は不要?
譲渡所得が3,000万円以下で税額がゼロになる場合でも、確定申告は必須です。確定申告をしないと、本制度の適用は認められません。
また、売却益がゼロやマイナスの場合でも、「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(所得税法第41条の5)が適用できる場合があります。安易に「不要」と判断せず、税理士や税務署などの専門家に相談して判断しましょう。
単身赴任・共有名義・店舗併用住宅の場合の扱いは?
単身赴任中の場合は、本人が不在でも家族が住んでいれば居住用財産として認められる可能性があります。赴任命令書や家族が生活している証拠を残しておくことが大切です。
共有名義の場合は、譲渡所得の計算を共有者の持分割合に応じて行います。あらかじめ登記事項証明書を用意しておき、申告時に正確に反映させましょう。3,000万円特別控除は、共有者1人につき最大3,000万円まで適用可能です。
店舗併用住宅の場合は、居住部分については3,000万円特別控除が適用され店舗部分に対しては「事業用の資産を買い替えたときの特例」という制度が適用されます。なお、どちらか一方の割合がおおむね90%以上の場合は、多い方の用途を全体に適用させることもできます。
マイホームとセカンドハウスの違いは?
複数の住宅を所有している場合、マイホームと認められるのは、生活の中心として日常的に使用している住居の1棟のみです。別荘やセカンドハウスは利用頻度が低いため、控除対象として扱われません。
マイホームであることを証明するには、住民票や電気・水道使用量の書類、郵便物の受け取り履歴など、居住実態を証明できる書類を用意しましょう。少しでも不安がある場合は税務署や税理士に確認するのが無難です。
まとめ:3,000万円特別控除を上手に活用して賢く節税
3,000万円特別控除は、マイホームを売却するときの税負担を大幅に軽減できる強力な制度です。ただし、居住実態の証明や売却相手との関係性など、要件を満たさないと適用が認められないため、条件は事前によく確認しておきましょう。
また、本制度は住宅ローン減税との併用ができない点も注意です。両方の条件に該当する場合は、節税効果の高さを確認し、どちらを優先するか考えましょう。一方で、10年超所有軽減税率などは併用できるため、積極的に活用したいところです。
多額の税金が動く不動産売却では、少しの判断ミスが数百万円の差につながります。適用条件に迷うときは税理士に相談し、3,000万円控除を上手に活用できる計画を進めましょう。
この記事の監修者
山下 航平 アキサポ 空き家プランナー
宅建士/二級建築士
ハウスメーカーにて戸建住宅の新築やリフォームの営業・施工管理を経験後、アキサポでは不動産の売買や空き家再生事業を担当してきました。
現在は、地方の空き家問題という社会課題の解決に向けて、日々尽力しております。